求人 NEW

改善の視点で生き延びる
これからも日本で
服づくりを続けるために

人でも会社でも、なんとなくの第一印象が、あとになって本質につながっていると気づくことは多い気がします。

墨田区にあるカットソーメーカー精巧株式会社を訪ねたとき、最初に漠然と感じたのは「なんだか空間が広い」ということでした。

エントランスホールも、事務所も、棚や机の上、屋外の台車にいたるまで、余計な物が置かれていない。だから、空間がすっきり広く感じる。言い換えれば、どの部署でもすぐに次の作業に取り掛かれる状態が維持されている。

そういう空間を心地よいと思う人、整理や分類の仕組みづくりが得意だという人は、今回の求人でその力を活かせると思います。

1950年に創業した精巧は、Tシャツやポロシャツなどニット生地の縫製を専門とする会社で、国内外のブランドのOEMに多くの実績があります。

90年代に「トヨタ生産方式」を導入して以来、業務の整理・整頓と改善を続けていて、それが現在の会社の基本姿勢として定着しています。

今回は、ここで生産管理を担う人を募集します。

生産計画の作成や原料・資材の発注など、工場のオペレーションを円滑に調整することが主な仕事ですが、従来の業務を担うだけでなく、現場の問題点を見つけて業務改善に取り組んでほしいという期待もあります。

といっても、高度な専門知識を求めているわけではありません。アナログな産業ゆえに、基本的な事務スキルで対処できるDXの課題も、現場には多く残されています。

技術面はベテラン社員に教わりながら、エクセルや簡単なAI技術で解決できるポイントを見つけて対処するなど、お互いに持ちつ持たれつの関係を築けるとよさそう。ものづくりの仕事が初めてという人でも歓迎です。

 

両国駅から歩いて数分。東京の下町らしい街並みの一角に、精巧の本社はある。

金属製のプレートはとてもシャープなデザインで、社名を際立たせている。

「よく、金属加工会社と間違えられます。あとは、時計のセイコーさんとか」

そう話すのは、取締役の近江祥子さん。代表の近江誠さんの娘で、創業者の孫にあたる。精巧で働き始めたのは15年ほど前。

さっぱりと歯切れの良い話し方で、笑うときは明るく、わからないことは誤魔化さずわからないと、はっきり答えてくれる。

「ファッションの世界って華やかに見られやすいけど、実際はすごく地味で細かい仕事が多いです。たとえばシャツを一枚つくるにも、資材が何種類も必要だし。最初はそれが結構驚きでしたね」

「服飾に関わる仕事は、もともと祖母方の家業でした。祖母はいわゆる江戸っ子で潔い人。祖父は化学の研究者で、試験管で実験するような仕事をしていました。その二人で会社を立ち上げて、今年で76年目になります」

墨田区は明治時代から繊維産業がさかんで、「莫大小(メリヤス)」と呼ばれたニット生地を扱うメーカーが集まり、地場産業として発展してきた。

「これまでOEMで依頼をいただいた会社は、300社を超えていると思います。最近だとスポーツブランドも多いですが、コレクションブランドやセレクト系、本当に国内外のありとあらゆるジャンルの服をつくってきました」

その実績をもとに、15年ほど前からは地元の4社共同でファクトリーブランドも立ち上げ、海外を中心に売り先を広げている。

昭和のころから、他社に先駆けてニット生地のプリント加工を導入するなど、創業者の探究心は、現在も社内の「ものづくりプロジェクト」などに受け継がれている。精巧が手がけた製品の着心地の良さは、プロゴルファーなどからも評価されているという。

とはいえ、経営の面では常に順調というわけではなかった。

事業を継続していくため、大きく舵を切ったのが2代目となる現在の社長。

「今から40年くらい前に、大きな設備投資をして『トヨタ生産方式』を導入しました。工場のあり方に危機感を感じていたんだと思います」

トヨタ生産方式といえば、「ジャスト・イン・タイム」という言葉で知られるように、在庫や工程の無駄を省くことを徹底した仕組み。それを縫製工場に落とし込んだのが「トヨタ・ソーイングマネジメント・システム(TSS)」で、一人のオペレーターがミシンやアイロンなど複数の工程を担う。

従来の流れ作業とは異なり、一人ひとりが多能工として動くため、小ロット多品種生産が可能になる。

システムを導入して以降、納期も短縮でき少しずつ生産性も向上した。

一方、業界全体で見れば、長く厳しい状況は続いている。

「今、衣服の輸入浸透率は、99%弱。国内生産は、は1%強程度だと言われています。現状維持で満足していたら、そのうち仕事はなくなっていく。ただ、海外に目を向ければファッションってまだまだ成長産業なんですよ」

「経済成長中の地域には大きな需要がある。私たちのものづくりがどれだけ世界で通用するのか、どうやったら他社と差別化できるか、考えていかないといけない。そのためにも、改善できるところを探し続ける姿勢は大事にしたいです」

近江さんたちが近年力を入れているのが、「GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)」など国際的な認証を取得するための取り組み。

環境負荷の少ない工程で生産された製品であるという保証は、海外では日本以上に重視される。企業の労働条件や、トレーサビリティなど、時代が進むにつれて「安全」と認められるために満たすべき条件も増えていく。

次に取得を目指している「B Corp」という認証は、もともと若手社員の意見がきっかけで検討することになった。

「新しく入る人も、自分の気づきを意見として出してほしい。逆に、そうじゃないと、うちではやっていけないと思うんですよ。みんなすごい強いし」

強い?

「わりとはっきり意見を言う人が多い。年齢とか経験とか、立場関係なく。ただ、自分の考えを押し通すだけでは議論にならないので、みんなちゃんと聞く耳も持っていますよ。とにかく、間違っていてもいいから、遠慮せず発言してみてほしいです」

精巧の社員には、知識と経験が豊富な層が厚い一方、パソコンやAIなどの技術を活用するのが苦手な人も多い。

在庫や工程の情報をまとめたり、整理したり。基本的な事務スキルで効率化できる余白もまだ残っている。

「必ずしも、ファッションやものづくりの仕事をした経験者でなくても構いません。私も、ミシンは小学校の家庭科で習った程度です。とにかく物事を細かく見て、数字を分析できる人に来てほしい。特に上司の田河さんが大雑把だから」

 

近江さんの言葉を受けて「だそうです。ははは…」と笑うのは、生産管理の部門をまとめる田河さん。

「新卒で精巧に入社して、もう50年弱になるのかな。今年で70歳になりました。今は、千葉県にある自社工場の工場長と生産管理担当を兼任しています。最初10年くらいは、工場の現場で働いていました」

精巧のOEM生産は、自社工場のほか、東北や北陸、ベトナムにある協力工場で行われている。海外の生産は現在別のスタッフが担当しているため、新しく入る人の担当は国内工場になる。ただ、研修などの機会を通して、生産現場や売り先である海外に出張する可能性はあるという。

精巧では職種を問わず、新しく入社した人は研修期間が1〜2週間ほど設けられている。社内のシステムや、経営計画について座学でインプットしたあとで現場に出ていく。

「生産管理の仕事はいろいろあるけど、まずは計画の作成から仕事を始めることになると思います。一つの品番から担当してみて、全体の流れや各工場の特徴を覚えてもらう。そのなかで、工場の担当者とお互いに顔を覚えていくといいんじゃないかな」

「この仕事は、計画通りにいかないことも多いし、工場に対しても仕入れ先の材料メーカーさんに対しても、調整ごとが多いので、人とのコミュニケーションがしっかりとれることは大切。元気で、明るくて、まずやってみようっていう姿勢は大事にしてほしいですね」

 

生産管理の担当が、社内で密に連携していくことになるのが、企画の部門。パタンナーとして働く大下さんにも話を聞かせてもらった。

「パタンナーというと、服の型紙をつくることに特化した職種だと思われがちですが、弊社の場合は、製品の設計提案もさせてもらえることが多くて。幅広く担当できるのが面白い環境だと思います」

OEM生産の場合、まずは大下さんたちが、クライアントであるアパレルブランドと打ち合わせをしてデザインを決める。

その後、サンプル制作を通してブラッシュアップしながら、仕様を決め、量産に向けた設計を進めていく。素材と加工の相性や、耐久性など、量産した際のリスクになりそうなポイントを見つけて、より安全な方法を提案する。

生産管理担当とは、普段どんな部分で協業していますか。

「生産計画を立てるときに、『この資材は入荷に時間がかかるから早めに発注してください』とか『この加工は難しいから工賃に加味してください』みたいなお願いをすることが多いです。注意が必要な部分を事前に考えて、コミュニケーションで解決しておくイメージです」

「生産管理の仕事って、極端に言えば、品番とか数量とか数字を画面上で処理するだけでも成り立つのかもしれません。でも、やっぱり今自分が管理しているものがどういう服で、誰がどうやってつくっているかっていう興味を持つことは、働く人自身のやりがいにも影響するんじゃないかと思います」

 

OEMの受注先や、原料である生地を仕入れる会社など、これから入る人が普段やり取りするのは主に日本の企業です。

一方で、製品の原料となる綿花や、工場での縫製を担う人など、服づくりは、国を超えたつながりのなかで成り立っています。さらに、日本の縫製技術を評価する市場は、海外にも広がりを見せています。

この仕事をしているときっと、自分が今いる場所だけでなく、その外にある広い世界とのつながりや背景を意識することになると思います。

また、衣服という人の暮らしに不可欠なものでありながら、それを産業としてつくり続けていくには、環境への影響など今すぐに考えなければいけない課題も多い。

だからこそ、細かいことによく気が付く人の目が必要です。

はじめは些細なことでもいい。道具の並べ方、連絡の取り方、在庫管理の仕方、「もっとすっきりできるのでは?」という小さな気づきが効率化の糸口になることも多いと思います。

担当する工場のあり方を考えることが、長い目で見れば、世界や、環境とのつながりを見直すきっかけになるはずです。

(2026/7/8 取材、高橋佑香子)

問い合わせ・応募する

おすすめの記事