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五感で楽しむ
地球との遊び場

大きな池のほとりに、田んぼが段になって広がっている。

その奥に見えるのは、まだ土がむき出しの造成地。

正直に言うと、完成予想のパースを見せてもらっても、ここに何ができるのか、すぐには想像がつきませんでした。

富山県南砺市(なんとし)。桜ヶ池に隣接する約40ヘクタールの土地に、来年の夏、「Play Earth Park Naturing Forest(プレイアースパーク ネイチャーリングフォレスト)」という場所が生まれます。

手がけるのはゴールドウイン。「THE NORTH FACE」や「HELLY HANSEN」を展開する、創業75年のスポーツアパレルメーカーです。

散居村からインスピレーションを受けたヴィラや、コテージ、キャンプサイト。6つの飲食施設に、子どもたちのためのパーク、世界的なガーデンデザイナーが設計するガーデンやファーム。地球と遊ぶ公園をつくろうとしています。

今回募集するのは、宿泊スタッフとガーデナー。加えて、アクティビティ企画担当、ワークショップ企画担当も募集します。

まだ、何もない場所です。だからこそ、これからつくれる余地が、たくさん残っています。

 

富山県の南西部。東京から北陸新幹線で富山駅まで行き、そこから車で50分ほどの場所に「Play Earth Park Naturing Forest」の予定地はある。

そのそばにあるPlay Earth Parkの現地オフィスへ。

事業本部事業部の部長を務める髙野さんが迎えてくれた。

現地運営部門の全体を統括しつつ、施設では宿泊や食の領域を担当。株式会社PLAY EARTH PARKが2023年4月に立ち上がったタイミングで入社し、今年で4年目になる。

「ゴールドウインって、もともと富山がルーツの会社で。それで今回のプロジェクトもご縁をいただきました」

「私たちの主な事業であるアパレルって、すごく環境負荷が高いんです。大量の水を使うし、汚してしまう。それをなんとかしたいという想いを、社長が強く持っていて」

自然に還る繊維の開発に取り組むベンチャー支援や、子ども向けのネイチャーキャンプ、環境省と連携した国立公園の利用を促す事業など。さまざまな取り組みを重ねてきた先に、今度は「場」をつくろうという話になった。

「次の世代を担う子どもたちが、自然を体験できる機会をつくる。自分たちがやるなら、スポーツアパレルメーカーの強みであるアート性とかデザイン性を活かしたい。感性を育む場、みたいなところがテーマです」

感性を育む、というと?

「自然のなかに身を置いて、五感をひらく。発見とか、感動とか、ワクワクとか。その原体験をいかにつくれるかを、すごく考えて設計しています」

「ここではPlay Earth Park Naturing Forestという名前の通り、大地と一体化するコンセプトがあるので、遊び方が決まっているような既存の遊具は置きません」

手つかずの自然ではなく、人の営みや暮らしと隣り合った里山につくる。洞窟や岩山を冒険するような、自然のなかで遊びが生まれるように。子どもたちは地形と会話しながら遊び、それぞれが新たなルールを生み出し、その遊びを発展させていくイメージだ。

開業は来年夏の予定。ただ、髙野さんは開業がゴールではないと繰り返す。

「開業してからは、体験事業が中心になる予定です。さまざまな自然体験や、数十年かけてお客さまや地域の方と森を再生するプロジェクトなど。おそらく30年くらいかけてかたちにしていくことになる。大切なのは、場ができてからなんですよね」

今回募集する宿泊スタッフは、その30年の最初に立ち会う人になる。

開業まで、およそ1年。この期間にやることは、大きく3つ。

「まずは運営体制をつくること。次に、どんな体験を提供するのか、滞在・宿泊のプランを考えること。そして周辺との関係性をつくって、この土地を学ぶこと」

「色濃く残る祭りの文化や、古い街並み、散居村といった歴史と風土。さらには海から山まである環境と、山と海の幸。その魅力を自分たち自身が感じて、喜びを持ってお客さまに伝える。そこが働く人のモチベーションの源泉にもなるんじゃないかな」

滞在プランは、今まさに検討を重ねているところ。

たとえば、と話してくれたのはこんな場面。

「チェックインしたあと、スタッフと一緒に歩いてヴィラまで移動する。その途中で草花に触れてみたり、匂いを嗅いでみたり」

「滞在のいちばん最初に五感をひらくきっかけがあると、その後に過ごす時間の解像度がかなり変わってくると思うんですよ」

畑でとれたものを食べたり、レストランに入る前にガーデンに出て、ひと口だけ何かをつまんだり。宿泊とファームと食が、すべて連動するような場を育てていきたい。

だからこそ、働き方も各セクションのなかだけにとどまらない。

たとえば宿泊スタッフであっても、積極的に研修の機会をつくり、レストランのサーブを一緒に手伝ったり、カヤックを漕いだり、ガーデンに出て作業したり。小規模な施設なので、柔軟にお客様に合わせた体験の提案をできるようになってほしい。

「みんなが別のセクションを体験する時間をつくりたくて。お客さまに、カヤックってこういうふうにおもしろくて、とか語れたらおもしろいじゃないですか」

宿泊チームは、開業時点で社員15名ほどの体制を想定している。現在のコアメンバーは2名。

今回は支配人やマネージャーの経験がある人、経験がなくても意欲がある人を求めているそう。

「ただ、宿泊業界はサービス業や営業の経験も応用できるので、そういった経験のある方も素敵ですね。ホスピタリティが重要だと思います」

一般的なホテルや旅館の仕事との違いはありますか?

「宿泊体験を通じて、お客さまを自然に誘う。自然との接点を生み出すことが、大きい目的なん違いです」

「だからこそ、Play Earth らしさを持っている方に来てほしくて」

Play Earth らしさ。

「少し前に面接した方が、耕作放棄地の話をされていて。子どもの背丈くらいの草だらけで、危なそうじゃないですか。自分が親でも、危ないから入らないでって言いたくなる」

「でもその方は、子どもってああいうところに分け入りたくなるし、それってとってもいいじゃないですか、って言うんです。すごくPlay Earth じゃないですか、それって(笑)。そういう根底にある思いが、技術とか経験より勝る。そんな人たちが集まったら、めちゃくちゃワクワクすると思うんです」

 

続いて話を聞いたのは、髙野さんと同じ事業部でガーデンを担当している片山さん。昨年の4月に入社した。

「私はガーデン担当ですが、実際はまだガーデナーではないんですよ」

まだガーデナーではない?

「ガーデンがまだ完成していないので。今は新しくこの土地に迎える草花が、ここの気候や土に対してどんな反応を見せるのか日々観察しているところです。普段の作業のなかで、小さな反応に気づくための“目”を鍛えています。そして誰よりもガーデンを楽しみにしているのは私だと思いますね」

島根出身の片山さん。最初の仕事は看護師だった。

幼い頃から夢だったガーデナーを目指して、北海道で研修を受けてから植木屋へ転職。その研修先で出会った人にPlay Earth Parkを紹介され、移住を決めた。

迷う要素はなかったのでしょうか。

「それが、まったくなくて」

「ガーデンのディレクションで入っていただいている新谷みどりさんは、私が最も尊敬するガーデナーで、その考え方はもちろん、草花に囲まれた姿までも、まさに私が目指したい方なんです」

新谷さんは、北海道の「十勝千年の森」でヘッドガーデナーを務めてきた方。今回ガーデンをデザインするイギリスの世界的なガーデナー、ダン・ピアソンさんとは、長く一緒に庭をつくってきた間柄だという。

「新谷さんも昨年このプロジェクトのために富山に移住されたんです。その方が一緒にガーデンをやりませんかって言ってくれたら、断る理由なんかないですよね」

今、ガーデンチームは片山さんと、地元の造園会社の方が一人。ふたりで新谷さんの教えを受けているところ。

「新谷さんがよくおっしゃるのは、ダンの思想を理解して管理していく人じゃないと務まらない、と。純粋にダン・ピアソンの考えを吸収できて、それをチームとして発揮できる方が、一番求められていると思います」

ダンさんの思想にあるのは「ナチュラリスティック・ガーデン」。

地形をダイナミックに活かし、多年草を中心に藤棚やススキ、桜が季節ごとに広がり、森や湿地、水辺、そして遠くの山々を視線の先に望む。

「七十二候」の考えをもとに1年を72の季節に分け、土地と風土、環境に適した植物を植え、自然の営みに現れる微細な変化を感じ、楽しむことができる。

片山さんはどんな人と一緒に働きたいですか。

「Play Earth Park Naturing Forestは、これからのガーデンを牽引していく存在となると信じています。妥協することなく、植物のもつ力で来園者を圧倒させる。高いモチベーションを持って共に進める人であればいいなと思います」

島根、北海道と移り住んできた片山さん。もともと田舎の出身なので感覚はあまり変わらず、快適に暮らしている。

「私は雪国の経験がなく、移住前は雪に対する心配が強かったのですが、周りの人たちが協力してくれたり小さな知恵を教えてくれたりして。雪解けの時期には雪が恋しくなりました。なにより雪の景色が美しくて感動します」

 

ここで、周辺を案内してもらう。桜ヶ池を左手に見ながら少し下ったところ。棚田のような傾斜の先に、田んぼと畑が見えてきた。

管理しているのは、ファーム担当の小澤さん。

収穫体験など、宿泊とセットで体験を提供する際に協力することになる。

今植えているジャガイモは、畝と畝の間を少し広くとってあるそう。

「普通だと、できるだけ収穫量が多くなるように狭くするんです。でもPlay Earth Park Naturing Forestのファームはメインが子どもたちの収穫体験になるので、親子が歩ける幅をとりたい」

「その話を農家さんにしたら『Play Earthらしいね』って言ってくださって。うれしかったですね」

除草剤も使用しないため、草刈りはかなり大変。けれど、環境への負荷を減らすためには曲げられない。

「宿泊でも必要な要素だと思うんですが、子どもが好きな方がいいですね。子どもに好かれてほしいですし、一緒に楽しめるような人だったらいいんじゃないかな」

小澤さんは家族と一緒に関東から移住し、南砺市に家を買った。

「自然と関わりながら生きるって、必ずしも快適なことだけではないんです。今も杉の葉っぱが雨どいに詰まっていて、掃除しなきゃいけないんですけど、なかなかできず…」

「でもアウトドアって、不便も楽しむものだと思っていて。ここでの暮らしも似ている気がしますね。一個一個クリアしていくのを楽しめる人ならいいと思います」

金沢市や富山市へは、車で1時間ほど。海も山もあって、食も豊か。

ただ冬は雪が降るので、最初は雪かきに苦労するかもしれない。道路は南砺市が除雪に力を入れているぶん、比較的走りやすいのだとか。

 

草の匂いがして、土が手につく。虫がいて、雨が降って、雪が積もる。

ここでの仕事は、たぶん、そういうものを面倒がらずに、おもしろがることから始まります。

まず自分たちが、この土地で五感をひらく。そして、訪れる人に手渡していく。

そんな仕事です。

(2026/07/15 取材 稲本琢仙)

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