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うちじゃなきゃつくれない

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「世の中には、つくれば売れそうなアイテムはいっぱいあるんです。そのなかでも僕たちは、うちにしかつくれないものをつくりたい」

株式会社グラフィコは、ドラッグストアなどで販売されている化粧品や日用雑貨を企画販売しているメーカーです。

どんなものをつくっているかというと、床に置いて踏むだけで、靴下の消臭と足裏のマッサージが同時にできるスプレーや、仮面舞踏会の仮面に似せたホットアイマスク。看板商品の「なかったコトに!」というダイエットサプリメントなどなど。

商品パンフレットを見ても、ネーミングや用途がどれもが斬新で、見掛け倒しなんじゃないか、と感じてしまったのが正直なところ。

ところが、実際に使ってみると「たしかに、あったら便利!」と思えるものばかりなのです。

実は工場を持たない50人ほどのファブレスメーカーながら、ミリオンセラーをいくつも生み出しているそう。

今回はグラフィコのモノづくりの要でもある、企画開発部のメンバーを募集します。



グラフィコの本社オフィスは、スーツ姿の人がたくさん行き交うJR大崎駅に直結したビルの中にある。案内された部屋からは、オフィス街が一望できた。

グラフィコは今年で21年目。そのはじまりは、社長の長谷川さんが立ち上げた小さなデザインスタジオ。主に商品パッケージや広告のデザインをしていた。

この日は、デザインスタジオ時代から20年近く長谷川さんと働いてきた、取締役企画本部長の水谷さんがお話ししてくれることに。

「僕はもともとコンピューター機器メーカーの営業をしていて。この会社には友人の紹介でデザイナー見習いとして入社しました。そのときは『グラフィックデザインって格好良さそうやし、やってみたいな』って思っていたくらいの、まったくの素人だったんですよ(笑)」

“自分の力で、困っている誰かを助けたい”という思いを、代表の長谷川さんは当時から語っていた。その思いゆえに、歯がゆい思いをしている姿を目にすることがあったそう。

「広告のデザインをつくるにしても、広告代理店とメーカーの販促担当の人たちからは、デザインの好みやデザイン自体の出来栄えで判断されることが多くて、どんな結果だったかも教えてもらえないことが多かったんです」

「見せかけのうたい文句で買ってもらえたとしても、中身が伴っていなければ嘘になっちゃう。本当に品質や効果の高い商品も、パッケージや展開方法が悪ければ埋もれてしまう。グラフィコは、きちんと悩みを解決できる商品を、求めている人に届けられるコピーやデザインで売りたいと考えていたんです」

大手化粧品会社の外部ブレインとして、化粧品の企画にも参画していた長谷川さんは、肌が弱く皮膚トラブルに困っている人たちが世の中にたくさんいると感じていた。

肌悩みを本当に解決できる商品を自ら開発するために、大学病院の形成外科の先生へアプローチ。

「なんとかしてあげたい」と、効果を高めるとともに、徹底的に無添加にこだわった美容液を5年の歳月をかけて共同開発した。

これがきっかけとなり、2004年にグラフィコは完全にメーカー化することに。

「うちがやってあげないと誰がやるんだ?っていう感覚はずっとあるかもしれません」

ニッチな需要すぎて大手メーカーでは商売にならない、でも求めている人は絶対にいる。ずっと、その想いに突き動かされて仕事を育ててきた。

「パッケージや販促コピーで惹きつける力と、機能や品質の良さを両方を追求している。自分たちでつくった物は自分たちで責任を持てる。そのぶんお客様からの反響もドキドキしますが、他社にはないダイナミズムを味わえます」

ユーモアを感じさせる商品が多いから、思いつきでつくられているのかと思っていたけれど、実際は違うみたい。

いったいどのように商品は生み出されているのだろう。答えてくれたのは、隣で話を聞いていた若松さん。

企画開発部は女性ばかり6人。若松さんはそのリーダーをしている。

「一般的な会社だと、まずは企画の前に大きな市場のデータを調査したりすると思うのですが、うちはあまりやってないことが多いです」

これは意外だ。商品企画の基本は、なんとなく市場調査のようなイメージがあったから。

「まだ誰もつくっていないものを企画することが多いので、調べても出てこなくて当たり前。ビッグデータで売れることが予想されるものは、すでに大手の会社さんたちが参入されていますしね」

「感覚的な部分も多いのですが、自分たちで世の中をよく見て、本当に求められているかどうかを判断するんです。もちろん、仮説に対しての市場調査はしていきます」

アイデアは自由に出していける。でも、「商品化のハードルはものすごく高い」とのこと。

まずは企画の草案を2、3行の言葉で紙に書いたものを、定期的に行われる選考会にかける。選考会は月に数回、1回につき2時間ほど行われていているものの、そこを通過するのはひと月に1件あるかないか。

新規性・独自性に加え“ワクワク感”などでも選考されるアイデアの卵は、その時点ではドラえもんの夢の道具のようなときも。

通過したアイデアはさらに2度のスクリーニングでふるいにかけられ、現実的に商品化が可能であるかをリサーチしたあと、値段や販路などを考えていく。

「ほかの企業で商品企画を担当していたという方も、うちの企画の通らなさには驚くと思います」

「そのとき流行っているから、売れるからという理由だけでモノづくりはしてないですね。うちでつくるものは、できるだけ細く長いロングセラーにしていきたい。だから、商品企画に時間を投資するわけです」

企画開発部のなかでも、アイデア出しから、どのように販売していくかまでを考えるのが企画担当の仕事。

商品化が決まったあとは、開発担当が工場やデザイナーの間に立って製品やパッケージをつくっていく。

「とにかくこだわり抜いたものをつくろうとするから、お願いする工場の人からは面倒くさがれらますよ(笑)」

どのようなやりとりがあるんですか?

「たとえばこのスキンピースという商品。これは、徹底的に安心安全な食べ物成分だけを使ったスキンケアシリーズなんです」

原料のシアバターをつくっている途上国支援も兼ねた商品。だから、原価は下げられないし、消費者のことを考えると販売価格も上げられない。その上、パッケージに表記されない成分も絶対に安心なものだけを使うという難しい商品だった。

使用感にもとことんこだわり抜くために、価格交渉を含めて試作は100回以上も行ったそう。

「大手さんと違ってロット数も多くないのに、難しいお願いばかりするんです。協力工場の方には嫌われてるんじゃないかって思うときもありましたよ」

「それでも熱意を必死に伝えて、最後のほうはもう泣きを入れました。『あと1回だけ!お願いします!』って言ってね(笑)」

敏感肌に悩んでいた人や、赤ちゃんに触れるお母さんたちからいただいたうれしい意見は、なるべく伝えるようにしたり、業者の方たちには一緒にモノづくりする楽しさを感じてもらえるようにしているそう。

商品化までの長くて濃い道のりを聞いていると、地道にミリオンセラーを生みだせている理由がわかるような気がする。

お店に並んだ商品で、妙に惹かれてしまうものに出会うことがあるけれど、商品が持つ熱量みたいなものを、不思議と私たちは感じ取ってしまうのかもしれない。



続いて、若松さんと同じ企画開発チームの岩重さんにもお話してもらった。

映像の制作会社に勤めた後に転職。グラフィコでは、企画から開発、リサーチなどオールマイティに活躍している。

「あらためて考えると、使ってくれる誰かのためという感じで、自分のために仕事してないのかなって思います」

岩重さんはよもぎ温座パットという商品を担当している。

温座パットは、簡単に言うと女性下着用の貼るカイロのこと。無農薬のよもぎのシートを通して熱が下半身に伝わるので、よもぎ蒸しをしているようにじんわりと身体を温めることができる。

生理不順や不妊に苦しんでいるけれど、薬だけに頼りたくないという女性を少しでも楽にできたらと、この商品は開発された。

「つらい痛みが改善したとか、無事に赤ちゃんを授かったというコメントを、口コミやハガキでいただくとうれしいですね」

新しく入る人は、まずは何をすることになるのでしょう。

「まずは会社と商品のことについて研修を受けてもらって、そのあとは部署に入ります。先輩について、ワンシーズンはうちのモノづくりを学んでもらうことになると思います」

ただ、今回募集する職種のうちリサーチ担当は新たなポジションなので、手探りになるかも、とのこと。

「既存商品のPOSデータを見て、こういう仮説が立てられるだろう、とか、競合商品の市場性はどうなっているかとか、そういったところを教えてほしいです」

「企画段階で盛り上がっている私たちに、冷静にアドバイスしてくれるような方だといいですね」

会社の雰囲気はどんな感じですか?

「みんなが納得してからじゃないと物事が進まない。会議が長いんですよ。『もういいじゃん』って言ったら負けみたいな感じ(笑)。1人ひとり意見を求められます」

それは部署の中でも言えることだそう。自分のアイデアは声をあげれば試すことができるし、どんどん発言していい雰囲気がある。

面白い成分や新しい技術を見つけたら、開発担当でも企画担当を巻き込んで商品を考えていい。リサーチャーも、どんなコピーを考えたらより伝わるかといったアイデアを出せるかもしれない。

もちろん、自分の力と向き合う場面が多いから、ときにはつらいこともあるはず。

「売れる売れない、面白い面白くないという結果を毎回自分に突きつけられる。自分の能力を直視することになるんです」

「その壁を感じてキツイなって最初は思うかもしれない。でも誰でも最初はそうなので、壁にひるまず考え続けてほしいです」

すると若松さんも、ふたたび話に加わります。

「社長がよく言うのですが、うちは鼻血がでるまで考えて、創意工夫をしないといけないんです」

とはいえ、その苦労さえ楽しんでいるような、グラフィコの商品にはそんな雰囲気がある気がします。

「たしかに、ネットの口コミにも『つくり手が楽しんでるのが分かる』って書かれてたことがあるんです」

どうしてだと思います?

「企画って企むって書くじゃない。誕生日プレゼントとかサプライズを一生懸命考えてる時間が楽しいように、誰かが喜んでくれたり驚く顔を想像する。私たちは大まじめに、それを楽しんでいて。それは隠していても伝わってしまうものなんだと思います」

モノがあふれる時代だからこそ、差別化は難しい。

それでも自分たちにしかできないものづくりを、真剣に企んでいるのがグラフィコだと思いました。

2/9(金)には、そんなグラフィコのみなさんをお呼びするしごとバー、「ムフフな商品企画ナイト」を開催します。

みなさんとても気さくで面白い方たちなので、どんな方でもきっと楽しめると思います。

お気軽に遊びにいらしてくださいね。


(2017/10/10 取材 遠藤沙紀)

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