コラム

コミュニティをつくるヒト2

みなさんは「シブヤ大学」をご存知でしょうか。表参道ヒルズに明治神宮にカフェにと、「シブヤ」の街をまるごとキャンパスに、毎月第3土曜日に授業を企画・運営する新しい学びの場です。その中で「しごと課」のリーダーを務め、授業コーディネーターとしても活躍されているのが、今回お話をうかがった堀田顕人さん。普段は渋谷区外苑前にオフィスを構えるWEB・映像の制作会社に勤務する会社員でもあります。
現在進行中の「リトルトーキョー」でも「シブヤ大学を参考にしている」というナカムラケンタとともに、五月晴れの昼下がり。キラキラと照らす陽射しに、緑がまぶしい代々木公園へと集まりました。

――もともと2人は知り合いなんですよね。

ケンタ 最初に会ったのは何年前だったっけ。シブヤ大学の3周年イベントに行ったんだよね。

堀田 それが2009年かな。そのちょっと前ぐらいだから、4年前ぐらいかね。

――そもそも堀田さんがシブヤ大学に関わり出したのはどういった経緯なんですか?

堀田 ケンタくんと出会うさらに1年前(2008年)に、シブヤ大学のホームページでたまたま授業コーディネーター募集のニュースを見つけて、なんか面白そうと思って、すごく軽い気持ちでメールしたのがきっかけかな。

ケンタ シブヤ大学自体は知ってたの?

堀田 うん、開校(2006年9月)のときから知ってた。その後も雑誌とか、どこかの会社の広報誌で左京さん(シブヤ大学・学長)のインタビューを見つけて、同い年ぐらいで面白い人がいるなぁと思ってたんですよね。だからどっちかっていうとシブヤ大学よりも、最初は左京さんへの興味が大きかったかもしれないですね。

ケンタ なるほどね。だからシブヤ大学でいろんな授業に参加したいっていうよりは、左京さんの考え方とか働き方とか、シブヤ大学のコンセプト自体に興味があったと。

堀田 うん、そこに興味があった。その頃、渋谷へは映画か買い物以外で出かける機会があんまりなくて、接点も少なかったんですよね。転職したいまの会社が渋谷区なんですよ。クライアントが渋谷近辺に多いこともあって、転職してからは圧倒的に行くことが増えました。

――シブヤ大学に参加されたのもその頃ですか?

堀田 ちょうど転職して数か月あとぐらいですね。転職したあとってその会社の環境とか仕事にフィットするのにけっこう時間がかかるじゃないですか。最初の頃は仕事量もそこまでじゃなかったのもあって。

ケンタ たまたまぽっかり時間が空いたりしたんだね。

堀田 まぁそんな感じです。最初、シブヤ大学のホームページに「授業コーディネーター募集」って書いてあって、さっぱり意味わかんなくて(笑)。

――わかんないですね(笑)。

堀田 でも、なんか企画できるっぽいことが書いてあって、直感的に面白そうだなとは思ったんですよね。それまでもシブヤ大学のホームページはたまに見てたんですけど、授業に行きたいとか、ボランティアにはそこまで強い興味が湧かなかったんですよね。ただ、授業コーディネーターっていう役割にはなぜか自分が関わるイメージが湧くなと思って。それがなぜかは、いまでもはっきりとはわかってないんですけど。

ケンタ なんとなくわかるなぁ。完全につくる側に回りたいものと、完全に消費者に回りたいものがあるみたいな。たとえば好きなバーとか飲食店に関しては完全に受け身でありたい一方で、自分で関わっていきたいっていうものもあるし。シブヤ大学では消費するだけじゃなくて自分でつくるみたいなところに興味があったのかもね。

堀田 あと転職して、仕事場として渋谷に来る機会も増えて、家や仕事場とまったく切り離された場所ではなくなったのもあって。サードプレイスというか、会社の遠い遠いグラデーションの先にあるのが「シブヤ大学」だったのかもしれないです。

――授業コーディネーターとして参加して、具体的にはどんな授業をやってきたんですか?

堀田 渋谷区の中でも原宿・表参道エリアに特化した授業があるんですが、いまの「東急プラザ表参道原宿」がまだGAPだった頃、ファッションから空間デザインまで、トータルコーディネートを学ぶというのがあって。それがいちばん最初だったかな。

[授業の詳しい内容はこちら]

ケンタ それは企画したの? それともはじめに先方から話があって?

堀田 GAPさんと知り合いのスタッフがいて、授業企画案を出せないかと考えていたんですね。調べるとGAPさんには、「トータルコーディネートする歴史」があることを見つけて。そういうものを教われたら面白いねって話したのがきっかけだったと思います。

ケンタ じゃあ、「今回は堀田さんが授業コーディネーターやってみて」って感じで。

堀田 そういう流れだったかな。そのときは何か特別にやりたい授業があったわけでもなかった。授業コーディネーターになったのは、たまたまハマったからというか。

――なんか楽しそうっていう、ぼんやりした感じからはじまったんですね。

堀田 そうですね。あと、国連大学の前で開かれているファーマーズマーケットを企画・運営している田中佑資くんを先生に、出店されている生産者の方たちに直接話を聞く授業もほぼ同時期ですね。

[授業の詳しい内容はこちら]

――先方から提案された枠内で考えることもあれば、ゼロからやるときもあるんですね。

堀田 まぁ、ケースバイケースで。いまは自分からやりたい企画をやることの方が多いですね。

ケンタ シブヤ大学の授業ってだいたい第3土曜にあって、そのあとに授業コーディネーターやボランディアの人たちが集まる情報交換場というか、ミーティングがあるんですよね。それにたまたま参加したことがあって。関わり方も自由だし、関係もフラットだし、やりたいならやればいいじゃんっていう自由な雰囲気だよね。

――そうなんですね。ボランティアの方を含めると100人以上の方が関わっているそうですが、シブヤ大学だけで暮らしている方もいるんですか?

ケンタ 厳密には左京さんだけかもね。でも影響は大きいし、会社組織で考えたら、フルタイムの従業員が10人はいないと回らないようなことをやってるよね。それをフラットな組織としてやってるのがすごく面白いなと思う。

堀田 (シブヤ大学の学生ではなく)実際の大学生だったら卒業から就職とともに来れなくなる人もいるし、転勤で来れなくなる人もいる。たとえば出産とか、シブヤ大学より優先的な出来事ができたら一時的に離れる人もいますよね。もちろんまた戻ってくる人もいるし。

ケンタ ほんと自由だよね。やりたかったらやればいいみたいな。

堀田 一度離れてひさしぶりとなると、また行きづらい感じはあると正直思う。でも、左京さんはそういう心理的な壁もなるべく崩そうとしてるんですよね。

ケンタ 左京さん自体、ぜんぜん押しつけないよね。左京さんがある意味メインファシリテーターで、ほかの人がもっと流動的に動いてる感じがする。「ケンタくんはどう思うの?」ってよく言われる気がする。

堀田 基本的に左京さんは自分から何か言わないからね。

ケンタ 言わない! 言わないんだよー! でもそれは意識してやってるよね。

――自発的に動くように考えてやられてるんですかね。

堀田 人は自分から言って自分が動くときにいちばん力が出る。そのことをわかっているんだと思いますね。