コミュニティをつくるヒト2-2


みなさんは「シブヤ大学」をご存知でしょうか。表参道ヒルズに明治神宮にカフェにと、「シブヤ」の街をまるごとキャンパスに、毎月第3土曜日に授業を企画・運営する新しい学びの場です。その中で「しごと課」のリーダーを務め、授業コーディネーターとしても活躍されているのが、今回お話をうかがった堀田顕人さん。普段は渋谷区外苑前にオフィスを構えるWEB・映像の制作会社に勤務する会社員でもあります。
現在進行中の「リトルトーキョー」でも「シブヤ大学を参考にしている」というナカムラケンタとともに、五月晴れの昼下がり。キラキラと照らす陽射しに、緑がまぶしい代々木公園へと集まりました。

ケンタ いまは月に何日ぐらい関わってるの?

堀田 んー、何日って厳密にいうのは難しいですね。ゆるやかに関わっています(笑)。土日だと月に1日しか行ってないですね。

――そんなに少ないんですね。

堀田 行ってないというか、週末の中でシブヤ大学に使う時間は授業のあるその1日しか使ってない。

ケンタ 家族もいてお子さん2人の子育てもあるもんね。でも平日にメールが来たり、打合せすることもないの?

堀田 必要があれば適宜という感じで(笑)。たとえば授業の準備に関していうと、6月に「授業」をやるとして、だいたい2ヶ月前ぐらいから準備するけど、それも人に会える時間で朝会社に行く前とか、夜仕事終わってからとか、昼ご飯食べながら先生に会って話を聞くような感じで。先生も渋谷にいる人が多いんです。会社の近くで授業の打ち合わせがしやすいので時間的に助かっています。ある程度慣れてきて、自分でもだいたい感覚がわかってきてるから、自分のペースでスケジューリングして、無理なくできちゃうんですよね。

――これまで4年間続けてきた中で、しんどくなったことはないんですか?

堀田 あんまりないかなぁ。だいたい年間に7、8本平均で授業をやっているんですけど、今年はまだ1本もやってないんですよ。

ケンタ えっ!? そうなの?

――ほんとに気まぐれなんですね(笑)。

堀田 気まぐれですね(笑)。本業の仕事が1年の中でも1~3月がいちばん忙しい時期なんですよ。なのでその間は、授業の準備をやらないようにしています。だから毎年4月とか5月って授業が少ないんですよね。でも1月や2月の授業だと年末に準備しちゃえば大丈夫だったりもするので、1月や2月はけっこうやったりもしたんですけど。

――今年はやらなかったんですね。

堀田 去年の暮れぐらいに、個人的に授業コーディネーターをやりきった感があって、手応えがあったんです。周りから見たら、「お前まだまだだろ!」って笑われると思うんですけど(笑)。一つの授業に関わる人たち、自分と先生と参加してる方々の満足感のバランスがとれる授業のコツがつかめてきて、自分の中では勝手に満足してたんですよね。それもあって去年の年末は、授業の準備をやらなかったんです。

――なるほど。

堀田 正直、このまま授業をやりたい気持ちがなければ、やらなくてもいいやって思ってたんですけど。たまたま知り合いとお茶しながら雑談しているときに「それ面白くないですか? 授業にしましょうよ!」って思わず言っちゃって(笑)、6月にまた授業をやることになっています。

――あはは(笑)。でも自然発生的な感じでいいですね。

堀田 シブヤ大学自体が、授業コーディネーターに対して「絶対に1年に何本やってください」という求め方はしないので、こっちもやりたくなったらやるという気持ちで臨もうと思って。

ケンタ そうだよね。そういう意味でも居心地いい場所だよね。ただ、いるだけじゃ何もはじまらない場所ではあるけどね。

――自分自身の行動力が必要とされてるんですね。

ケンタ 授業受けるだけの関わりなら、興味があるときに行けばいいってこともあるかもしれないけどね。授業コーディネーターは大変だと思うよ。

堀田 いやいや(笑)。でも、しごと課はゼロからやらなきゃいけなかったから、ちょっと大変なところもあったかな。

ケンタ 大学だから就職課あるだろうみたいな。そういうのあったら面白いだろうみたいな思い付きではじまった感じだもんね。大学の就職課はそこから実際の就活がはじまるわけだけど。

堀田 就職させるための場所という位置づけが多いからね。普通の就職課は、いい企業に勤めさせるという実績が目的であることが多いと思うんだけど、シブヤ大学にはそんなミッションはないので(笑)。

ケンタ 現役の学生もすでに就職してる人たちも、自分の仕事や働くことについて考える場をつくれたら面白いなってことだよね。

堀田 うん。いまのままの環境でもいいし、自然な流れとして転職したり、起業したりしてもいいし、そういう中で自分も含めて一人一人が、素直な正直な想いで楽しく働いていけたらいいなぁって。渋谷区で働いている一人としても。でもしごと課のテーマとしてそれを選んだのはケンタくんに出会ったのも大きいと思うけどね。

――シブヤ大学の活動を通して本業へのスタンスが変わったことはありますか?

堀田 シブヤ大学が仕事の延長でなんとなく続いているって話したのは、シブヤ大学も渋谷も、働いている場所っていう感覚が自分の中で強いのかなと思います。だから自分が気持ちよく働きたいからしごと課をやっているのかなって。たとえば働いている場所が新橋だったら、ここまでシブヤ大学との関わりは続いてないし、しごと課のテーマも活動も続いてないとは思いますね。

――やっぱり本業あっての。

堀田 本業があって、そこから、遠からず地続きになっている感じはありますね。もちろん仕事は仕事、シブヤ大学はシブヤ大学って割り切ってる部分もあるけど。スタンスが変わったかどうかについては、んー。シブヤ大学を通して知り合った人や、さらにその知り合いと実際に会社を通じて仕事をすることがあったりしました。

ケンタ へぇー、そういうことがあるんだね。

堀田 でもそれは、仕事をしましょうっていう意図で出会ったわけじゃなくて。たまたま出会った人と、結果として仕事をお願いしたり、お願いされたりするようになった感じですね。数年続けていると少しずつ実を結んで、仕事として成果になっている。今はそんな感じがしています。

――繋がっていくのはうれしいことですね。

堀田 でも、お金のやりとりを含めて仕事ってなると、それはそれでちゃんと考えなきゃなともなる。急に仕事っぽい上下関係に変わるとか「さん」が「様」になるとかじゃなくて。

ケンタ それはあるかもね。

堀田 たとえば仕事じゃないときに、その人が喜んでくれることがあったとして、仕事をする上で喜んでくれることは、その人の会社とか周りの人との関係もあってちょっと変わったりする可能性があると思っているので。相手がどんなことで喜んでくれるかは、仕事と仕事じゃないときで変わるかも。

――ちなみに、コーティネーターとして授業を考えるときは、どういったことを意識して組み立てていくんですか?

堀田 (シブヤ大学では)どっちかというとみんなが求めているものというより自分が興味あるものが多いかもしれないですね。

――しごと課の授業としてはどんな企画をされてたんですか?

堀田 去年1年間、住んでる場所と働いている場所っていうのに興味があって、いろんな人に話をたくさん聞いて授業をやったんですけど。住んでる場所と働いている場所をみんなどんなふうに考えてるんだろうなって。

[授業の詳しい内容はこちら]

ケンタ 地域っていう意味での場所だよね。

堀田 そうそう。僕もいまの会社を選んだのは、外苑前だからではなくて、たまたまっていう部分が大きいんだけど。予定はまったくないけど(笑)、仮に転職しなきゃいけない状況になったとしたらこの地域から離れるのはちょっと考えちゃうなって。いまは働く場所のことも考えちゃうんですよね。

ケンタ なるほどね。面白い。

堀田 それまでは働く場所から通勤時間で逆算して住む場所を決めるということが多かったと思うんですよね。

ケンタ そうだねぇ。1時間くらいで行きたいなとか、電車1本で行きたいなとかね。

堀田 それでいろんな人に聞いてみたら、自転車通勤じゃないと無理な人もいるし、離れている方がいいっていう人もいる。いろいろだよなぁと思った。授業では3人の方を先生として呼んで、それぞれの考え方を話してもらい、丸一日かけて参加者と一緒に考えたんですね。すごい楽しかった。それが去年の11月です。

――さきほど手応えがあったと言っていた授業のことですね。

堀田 はい。自分の中のそのときの最大テーマをやりきった感がありましたね。授業としても参加してくださった方々からも先生からも反応がよくて、よかったよかったって。