コラム

話したい、けど話せない5


「話したい、けど話せない」では、誰かに話さないと忘れてしまう小さな出来事や、なかなか打ち明けることができない悩みや疑問など、みなさんから集まったメッセージを読み上げながら話しています。

 新年度にも慣れてきた4月2週目の火曜日。第5回の「話したい、けど話せない」を開催しました。

 日本仕事百貨のナカムラケンタと中野頌子、そして一緒に出演したいとメッセージをくれた佐々木理沙さんにも加わってもらい、佐々木さん自身の話したい、けど話せないことを聞かせてもらいました。


ケンタ:今日は来ていただいてありがとうございます。じゃあ早速ですが、佐々木さんが送ってくれたメッセージを読んでみましょうか。

こんにちは。はじめて投稿します。

 私は現在20歳の女子です。昨年3月に体調不良を理由に短大を中退してから、1年が経ちました。今年に入ってから心身ともに不安が軽くなったので、この3ヶ月は自分がどう働いていくかをずっと考え続けています。現在は飲食のアルバイトをしていますが、自分の興味としては深刻にならずに人の相談にのる仕事、自分がおもしろいと思うものや人を繋げる仕事がしてみたいと思っています。分野として興味があるのはデザイン、心理、キャリア支援、食、住まい、地域、場づくりなどとても幅広いのですが、まとめると、生活(とくに食と住、人とのつながり)に関わる仕事で、人のきもちを豊かにしたい。そして、おもしろく働きたい!ということになりそうです。

 また、アルバイト経験などから、自分の得意なこと、好きなことについても考えてみました。
・一つのことに集中する方が得意
・長期的に人と関わってサポートすることが好き
・チームで働くほうが力を発揮できる
・企画を考え実行するのが好き

 こんなことが浮かびました。ここまで分析してみて仕事を調べた結果、気になる会社もいくつか見つけてはいるのですが、会社やサービスの雰囲気に惹かれている部分が大きく、職種としてどう会社に関わりたいかというイメージが掴めずにいます。そもそも今の自分には学歴や経歴、スキルもなく、今後通信制大学などで学びながら進んでいこうと思っているのですが、道が絞れずどう努力したらいいか定まらないのがしんどくなってきました。人に相談すると、まだ若いんだから何にでもなれるよ、なんて言われることもあって。もちろんその言葉も理解できるけど、何かになった人はきっとその時々で目の前の道を突き進んできたんだろうなと思い、余計にひとつ目の道選びに迷ってしまっています。思っていることを吐き出すようなかたちになってしまいましたが、みなさんがこんな状況だったらどうするか、お聞きできたらうれしいです。


ケンタ
:学校ではどんなことを学んでいたんですか?

佐々木:食に関わる仕事をしたいと思って、栄養士になるための短大に行きました。

ケンタ:それから体調が悪くなって、退学されたんですね。

佐々木:そうです。体調のことが一番大きかったんですけど、そもそも栄養の計算をして食のサポートをしたいわけではなかったことに、学んでから気がついて。それで、まずは体調を立て直すことに専念しました。

中野:体調が悪いと、他のこと考える余裕が無くなってしまいますよね。

 私も検査をした時に、自分の体に問題があるってわかったことがあって。その時は精神的にもしんどくなったので、まずは自分の健康と向き合いました。向き合うことで、まず心は立て直せた。だから佐々木さんにとって、学校をやめたことは生きるために必要な手段だったのかなって思います。

 学校に入るには、時間もお金もかかるから、やめるための勇気も必要ですよね。それでも、自分に寄り添った判断ができたのはよかったんじゃないかな。

ケンタ:たしかにね。やめてみて、よかったこともあったんですか。

佐々木:はい!体調が良くなり始めた時に、接客と写真撮影をする短期アルバイトを始めました。それが楽しかったし、働くことに対する漠然とした不安が減った気がして。今はこれからどうやって働こうかなって、あらためて考えているところです。

ケンタ:体調のこともあるだろうから一概には言えないけれど…。もし、僕が佐々木さんと同じ状況になったら、生活するための仕事をしながら、自分がやりたいことを始めると思う。これは、41歳の酸いも甘いも経験したおじさんからの意見だけど(笑)。

たとえば、とあるデザイナーの方の話なんだけど。大学とかでデザインの勉強をしていなかったけど、デザイナーの仕事をしたくて独学で学んだ、っていう人がいて。

周りから見たら、その人のデザインはすごく素晴らしいんですよ。でも本人は、専門的な勉強をしていないことに引け目を感じて、悩んでいるって言ってて。だから、学びの機会を経験しているかどうかって、技術を得るだけじゃないのかもしれない。悩んでしまいそうだったら、もう一度学校にいくって手段もいいんじゃないかなとは思う。

佐々木:もちろん学校にいくって方法もあるけど、お金をどうするかっていうのもあって、働くことを考えてるんですよね。


中野
:私はフリーターの時、休みの日の感覚が学生時代と全然違っていて。学生とか社会人とか、肩書きがないと何もない日が不安なんですよね。

何者かになりたいけど、行動することに自信がなくて動けなかった。そんな時期が3ヶ月くらい続いて、結構しんどかったです。そこから抜け出す何かを見つけたいって思うんですけど…なかなかね。

佐々木:そうですよね。私も、気になる人に話を聞いてみたりはしたんですけど、じゃあどこで働けるんだろうって、すごく悩んで。でも最近は、このしんどかった経験を活かせる仕事できたらいいなって考えています。

ケンタ:しんどい経験。それを活かせる仕事って、具体的にはなんでしょう?

佐々木:もともと栄養士を目指したきっかけも、食を通じて人が関わり合う場所をつくりたいという思いからだったんです。そういう場所づくりができる会社で働けたらいいなと。

ケンタ:人が関わり合う場所って、なんだろう。

中野:イベント業とかですか?

ケンタ:ホテルとか飲食とか病院とかも人と関われる仕事だし…。職人さんのようにモノに向かって黙々と作業する仕事でなければ、人と関わることはできそうですよね。

佐々木:自分が人と関わるのはもちろんなんですけど、人と人をつなげる仕事に興味があるんです。

ケンタ:なるほど、人をつなげる仕事も色々ありますよね。コミュニティスペース、みたいに、いきなり人をつなげるところに行くのもいいけど、どんなことでもいいから、まずは専門的な強みを身につけるのもいいと思う。あとは、働いてみないとわからないからね。

僕も、もともとは建築を勉強してたのに、今は求人の仕事をしている。実際にやってみて、自分に合うかどうかわかることって、たくさんあると思う。華やかな仕事をしてる人も、意外と悩んでいたりすることもあるし。だから、まずは一度働いてみる。その経験を通して、こんな仕事がしたい!ってはっきり見えたら、もう一回挑戦してみるのもいいと思います。

あと魅力的に感じる会社ほど、正規ルートがなかったりするから。失礼のない範囲で、ドアをノックして訪ねて「働きたいです」って話すのもよいかもしれない。

まずアルバイトから、関わってみるのもいいと思います。

佐々木:そうですね。いま気になっている会社がアルバイトの募集もしていたので、思い切って応募してみようかなって思いました。

数年前、将来のことに悩んでいた時。「私はなにもできない」と言っていたら、母に「なにもまだやってないのに、できるわけないじゃん」と言われたことを思い出しました。

とりあえずやってみる。自分でやる。勇気が必要だけど、小さなことからでもはじめてみたら、何か発見があるかもしれません。

佐々木さんがリトルトーキョーに来てくれたように、一緒に話したいと思った方は、お気軽にご連絡ください。

また、メッセージの募集もしています。こちらのフォームからお送りください。

 

 

 

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