コラム

自分の軸が折れるほど
おもしろいほうへ

しあわせな転職ってどんなものだろう?

答えは人それぞれで、きっと正解はありません。

コラム「しあわせな転職」では、日本仕事百貨の記事をきっかけに転職した人たちを紹介していきます。将来的には、コラムの一部をまとめた書籍も出版する予定です。

どんな想いで仕事を選んだのか、その後どんなふうに働いて、生きているのか。それぞれの選択を知ることで、自分にとっての「しあわせな転職」を考えるきっかけになればうれしいです。

UDS株式会社 「NODE GROWTH 湘南台」運営スタッフ 伊藤亮太さん

UDSはまちづくりを軸に、ホテルをはじめ、コワーキングスペースやシェアハウスなど、多様な場を企画・設計/施工・運営している会社。2018年から運営を始めたのが、神奈川・藤沢にある学生寮「NODE GROWTH 湘南台」。全158室に、高校生から大学院生まで集っています。学生主導の定期的なイベントやまちに開かれた食堂など、学生同士や地域との交流を通じて、学生が成長できる新しい形のレジデンスを目指しています。ここで昨年から運営スタッフをしているのが、伊藤亮太さんです。

幼いころからずっとお笑いが好きでした。学校の同級生もお笑い好きが多くて、コミュニティのなかで「面白いこと」は重要だったかもしれないです。そんな環境にいたので、「面白いこと」が自分のなかでずっと一番の評価軸でした。だから将来は、お笑いに携わる何かをするんだろうなと漠然と思ってました。

京都の大学に進学して、なんとなく法学部に入って。勉強は普通にしてましたが、ボランティアとかサークル活動みたいな、就活に必要なスタンプラリー的な活動は何もやれませんでした。気力が湧かなくて。一番仲良かった友達とずっと喋っていただけの大学生活でしたね。

ちょうど大学3年生のときに、コロナ禍になって。社会の混乱につられて自分もいろいろと迷いました。結果、就活ができなかったんですよね。まあ、そもそも会社で働ける自信がなかった。都市部の企業でバリバリ働くのはしんどそうやなって。それだけなんですけどね。

どう生きたら面白い人生になるんやろって、ずっと一人で考えて。結果、田舎やったらなんか楽に暮らせそうやなって、安直な考えにたどり着いてしまった。そんな甘い動機で休学して、島根県の海士町へ行ったんです。

そこで1年間、高校生向けの学習塾でインターンをしました。安直に移住したものの、結果として田舎は自分にとって心地いい場所で。田舎特有のしんどさみたいなものを、僕は感じにくい人間だったみたいです。

恩人にも出会えたんですよ。その人はいろんな面で自分よりも圧倒的に冴えていて。そういう人がいることに衝撃を受けました。それまではずっとお笑い的な面白さで人を見ていたんですけど、考え方の面白さとか、人間としての面白さとか、そういう軸も存在するんやなって気づいて。

インターンがそろそろ終わるってときに、その人が「隣の知夫里島でこういう求人してるよ」って教えてくれて。面白そうだったので応募したら採用していただいて、地域おこし協力隊として学生寮の運営をすることになりました。

島には、僕と同じ境遇で似た悩みを持ってる同世代も多くて、友達もできて。普通に楽しいからしばらくここに住んでようって思ってたんですが、島で恋人に出会って、その人との縁で関東に引っ越すことになりました。その流れで、関東で仕事を探していたときに、この仕事を見つけて、今に至ります。

改めて振り返ると、すごい流されまくってる。僕の意思はどこにあるんだって感じですよね(笑)。強い希望もなく、競争心もなく。でも、面白くありたい、心地よくありたいみたいな欲はあって。そんな調子で生きていたら、なぜかここにいますね。

島時代の恩人や恋人と出会って、いい意味で自分の軸が折られたんです。この人と一緒にいたら面白いほうに転がっていきそうやなって、それが楽しいだけなんですよね。

僕は、しゃべりが1番自分を伝えられると思ってます。日本仕事百貨は、人のしゃべりを見てくれているメディアだなと思って読んでいました。偶然、目に留まったのがNODE GROWTH 湘南台のスタッフ募集。学生寮の運営経験もあるし、人としゃべることは好き。自分が勝手にしてしまうことが、必要とされたらいいなって。

「立場や役目の垣根を超えて、人のつながりをつくれる人、でしょうか。先行きが不透明な世の中で、それがすごく財産になるような気がしていて」

「寮に住む間だけじゃなく、巣立っていった人たちが自主的に交流していたりするのを聞くと、やっていてよかったなって思いますね」

『つながり、学び、育つ 人が巣立つ場をつくり ナナメの関係で伴走する』より

僕の経歴は寄り道がかなり多いので、一般的な企業だとなかなか難しい と思うんです。転職活動をしてるときは、実はかなり落ちました。でも、UDSの面接では経歴だけじゃなくて、人間をちゃんと見てくれてた印象でしたね。

僕は、年齢で人を見るのが好きではなくて。年下でも年上でも、面白い人は面白いので。NODE GROWTH 湘南台にいる学生は面白い人 が多いなと思いますね。

縁もゆかりも無い場所に来た僕に、好奇心を持ってくれる子もいて。会話はなんでもない雑談が大半ですが、「どう生きるか」みたいな抽象的な話もたまにしますね。かと思ったら、マンダロリアンの話とかもする(笑)。会話が全然終わらないときもありますね。昨日も、気がついたら1時間くらい経ってたり。

でも、僕が全員と会話をする必要があるとは思わないです。挨拶はしますけど、ひとりで過ごしたそうな人に無理して話すことはしません。

「コミュニティ」はもちろん大事だと思いますが、1人でいたい人はそれでいいし、つるみたい人はちゃんとつるんでほしい。どちらがいてもいい、そういう環境を自然とつくっていけるようにしたい。

寮生の中に、NC(NODE COORDINATOR)っていう学生リーダーがいるんです。この寮は9年目で、イベントとかミーティングが定期的にあって、NCが中心になって企画運営する。でも、ただ引き継いできたこともたくさんあって。

このミーティングは必要なのか、みたいなときも出てくるので必要なところは自分も意見を言って、寮の文化をみんなで少しずつつくっていこうとしているところです。昨年、入社したばかりなので、寮の中で僕は新人。だからこそ見える視点もあると思います。

僕は、学生を教育したいとかいう気持ちはなくて。それぞれが目の前にいる人やものをただ知って、面白がって、自然と何かを学んでしまうのが理想の形です。僕自身も寮運営をとおして、人間のいろんな面を知ることが楽しいです。

スタッフの仕事の大半は、みんなの生活をちゃんと豊かにすることです。いろいろな依頼に応えたり、備品発注をしたり、設備が劣化してきたら、業者さんに依頼もする。入居、退去の時期だったら部屋の準備もします。入居学生としゃべる時間は、その中で偶然発生するという感じです。だから、学生としゃべる時間は、僕にとってはご褒美みたいなものです。

ゲームで言うと、ランダムイベントが起こり続けて、それをひたすら解決していく感じかもしれない。なんでもやるっていうのは、島でも同じだったので、その経験が役立っていると思います。

ここにあるものを、どうやったら最大限、魅力的にできるかを考えています。なるべく沢山の仕掛けをつくって、それをきっかけに、偶然にここにいる人の人生が面白くなるといいなと思います。また、そういう偶然が伝播して、まちや社会が結果的に面白くなればいいなと。それぐらい偶然に委ねるほうが、最終的にいいものが生まれると僕は思っています。

そんないい偶然がたくさん生まれるように、挨拶をする、空間をきれいに使う、相手の話を途中で切らない、無理に合わせないけど拒絶もしないみたいな、普通のことを思いやり持って、ちゃんとやっていきたいですね。

2026年4月17日 神奈川・藤沢 NODE GROWTH 湘南台にて
聞き手 大津恵理子

NODE GROWTH 湘南台では、学生寮運営スタッフを募集しています。よろしければ、あわせてご覧ください。
「将来振り返って ここにいたことが よかったと思える学生寮」