これはしごとゼミ「オンライン仕事百貨の編集ゼミ」に参加された、八名彩香さんによる卒業制作コラムになります。
八名さんがオンライン上でインタビューしたのは、同じく参加者の渡部美帆さん。「好きな食べ物」というテーマで話してもらいました。

ワタナベさんが好きな食べ物はチョコレート。
「小さい頃、食べるものに親が厳しかったんですよ」
「家にそもそもあまりお菓子がなくて。昆布とか食べさせられてたりとか」
「コーラも初めて飲んだのが高校の文化祭。みんなで準備しているときに置いてあって。これ、飲むチャンスじゃない?と思って」
家ではあくまでお菓子禁止。チョコ好きだったお父さんも、子どもに見えないように遠慮がちに食べていた。
そんななか、お菓子を堂々と食べられる数少ないチャンスのひとつが、おばあちゃんの家。
「母方の祖母の家は、家族経営の農家で、母がよく手伝いに帰っていて。小学校中学年までは近所だったので、休日は私もよく付いていきました」
ご近所の人もよくに遊びに来る家で、いつもお茶菓子が準備されていた。
「畳の客間に、6人くらい座れる大きな木の座卓があって。その真ん中にいつも、ドンっとお菓子が盛ってあるんです」
どうしても目に入るし、何よりお婆ちゃんがお菓子を勧めてくれる。お母さんもこのときばかりは黙認。
用事が終わるのを待つ間、ここぞとばかりに楽しんで食べた。
「色んな種類があったけど、いつも置いてある定番はツートンの一口チョコ。エンゼルチョコパイは、あるとテンション上がりましたね!あの銀色の包み紙が見えると、やった!って」
お菓子は外で食ベるもの。でも、家でチョコを気兼ねなく食べられる日が、年に2回あった。
「お誕生日とクリスマスに、母がチョコレートケーキを買ってきてくれたんです。自分は食べないのに、私と父が好きだからって」
上には大好きなトトロの絵が描いてあった。
父がチョコ好きだと知ったのはこのとき。
いつもなら、家で一緒にお菓子を食べるなんて考えられない。でもこのチョコケーキだけは、父と分け合って一緒に食べた。

「2人しか食べないから、12センチくらいで小ぶりなんです。でも、トトロにチョコ!特別な感じで、すごく嬉しかったですね」
(聞き手・書き手:八名彩香、話し手:渡部美帆)

仕事百貨の編集ゼミは、伝えるよりも伝わることを大切にしながら文章を書いていくためのゼミです。オンラインで開催しているので、どこからでも受講することができます。
次回は「文章で生きるゼミ」として、年明けの1月からオンラインで開催します。申し込みは2021年12月20日(月)まで。興味のある方は、こちらから詳細をご覧ください。