
「取材の寄り道」は、日本仕事百貨のメールマガジンで連載しているコラムのひとつ。2018年春からはじまり、日本のさまざまな場所へ取材に赴く編集者たちが、何気ないできごとを綴ってきました。その一部をこちらでご紹介します。
先日、取材で千葉に行ったときのこと。
たくさんお話を聞き、あとは帰るだけ、と思ったところで目の前に現れたのが、一軒の喫茶店。
そこはおばあちゃん一人で切り盛りしているような、いわゆる昔ながらの喫茶店。カランコロンとドアを開けると、お客さんは誰もおらず、カウンターで週刊誌を読むおばあちゃんの姿。
「こんにちは。何にします?」と言われて渡されたメニュー。注文を考えるふりをしながら、実は外に出ていた看板を見たときから心に決めていたことが。
「クリームソーダ飲みたい…!」
わかるでしょうかこの気持ち。しゅわしゅわとした鮮やかな緑に浮かぶ、真っ白なバニラアイス。看板の文字を見た瞬間に浮かんできたその姿に、心奪われた自分がいました。
思い返してみると、小さい頃の自分にとって、クリームソーダは“夢の一杯”のようなもの。
たまに遠出した先のレストランや喫茶店で、顔を伺いながら頼んでみる。ちょっと特別でワクワク、そんなノスタルジーな感覚が湧き上がってくる。
メロンソーダを一口飲み、その次にアイスをパクリ。
思いっきり体に悪そうな色をしているクリームソーダをいただきながら、思いっきり悪いことをしているようなドキドキ感を味わう。
幸せの極みを感じ、少しだけ子ども時代を思い出す。そんな寄り道なのでした。
(2019/05/29配信メールマガジンより 稲本琢仙)
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