コミュニティをつくるヒト3-2

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当時、24歳だった4人の若者が立ち上げたバックパッカーズジャパン。現在では、下町情緒溢れる古民家を改装した「toco.」と6階建てのビルを丸ごと使った「Nui.」という個性的な2つのゲストハウスを運営。バーラウンジを併設した独自のスタイルで、さまざまな人々が行き交う新たなコミュニティを生み出しています。その代表を務めるのが、今回お話を伺った本間貴裕さん。今回は立ち上げ当初からのメンバーでCIO情報責任者でもある石崎嵩人さんにもご参加いただき、心地よい風の吹く、開放的なNui.のラウンジにおじゃましてきました。

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toco.

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――足で稼いだ経験を踏まえて、一つの結論も出て、実際に宿づくりがスタートしたんですね。

本間 そうですそうです。旅から帰ってきて、「さぁ物件探そう」って言った2週間後に。

ケンタ 早いですね(笑)。

本間 全部の条件ドンピシャの物件があったんですよ。それが「toco.」なんですけど。成田・羽田から近くて、駅まで徒歩7分圏内の案件で探してたんですけど、徒歩2分ぐらいで行けて日本家屋で、っていうのでバチーンときて。そのまま物件借りて、改装工事に入って。海外組の2人は改装工事の途中で合流したんです。海外組にはYOUTUBEで動画送ったりして、帰国を待たずに決めてしまいました。

石崎 写真送ったりね。で、僕らももうここしかない、「もうここ!」みたいな。

ケンタ 直感だったわけですね。条件もクリアしてるけど、さらにピンとくるみたいな。改装自体は自分たちでやったんですか?

石崎 大工さんたちと一緒にですね。

本間 専門的なところもあって、基礎からいじらないといけない部分もあったので。お願いした大工さんがツリーハウスをつくっていたトモさんっていう方なんですけど。

――はじめからその方に、と思っていたんですか?

本間 僕らもはじめてだったので、いろんな業者に見てもらったんですけど、トモさんは来ていきなり地下に潜ったり、業者の人が絶対に嫌がって登らなかった屋根も、「こんなん大丈夫」って言って上っていろんなところを調べてくれて。最初からぜんぜん違った。それで「俺がめちゃくちゃカッコよくしてやるけど、すんげぇ金かかるから、お前らめちゃくちゃ金集めて来い」って言われて。

(一同、笑)

本間 そんなこと言う業者がいなかったので、もうこの人だって思いましたね。

――改装作業は順調に?

石崎 掃除をはじめたのが(2010年の)6月で、本格的に大工さんを入れて、工事がはじまったのが7月。

本間 そんなとき、8月の中旬に棟梁のトモさんが亡くなってしまって。まだ32歳で、目がすごく綺麗で、めちゃくちゃ面白い人で。工事の手伝いで来た大学生とかに、「ぜんぜんお前の魂の声が聴こえねえ!」「お前、本気で生きてんのか」みたいなことをはじめて会った人にも胸ぐら掴んでパシって言うような人だったんですけど。

――工事がはじまって1ヶ月で棟梁不在に……。

本間 さぁどうしようってなったときに、トモさんと一緒に手伝ってくれてたナベさんっていう大工さんが棟梁を名乗り出てくれて、そこからたぶん一気に流れが加速したんですよね。うちらもスタッフも、トモさんの最後の作品なんだったら絶対潰すわけにはいかないし、「あいつの遺作なら」ってトモさんの縁でいろんな人が応援してくれるようにもなって。スタッフもエンジンかかりました。ナベさんはNui.の棟梁もやってくれたり、いまでもすごくお世話になっています。

――そうだったんですね。

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本間 しかも、実は、toco.に「バーをつくろう」って言ったのはトモさんだったんですよ。僕らはもともとバーはつくらない方針だったんですけど、「絶対バーだ!」って言ってきかなくて。その議論の最中に亡くなっちゃったんで、もうこっちとしては、やるしかないじゃんみたいな。でもいまとなれば、バーがなかったら、僕らのこのスタイルはなかったんですよね。

ケンタ バーがないっていうのは信じられないですね。

本間 なかったらもうありえないですね。バックパッカーズジャパンじゃなくなっちゃう。

ケンタ どうしてそのときはバーはナシだと思ったんですか?

本間 僕とイッシーで、日本を回っているときにも、カフェ・バーとゲストハウスとっていう組み合わせも見かけました。みんな考えるんですよ。でも、成功しているところが、本当になかったと言っても過言ではないくらい。

石崎 お客さんをどこまで外に開くかっていうのも、まず難しいところがあって。たとえば、宿泊客が中でカップラーメンを食べている所で、外のお客さんがご飯食べたりお酒を飲んだりはどうなんだっていう問題や、逆に外からの人がいると宿泊の人が入りづらいというのもあったりして。飲食スペースをつくるぐらいなら、その分(宿泊用の)ベッドをつくった方がちゃんと回るよっていうのもあって。まぁそうだなと。

本間 リスクを取ることないよ、と。

石崎 飲食をやったら在庫を抱えないといけないし。でも宿泊って上限が決まっちゃうから、回転しない。だからベッド数を多くして、どれだけ人を入れるかなので。だったら、ベッド増やした方が収益的にはいいよね、っていう話になったんですけど。

ケンタ 旅人の感覚でいうと、「どこに泊まるか」を考えるとき、そこで絶対出会いがある必要はないけれど、夜に行けるような場所があるっていうのはすごく刺さるんですよね。そもそも旅人って寂しいじゃないですか。

本間 わかります。

ケンタ たしかに、本屋とかいろいろ入ってるような複合的施設で、カフェもほしいじゃんみたいな感覚でつくられるとね。それでうまくいったカフェはないと思うんですよね。中途半端になっちゃうから。

石崎 それは思いますよね、僕らがやるときも、バーとしてちゃんと人が来るくらいのレベルでものを出していないと意味がないとは思っていました。

本間 それがちょうど2軒、(toco.では)両隣で借りれたので、うまくいった。本当にたまたまそういうのが重なって、それこそ流れじゃないですけど。

――toco.を無事にオープンされて、順調なスタートを切って、Nui.へと動き出したのはいつ頃なんですか?

本間 次に向けて本格的に動いたのは、2011年の12月くらいかな。そこから1ヶ月半後くらいの1月にここ(Nui.)を見つけて。最終的には物件情報サイトで見つけたんですけど。

――そうなんですね(笑)。

本間 960平方メートルで一棟貸しっていうのがあって、(棟梁の)ナベさんと一緒にさっそく内見に行って。バーってシャッター開いた瞬間に、ナベさんと顔合わせて、ニヤって笑って、「ナベさん、これできますか?」って。本当に一目惚れで。

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Nui.

――toco.が古民家風なのに対して、まったく違う雰囲気ですよね。

本間 たぶんですけど、僕の中に「驚かせたい」っていうのが常々あって。古民家の次に古民家、古民家っていうのでは面白くないって思っていて。それと、古民家だと経営的な面でも収容人数があんまりいかないので、このままいくと発展していかないっていうのもあって。

――Nui.の収容人数は何人なんですか?

本間 100人です。

ケンタ たしかに、一カ所にかかる固定費はあんまり変わんないけど、ある程度部屋を増やせば数字も自然とついてくる。もちろんその分のリスクもあるけれど、面白みというか、挑戦しがいのあるものにはなるでしょうね。

本間 そこもね、反対があったり、賛成があったり。イッシーはずっと反対でした。

(一同、笑)

ケンタ それはどうして?

石崎 挑戦しすぎ。

ケンタ あーわかるわかる!

石崎 でかくやりすぎ、というかもうちょっと4分の3くらいのところを狙っていって…。

――そうですよね。着実に(笑)。

石崎 お金を引っ張ってくるのもそんなに大きいお金を集めたこともないし、スタッフだって僕ら4人でやっていたところをもっと何人も入れないといけないし、そうすると内部的な摩擦だって起きるし、ソフト面もハード面も想像以上のところにいきすぎてるから。

ケンタ まっとう(笑)! 本当にそう思う。

本間 最終的にはね、僕以外全員が反対のときもあったり(笑)。

石崎 金額的にも想像以上に飛び越えてるわけだし、そういう中の不安がすごくあったから。

本間 でもその不安は、結局全部当たってたよね。いろんなところでホップ・ステップの「ステップ」を抜かしてジャンプしているんで、その分の負荷は間違いなくかかった。でも、それに対して僕が言っていたのは、「負荷は絶対かかるけど、ジャンプして第一関節ぐらいギリギリでつかむから、あとは上れる」と。

石崎 結果的にできたはできたんです。あとここからはどうやってやるか、僕ら側の話になってくから。半年経ってようやく落ち着いてきたんですけど。つくるプロジェクトと、続けるのとでは、また流れが違うから。人の役割も違うし。もうあとはつくった責任があるから、新しい矢印をつくっていかないと。

――なるほどなるほど。

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