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自然のなかにつくる
自然に触れる庭

永楽屋gardenのガーデナー募集をするため、代表の岡田さんと連絡をとっていると、こんな知らせが届きました。

「この時期は冬と春を行ったり来たりして、どんどん冬からフェードアウトしていくのですが、その期間が長いのが軽井沢の早春です。とはいえ、真っ先に咲くオオイヌノフグリの青花、パラボナアンテナのような福寿草やマンサクの黄色い花が咲いていて、日に日に春の気配を感じられるようになってきました」

「取材日当日も、厳しい冬とほっと心和らぐ早春を感じていただければと思っております」

永楽屋gardenは、長野・軽井沢を中心に庭づくりをしている3人のチーム。

その土地で生きる植物や景観を活かしながら、自然の森にいるような庭をつくりだしています。

大切にしているのは、人がより自然に触れることのできる空間づくり。

今回はガーデナーとして働く人を募集することになりました。加えて、メンテナンスを担うアルバイトスタッフも探しています。

経験は問いません。大切なのは、熱意をもって努力できること。

植物を愛でることができる人、想像力を働かせることのできる人に似合う仕事だと思います。

  
東京から軽井沢へは新幹線で1時間ほど。駅を降りると、ひんやりとした空気に包まれる。

代表の岡田さんが、改札の前で出迎えてくれた。

車に乗って、今つくっているという庭に向かう。

庭づくりの仕事をする前は、金属の研究を仕事にしていたそう。実家の建て替えを機に庭づくりに関心を持ち、10年前から軽井沢でガーデナーとして働いている。

「都会で植栽の仕事をしていた時期もありました。でも僕は自然のなかで自然なものづくりをしたくて。気候やお客さんとの関わり方も含めて、軽井沢には自然な庭づくりのできる環境があるんですよ」

10分ほどで到着したのは、5年前から関わっているという別荘の庭。

芝が覆うひらけた空間もあれば、苔や低い草が生え落ち着いた雰囲気の場所、背の高い木が佇んでいるところもある。

耳をすますと鳥の鳴く声や、風のそよぐ音が聴こえてくる。

冬の終わりという時期もあって少しさびしく見える庭も、よく見ると小さな緑が芽吹いていることに気づく。

「この別荘を建てるときに、クローバーの種を撒いたみたいで。クローバーって放っておくと背が伸びるんです。お客さんも手がつけられなくなって、ここに来ても春から秋は外に出たくないってくらいに困って、僕に連絡をもらいました」

お客さんと話をしながら、庭のコンセプトや植える植物を決めていく。その後は土を掘り返して、もともと生えていた植物の種や根を抜き取る作業をしていくそう。

「つくった庭が元に戻ったら意味がないですし、土は植物の住処ですからね。まずは土を整えるところからはじめます。そのあとにいろいろな植物の種や苗を植えて、次第にそれらが土を覆っていく。5年か6年くらいすると、ようやく成熟した庭になってきます」

丁寧に施工してメンテナンスを繰り返すから、お客さんとも長い付き合いが続いていく。

あたらしく施工できるのは年に2、3件の庭なんだそう。

「言われるままに早くつくることもできます。そうすると、今そこに居る大切な植物のことも、土地の環境も特徴もわからない。四季の変化も見ないことには、まわりの借景を活かすこともむずかしい。僕らは森の景色に溶け込むように庭をつくりたいんです」

定期的に庭を訪れ、作業しながらその土地と周りの景色を観察する。

たとえば庭の入り口にある傾斜部分は、1年を通して日当たりがよく、土が乾きやすいことがわかった。

その環境を活かすために石を多く置き、植物好きな奥さんに楽しんでもらえるよう、標高の高い山に育つ植物を植えた。育ちやすくなるよう、土全体に軽石を混ぜ水はけを良くしているそうだ。

「周りの景色を見て、そこにあったものを連れてくる。連れてくる前に、それらが育つ環境を整えてあげる。せっかく連れてきても、枯れてしまっては意味がないですからね」

「足元にセツブンソウの小さな花が咲いているんですけど、わかります?」

てっきりなにも生えていないと思っていた土の上をよく見ると、小さな花が咲いていることに気がついた。

「これは僕が好きな花なんです。もちろんお客さんの話を聞いて連れてくる植物を決めるんですけど、気候に合う植物、見てほしい植物もたくさんいてこちらからお勧めすることも多いんです」

「可憐」という言葉が似合う小さな花。

あまり見かけない花だけれど、本来は関東より西の地域で広く分布する日本原産の植物なんだそう。

盗掘や開発の影響で自生できる土地が減ってしまい、今では希少な植物となっているとのこと。

「僕たちのつくる庭には、少しでもそういう植物を持ってきて生かしてあげたい。残しておきたい自然を庭のなかで大切に育てて、守ってもらいたいんです」

永楽屋garden のつくる庭には、細かな歩道がいくつも設置されている。

ただ外から眺めるだけでなく、庭のなかを歩いて、いろいろな植物に触れてほしいという想いがあるそうだ。

「この庭だけでも100種類以上の植物がいます。上から見たり裏から触ったりすることで、はじめて庭のおもしろみが感じられる。そのほうが庭ってぜったい楽しいんです」

「せっかく庭をつくるって決めたなら、庭を見て、入って、触れてもらいたい。そこから植物がいることの大切さとか、木があることの素晴らしさとか、そういうことを実感してもらえたらって思うんです」

見て、歩いて、楽しい庭をつくる。

お手本にするのは、周りにある自然の森なんだそう。

「自然がつくる景色って、僕らでは想像できない組み合わせが美しかったりするんです。美しいもの、心地よいと感じることを切り取って庭で表現しています」

「たとえば全部高い木を植えたら、下に空間が空いちゃうじゃないですか。そういうときは、窓から葉っぱが見える低い木を連れてきたり。手前に黄色く紅葉する木があるなら、奥は赤くしようとか」

「高さ、色、大きさがいろいろあることで、美しくておもしろい庭の景観ができていくんです」

庭へ通い、草をとりながら土地を観察する。過ごしやすい場所や、心地よいと感じる歩き方を考える。

それを何度も繰り返すなかで、庭ができていく。

その過程で、お客さんと何気ない会話を交わすことも、いい庭をつくるために欠かせないことだという。

「ふだんどこに座って、どんなふうに庭を眺めるのか。リラックスできる空間も人によって違いますからね」

「僕らはガーデンデザイナーで、アーティストに近い感覚もあります。いい庭をつくるためには泥臭い作業も含めていろんな経験をして、さまざまなものを観察することが大切です」

春から秋にかけては庭の施工やメンテナンス。冬の時期は図面を引いたり、記録をまとめたりする仕事が多いそう。

コンセプトから細かな図面まで、1つの庭をつくるための記録は分厚いファイルにまとめられている。

「庭工事では毎日の作業記録をつけます。なにをしたのか、ビフォーとアフターの写真を撮って、冬の時期にまとめて報告する。お客さんって四六時中作業を見ているわけではないので、なにをしているのか知ってほしいと思って」

「そこまで緻密にやるの?ってびっくりされることもあります。性格というか、前が研究職だったこともあって、僕にとってはふつうのことなんですけどね。今ではそれがうちの特徴のひとつにもなっていると思います」

そんな岡田さんと一緒に働いているのは、前回日本仕事百貨で紹介した記事を読んで入社した2人。そのうち1名が東京に戻ることになり、あたらしい仲間を募集することになった。

今回入社する人が一緒に働くことになるのが富田さん。ここに来て、ちょうど1年が経つそうだ。

「小さいころから虫の図鑑をよく読んでいました。自然に関わる仕事がしたいと思って、ここに来る前は、培養土をつくる会社で商品開発をしていました」

人見知りだという富田さん。少し照れながらも、話を続けてくれる。

「土を工場でつくっていても、お客さんのところでどう使われているのか実感がわかなくて。もっと自然に近いところで働きたいと思っていたとき、ここの求人を見つけました」

軽井沢に縁もなければ、外で働く経験があったわけでもない。

小さなチームで働くことに、不安はなかったのだろうか。

「面接で岡田さんに会って、図面や設計をかなり緻密にやっているという話を聞きました。1つひとつに理由があるなら、信頼できるような気がしたんです」

最初の仕事は苗の手入れをすること。その後はひたすら、草とりをしていた時期もあったそう。

「植物のことがわからないので、草とりをしながら覚えていきました。少しずつ、どれを抜けばいいのかわかってきて。植物のことを知るための目を養う1年だったと思います」

炎天下の中、ひたすら外で作業するのが大変だったと振り返る。土をふるう作業や、施工がはじまってからの現場監督のような役割も、いちから覚えてきた。

冬になり、今は次につくる庭の設計にも関わっている。

「お客さまや岡田さんと一緒にコンセプトを決めて、具体的なことを考えているところです。言われたことを描くというよりは、お客さんの居心地や視点を想像しながら自分でもアイディアを出してつくっています」

そう言いながら見せてくれたのは、庭を横から見たイメージ図。

お客さんとどんな庭をつくっていくか、お互いの頭のなかのイメージを共有するために描いたもの。

もともと趣味で絵を描いていたものの、仕事のなかで伝えるためのツールとして使うのはとても新鮮だったそう。

イメージを描いたり図面を引いたりすることも、最初からできなくても大丈夫。岡田さんや富田さんに教えてもらったり役割分担をしながら、少しずつできるようになればいい。

「たくさんの植物を覚えたり、地道に草とりをしたり。職人さんと一緒に現場をつくるので、デザインだけすればいいわけでもなくて。総合的に考えること、いろいろなことに対する気配りが必要な仕事だと思っています」

地道な仕事と想像する仕事を行き来する。そのなかでも富田さんが好きなのは、黙々と自然と向き合う時間なんだそう。

「やっぱり軽井沢は気持ちのいいところで。作業していてふと周りを見ると紅葉がきれいだったり、リスやニホンザルなどの野生の動物たちに出会うこともあります。こういう環境で働けるのは、私にとってはすごくうれしいことだなって思っています」

自然のなかで、自然に触れる庭をつくる。

日々の仕事は体力を使い、地道なことが多くなります。植物や空間について学ぶ努力も必要です。

それでも植物を愛でながら働きたい。そう思える人からのご連絡、お待ちしています。

(2019/3/15 取材 中嶋希実)

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