ゐ処のできるまで
2022/5/23
5月23日 月曜日
最近はもう、夜となく昼となくゐ処のことばかりが考え巡って、熱くなった頭で肉が焼けそうだ。

「店をやるんです」と言葉に出して言えるようになった秋頃から、周りの人たちに様々なアドバイスをもらう。
正月に出稼ぎに行った旅館の若旦那には、ゐ処は週3日営業し、別の仕事もしていきたいと話したら、商売を始める覚悟がないと喝を入れられた。
こちらの主張もあったけど、その夜はうまく言葉にできずに終わり、しょっぱい涙が出たなあ。

その、ゐ処を週に3日しか営業しないというのは、これまで色んな職場を流れ歩いた中で感じたことが訳にある。
とあるレストランでは、ゆっくり長居しているお客さんをスタッフが見て、「ちっ、追加のドリンクすら頼まないでよう」なんて言っているのをよく聞いた。確かになあというところだけど、そう思わないといけないってしんどそう。
自分が店をやる時には、力まず小さく、稼ぎ口を一つに絞らずに持とうと思ったのだった。

ゐ処ができる滋賀には、山があって、川が流れ、他と同じようでまるで違う風景がある。そこに暮している人達も、一人ひとり、どんな人なのかもよく知らない。
ただ、今やれることは、蛇口から出る山の水の味を知ったり、道で会った人と立ち話をしたり、なんでもないようなことを積み上げていくところからかなあと思っている。
この間は、銀行に口座をつくりに行ったら、窓口のお姉さんに「南極料理人をされていたとかですよね?」と言われ「いえ、無人島です」と伝えたものの、噂の広がりようにぶったまげた。
それはともかく、楽しみにしてくれている人が目の前に居ることが分かったので、また明日からもがんばろうと思う。
『ゐ処のできるまで』は、日本仕事百貨のメールマガジンで紹介してきた『山のサハラさん』シリーズの続編。全国を旅するように働いてきた店主の佐原さんが、滋賀・永源寺で飯屋を構えるまでの日常を綴った日記です。