ゐ処のできるまで
2022/9/5
9月5日 月曜日
オープンまで1ヶ月を切った。まだなんだか信じられないけれど、店をはじめるんだ。
ゐ処にはこれまで、左官職人さん、建具屋さん、電気屋さん、瓦屋さん、庭師さん・・と、様々な職人さんが工事や手入れに来てくれた。
暗がりに明かりが灯る。庭にはいい風が抜けるようなり、これからお客さんが集ってくれるだろうカウンター席が配された。

振り返れば、今日自分が滋賀に居て、店を開業するとなるまでには、目に見える力添えをしてくれた人達以外にも、ちょっと変わった形で後押ししてくれた人達が居る。
その中の一人を、今でもふと思い出す。
およそ3年前、東京町田の職業訓練校に通うため、近くのコンビニにバイトの面接へ行った時のこと。
そこのオーナーがざっと履歴書を読み、いつか商売がしたくて、職業訓練校もその為に通うと言うわたしをじーと見ると、こんなことを言い始めた。
「もう、やりたいことがあるんだったら早くやりなよ」
「俺も28歳まで大学の商学部に行ってたけど、高卒で早くから商売を始めた人には敵わないし、教壇に立ってる教授からじゃ現場のことといったら何も教わることが無いわけ。こんなとこ、わざわざ満員電車に乗って来なくていいし、山が好きなら、山の上で勉強すればいい。それに、あなたは街ではいい人にも出会えないと思うよ」
そうして、はいよと履歴書を返されたのだ。

初めて会った人にそんなことを言われて驚くのと同時に、勝手に涙がポロポロこぼれ、おかげさんで山小屋へ出戻ることになったのだった。
その人に、その時会っていなかったら、コラムも書けていないだろうし、夫のつるちゃんにも出会っていないだろう。そうなると、ゐ処だってどうなっていたか分からない。
ちなみにあの時、その人に名前を尋ねるも、山で熊に遭った時にでも思い出してもらえれば、と言われた。(そうゆうTVで観るような台詞、生で初めて聞いた)
いつかコンビニの熊さんに、お礼を言いに行こうと思っている。

『ゐ処のできるまで』は、日本仕事百貨のメールマガジンで紹介してきた『山のサハラさん』シリーズの続編。全国を旅するように働いてきた店主の佐原さんが、滋賀・永源寺で飯屋を構えるまでの日常を綴った日記です。