ゐ処をひらく
2022/12/19
12月19日 月曜日
年の暮れ、毎年経験しているはずの冬の寒さにはまだ慣れずにいる。
日は短いし、風が強い日には、築300年超えの古民家のゐ処ではどこからともなく隙間風がヒューと入っては抜けてゆく。

けれどこの季節、悪いことばかりではないと思えてきた。それは、自分の身体が活発モードから冬眠モードに切り替わったような感覚から。
開業してからの3ヶ月、いつ何時も頭を働かせ動き回っていたところから、「ま、とりあえず座りましょうか」とカウンターの中に椅子を出してよく座るようになった。おそらく、ゆとりが生まれたのだと思う。
時間にも気持ちにも余裕がないと、熱い珈琲すら飲んでられないたちだけども、この頃は「あの本読み返したいな」とか「あの人のところへ訪ねに行きたいな」などと思いつくようになった。

お客さんからそれぞれに頂いたり貸してもらったものもある。おすすめのプレイリストを焼いてくれたCDに、手作りのハーブソルト、絵本、小説、漫画、酒と色々だ。
酒はすぐに頂いたが、音楽や本というものは、ある程度自分の中に余白がないと密に入り込んでこないような気がして、ずっと大事にしまっていた。
それらを今日、ようやく聴いたり読んでみたりしたのだけれど、なんだか、じわ〜とあったまった。それに、窓を閉めきっていた部屋に新鮮な空気が入ったような気持ちにも。
寒いの嫌だなあと思い始めていたところだったので、尚更に有り難い。

冬は冬で、春夏秋とは物事の感じ方も異なるだろうし、ゐ処で迎える初めての冬でもある。
これまで居た環境や近くに居てくれる人、季節の違いを愉しみながら過ごせたらいいよなと思う。
『ゐ処をひらく』は、日本仕事百貨のメールマガジンで紹介してきた『山のサハラさん』シリーズの続編。全国を旅するように働いてきた店主の佐原さんが、滋賀・永源寺で開業した飯屋『ゐ処』の日常を綴った日記です。