ゐ処をひらく
2023/1/9

1月9日 月曜日

年が明けた実感があまり無いまま、またいつもと変わらず店を開けた。

そんな新年初日、わたしと同じ女子美術大学の附属高校を卒業していて今はドイツの美大で学んでいる人、飲食業などを経てアイスランドの美大で学んでいた人、なんとも面白い二人が訪れてくれた。

母校が同じでないと話せない話題が出たりして、うわ懐かしいと思いながら自然とその頃を振り返る。

高校一年の時の担任は、珍しく同じ苗字の人だった。なので尚更よく覚えている。

まだ入学したての頃、何かの宿題で作文を書いたら、先生がコメントを添えて返してくれた。

「美術に囚われないように、これから様々なものに触れていってください。きっとそれら一つひとつが、佐原さんの表現を形づくるでしょう」

絵の具や筆も買い揃え、さあ絵をたくさん描くぞと思っていたところにそんなメッセージ。

「へえ、美術の先生なのにな、変わってる」なんて思ったりした。

けれどなんとなくその先生の言葉を留めながら過ごした結果、美大進学を辞めて、アウトドア専門学校へ進むことになる。

高校では、授業で美術やデザインの技術的なことは学べたけれど、人間としての幅や厚みを重ねるには足らなかった。

高校三年になった頃には、そんな自分の内面とスキルとのギャップにモヤモヤする日々を送り、それも進路を変えた理由だ。

ところがその後も、幾度と進路や環境を変えて滋賀で飯屋を開くことになろうとは、高校生だった自分は想像もしていない。

高校で学んだことからは、外面的には大分離れてしまったかもしれない。しかしようやく内面的に結ばれつつあるように感じる。

同じ高校だったのに、言葉を交わしたこともなかった母校の同じ彼女と、アイスランドから帰国した彼女。その二人とゐ処で会えた事実が、明らかにしてくれたように思える。

この先もおいそれとはいかないだろうけれど、しばらく今居る道を真っ直ぐ行ってみようと思う。

佐原 真理子ゐ処 Instagram

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『ゐ処をひらく』は、日本仕事百貨のメールマガジンで紹介してきた『山のサハラさん』シリーズの続編。全国を旅するように働いてきた店主の佐原さんが、滋賀・永源寺で開業した飯屋『ゐ処』の日常を綴った日記です。