ゐ処をひらく
2023/2/20
2月20日 月曜日
ここのところ寒さに混じって、むわっと春の匂いがするようになった。いつも通りの日が連なっているようで、毎日何かしらは変わっているみたい。
そんな日々の中、自分は殆どの時間を、ゐ処のカウンターの中で過ごしている。なのでもっぱらその範囲での行動に終始するのだけれど、案外これが飽きずに済んでいる。
カウンターの中というのは、小さな空間なようでいて、そこに居ると様々な場面に出くわしたり、ささやかな発見があったりする。それが、日常の妙な楽しみとなっている。

思い返せば、学生の時の大勢の家飲み会。時折ワイワイしている輪を出ては、台所で皿洗いをしたりするのが心地良かった。そこから酔っ払った皆の様子を眺めたり、皿洗いに加勢してくれる数人とボソボソ話をするのがまたいい時間で。
その場の中心に身を置くよりも、外れに在る素朴な場へ。それが今となっては、カウンターの中というわけだ。

長いこと居ても苦痛ではないのだから、カウンターの中に居るようなポジションが、元から性に合っていたのだろう。飯屋でいこうと思ったのも、厨房には無理なく居られることに山小屋で小屋番をしていた頃に気付いたから。
生業は一日の大半を占めるのだから、いくらやりたいと思う仕事であってもエネルギーがすごく必要になってしまうことだと自分の身が持たない。
そんな些細な向き不向きが、結局は要となるようだ。

そうして、今日もカウンターの中に立つ。
カウンターの外からの眺めもたまに気になるけれど、やっぱり中が自分には程よい。
『ゐ処をひらく』は、日本仕事百貨のメールマガジンで紹介してきた『山のサハラさん』シリーズの続編。全国を旅するように働いてきた店主の佐原さんが、滋賀・永源寺で開業した飯屋『ゐ処』の日常を綴った日記です。