
昨年に引き続き、今年度も佐賀県の地域おこし協力隊を特集します。
いま、全国では8000人を超える協力隊が活動しています。そのうち佐賀県内の隊員数は、令和8年7月時点で53名。この数は決して多くはありません。
けれども一つひとつの取り組みを見ていくと、その土地に根ざした魅力的な活動をしている人たちの姿が見えてきます。
たとえば、地域の“やりたい”を集めるカフェを運営する「コミュニティ焙煎士」、朝市に集まるお客さんと出店者との橋渡しをする「イカす!呼子んウォーカー」、高校生と地域をつなぐ「まちの放送局ディレクター」、棚田の魅力を伝える「棚田のおむすびさん 朝ごはんコーディネーター」など。

課題だった定住率も、近年では9%アップし、68.3%(全国27位)まで上がってきました。
そうした変化の一翼を担ってきたのが、佐賀県地域おこし協力隊ネットワーク、通称SCN。元協力隊の3名が中心となって立ち上げた一般社団法人です。
昨年の特集では、過去を踏まえてどのように佐賀県の協力隊の受け入れ体制が変わってきたのか、元協力隊としての実体験も交えながら語ってもらいました。
▼昨年の特集ページはこちらから
今年度の特集のテーマは「失敗」です。
協力隊における失敗とは何でしょう。地域の人や行政の担当者と意見が合わず、ぶつかってしまった。活動を通じて、成果らしきものを形に残せなかった。起業プランを立てて実践したものの、ことごとくうまくいかない。
人によって、さまざまな失敗の捉え方があると思います。
誰だってきっと、失敗したいとは思いません。自分はこの選択をしてよかったと思いたいはず。
とはいえ仕事も住まいも、何もかもが新しい環境でチャレンジするなら、失敗はつきものです。はたからどれだけ成功しているように見える人にも、さまざまな失敗をして、軌道修正を重ねた先に今があります。
一歩踏みだす人に必要なのは、失敗しないことではなく、失敗してもまた立ち上がれる環境なのかもしれません。

佐賀は、県として地域おこし協力隊をサポートする環境が整っています。
たとえば年4回の研修会。SCNと連携して、企画書の書き方や情報発信の仕方などといった実践的な内容の研修を行います。さらに研修のなかでは、隊員同士の活動事例の共有や意見交換、ざっくばらんに話せる座談会なども企画されています。
研修自体は全国的に行われているものですが、着任年次ごとに対象者が分かれていたり、年に1,2回程度と機会が少ないことも。佐賀では全4回、全隊員を対象としているので、着任年次を超えて隊員同士がつながり、困ったときに気軽に相談やアドバイスをし合える機会にもなっているそう。

また、協力隊個々人の活動費とは別で、隊員のスキルアップのための研修受講などに使える県の独自予算が組まれているほか、自治体向けの研修や協議会など、受け入れ体制を整えるための取り組みも。
県と市町、SCNが一緒になって、協力隊本人とそこに関わる人たちを支える体制をつくっています。

すべての取り組みに共通しているのは、失敗しないためのサポートではなく、失敗してもまた立ち上がれるセーフティーネットを築くこと。
命綱があるから、バンジージャンプに飛び込める。やわらかいマットがあるから、何度転んでも大丈夫。
「失敗してもいい」と思えるからこそ、佐賀でチャレンジする人が増えています。
今回の特集では、地域おこし協力隊を経て佐賀県内のそれぞれの土地で生きる3名を訪ねました。
伊万里市で夫婦でカフェを営む加藤雄太さん、唐津市の七山地区で4人のお子さんを育てつつ、農業や英語を活かした事業を展開する野田早百理さん、SCNの立ち上げメンバーのひとりで、基山町でゲストハウスを拠点としたソーシャルビジネスに取り組む橋本高志さんです。
加藤さんのコラム「幸せの閾値をさげておこう」

東京・清澄白河のリトルトーキョーで、この3名をゲストに招いたしごとバーも3回にわたって開催します。協力隊に興味のある方だけでなく、「この人に会ってみたいな」と思ったら、まずはお気軽にご参加ください。
ほかにも今年度は、SCNや佐賀県さが創生推進課のみなさんがさまざまなイベントを企画しています。佐賀県の協力隊についてもっと知りたい方は、下記の情報もチェックしてみてください。
自分を活かして、新しく生きる。その一歩を支える人たちが、佐賀で待っています。
(取材・執筆 中川晃輔、デザイン 浦川彰太、イラスト 玉川桜、イベント 中野悟史)