イベント募集中


始めよければ、その後よし
新しい生き方の土台をつくる
入り口の3年間

「研修会の講師で佐賀に来てくださった方が『完全にノーマークでした』『いやあ、佐賀はダークホースだね』と言って帰っていかれることも多いんです。佐賀の地域おこし協力隊のサポート体制の手厚さや、隊員同士がつながり合っていろんなチャレンジが生まれていることを、もっと知ってもらいたいんですよね」

そうなんです。佐賀はあまり知られていない。

日本仕事百貨では2021年のコラム「移り住む人たち」で、唐津市と有田町という佐賀県の2つのまちを訪ねました。

有明海や玄界灘、佐賀平野などの恵まれた自然環境と、そのもとで育まれた食や温泉、焼きもの文化、お茶、酒造りなど。一歩踏み込んでみると、いろんな魅力が見えてきます。

県域がコンパクトで、各地で活動する人たち同士の距離感も近い。イベントがあれば県内のどこでも気軽に遊びに行けて、顔の見える関係性も築きやすい環境です。

そんな佐賀では、県と市町が一体となり地域おこし協力隊の採用に力を入れています。現役の協力隊が約30名に対して、今年度の募集数はなんと約40名! 一気に倍以上に増員しようとしているわけです。

地域の「やりたい」をあつめるカフェを運営するコミュニティ焙煎士、ローカルバスにひたすら乗ってリサーチする「乗り聞きすと」、自分が体験した地域の仕事と人の魅力を高校生に動画と授業で伝える「お仕事体験リポーターズ」など。協力隊の活動内容もユニークで、興味をひかれるものばかり。

どうして佐賀は今、協力隊に力を入れているのだろう? 佐賀で挑戦することのおもしろさって?

気になることを、佐賀県庁を訪ねて聞いてきました。

 

佐賀市の中心部に、どーん!とそびえる佐賀県庁。かつての佐賀城の名残で、周囲にはお堀がある。

ここに入っていくのは、ちょっと緊張するなあ…。

玄関をくぐって地下1階の「SAGA CHIKA」へ。

もともと職員向けの食堂だったところを、2018年に公共ラウンジへと改修。一般の来庁者も自由に入ることができて、ランチやカフェも楽しめる。

今は打ち合わせ中のグループや作業中の人がちらほら。お昼時になると大勢の人で賑わうらしい。

「いい空間ですよね。ここに来ると、よく知り合いに出会うんです」

そう話すのは、佐賀県地域おこし協力隊ネットワーク(SCN)代表の門脇さん。

まずは、佐賀県が地域おこし協力隊に力を入れている背景から聞かせてもらう。

「県知事がもともと総務省の出身で、地域おこし協力隊の制度設計に携わっていた方なんです。そういう意味で思い入れも深いですし、協力隊は可能性の塊だと捉えていてくれているようです」

佐賀県が地域づくりにおいて大事にしているのが、「自発」という考え方。トップダウンに号令をかけるのではなく、各地域がそれぞれの色を活かし、自分たちの力で活性化していくあり方を目指している。

その自発的な地域づくりのきっかけとなるのが、地域おこし協力隊の存在だという。

「協力隊を迎え入れるにあたって、自治体はもちろん、地域側も自分たちの課題や魅力に向き合うことになります。隊員が活動を通じて地域にもたらす変化だけでなく、懸命に取り組む姿に感化されて、地域の人たちも自発的に動きはじめる」

さらに、協力隊を卒業後に、県外からもお客さんが絶えない人気のカフェをひらいたり、こどもの居場所の運営をサポートしたり、林業を営んだり、地域づくりのNPO法人を立ち上げたり。地域のキーパーソンとして活躍している人も多い。

そんな佐賀県内の地域おこし協力隊に関わる人たちをサポートするために、門脇さんたち元協力隊が集まって2019年に立ち上げた一般社団法人がSCN。

協力隊の採用から、活動中の伴走、卒業後に至るまで、包括的に支援している。

この6年間で募集採用から関わってきた30名ほどの協力隊のなかで、途中退任は2名だけ。一般的に協力隊の途中退任率は2〜3割というから、ミスマッチが極端に少ないことがわかる。

 

その秘訣はなんだろう?

SCN副代表の佐々木さんは、「入口をちゃんと整理すること」だと話す。

「ぼくらが現役の隊員だったころは、協力隊の黎明期で。地域に残りたいけど残れなかった人を何人も見てきました。話をよくよく聞いてみると、自治体側の思惑と、来る人のイメージが最初から結構ズレているんです」

「前職を辞めて、引っ越しまでして、いろいろなつながりを絶って来ているのに、そういう状況に陥るとすごくしんどい。だからこそ入り口の整理が重要だと思うんですよね」

ここで言う“入り口”とは、募集時の広報や選考だけではない。

何が地域の課題で、どんな解決策が必要で、どういう人を求めたいのか。募集前の段階から、自治体職員と一緒になってとことん考える。

たとえば、唐津市の七山(ななやま)地区での募集。地元の有志からなる七山むらづくり協議会のメンバーが、「七山で協力隊を募集したい」と市にかけあい、予算をとるところからはじまった。

「企画づくりの打ち合わせは、普段はぼくらと自治体の担当職員さんで進めるんですけど、むらづくり協議会からも毎回4人参加してくれました。とにかく七山を盛り上げたい、その仲間がほしいと」

平日の朝10時から夕方4時ごろまで、話し合いは全9回にも及んだ。

そのなかで出てきたのが、地域新聞社をつくるというアイデア。

七山ではいろんな取り組みをしているのに、意外と自分たちのことを知らない。新聞を通して情報を発信しつつ、地域の情報が集まるコミュニティ拠点としても機能する新聞社をつくるのはどうか? という話になった。

「新聞社っていうワードが出た瞬間、全員『それだ!』ってなったんです。自分のなかではそれがすごく印象的で。みんなで一緒に霧のなかを歩いたからこそ、ひとつの答えにたどり着けた感じがして」

募集を通じて、2021年に野田宗作さん、早百理さん夫妻が協力隊に着任。3年間で合計20号発行された「ななやま新聞」は地域の人たちからも好評で、毎号ファイリングして大切に保管している人もいたとか。

野田家のみなさんは、協力隊を卒業後も七山に残り、4人のお子さんと暮らしている。さらに今年は、関わった人たちの後押しもあって宗作さんが市議選に出馬し、当選されたそう。

もちろん、定住や起業だけが協力隊の正解ではない。「入り口」を整えたからといって不測の事態は起きるし、人も地域も、思惑通りには動かない。

大事なのは、迎え入れるまでの過程を通じて、協力隊に関わる人たちのあいだに当事者意識が芽生えていくこと。

“自分ごと”として関わる人が多いほど、協力隊任期は充実する。たとえ3年後に隊員が地域を離れるとしても、よい時間を共有できれば、地域の人たちのなかには確実に何か残っていくものがある。

 

「協力隊の募集をきっかけに、自分たちの地域を見つめ直して、今まで突っ込めなかった課題を協力隊と一緒に解決していくことができる。こうした協力隊のメリットを、地域の人たちにももっと知ってほしいなと思います」

そう話すのは、佐賀県庁さが創生推進課で地域おこし協力隊を担当している高添さん。

協力隊の存在や迎え入れた経験が、地域の財産となるように。

県とSCNは互いに連携しながら、第三者的な立場から協力隊の活動をサポートしている。

いつでも相談可能な窓口を開設しているほか、年4回の研修会を実施。その運営方法にも特徴がある。

「他県だと、初任者向け研修には着任1年目の協力隊だけ、起業に向けた研修は3年目の人だけなど、年次ごとで区切ることが多いようです。佐賀の場合は全4回、全員を対象にしています」

「なぜかというと、協力隊同士で自発的につながり合ってもらいたいからなんですね。実際に佐賀は、協力隊同士でつながりあって、連携したり、プライベートで一緒に出掛けたりと、自由につながっています。やっぱり知らない土地に来るって孤独なので、同じ境遇の仲間がいるのは心強いですよね」

他地域で参加したイベントを持ち帰って、地元でも開催してみたり、卒業後に一緒に仕事をはじめたり。SCNの門脇さんと佐々木さんも、「研修会がなければ接点はなかったと思う」と話す。

今年度からは、企画書の書き方や情報発信の仕方など、テーマ特化型の研修会や協力隊同士の座談会も実施。

さらに、佐賀県では協力隊個々人の活動費とは別で、視察研修や講師の招聘、資格やライセンスの取得に使える独自予算を組んでいるそう。

日本仕事百貨を通じて全国の協力隊を取材してきたけれど、ここまで手厚い地域はなかなかないように感じる。

「手前味噌ですが、県単位ではほかにないですね。市町村単位なら、職員さんが熱心だったり、OBOGが根付いて一生懸命サポートしてたりとか、協力隊の聖地みたいなところはあるんですけど。県単位でいえば、佐賀はかなり進んでいると思います」

今年度募集する約40名の隊員のうち、SCNが募集に関わっている企画をいくつか紹介してもらう。

たとえば、佐賀で発展している農業用の水路「クリーク」に棲む珍しい生きものを中心に、自然体験の教室をひらく協力隊。

はたまた、キッチンカーで市内の農家さんを巡り、旬の食材のおいしい食べ方を教わって動画で発信する「青空レストラン」をひらく協力隊。

ほかにも、eスポーツで地域とつながる高校魅力化プロジェクト、小学生と一緒に取り組むカーボンニュートラル、林業の推し活など。バラエティーに富んでいて、どの仕事もおもしろそう。

これから順次公開されていく求人もあるので、詳しくは佐賀県地域おこし協力隊のWebサイトをチェックしてみてほしい。

「協力隊はスーパーマンじゃないってことを、よく言うんです」と、隣で聞いていた佐々木さん。

「佐賀は、SCNはもちろん、県庁や市町のサポート体制もしっかりしていて、隊員同士の横のつながりが厚い。地域で人とのつながりを大事にしながら暮らしてみたいという気持ちがあれば、安心してやっていけるよっていうことは伝えたいです」

 

最後に、どんな人が佐賀県の協力隊に向いていると思うか。門脇さんが2つの視点から話してくれた。

「1つは、協力隊って絶対起業しなくちゃいけないって思われがちだけど、そうでもないよっていうところ。自分の暮らしと仕事を考え直したいとか、もうちょっとおもしろくしたいっていうシンプルな気持ちでいい。でもどうしたらいいかな?と迷っている人には、入り口としてぴったりな地域なんじゃないかなと思っています」

「そうは言いつつ、野心を抱いてる人にも向いていて。わたしがなぜ佐賀を選んだかといえば、一番土壌が耕されてなくて、余白があったから。ブルーオーシャンだったんです。佐賀は正直、まだまだ知られていない。だからこそ、肩肘はらずに、自然体で暮らしや仕事に向き合いながら挑戦できるのが魅力ですね」

サポートが手厚く、協力隊本人にとっても、また佐賀という地域自体も、伸びしろが大きい。

話を聞いていて、そんな印象を受けました。

 

東京・清澄白河にある日本仕事百貨のスペース「リトルトーキョー」では、10月・11月・2月と3回にわたって佐賀県のイベントを開催します。

4Fでは協力隊OBOGを招いたトーク、3FではSCN副代表の佐々木さんとざっくばらんに話せる「バー・SASAKI」がオープンしますよ。

 

次回の開催はこちら

過去のイベント情報はこちら

写真は「氷をカッ、カッ!ってかっこよく削るやつ。あれやりたい!」と張り切る佐々木さん。「回を重ねるごとに慣れていくと思うので、全3回通ってもらえたら」とのことです。

佐賀での暮らしや仕事に興味が湧いてきたという方、まずは気軽にご参加ください。

 

佐賀市富士町で林業を営む信本力哉さん、小城市にある江里山の棚田を拠点に活動する田中あきさんという、元協力隊の方々を訪ねたコラムも公開しています。

それぞれ、11月と2月のトークイベントにゲストとして参加するおふたりです。こちらもあわせて読んでみてくださいね。

これまでのキャリアに捉われることなく、新しい生き方の土台をつくる3年間。

その入り口でお待ちしています。

コラム「移り住む人たち」でも実際に移住した人たちの姿を紹介しています。
「 –佐賀編 – 前編 ふところの深いまち、唐津」
「 – 佐賀編 – 後編 ものつくる人のまち、有田」

佐賀県地域おこし協力隊の募集、体験談はこちらのサイトで紹介しています。(外部サイトへ移動します)
🔗 佐賀県地域おこし協力隊Webサイト

(2025/07/17 取材 中川晃輔、デザイン 浦川彰太、イベント 中野悟史、ディレクション 荻谷有花)

日時
2025/10/01、11/26、2026/02/18 各回19:30〜
会場
リトルトーキョー4F
参加費
無料(ワンドリンク制)