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欲望、循環、未来

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「『今の世界、なんか変だよね』っていうのはみんなどこかで思っているわけで」

それは「kurkku(クルック)」と「耕す」の代表である小林武史さんの言葉。音楽プロデューサーとしての顔を知っている人は少なくないと思う。

  
世界各地で起きるテロ、戦争、あふれる難民。エネルギーや環境の変化、広がる経済格差。大量につくることが優先になった農業。

わたしたちがニュースを通して知る社会の課題は、途方もなくて、どこか現実味がないように感じることがある。

けれど普段わたしたちがなにを買って、なにを食べるのか。1つ1つの選択が、巡り巡ってこれらの課題につながっている。

それは、1人1人が未来を変えていくことができるということでもあると思う。

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kurkkuは、オーガニックな消費や暮らしのありかたを提案しているプロジェクト。東京・代々木など都心を中心にレストランやカフェの運営をしているから、名前を耳にしたことのある人も多いと思う。

今回はkurkkuが木更津ではじめる場づくりに関わっていく人を募集します。

具体的には食にまつわる場や商品のコーディネートをする人、イベントの企画運営をする人、そして広報を担う人。

どの役割も求められるのは経験よりも、夢中になれるかどうか。

農業や食を中心に、これからの生き方を実験し考えていくような場づくりがはじまっています。

  
東京からは車でアクアラインを通って、1時間ほどで木更津に到着。

ここでいいのだろうか、と心配になるくらい細い道を登って行くと、急にひらけた大地が広がった。

ここは「耕す 木更津農園」という農業生産法人の拠点。30ヘクタールの土地を使って、有機農法で野菜が育てられたり鶏が飼われていたり、たくさんの太陽光パネルが発電をしている。

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この日は月に1度の「クルックファームマルシェ」というイベントが行われている日。色とりどりの野菜がならぶ横で、ピザをつくるワークショップが行われたり、子どもたちが走り回っている姿が見える。

「今日はずっと調理を担当していました。新開発の二色丼、ほんとうにこだわってつくったからおいしいんですよ。食べてもらいたかったな」と小林さん。

1日中外にいたそうで、すっかり日に焼けている。

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音楽から農業、場づくりへ。ここをはじめることになった経緯を聞いてみる。

「ずっと音楽をやってきて、いわゆる成功をさせてもらったと思っています。そこで生まれたお金の使い方を考えるのが1つのきっかけになって、坂本龍一さんとMr. Childrenの櫻井和寿くんとで資金を出しあい、2003年にap bankをスタートしたんです」

ap bankは環境を中心に、社会の課題に取り組む団体やNPOなどに融資をすることで応援していくプロジェクト。お金の使いかたを考えることで、未来をサステイナブルな方向にシフトすることを目標に、これまで100以上の団体を支えてきた。

音楽をきっかけに環境や食、エネルギーの循環を考えるイベントとしてap bank fesを開催。今年からは新たにReborn-Art Festivalというプロジェクトも東北で動き出している。

社会のさまざまな課題に対して、無理をせずポジティブに関わることで未来を変えていく。そんな活動は少しずつ、けれど着実に人の意識を変えてきたと思う。

「ap bankの融資を通してたくさんの活動が動いてきました。けれど正直なことを言うと、本当の意味でブレイクスルーできたものは決して多くないように感じたんです」

ただ応援するだけでなく、自分たちでも実践していく必要があるのではないか。

そこで消費の方向性をつくっていくプロジェクトとしてはじまったのがkurkku。

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都心に暮らす人が日常の中で、快適で環境によいものを選択できるように。オーガニックな食事を提供するレストランやカフェ、コンビニエンスストアと提携したショップなどを展開してきた。

「オーガニック」や「社会のため」という理由がついていなくても思わず選んでしまうくらい、それぞれがとても洗練されている。なによりとてもおいしい。

「課題を解決しようと閉鎖的に突き詰めるのではなくて、現実の社会に関与、影響が生まれていくような動きをしたい。それが、僕がやる意味だと思うんです」

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kurkkuの活動を続ける中で、足りないと感じることも出てくるようになった。

「都市で生活していると、より資本主義の影響を受けやすい。不況がくると、どうしてもサステイナブルなところから離れて、近視眼な方向、価格の安いほうに目が行ってしまうんです」

「消費のシフトだけではなくて、生産にまで意識が届くように。都市と、生産地である地域とが循環している関係を可視化できるような場所が必要だと思うようになりました」
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そう考えているときに出会ったのが、この木更津の土地。

放牧をされていた時期があったり、残土の受け入れをしたり。都会の開発を支え、用途を都度変えてきたような場所なんだそう。

「いい縁もあったし、ここを再生することにも意義があるだろうと思いました。農地として決して豊かではなかったけれど、地元の方々にも協力してもらいながら少しずつ開拓してきたんです」

「耕す」ではにんじんなど、普段から口にするような野菜を中心にすべて有機農法で生産、販売を行っている。6年間試行錯誤しながら、規模を広げ、少しずつかたちができてきた。

  
この場所で次にしかけるのが「kurkku farm village」という場づくりだ。

“循環型食農テーマパーク”と名付けられた広大な敷地の中に、ツリーハウスや食堂、ハムやソーセージの工場、ピザ窯、クラフトビール工場などを建設予定。

生産、選択をするという経済循環。太陽光発電による電力や地熱の利用、生ごみバイオマスの利用などによるエネルギーの循環。関わる人、ここを訪れる人の循環。そしてこの土地にある資源の循環。

大きく4つの循環を中心に場がつくられていくことになる。

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「いわゆるテーマパーク的なおもしろさがある。その中でさらに掘り下げて、世の中で自分がどう生きているかを感じられるような場所にしていきたいんです」

週末に子どもとたのしく過ごしたい。のんびりおいしいものを食べたい。おしゃれな場所で時間を過ごしたい。

入口は自分の”欲望”でかまわない。それをきっかけに、自分が日々食べているもの、使っているエネルギーなどに関心を持つ場所にしていきたい。

「循環していくこと、太陽とともに暮らすことの気持ちよさを感じて欲しい。僕ら自身も、生きる力を取り戻す場所になっている感覚はありますね」

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ほかのプロジェクトを見ていても、仕事をする上で高い完成度が求められるようにも感じる。けれど経験よりも「やってみよう」という気持ちを大切にして、仲間を増やしていきたい。

「トライアルをしていくことで人に届く想いもあるんじゃないかって。これは僕が音楽をつくって自分で体験してきたことなんです。マニュアルが用意されているのではなくて、自分で納得をしながらつくっていくおもしろさがある」

お金を払ってプロにすべてを委ねることもできるかもしれない。けれどお金だけを対価にしないからこそ、生まれる出会いもある。関わる人がそれぞれ一生懸命に試しながら集うことで場にエネルギーが生まれていく。

小林さんはそれを「クラフトマンシップ」という言葉で表現していた。

「20年後、30年後。東京から遠くないこの場所で、経済発展に依存しすぎない循環型の暮らしのモデルをつくることを目指しています」

「ときには厳しいことを言うかもしれないけれど、みんなで分担しながら生きていくことを実践していきたい」

  
その後、kurkkuのスタッフとして働く北林さんに敷地の中を案内してもらった。

北林さんは今年の4月に入社、木更津にやってきた。それまでは誰でも知っているような大企業で働いていたそう。

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「誰のために役立っているのかを身近に感じられる仕事をしたくて。将来自分で場づくりをするために、ここで経験を積もうと思ってきました」

ここではイベントの企画から広報、運営までを担っている。

チラシをつくって地域の幼稚園に配ってまわったり、野菜を並べる箱をDIYでつくったり。スタッフ同士でも役割の垣根なく働くことが多いそう。

「小林さんやその周りの方々など、いわゆる一流の人と仕事をすることが多いんです。これくらいでいいかな、と思ってもさらに洗練されたものを求められる。『伝わる伝え方』をまだまだ勉強している途中です」

場づくりはまさに大きく動きだすところ。

よりよい場所をつくっていくために、プロデューサーである小林さんをはじめ、仲間の意見を柔軟に受け入れながらも、自分から考えてプロジェクトを進めていくことが求められると思う。

  
そんな話をしているうちに、鶏たちのにぎやかな声が聞こえてきた。

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養鶏には鶏が何段にも並んで卵を産んでいくイメージがあった。ここでは鶏舎の中で自由に走り回っている。

「限られた空間の中に、小さな自然を再現できるようになっています。極力ストレスを与えないように育てているんです」

手間がかかる分、健康に育った鶏の卵は栄養価が高く、おいしくなるそうだ。

「正直、食に強い関心があるわけではなかったんです。けれどここにいると普段いかに適当なものを食べていたのか気づかされます」

適当なもの、ですか。

「それぞれが、ものすごく手間をかけて育てられている。イベントでそういう食材を使うとおのずと値段は高い設定になります。高い理由がわかると、逆に普段食べている安い牛丼って、なにが入っているんだろうって考えるようになる」

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ビルの中でのデスクワークから一変して、太陽の元で働くことになった北林さん。

大変なことはないんだろうか。

「今日のイベントも、はじまる直前まで雨が降らないかヒヤヒヤしていました。自然のリズムに合わせて、明るいうちに太陽を浴びて働く。いそがしいけれど、わたしにとってこの生活を送るほうが、心が豊かな気がしています」

話しながら見せてくれる笑顔から、本当にここでの暮らしを楽しんでいることが伝わってくる。

  
空が赤く染まりだしたころ、小林さんを囲んで今日のイベントのフィードバックがはじまった。

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ただプロデューサーの考えについていくのではなく、スタッフも意見を求められる。

「個人的には長い道のりのプロジェクトになると思っています。はじまりの期間だからいろいろなことが起こるだろうけれど、せっかく出会って人生のある時期を一緒に過ごすなら、楽しくしていきたいですよね」と小林さん。

2年後、ここにはまったく違う風景が広がっていることになります。

この場所で循環が育ち、未来が健やかな方向にシフトしていくことに立ち会う仕事です。

(2016/8/17 中嶋希実)

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