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妖怪はお好きですか?

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

かっぱや天狗、ろくろ首。トイレの花子さんといった都市伝説から、『ゲゲゲの鬼太郎』、近年子供たちに大人気の『妖怪ウォッチ』まで。

いつの時代も私たちは、「目に見えない力」を信じ、「不思議なもの」に惹かれてきました。

01_百物語絵巻(部分)百物語絵巻(部分) 広島県三次市(湯本豪一コレクション)蔵

今回募集するのは、そんな「不思議なもの」が好きな人。

2018年度にできることになった「湯本豪一記念日本妖怪博物館」のオープンに合わせて、妖怪物語の伝わるまち広島県三次市(みよしし)で地域おこし協力隊を探しています。

妖怪という観光資源をいかして、まちをPRする仕事。

たとえるなら、妖怪たちのマネージャーになって、ビッグスターに育てあげるようなイメージに近いかもしれません。

どう打ち出していけば、みんなに愛される博物館になるのか。まちに人が増えるのか。

少しでもピンと来た人は、ぜひ最後まで読んでみてください。



東京から広島空港へは飛行機で1時間半、そこからさらに車で1時間。広島県の三次市に到着した。

02 川に囲まれた盆地で、秋から春にかけての早朝には、深い霧が立ち込めることから「霧のまち」と呼ばれています。

場所によっては神秘的な「霧の海」を見ることもできるそう。

「三次には果樹園やワイナリーもあるんですよ」

そう話すのは、市役所の藤井さん。三次出身で、妖怪博物館のオープンに合わせて設立する地域の観光を盛り上げる組織(DMO)の担当をしています。

03 果樹園やワイナリー、家族みんなで楽しめる大型の公園があるのは三次市にある酒屋(さけや)地区というところ。博物館ができるのは三次地区といって、古い街並みが残るエリアです。

酒屋地区の観光客は増えてきていますが、そのまま三次地区にも来てもらいたいと考えているそう。

それにしても、どうして「妖怪博物館」だったのでしょうか?

「お隣の県、鳥取の境港は『水木しげる記念館』で有名ですが、このまちには、『稲生物怪録』(いのうもののけろく)があるんです」

『稲生物怪録』とは、江戸時代の三次を舞台に繰り広げられる妖怪物語。

主人公は16歳の平太郎という少年で、旧暦の7月、30日間にわたって様々な妖怪が現れる、というお話です。

ある日は、一つ目で毛むくじゃらのバケモノが、平太郎を家から引きずり出そうとしてきたり、生首の女がやってきたり。巨大な老婆に舐めまわされる、という日もありました。

04 部屋中がネバネバになってしまったり、ほうきが勝手に掃除をし始める、なんていう日もあって、調べてみるとこれが結構おもしろい。

ネバネバになった部屋って…地味だけど、嫌だなあ。

「妖怪ってみんな、一人一芸っていうかね(笑)。ユーモラスなんですよ」

最後の日には、30日間を耐え抜いた平太郎の勇気をたたえて、大魔王から木槌を授かる、という内容。

思春期の少年が「非日常的な体験」を経て成長するさまは、まるで典型的な“夏休み映画”といった感じ。

しかも、なんとすべて実話として伝わっているというから驚きです。

「目と足が生えた石が物語に出てくるんですけど。博物館ができる予定の敷地には、その『カニ石』とされる石があります」

05 いわれてみると、どことなく動き出しそうな気も。

物語に登場する寺院や地名も残っていて、広島市のお寺には、大魔王から授かったとされる木槌が預けられているそう。

楽しそうに話してくれる藤井さんですが、もともと妖怪がお好きだったのでしょうか?

「いや、全然そんなことはないんです。学生のときに歴史を勉強していたので、『へえ、こういう世界もあるんだね』というくらいのもので」

「湯本先生にいわれて初めて『稲生物怪録』は貴重な資料なんだ、ということを知って。そこからだんだんと興味を持つようになりました」

「湯本先生」とは、日本一の妖怪コレクターである湯本豪一(こういち)さんのこと。生涯をかけて集めてきた約3000点にものぼるコレクションが、この博物館のメインとなります。

『稲生物怪録』の絵巻物をはじめ、怪談を題材にした葛飾北斎の錦絵など貴重な作品、妖怪柄の着物や紙芝居、メンコ、昭和の妖怪映画ポスター、河童のミイラといった珍品まで。

怖い、不気味というよりも、見れば見るほど面白く、どれも健気でかわいらしい。

06_神農鬼が島退治絵巻(左下)神農鬼が島退治絵巻(部分) 広島県三次市(湯本豪一コレクション)蔵

資料を保管し、展示するための施設を探していた湯本さんと、『稲生物怪録』での観光PRを模索していた三次市の想いが重なって、妖怪博物館を設立することが決まったそう。

『稲生物怪録』は、その奇抜な内容から荒俣宏や京極夏彦が関連本を出したりと、湯本さんをはじめとする多くの文化人たちを惹きつけてきました。

水木しげるも『木槌の誘い』で漫画化しています。



三次地区の自治組織の会長をつとめている中島さんにも話を聞きました。

小学校一年生のときに原爆で家族を失ったものの、まちの人たちが助けてくれた。だから人やまちが大好きで、恩義を返したいと思っているそうです。

07 「実は、三次の人たちは、『もののけ』いうんをずっと隠してきたんですよ」

隠してきた?

「おばけ、幽霊のまち、といわれるのは誰も好むことじゃないですよね。だから、先人たちはもののけのことを黙っていた。もののけに対する違和感というか、ちょっと壁があるんですね」

まちの子供たちに物語を教える、というような授業もなく、もののけにまつわる資料も、まちからはまだほとんど出てきていません。

税金を使ってお化け屋敷をつくるのか、というような意見もあったりして、博物館をつくること自体に疑問を持っている人もいる。

だけど、子供たちのあいだでは空前の『妖怪』ブームだし、最近では三次を舞台にした人気マンガ『朝霧の巫女』の影響で、まちには若い観光客も増えてきたとか。

「今後『妖怪博物館はどこですか?』って観光客の人に聞かれたときに、『あっちですよ、わたしは行ったことないけど』じゃあ困るんですよ(笑)」

「やり方によっては、おもしろい企画じゃろうと思うんです。だからまずは自分たちが価値を理解して、まちの人たちの意識を先導していきたいですね。これはおもしろい!これならいける!って、みんなが盛り上げたくなるようにね」

灯台下暗しというように、外から来た人がきっかけで、はじめて自分たちの住んでいる場所の魅力に気づけることってあると思います。

「新しく入られる方には、我々では考えつかんような切り口で打ち出していってもらって、新しい風を吹かせてもらいたいですね」



妖怪博物館がオープンするのに合わせて、観光客や地域の人に向けたカフェをはじめる藤田さんにもお話を聞きました。

08 「61歳で、これから新しいことをはじめるなんて、我ながら大きな賭けですよね(笑)」

エリアリノベーションのプロジェクトに参加したことで一念発起し、空き店舗を買い取って準備を進めているところ。

09 すでに協力隊として働いているアントニーさんに、リノベーションを手伝ってもらっているといいます。

「最初はボランティアでやってもらうなんて申し訳ないな、と思っていたんです。だけどやりたい、といって来てくれる。この前アントニー君が呼びかけてくれたら、19人も集まってくれたんですよ!」

食器や布団などを片付ける作業も、大勢いたからたった半日で終わったそう。

「面識がない方でも市外から来てくれて。楽しんでやってくれているんです。発信する力というのはすごいな、と目の前で見せつけられました」

「私が近所を回ったところでそうはいかないですから。すごく心強いですね」

アントニーさんは広島市生まれで、もともとウェブメディアをつくる仕事をしていた方。

協力隊としての任期が終わったあとも、映像や文章、写真などをつかって、三次の魅力を発信していきたいと考えています。

「カフェをはじめることだって、映画を撮ることだって、やろうと思えば何だってできちゃうんです。それがこの仕事の魅力ですね」

10 旅行先で素敵だな、と思った場所の写真を撮ってSNSに上げる。その「自分にとっては普通のこと」が、価値を生むことだってある。

たとえばまちの人にインタビューして、三次を紹介するメディアをつくったり。人形作家・辻村寿三郎さんのアトリエや、コスプレ撮影ができる古い酒蔵なんかもあるから、妖怪はもちろんサブカルチャーに興味がある人に向けてツアーを企画したり。プロモーション映像をつくる、なんていうのも楽しそう。

住んでいる人にとって、見えていない魅力がまちにあるように、自分のスキルを必要としてくれる人が、きっとたくさんいるはずです。



空港への帰り道、市役所の栗原さんに送ってもらいながら、博物館の構想について伺いました。

「展示をする情報棟と、物販スペースなどがある交流棟をつくる予定で。ただ見るだけじゃなくて、妖怪を身近に感じられるような施設になったらいいな、と考えているところなんです」

11 「湯本先生が来てくれて、こんなに面白いものがあるんだよ、って説明を受けるうちに、妖怪がどんどんかわいく思えてきて。こたつで寝てばっかりいる妖怪なんていうのもいるんですよ(笑)」

栗原さんの趣味は絵を描くことで、休日になると三次の美術館でボランティアスタッフをしたり、雑貨屋さんやカフェを巡っているそう。

三次にも、ここ数年で素敵なお店が増えているといいます。

12 「グッズもおしゃれでかわいくて、自分たちが本当に欲しくなるようなもの。物販スペース自体も、普通に買い物がしたくなるような。そんな場所を目指しています」

「広島市の雑貨屋さんが『応援してるので、なにかつくるときは声をかけてください!』といってくれたりして。うれしかったですね」

博物館の設立に先立って行われた市民講座には、平日の昼間にも関わらず100名もの人が湯本先生の話を聞きに来たそう。

興味を持つ人たち、理解する人たちが増えてきて、先人たちが隠してきた「もののけ」に対する市民の意識も、だんだんと変わってきているようです。

見せかた次第で、妖怪や三次のまちを好きになってくれる人はもっともっと増えるはず。

愛らしい妖怪たちが、あなたが来るのを待っています。

(2017/04/28 今井夕華)

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