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「わたしたちが目指したいのは『ベッドタウン』ではなく『シェアタウン』なんです」そう、力強く語るのは、BONJONO(ボン・ジョーノ)でタウンマネージャーの一人として活動する平山由夏さん。
ガーデンデザイナーである彼女は、自身のスキルを生かして、地域住民でシェアできる緑あふれるオープンスペースをつくり続けている。
ボン・ジョーノはJR小倉駅の南方約3kmにある、未来のまち。
広さは約18.9ha。実に東京ドームの約4倍で、その広大な敷地の開発がはじまったのが2012年。現在は、80戸の住宅が開発され、病院やカフェ、公園などがつくられました。そして、3年後、ここには約600戸のまちが完成する予定です。
ボン・ジョーノは、街路や沿道、オープンスペースはもちろん、近隣の企業が所有するスペースをコミュニティに開放する等、ユニークな仕組みを導入しました。
地域全体にひろがるシェア可能なスペースを「シェアプレイス」と呼び、多様なアクティビティの創出を目指しています。
普段の暮らしを通して育まれていく活き活きとした地域コミュニティの中で、「シェアプレイス」やアクティビティ、そしてゆたかな知恵をシェアしながら成長していくまち。
「わたしたちとともに、そして何より、ここに住まう住民のみなさんとともに『未来のまち』を描き、つくり、育ててくれるタウンマネージャーを募集します」
ボン・ジョーノは、博多駅から新幹線を使って約20分。JR小倉駅(北九州市)からさらに3駅にあるJR城野駅の駅前にひろがっている。
北九州市は、9年前に「環境モデル都市」として国に認定されて以来、恵まれた地域資源を活かしながらまちづくりを進めてきた。
そのリーディングプロジェクト「ゼロ・カーボン先進街区」として位置付けられているのが、ボン・ジョーノ。
先進的な低炭素技術やシステムをまち全体に取り入れ、CO2削減に取り組むまちづくりです。
ボン・ジョーノがさらに興味深いのは、環境技術によるシステムづくりや公共施設といったハードの整備にとどまらず、日々のくらしに基礎を置きながら、コミュニティをマネジメントしていく仕組みを導入しているところ。
その背景には、地域の課題に対するまなざしがある。
城野エリアは、長い間、都心部で働く市民にとっての典型的な「ベッドタウン」として住宅地が形成されてきた。
ベッドタウン。
読んで字のごとく、寝に帰る場所。
バブル以前のように、地価が上昇し続ける時代は、それでもよかったかもしれない。しかし次第に若い世代が便利で魅力的な都心部を志向した結果、ベッドタウンとしての郊外エリアは、深刻な高齢化問題と向き合うことになる。
ただ、見方を変えれば広い緑地を確保でき、住まいに近い場所で豊かな余暇時間が過ごせる可能性がある。また、地域に密着した福祉サービスやビジネスも創出しやすいかもしれない。
環境にやさしいだけでなく、ライフスタイルや地域コミュニティとしても豊かでありたい。広大でゆたかな土地が持つポテンシャルを活かしたい。その先に見出されたコンセプトが「シェアタウン」でした。
「シェアタウン」には3つの「シェア」の意味がこめられている。まずひとつ目は「居場所をシェアすること」。
先に触れた「シェアプレイス」も特徴的だが、ボン・ジョーノにはコミュニティの核となる施設「くらしの製作所『TETTE』」が建てられた。
一般的に言うと、みんなで使える公民館のようなもの。でも、ただの公民館ではありません。
「くらしの道具箱」と名付けられたスペースには、充実した大工道具や調理器具が取りそろえてある。
DIYスペースでは雨の日でも作業可能で、ときおり開催されるDIY教室は大人気。
キッチンスペースでは料理教室なども可能。
街路にひらかれたテラススペースでご飯を食べてもよし。「モーニングマルシェ」なんて企画も構想中とのこと。
ミーティングスペースの近くには、子どもが遊べるキッズペースも完備。
取材している最中にも、お母さんたちが打ち合わせをしている間、目の届く範囲で子どもたちは元気に駆け回っていた。
ちなみにボン・ジョーノは、住民や地域の事業者が主体の「一般社団法人城野ひとまちネット」と「西部ガス株式会社」、北九州市の花屋と造園の会社「ネーブルグリーン」など、複数の会社が共同で運営している。
今回募集するタウンマネージャーは、平山さんと同じようにネーブルグリーンに籍を置きながらも、TETTEに常駐して働くことになる。
現時点で決まっている雇用期間は3年間。その後はフリーで関わっていくこともできるし、ひとまちネットと契約を結べる可能性もあるそうです。
雇用形態は少し変わっていますが、目的はTETTEを活用しながらボン・ジョーノをよりよくしていくこと。
つまりTETTEは、行政と協働しながら民間が運営しているので、柔軟性の高い活用が見込まれる。例えば、ショップやレストランを営業しながら、地域コミュニティを支える仕組みを創り出すことも可能です。
あなたが持っている強みを活かしながら、住民のみなさんとともに、TETTEに生命を吹き込むことが求められています。
「タウンマネージャーという働き方は、徐々に増えてきましたが、住宅地のタウンマネージャーはなかなかないです。そういう意味でも面白いし、やりがいがあると思います」
そう語るのは、もうひとりのタウンマネージャー、北嵜剛司さん。
北嵜さんは、フリーのデザイナーをしながら、ボン・ジョーノのイベント企画や広報デザインなどに携わり、地域内外のみなさんと交流を深め、まちづくりを進めている。
今回期待されているのは、この北嵜さんのような動きをする方。
「デザインのスキルや、SNSやホームページなどのインターネットを使った広報のスキルを持っている方だと、うれしいですね」
「でも、デザインができなくてはいけない、というわけではありません。DIYが得意だったり、料理が得意だったり… 何でもいいです。得意なこと、好きで打ち込めることを持っている方と、一緒にまちづくりをしていきたいと思っています」
「シェアタウン」に込められた3つの「シェア」。その2つ目は「活動をシェアすること」。
北嵜さんや平山さんたちは、TETTEやシェアプレイスを基調としながらコミュニティ活動を発展させていく「まちの部活」も運営しています。その名も「くらしラボ」。
まちの花壇を花いっぱいにしていく「グリーンラボ」、小さな子どもからお年寄りまで楽しめる健康づくりに取り組む「ヘルスラボ」、エコな暮らしのノウハウを学んだり、スマートなエネルギーの使い方のアイディアを出し合ったりする「スマートライフラボ」などなど…。
地域内の住民だけでなく、多様な関心で地域外へもひろがっていくような「まちの部活」をサポートしながら、活き活きとしたコミュニティを創り出せる人材が、望まれている。
ボン・ジョーノの再開発は、3年でひと区切りとなる。しかし、それで終わりではないそうで、その3年を終えたときこそが第二のスタート。
3年間で蓄積してきたノウハウや、住民のみなさんの充実したコミュニティ活動が、自立した持続可能なシステムとして循環していくことを目指していく。
たとえば、ボン・ジョーノやその周辺にあるのは、宅地だけではない。ホームセンターやハウスメーカー、銀行や病院などの企業や様々なお店・施設が立地している。
「まちの部活」である「くらしラボ」が、ただの部活で終わるのではなく、地域の経済と結びついていく可能性もある。
企業と連携しながら、あたらしい仕事が見い出されたら、もうそこは「ベッドタウン」ではない。
夜だけでなく、昼間も生き生きとしたアクティビティが繰り広げられるまちになるかどうか、それはタウンマネージャーであるあなた次第、とも言えます。
そして最後に3つめの「シェア」。それは「『まち育て』をシェアすること」。
ボン・ジョーノには、タウンマネージャーだけでなく、心強い「タウンエディター」が3人います。
数々の地方都市で活性化に奔走する株式会社ワークヴィジョンズの西村浩さん、有限会社アーバンセクションの二瓶正史さん、そして、九州大学大学院人間環境学研究院助教の柴田建さんの3人。
タウンエディターは、従来の再開発のようにトップダウンで指示するプランナーではなく、まちの多様な資源を編集し、マネージャーや地域住民とともにまちの魅力を育てていく頼もしい存在です。
タウンエディターのひとり、柴田さんはにこにこしながら、話してくれました。
「ボン・ジョーノのエリアだけでなく『周辺地域とどうつなげるか』も意識しています。近所には機動隊の官舎があったり、聴覚障がいがある子どもたちが通う学校があったりします。たとえば、地域の子どもたちが手話を覚えて使えるようになったら、素敵だと思いませんか?」
閉じられた宅地開発、特定の所得層や関心層を対象としたまちは、今までもたくさんありました。
でも、ボン・ジョーノが目指すのは、ひらかれたまち。その未来に向けたコンセプトは、身近な関係にも言えることです。
「TETTEに常駐し、そしてボン・ジョーノを散歩していると、まちが見えてくるんです。本当に様々な方たちがいらっしゃいます。地域の活動に積極的な人たちだけでなく、活動に参加しない人たちも。その人たちと自然に挨拶を交わせたとき、うれしくなるのです」
ひとりの人間として、住民のみなさんと同じ目線に立ったとき、はじめて見えてくるゆたかな景色があると思います。それは、元気で、賑わいのある景色ばかりではきっとないはず。
商店街でなく、住宅地だからこそ、小さな子どもからお年寄りまで、互いが支え合い、思いやる先にある「みんなの未来」を育てていく必要がある。
ボン・ジョーノは、まだはじまったばかり。これから描く、かけがえのない「みんなの未来」を、ともにシェアしてくれるメンバーを、お待ちしています。
(2017/07/10 田北雅裕)
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この求人記事は日本仕事百貨のスタッフでなく、日本仕事百貨コントリビューターの田北雅裕さんに書いていただきました。コントリビューターについて、くわしくはこちらをご覧ください。
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