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領域を超えて活躍するデザイナーが、増えてきているように思います。想いや考えを目に見える形に落とし込んでいくだけでなく、クリエイティブディレクターやアートディレクター、ときには編集者など。
一人で何役もこなし、企画段階からお客さんと一緒にプロジェクトを進める。
そんなふうにデザインの領域を自ら広げていくような働き方が、きっとこれからのデザイナーに求められていく。
この会社でなら、そんな働き方を実現できるかもしれません。
有限会社コパン・デザインソースは、ファッション広告や通販カタログなどのグラフィックデザインを行う会社。

今回募集するのは、グラフィックデザイナーとアシスタントデザイナー。
コパンは「デザインのベースキャンプ」として、グラフィックやWeb、コミュニティなどさまざまなデザイン領域を横断したクリエイティブ集団を目指しています。
それを実現するためにはしっかりと話を聞き、常に相手の立場に立って想いを巡らせる姿がありました。
東京・渋谷。1階がコーヒーショップのマンションに、コパンのオフィスがあります。

ここで迎えてくれたのが、代表の石鍋さんです。
外からきた私に「部屋は暑くない?」と声をかけてくれる。
相手にとって心地よい空間かどうかを、自然に気遣ってくれる姿が印象的でした。

「僕らはアーティストではなく、あくまでも商業ビジネスなので。お客さまが何を望んでいらっしゃるのか、どうすれば今以上にいいものを提供できるのか、常に考え続けているんです」
「でも言われたものをただつくるのは違う。相手もまだ気づいていないようなことを察して、デザインで貢献することで喜びを生みたいと思っています」
そのために大切にしているのは、クライアントと密にコミュニケーションをとること。
基本的には間に代理店などは挟まず、直接クライアントとやりとりをする。
「うちの子達が、想いがあって企画しているものを、勝手に調整されたりするのはいやだなと思って。だから大手企業の下請けになることもないし、直接コンペに出て仕事を獲得します」
撮影も自ら手がけるコパンでは、カメラマン、スタイリスト、ヘアメイクなど社外のさまざまな人たちとチームを組み、制作を進めていく。
「スタッフさんとも、一緒に働いた縁を大切にしたい」と石鍋さん。
「たとえばアシスタントの子のことを、ついみんな名前じゃなく『アシスタントさん』って呼ぶ。でも僕らは名前で呼ぶようにしているんです」
「細かいことだけど、名前も覚えていないような付き合いはしたくないから。そんなふうに接していると、その子達が独立したときにコパンを思い出してくれる。挨拶にきてくれて、仕事につながったこともあります」
クライアントやスタッフ、もちろん社内のメンバーとも。一人ひとりに向き合いながら関係をつくっていく。
お互いに本音を言い合えるようになって信頼関係が生まれると、その関係性がデザインにも反映されていくといいます。

「だから僕は、人のことを大切に思えるかどうかがすごく大事だと思っているんです」
石鍋さんはなぜそう考えるようになったのだろう。
聞けば、自身が百貨店で企画・バイヤー職として働いていたときの経験が原点だという。
「僕もあの頃はいい気になっててさ、すごくいやな奴だったんだよ(笑)。生意気でね」
大きな仕事に携わりながら、部下も多く充実した日々を送っていた。
あるとき石鍋さんの尊敬する上司が、役職定年を迎えることに。肩書きがなくなった瞬間、その人の立場は大きく変わってしまった。
「“元”部長になると、どんなに魅力的な人柄でも近づく人は少なくなりました」
決裁権がなくなれば、取引先も手のひらを返したように離れていく。そんな人間関係の希薄さに愕然としたという。
「10年、15年後は僕もそうなるんだなって。大きな仕事もたくさん動かしていたけど、どれも会社の看板があったからできたもので、自分がゼロからつくったものじゃない。ずっと一緒に仕事をしたいと思えるような信頼関係も、部下とはほとんど築けていなかった」
会社の歯車の一つとして仕事をするのはやめよう。うわべだけの嘘っぽい付き合いはやめよう。そんな想いから、20年間勤めた会社を辞めて起業した。

具体的には、どんなふうに仕事をしているのか。
ある団体向けのファッションカタログを担当するみなさんに、お話を伺いました。

まずは白石さんに、仕事の進め方について聞いてみる。
「オファーを受けたら、商品のサンプルや写真を見せてもらいながらお話を聞く。そこからどんなページ構成や写真の撮り方がいいかを考えて、簡単な手書きのサムネイルを出します」
どんな紙面にするのか、コンセプトから一緒に考えるんですか。
「ざっくりとした企画はいただきます。たとえば夏なら、小さい子どもがいる若いママさん世代、家事もおしゃれも頑張りたい人たちに向けての企画で、ファッション性は高いけれど家で洗える服を打ち出す、というような感じ」

もっとよくできるはずだけど、どうしたらいいのかわからない。クライアントのそんな漠然とした不安を汲み取りながら、一緒に考えていくのも仕事のうち。
それならこういう場所にロケに行ったら、こんなコピーを添えたらいいのでは。
具体的な案を提示しながら、一番伝えたいことはなんなのか、自分なりに考えてクライアントとイメージを擦り合わせていく。
「デザイナーってビジュアライズをする仕事というイメージが強いと思いますが、コンセプトを明確にするのが仕事の肝というか。紙面では見えないところのウエイトがすごく大きいですね。そのすべてに関われるところが醍醐味でもあり大変なところでもあります」
コパンでは手を動かしているときだけがデザインではなくて、紙面が出来上がるまでのコミュニケーションそのものがデザインなんだと思う。
伊藤さんはこんな話をしてくれた。

「細かいところに気を配れていると、一緒に働く人たちとの関係も良くなって撮影がスムーズにすすんだり、出来上がるものにも影響したりするんです」
より良いものをつくるために、できることは全てやる。それは、立ち振る舞いや人への接し方にも自然と滲み出ているようだ。
そんな姿勢や出してきた結果が評価されて、最近では新しいプロジェクトをはじめるときに指名を受けることもある。
「自分たちのつくったページにどれくらい反響があったのか、反応もダイレクトにわかります。きちんと売上につなげられたときはうれしいですし、仕事を通してスタッフさんたちやクライアントさんとの信頼関係ができていく瞬間が好きです」と野々内さん。

「最初はクライアントさんから細かい注文が入っていたのが、だんだんなくなって。最後には『お任せします』と言ってくれる。そこが同じものを共有できているという信頼の証だと思うんですよね。単純に仲良くなったとかではない、仕事を評価されての信頼がうれしいです」
関わる人が多く、距離も近いぶんプレッシャーや大変なことも多い。けれども、さまざまな視点から全体を俯瞰して物事を考えられるようになるそうだ。
加えて相手の言葉を掘り下げて考えながら、求められている以上のものを形にして返す力も身につく。
それはデザインを仕事にして生きていく上で、なによりも大切な力だと思います。
もう一人紹介したいのが、入社5年目のデザイナー、左光さんです。

決め手はなんだったのでしょうか。
「グラフィックデザインだけに特化している会社は結構ありますが、最初からそこだけに絞りたくないっていう思いがあったんです」
「コパンは人数も20名ほどだし、どんどん仕事を任せてもらえるように感じました。あとは一つの分野に特化していないので、よりたくさんのことを短い期間で吸収できるんじゃないかというのが決め手ですね」
実際に働いてみてどうですか。
「本当に1年目から、結構大事なページも任されるんですよ。まだ何も知らないのに、こんなに任せてくれるんだって、逆にちょっと怖くなっちゃうくらい」
はじめから大きな仕事を任せる背景には、いずれ独立できるくらいの力を身につけてほしいという想いと、それをフォローする先輩たちも指導をしながら自身のキャパシティを広げてほしいという想いがあると、石鍋さんは話していた。
社内の雰囲気についても教えてください。
「仕事の合間に集まって話すことは結構あります。なにかいいデザインができると、みんなで『いいのできたね!』って騒いでいる感じは、ちょっと学生のころみたいかな(笑)」

コパンはデザインのベースキャンプであり、お互いが良い刺激を受けながら磨いた力を外に出て発揮するための拠点でもある。
ちゃんと「人」が感じられる職場でした。
関わる人たちと真摯に向き合いながら想いを巡らせ、目の前のことに打ち込む。
そうすると自ずとまわりに心地よい関係性ができてきて、人としてもデザイナーとしても成長していけるのだと思います。
(2017/8/3 並木仁美)