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書き綴る、想いのそばに

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「ペンで紙に書く機会が減っている反面、その価値は上がってきていると思うんです。そのときの想いや空気感を閉じ込める、一緒に綴ることができるのが、紙に書くことの意味なんじゃないかって」

書くことの価値を伝えたい。そう話してくれたのは、カキモリの広瀬さんです。

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カキモリは東京・蔵前にある文具店。

表紙や中身、留め具を自由に選ぶオーダーノートや便箋をつくることができたり、好みのインクをつくるインクスタンドを併設していたり。「書く」ことの楽しさを知るきっかけをつくり、その価値を伝えるお店です。

今回募集するのはカキモリの新たな1歩、新しい店舗をつくるため一緒に働く人。

店頭に立ち販売をする人に加えて、店内のディスプレイ制作やイベントの企画、SNSを使った広報など、カキモリを訪れる人とのコミュニケーションを考えていく役割を担う人を探しています。

文房具を販売する、というよりも、書く人の想いを聞く、というほうが似合う仕事だと思います。

  
カキモリがある東京・蔵前は、古くから手工芸や革製品を扱う職人が集まっている町で、今も下町の雰囲気が漂っている。

最近は雑貨店やカフェが増え、年代も雰囲気もさまざまな人が行き交う姿を見かける。

朝10時。開店準備が進むなか、まずは代表の広瀬さんに話を伺います。

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広瀬さんの実家は群馬県高崎市の文具店。デジタル化が進み文房具を使う人が減るなか、書くことの価値を伝えたいと思い7年前にはじめたのがカキモリだった。

「ネットではできないことをやろうと思いました。専門店というよりは、書くことの楽しさを気軽に知ってもらえるような。少しずつですが、多くの方に来てもらえる場所になってきましたね」

店内にはセレクトされた筆記用具のほかに、20分ほどでできるオーダーノートをつくるための用紙や金具、オリジナルインクを使った万年筆などが並んでいる。

それぞれの商品にコメントが添えられていて、自分が使うものをじっくり考えることができる。時間をかけて選ぶから、より大切に使おうと愛着を持てるのかもしれない。

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「大きな変化は2年前、表参道にポップアップショップを出したことです。思っていたようにいかなくて、失敗からたくさんのことを学びました」

「当時は各地に店舗を増やしていこうと意気込んでいたんですが、売上を伸ばすことが目的になりすぎていたことに気がついたんです。それよりも僕らが大切にしたいのは、書くきっかけをつくること。そして書く価値を伝えていくことなんだって、改めて立ち返ることができました」

書くことの価値、ですか。

「たとえば手紙を読んだとき、書いた人の想いやその雰囲気も伝えることができる。自分で書いたノートを10年後にめくり返したとき、その瞬間に考えていたことを思い出せる。空気感を閉じ込める。紙に書くことで、いちばん大切にしたいところです」

書く人がかたどっていく文字や行間。インクのにじみ具合。選んだ紙の風合いやデザイン。

同じ文字でも、デジタルで打ち込むフォントには表現できない、空気をまとうことができるのが「書く」ということ。

「これは、人にしかできないことなんじゃないかって。この感覚を残していくためにも、書くことの価値をもっと伝えていかないといけないと思っています」

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とはいえ、カキモリにやってくる目的は人それぞれ違うもの。書くということよりも、オーダーノートをつくることで満足する人もいると思う。

「そうですね。書くことの価値は、実際に使うことによって実感できるものだと思っています。使うところまで提案できるように、今、新しいお店をつくる準備をしているところなんです」

新しいお店は、今の店舗から歩いて8分ほどの場所に構えることが決まった。

実際に書くことを体験できるワークショップを開いたり、ほかの人のノートの使い方を展示したり。「書くことのきっかけ」をちりばめた空間になるそうだ。

企画として入る人には、商品やサービスの企画に加え、店舗のディスプレイやイベントも考えてもらいたい。カキモリとしてはじめてのことも多いから、教えてもらうというよりは、自分で考えていく日々になると思う。

「店舗をどんどん増やしたいわけではなくて。自分たちのできる範囲で、伝えたいことの純度をより濃いものにしていくための場所をつくりたいんです」

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カキモリにある販売などの機能は、すべて新しい店舗に移る予定。今カキモリのある場所でも、並行してあらたな挑戦がはじまるそうだ。

「ここは手紙を切り口にしたお店にしたいと考えています。便箋に手紙を書いて、封をして、投函する。LINEで気軽にメッセージが送れる時代に、手紙は正直めんどうなことも多いですよね。でもそこは、カキモリが一番提案していかなくちゃいけないところだと思っていて」

「カキモリがいちばん大切にしていることを、より濃く伝えるスペースにしていきたい。売上だけで見たら、激減すると思うんですけどね(笑)でも、大切なことなんです」

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今の店舗で人気なのが、オーダーノートに使う紙に万年筆で試し書きができるスペース。

つるつると滑らかに書ける紙。ざらざらとしていてインクがにじんでいく紙。同じ紙でも、万年筆書くのとペンで書くのとは、文字がまとう空気が変わる。

「気軽に書くたのしさを感じていただけるので、やってよかったなって思いますね」

そう話してくれたのは、このスペースを提案し、実際にデザインをした村田さん。

ディスプレイのほかにも、商品の企画やパッケージデザインなど、店舗を支える役割を幅広く担っています。

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「幼稚園くらいのころから、毎日父親に手紙を書いていました。書いては自分の家のポストに入れる。帰ってきた父がポストを覗いて、ありがとうってちょっとうれしそうにするんです。その顔が見たくて毎日書いていたから、紙を使いすぎて怒られていたんですけどね」

今でも大切な人に手紙を書くのが好きだという村田さんは、もともとお客さんとしてカキモリを訪れていたんだそう。

ホームページでたまたま見かけた募集を見て入社。販売スタッフを経験した後に、商品の企画や店頭のしつらえなどの仕事を中心にするようになった。

具体的にはどんな仕事をしているんだろう。

紹介してくれたのは、オリジナルインクのパッケージをつくったときのこと。

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大切にしたのは、インクの色を表現する部分をベタ塗りの印刷にするのではなく、1つ1つ手書きで線を書いているところ。

「印刷するものはデジタルでつくられるので、もともとのインクの色がわかりにくいんじゃないかって。お客さまが実際に使ったときのことを想像できるのが1番いいと思うんです」

  
さまざまな仕事をしているけれど、村田さんはこれまでデザインや企画の仕事をした経験があるわけではなかったそう。

「実際に自分がつくったものが、気持ちを伝える道具になったり、お客さま自身のご褒美になる。誰かのうれしい気持ちにつながっていくことを意識して仕事をしています」

「商品をつくっていく上で悩むのは、この商品が数年後のカキモリにとってどうつながっていくかを考えるときですね」

数年後のカキモリ、ですか。

「流行りのようにすぐ売れなくなる商品をつくるのは、あんまり意味がないと思っていて。3年後、5年後の流れを考えたときに、大切にされているものかどうか。なによりも、書くことのきっかけをつくれているかを大切にしていきたいんです」

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村田さんはスタッフとして言われた仕事をしているというよりも、お店のことを考えて、自分から動いているように見える。

自由と言ってしまえばよく聞こえるかもしれないけれど、考えたことを自分で実践していくには、フットワークと勇気がいるようにも思う。

ほかのスタッフも、これまで経験してきたことは人それぞれ。今あるやりかたにとらわれず、お店をよりよくするため、柔軟に変化していく仲間が集まっているそうだ。

積極的に自分の考えたやり方を試している人、として紹介してもらったのが細谷さん。前回の日本仕事百貨での募集をきっかけに入社して、2ヶ月が経つところ。

少し照れながらも、柔らかな口調で話をしてくれる。

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「小さいころから自分の手を使って、ものをつくることが好きでした。テキスタイルの勉強をしながら、アパレルのアルバイトをして。人と接することも好きなんだと思って、百貨店に就職をしました」

働くうちに考えるようになったのは、商品にもっと自分の手を加えたり、提案をしていく余白が欲しいということ。

カキモリではオーダーノートをつくる行程で相談をされたり、その人に合わせた提案をこちらからすることも少なくないそうだ。

「話を聞いて、お客さんがどういう想いで選んでいるのかがわかっていると、同じ作業でも込める気持ちが変わります。自分にとっても、それがいいなと思って働いています」

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百貨店と聞くときっちりした接客をイメージするけれど、細谷さんはカキモリらしさを考えて、柔らかく声をかけるようにしているそう。

「たとえば『どんなペンをお探しなんですか?』なんて質問はいらないと思っています」

お店に行くと、よく聞かれるフレーズですよね。

「それってお客さまを見ていればわかることなんです。たとえばレターセットを選んでいたら『どんな人に手紙を書くんですか』とか。商品のことではなくて、その人が商品を手にとって、なにを想っているのか聞きたいんです」

先日インクの色を迷っている方に声をかけたところ、「亡くなった大切な人を想像しながら選んでいて」という答えが返ってきたそうだ。

言葉を綴る道具を選ぶということは、言葉にしたい想いがあるということ。

店内がお客さまでいっぱいになるほどいそがしい日もあるけれど、細谷さんはできるだけ想いを聞きながら、言葉を綴る道具を一緒に選んでいきたいそうだ。

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そんな話をしていたところで、開店時間がやってきた。

シャッターを上げると、あっという間に店内はお客さんでいっぱいになる。

たのしそうに友だち同士でオーダーノートの表紙を選ぶ女の子の横では、じっくりとインクを見比べる年配の男性の姿。

ここにいる人たちが、それぞれに書く想いを持っていることを想像してみる。ここは文具店というよりも、大切な時間をすごす空間なんだな、と感じる。

想いを書き綴る人に、そっと手を差し伸べる。そんな仕事だと思います。

(2017/9/14 中嶋希実)

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