※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
仕事と生活。デザインとお金。
ばらばらな価値観であっても、柔軟に考えてみたらうまくバランスできるかも。今回の取材ではそう感じました。

小さな店舗やオフィスの施工をメインに、空間デザインも行う建築会社です。
メンバーは、代表の中里さんと、施工と空間デザインを手がけるスタッフの2名。「仕事が生活のすべてでなくてもいいと思う」と話す二人は、仕事以外の時間も大事にした働き方をしていました。
そんな東京建築PLUSの仕事は、デザインと価格、そして工期のバランスがいいと評判なんだそうです。
今回は、2人と一緒に空間をデザインする人を募集します。
東日本橋の駅から、神田川へ向かって5分ほど歩く。通りには柳と紫陽花が植えられていて、どこか下町の雰囲気が残る場所。
ビルの細い階段をのぼって2階へ上がると、小さいながらもきれいに整頓されたシェアオフィスがありました。
お会いしたのは、代表の中里さん。
前々回の取材から2年ぶり。喫茶店へ移動してお話を伺います。

そこは社長が夕ご飯をつくってくれるような雰囲気のいい会社だったけれど、中里さんは独立のため、安定した会社を離れることにした。
「もっと楽しくできるんじゃないかなって思ったんです」
楽しくできる?
「生きるってことは、仕事だけではないですよね。長い人生なのに、仕事にあまりにも多くの時間を使ってしまうのは、どこか違和感があって…。仕事と仕事以外のところ、どちらもあったほうが楽しく生きられるんじゃないのかなって思います」
小さな内装管理の会社で経験を積み、独立して今年で4年目。
リピーターを中心に、店舗やオフィスなどのデザイン設計や什器製作、それに施工管理を請け負っている。

「たとえば、扉の蝶番は見えていてもいいのか、扉の内側に仕舞うのか。小さな違和感でも、毎日目にして触れていれば、知らず知らずのうちに積み重なってストレスになっていることもあると思うんです」
「あるべきところにあるべきものがある空間は、ひっかかりがなく、自然に感じられますよね。そうすると、そこで生活する人たちもみんな少しずつ雰囲気がよくなっていくんじゃないかなと思います」
中里さんの話は、どれも押しつけるところがない。「自分はこう感じる、いいと思っているんだけど、どうかな?」と相手の気持ちを尊重してくれる感じがする。
そんな雰囲気は、空間づくりにも現れていると思う。
「お客さんの意図をどこまで感じられるかってところがすごく大事ですよね」
意図?
「お客さんには、いろんな希望があると思うんです」
「たとえば、つくりたい空間やインテリアのイメージ、予算感、完成までにかかる時間の想定など。どこにどれくらいの比重を置いているのかは人それぞれです。その思いを汲んだ上で3つのバランスがとれると、お客さんに満足してもらえるのかなと感じます」

上がってしまった予算を解消するために、施工業者と現場をつくる職人さんたちの利益がぐっと圧縮されてしまうこともしばしばだった。
「でも、みんなが気持ちよく仕事できると、職人さんも丁寧に丁寧につくってくれます」

それは、素敵なデザインを諦めることではない。ちょっとした工夫を積み重ね、費用を抑えることで実現できるといいます。
その工夫は、ものづくりの現場を見ている施工管理だから知っていること。
今回募集する空間デザイナーは、中里さんたちから施工の現場を教わりつつ、みんなが幸せになるようなバランスを見つけてデザインしていきます。

そう考えていると、中里さんがこんなふうに話してくれた。
「思い通りにならないことは『しょうがない』っていったん自分で受け入れてみる。そこから、もう一歩なにかアプローチできることはないのかなって考えています。せっかくなら、できなかったことよりも、楽しいほうを見ていきたいですよね」
「デザイン、金額、工期のバランスを決めたら、あとはとにかく丁寧にやるだけです。できるだけ無駄な手間を省いて、こだわるところはこだわる。おかげで、作業もスムーズに進むようになりましたね」
だんだんと仕事の合間に生活の時間が重なり、境目がなくなってきたそう。
そんな働き方に共感して、昨年日本仕事百貨を通してスタッフが一人増えました。
空間デザインと施工管理を担当する戸田さんです。

けれど、ほんとうに建てたいものはお店や住宅など、自分の身近なもの。いろいろと建築会社を探すなかで、東京建築PLUSを知った。
「おそらく建築の現場って、規模が違ってもやることは同じなんです。現場に入ればホコリ臭いですし、汗かいてやらなきゃいけないことも多い」
「それを分かった上でどこで働こうかと考えたとき、やっぱり人や雰囲気、自分が生活する環境をうまくつくれるかどうかだと思ったんです」
実は戸田さん、もう一つの生業として服をつくっているそう。この日着ていた服も、自分でつくったもの。
「服づくりもしますし、ファッションショーや音楽イベントなども企画しています。もともと施工の仕事はイレギュラーな時間に対応することも多いので、仕事と休みの境目がないようなスタイルをつくりたかったんです」
入社してみて、どうでしたか?
「新鮮ですし、やりやすいですね。今は二人だからっていうのもありますけど、休みなども話しながら、本当に柔軟に仕事させてもらっています」
施工担当した店舗のユニフォームとしてエプロンを縫ったときは、ずっと自宅のアトリエで作業していたのだとか。

どんなふうにデザインと施工を進めているのだろう。尋ねてみると、中目黒にあるペルシャ絨毯などを取り扱うラグのショールームを紹介してくれた。
このときは、お店に合わせた什器の提案と製作を依頼されたそう。
「絨毯って、すごく重たいじゃないですか。こまめにディスプレイを変えたくても一人じゃレイアウトを変えられないし、すべてを重ねて収納していたら下のほうはなかなかお客さんに見てもらえない」
「いかに楽に入れ替えができるか。そこをお客さんと一緒に考えていきました」
椅子ほどの高さの平台をつくり、その上に絨毯を並べたり。平台の下にはローラー付きの台が収納されていて、すぐに引っ張り出せたり。鉄のパイプでつくったはしごのような鉄枠を使えば、壁に絨毯を飾れたり。

「アンティークの家具を買うこともできるけど、予算的に高くなってしまいます。この鉄パイプは職人さんにお願いして、加工してもらっているんです」
デザインの段階からそういった工夫ができるから、費用も抑えやすく、お客さんの希望にも沿いやすい。
どんなお店にいくのか、どんなものが好きなのかなど、会話を重ねながらイメージを共有していく。
「お客さんとの打ち合わせは、何度も何度もします。お客さんも最初からはっきりとしたイメージを描けているわけではないから、『こんなふうにしたい』という断片的な言葉や写真からスタートするんです」
「一回提案してみると、お客さんのほうでもイメージが刺激されて、後日『こういうのを置きたい』ってメールが届いたり、『やっぱりこういう雰囲気がいい』と望む方向がはっきりしてきたり。徐々に、一緒につくっていく感じですね」
一緒に、なんですね。
「そうですね。ころころ変わるのは大変だけど、極力叶えたいところはあります」
「『こういうのつくりたい』って言われたものを形にできるってたのしいですし、『やってよかった』って言われたらやっぱりうれしいんですよね」

二人とも、「建築が好きな人がいいかな」とのこと。
「あとは、建築以外に好きなことがある人ですかね。暮らしに幅があるというか。私たちもそうですけど、仕事だけを大事にしているわけではないので」と戸田さん。
「そうですね。とくにこうしなきゃいけないということはないので、柔軟にしていきたいですね」と中里さん。
「私は会社をどうしていきたいかってことに対して、関係性をフラットにしてきたいです。戸田さんと私は役職があるけど、それはべつによくて。…でも、まだ戸田さん、気をつかっているよね(笑)」

それも含めて二人とものづくりがしたいと思えたら、ぜひ会ってみてください。
ここには、生きるように働くことを楽しむ環境があると思います。
(2017/9/11 倉島友香)