※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
「こんどの週末は家の植木を植え替えようと思ってて。それを午前中にやったら、ピザ釜で肉を仕込んどいて、夜はバーベキューしようって」「俺はやっぱり、家って遊ぶためのひとつの道具だと思うのよ」
そう話すのは、米澤製材所の米澤政幸さん。

スキーやバイク、釣りやアウトドア系など、趣味はたくさん。
持ち前の好奇心やこだわりで、カナダから輸入した大きな木材でログハウスを建てたり、日本ではどこも扱っていない海外の水回り製品を取り揃えたりと、製材所の枠組みを超えて多様に事業を展開しています。
2018年の夏には、東京・蔵前にショールーム・オフィスをオープン予定。
今回は、そんな米澤製材所の富山にある本社で、家づくりをする人を募集します。職種は営業・営業事務・設計の3つです。
経験はあったほうがいいけれど、それ以上にこの会社のやっていることにワクワクしてくれるような人を求めています。
東京駅から北陸新幹線に乗って2時間半。
黒部宇奈月温泉駅に着くと、代表の米澤さんが車で迎えに来てくれた。

海も山も近く、川も平野もあって、まさにいいとこ取りをしたような住みやすい地域だと思う。
「ここは扇状地で、水もすごくきれいなのよ。やっぱ東京よりこっちのほうが気持ちいい。温泉はあるし、スキーやラフティングとか遊びのフィールドもたくさんあるからね」
「山菜も自分たちで取りに行くよ。夏は海に行ってさ、ホタルイカとるんだ」
ホタルイカの沖漬けをつくるには、とったばかりの生きたままのイカを漬けたほうが味は染み込んで美味しいらしい。ただ寄生虫があぶないから、そのあと2日間ほど冷凍させてから食べるのだとか。
そんな美味しい話で盛り上がっていると、あっという間に米澤製材所の事務所に到着した。

スギ、ヒノキ、イチョウ、トチ、メープル、ローズウッド、ブラックチェリー…
米澤製材所は県産材にこだわるだけでなく、ロサンゼルスやイタリア、チュニジアといった世界中から良質な木材を仕入れているという。

昔の入善町には、当たり前のように墨付けができる腕利きの大工がいて、そんな大工に木材を提供するために米澤製材所にも腕の立つ木挽き職人がたくさんいた。
時代が移り変わり、木材の需要が落ちると今度は家づくりをはじめ、富山県産の木材を使ったり、床から建具まで無垢材にこだわった在来工法の家を長年建ててきた。
そんな米澤製材所に大きな転機が訪れたのは、米澤さんが実家に戻って数年が経ったころ。
米澤さんは昔からログハウスが好きで、それで事業をはじめたのだとか。
「俺らが小さいころって、親父たちが別荘を持とうって時代だったの。うちの親父は持ってなかったけど、いろんなところに連れて行ってもらったときにログハウスを見たりして、いいなとずっと思ってて」
「こんどは大人になってカナダ・ウィスラーの別荘地に行ったときに、そこで次元の違うログハウスを見ちゃったんだよね。使ってる素材も見せ方も全然違う。たとえば外壁に波打った板を使うのなんて、当時の日本にはなかったんだよね。いいなと思ったけどなかったから、じゃあ自分でやるしかないねって」

そしてつくるからには、製材屋として木にこだわりたい。トーテムポールにも使われている、腐りにくく強靱なウェスタンレッドシーダーという木材を選び、なかでも樹齢150年以上のものをわざわざカナダから直接輸入している。
また本場以上に建物の化粧に気を使っているそう。ログハウスは大胆な見た目をしているけれど、組み上がった木材のほぼすべてが目に入る造りのため、実はかなり繊細に仕事しなければならないのだという。
「設計するときも気を使うよね。柱がデカイから、在来工法と同じ設計をしたら外壁のツラが揃わなくなったりする。そうするとみっともないからさ、柱の芯をずらすことが必要なの」
「うちは在来工法も和風も店舗も何でもやってきて、もともと和室が一番得意。そういうのをつくってきた経験があるから、やっぱり納め方にもこだわってるよ」
実際に、米澤製材所が手がけたログ系の住宅を見せてもらった。

もともとは会社のモデルハウスとして建てたもので、いまは米澤さんが自宅として住んでいるという。
中へ入ると、米澤さんの奥さんがモヒート風のドリンクを出してくれた。ミントは庭で摘み取ったばかりのものだ。
「この家はね、遊び勝手よくつくってるのよ」
庭のすぐ近くにはピザ釜が備えられている。
「フィレンツェに友人が住んでて、その人の家を見たときにいろいろ勉強になったの。テラコッタの釜とかいいなと思って。庭のパラソルもイタリア製で、そういうのも日本にないんだったら、直接入れようかって」
ほかにも、サウナ室や愛車のバイクを置くガレージもある。米澤さんが「家は遊ぶための道具」と言う意味がよく分かる。

海外製の高級水回り製品を揃えたブランド「KANEJIN」。イタリアのオリーブ材でつくる食器雑貨ブランド「Daily table」。
ログハウス同様、好きでやるからにはとことんやるのが米澤さん流。
KANEJINでは、海外のメーカーと一切コネもないところからのスタート。世界中の展示会を巡り廻ることからはじめ、14年前に東京・青山でショールームを出店。今や日本ではKANEJINでしかみることができない製品なども取り揃えている。

昨年に立ち上がったばかりのDaily tableでは、日本では珍しいイタリアのオリーブの木を使って、独特な材質を活かした食器をつくっている。
大型のルーター機械を導入し、これから製品ラインナップを充実させていくのだという。

「いい食器で、うまい飯食ったりしてさ。このモヒートグラスだって、ガラス工房の職人さんにオリジナルでつくってもらったのよ。そういうよさを、みんなにも知ってほしいよね」
米澤さんは、根っからの遊び上手なんだと思う。仕事も生活も全部ひっくるめて、遊ぶように楽しんでいる。
そんな米澤さんに引き寄せられてか、家をつくりたいというお客さんは同じように遊び心があったり、こだわりの強い人が多いという。
「最近、白馬でログハウスとかを建てることが増えてて、そのきっかけになったのがミラーさんっていう海外籍の方のお客さんなの。実物を見たいって富山まで奥さんと見に来てさ」
最初は構造フレームだけを建ててほしいという依頼だったそう。けど、米澤さんの自宅にBBQで招いたら、すべてをお願いしたいという話になった。
きっとお客さんは、家を思う存分楽しんでいる米澤さんを見て、全部任せようという気持ちになったのだと思う。

昨年にも豪華な住宅を手掛け、白馬でログハウスづくりの仕事が増え続けているという。
「製材所って丸太を製材にするのが仕事だけど、今はそれだけじゃご飯食べられない。住宅業だって本当に大変だけど、おかげさんでここまで来ることができた」
「仕事だから当然数字に追われる部分はあるよ。でも、そのなかでも楽しく仕事したいよね。みんな東京に出て行って地方は人手不足だけど、東京ではこういうのできないと思うんだ。うちがやってることを面白がってくれる人がいてくれたら理想だな」
たしかに、米澤製材所は他社では真似できないようなことを手掛けていると思う。
在来工法やログハウスなどつくる家の種類は広く、一部リフォームから新築まで、実に多様な案件を自社で一貫して手掛けている。
実際に仕事はどんなふうに進んでいくのだろう。話を伺ったのは、スタッフの上田さん。

上田さんは、住宅営業といえどもプランづくりまで行うのが、米澤製材所の大きな特徴だという。
まずお客さんの要望を聞きだしながら、具体的にプランに落とし込んでいくそう。
「リビングの広さはどうするか、子ども部屋は何部屋ほしいか、寝室は1階と2階どちらにするか。最初はいろんなお話を交えながら詳細をお聞きしていきます」
「ただ、お客さまは家づくりを何回もしたことがあるわけではないですから、思っていることをなかなかうまく伝えられないこともある。そういうときは、実際にモデルハウスに来ていただいてイメージをつかんでいただくんです」
何度も打ち合わせを重ね、できあがったプランを今度は設計担当が詳細を詰めていく。
そうして次は現場管理へとバトンタッチされ、工事が進んでいく。
「普通のハウスメーカーだったらやらないと思うのが、ある程度家ができあがってからも、お客さんと相談して建具などを変更したりするんです。たとえば収納に関しても、固定式から移動式の棚に変えたりとか、引き出しの寸法を細かく調整したりとか」
「やっぱりお客さまは実際の空間に立ってみないと、広さや使い勝手がわからないと思うんですよね。予算内で収まるようにしながら、お客さまと相談して進めています」
手間も時間もかかるから、普通だったらやらないことかもしれない。でも、お客さんに暮らしを本当に楽しんでもらうために、とことんこだわる。

製材屋として木のことは当然詳しくないといけないし、初心者だからといって米澤さんは家づくりに決して甘くはない。
覚えることもたくさんあるだろうけど、それだけ打ち込み甲斐のある仕事だと思う。
「何かひとつでも、こだわりのある人に来てほしいです。そのほうが広がりがあると思う。うちの会社も木にこだわってテーブルやカトラリーへと、どんどん広がっているので」
もともと趣味があったり、生活を楽しんでいる人のほうが、お客さんにも幅広く提案できると思う。
ほかの事業に興味があれば、ゆくゆくは住宅事業だけに縛られずKANEJINやDaily tableで活躍することもできるそう。米澤さんも、そんな柔軟でユニークな人を求めています。

こういった食の楽しみ方ひとつにしても、米澤さんから教わると自分自身の幅は広がっていくと思う。
遊び上手は仕事上手。米澤さんを見ているとそう思います。
(2017/6/20 取材 森田曜光)