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「あの人が好きそうだな」そんな思いで誰かをお店に連れて行ったり、お土産を買って帰ったり。
相手の好みにぴったりあって喜んでもらえたら、こちらもうれしくなる。
株式会社ミルデザインで働く喜びは、ちょっとその感覚に似ているかもしれません。
イベントのディレクションや、企業のブランディング、プロモーションなどを手がけるミルデザイン。
その名前から、デザイナーがいる会社?と思われることもあるけど、この会社でデザインするのは「モノ」ではなく、人と人のつながりです。
デザイナーやメーカー、ショップ、メディアなど、人と人をつなげてプロジェクトを形にしていく仕事。
まずはメディアに向けてプロジェクトの情報発信する、PRの仕事から関わることになります。
そこからはじまって、ゆくゆくはひとりでプロジェクトを進行してみたい。そんな意欲ある人を探しています。
インターンシップという枠もあるので、学生さんも、未経験の人も、クリエイティブ業界で働くことに関心がある人はぜひ読んでください。
東京・青山
外苑前駅から、インテリアのショールームを横目に歩いて5分ほど。ミルデザインの事務所が入る、マンションタイプのビルに到着。
事務所では、ミルデザインのスタッフ4人のほか、秋に開催されるDESIGNART(デザイナート)というイベントの実行委員も一緒に仕事をしている。
まずは、代表の青木さんに話を聞いてみる。
「僕たちの仕事は、イベントやプロモーションなど、形態としては色々あるんです。共通して伝えたいのは、真摯にものづくりをしている人のこと。自分が現場で味わった感動を、その場にいない人にもわかるように伝えることが大切なんです」
ものづくりをしている人。海外のアーティストのこともあれば、日本の伝統を受け継ぐ職人のこともある。
「今は、京都にある老舗の仏壇・仏具メーカーと仕事をしているんですよ」
仏壇・仏具、ですか。
「仏壇や仏具っていうと、今の生活には親しみにくいものというイメージもありますよね。実際に販売数も減ってるんです」
たしかに祖父母の家に行って手を合わせるくらい。
今は法事のような宗教行事と結びつくことが多い仏壇。もともとは日常の中で神仏や大切な人を思い出し、冥福を祈ったり、感謝したり、向き合うための心の拠りどころのような役割があった。
祈ることで利他的になれたり、人生により前向きになれる
そんな日本の文化を、このまま廃れさせるのはもったいない。
「京都は、神社仏閣がまだ人と近いところにある。だから全国の寺社とか、伝統的なものづくりをポジティブに変えていくために、いま京都から新しい提案をすることはとても意味があるんです」
もっと生活に馴染む仏具のあり方を。
江戸時代から続く仏壇・仏具屋さんは、2017年に店舗をリニューアルして、大きな一歩を踏み出した。
これから、現代的な暮らしにあうアイテムをつくるべく、海外の著名デザイナーを交えたプロジェクトが進んでいる。
「このプロジェクトのゴールはプロダクトを完成させるだけではなく、京都の職人さんがつくる“本物”を通して感謝が伝播する日本のよき文化を定着させることです」
デザイナーだけでなく、メディアやバイヤー、ショップなど、いろんな人がバトンをつなぐことで、ものづくりの魅力をもっと遠くまで届けられる。
青木さんたちの仕事は、その流れをデザインすることだ。
人と人の間をつなぐ仕事。
職種も視点も違う人たちをまとめる中で、気をつけていることはありますか?
「どんなプロジェクトでも主役はクリエイターやメーカーなどつくり手の皆さんなんです。だから、僕たちは一歩引いたところから、どうすればみんなが気持ちよく仕事ができるか考えていく必要がある」
一歩引いたところから。
そう話す青木さんも、もともとはファッションデザインを学ぶ学生だった。
「学生のころ、卒業制作では布じゃなくて帆立貝でドレスをつくって、学内でも話題になりました。みんながミシンで縫ってる最中に、僕だけドリルで貝に穴開ける作業をしてました(笑)」
コンセプチュアルなテーマや表現に取り組んだ学生時代。
NHKの番組の衣装や、モダンダンスの衣装を制作したり、つくる楽しさもたくさん体験してきた。
なぜ、つくることではなく、つなぐことを仕事に選んだのだろう。
「うまく人がつながると、ひとりではつくれないような面白いものができるんです。それを僕が実感したのは、DESIGNTIDE(デザインタイド)っていうイベントのディレクターを務めたことがきっかけでした」
全体の進行管理をしたり、みんなが気持ち良く動けるようにコミュニケーションをとったり。
クリエイターが最大限の力を発揮するためには、潤滑油のような役割をする人が必要だった。
その経験が、「人をつなぐ仕事」の原点になっている。
誰と誰を結びつけるか。
もちろん人脈の広さも大切だけど、相性を見極めるセンスもいる。
青木さんは、普段どんなふうに組み合わせを考えているんだろう。
「僕の場合は、デザイナーやアーティスト、メーカーや、場所のようなネットワークが、頭の中にプカプカ浮遊している感じかな。そこに、何か核になるキーワードが入ってくると、自然と思い浮かぶ人がいるんです」
「お料理にも似ているかもしれない。このスープに、どんな具材があうだろうって考えるような」
アイデアを絞り出すというより、自然に思い浮かぶ感じなんですね。
「それに、目標とか、やりたいことで共通項がある人たちなら、僕らが一から十までディレクションしなくても、出会って意思疎通をした瞬間にスムーズに進んでいくんですよ」
簡単そうにも聞こえるけど、一人ひとりのことをよく知っているから為せる技。
相手のことを知るために、青木さんは普段から心がけていることがある。
「何が好きなのか、何を目指しているのかはもちろん、屈託のない話まで聞くんです。一緒にお酒を交わしたり、メールやSNSでやりとりしたり、インタビュー記事を読んだり。普段からそういう姿勢でいると、ふとタイミングがきたときに、いきなり最高の組み合わせを思いつくことがありますよ」
誰かに会うとすぐ、その人に合いそうなメーカーやブランドが思い浮かぶ。実際に自分でそのメーカーの商品を買って届けることもあるそう。
「青木さんの、そういう行動力には驚かされることも多いんです」
そう話してくれたのは入社2年目の島田さん。今はプロジェクトのマネージメントやPRを担当している。
入社のきっかけは、2016年に掲載された日本仕事百貨の記事。
「記事の中で旭川デザインウィーク(ADW)のことが紹介されていたんです。わたしは旭川出身で、偶然その年のADWを見に行っていたから、気になって」
ADWの前身である旭川家具産地展は、もともとプロ向けの展示会として、地元で60回以上回を重ねてきた。
2015年からミルデザインがディレクションに加わり、名称だけでなくコンテンツもリニューアル。
家具はもちろん、より良い暮らしを提案するコンテンツとして、デザインやアートも紹介されている。
近隣の工場をめぐるツアーを企画したり、「家具の街・旭川」の楽しみ方を多角的に伝えるようになった。
街づくりのヒントを求めて、来場する人も多い。
2016年のADWを訪れたとき、島田さんは前職の家具量販店で勤務をしていた。
「地元に貢献したくて札幌に本社のある会社に就職したんですが、自分で何か表現をしてみたいという思いもあって、モヤモヤしていたんです。そんなとき記事を読んで、こんな関わり方もあるんだなと思って」
転職活動に際して、応募したのはミルデザインだけだった。
「不安はあったんですけど、ここしかないと思ったから。落ちたらそのとき考えようって」
ADWがきっかけでミルデザインに入社した島田さん。1年後には、自分がそのPRを担当することになった。
来場者として見たときと、どんな違いがありましたか?
「外からだときれいな部分しか見えないけれど、予算管理や、集客、いろんなところに気を配ってはじめてイベントができているんだなって実感しました」
PR担当の島田さんは、プレスリリースに見どころをわかりやすくまとめ、メディアにアプローチをしていった。
「来たことがない人には、行ってみたいと思ってもらう。常連さんには去年とは違う発見があるように。伝える相手によって、視点を変えていくことも大切です」
「建築やデザインなど同じジャンルの雑誌でも、それぞれ好みが違うんです。だから、メディアごとに旭川ならではの楽しみ方を体験してもらえるように考えています」
旭川市の周辺のエリアも含めた工場見学ツアーのようなイベントはもちろん、普段は多忙なデザイナーと親密に話ができるのも、旭川ならでは。
プレスだけでなく、メーカー、デザイナーなど、多くの人のアポイントを調整したり、スケジュールを管理したり。細やかな気配りも必要だ。
「PRが未経験だったので不安はありましたけど、好きなことに関われる充実感があって、大変さは苦にならなかったです」
最初は不安だったPRの仕事。今はどうですか?
「どんな案件も、完全に一人でやるわけではないし、青木さんもアドバイスをくれます。『この人をつないだらいいんじゃない?』って。知っている人同士がつながって、新しいものが生まれる、それで喜んでもらえる仕事って本当におもしろいです」
前職では、「何か表現してみたい」という思いを、どうやって形にしたらいいか迷っていたという島田さん。
今は、「自分でプロジェクトのディレクションをしてみたい」という目標がある。
ミルデザインでは、島田さんのように未経験からスキルを身につけていくだけでなく、インターンから挑戦するという道もある。
資料づくりや調べ物など、仕事の手伝いをすることで、業界で活躍している人のことを学び、感覚を身につけていくこともできる。デザインやアイデアがどうやって世の中にリリースされているか、臨場感をもって知ることもできる。
人が交わり、つながった先に、ひとりでは味わえない喜びがある仕事だと思いました。
(2018/5/1 取材 高橋佑香子)