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デザインやアートなど、クリエイティブな仕事をしたい。そう思って仕事を探しているとき、「実務経験3年以上」のような条件が壁になって、最初の一歩が踏み出せないことがある。
とはいえ、はじめはみんな未経験者。どこかに入口があるはず。
業界で活躍している人はどうやって最初のきっかけをつかんだんだろう。
この記事は、そんな疑問に対するヒントになるかもしれません。
今年の10月に東京で開催される、DESIGNART TOKYO 2018というイベントのボランティアの募集です。

2017年から始まったイベントDESIGNART TOKYOは、デザイン、アート、のような分野の垣根を越えて、暮らしの中に感動を取り込むことを目指している。
発起人となったのは、工芸、グラフィック、建築、インテリア、デジタルメディアなど、様々なジャンルの第一線で働く人たち。
共催者を含めればファッションやフードまで、まさにクリエイティブ業界を網羅するようなメンバーでイベントを運営しています。
作品を見るだけでなく、買うことができたり、トークイベントでアーティストに出会えたり。
いろんなジャンルの人が関わっているから、分野の垣根を超えた出会いや交流も多い。
ボランティアを通じて実際に仕事のきっかけを見つけた人もいます。
デザイン業界で働きたい人も、アーティストを目指す人も、ぜひ読んでください。もちろん、クリエイティブ業界で働くつもりがない人も歓迎です。
東京・青山
DESIGNARTの発起人のひとり、青木さんを訪ねてMIRU DESIGNの事務所へ。
2017年のブックレットを見ながら話を聞く。

東京の街を歩きながら楽しむイベントなので、悪天候のダメージはあったものの、来場者はのべ40,000人を超えた。
会場になるのは、青山、表参道、代官山、渋谷、六本木、5つのエリアに点在する商業施設やブティックなど72箇所だ。

あえて、ギャラリー以外の場所にも作品を展示する。
DESIGNARTが大切にしているのは、美しいものを見に出かけるだけではなく、そこで出会った感動を暮らしに取り込むこと。
つまり、買うという行為を含めて、体験してほしいという意図がある。
「ギャラリーで買うと敷居が高いんだけど、普段行くお店にアートが並んでいると、服を見るのと同じ感覚で見られる。気に入ったものを買うことへの間口を広げたかったんです」
「僕も、去年これを買ったんですよ」と、青木さんがおもむろに、そこにあった作品を見せてくれた。

話を聞いてみると、本のページを切り取って樹脂で固めたもの。
本来、角を揃えて綴じられているべきページが、本の上に立ち上がって、ダイナミックな動きで静止している。
もはや中身を読むことはできないのに、本としての存在感がある。
見慣れたモチーフが、全然知らない姿で見えてくるのが新鮮でおもしろい。
「これ、いいでしょ。普段はアートユニット、Nerhol (ネルホル)で活動している飯田さんっていう作家が作ったんです」
話しながら、オブジェの置き方を調整したりする青木さん。その仕草からも作品への愛着が感じられる。
「好きなアート作品が手元にあると、恋人やペットと過ごしているみたいに幸せな気持ちになれる。DESIGNARTは街の中で恋人探しとか、宝探しをするみたいなイベントなんです」
宝探し。
気に入ったアートを自分の宝物にできる。そう考えると気持ちが作品に近づく気がした。
それに、街の中だから、ちょっと解放的な気持ちにもなれる。
環境が変わることで、視点は変わる。
それはアーティストや会場となるブランドにとっても同じこと。会場の数だけ、出会いと発見がある。
若手アーティストと、格式高い老舗ブランド。
海外アパレルと、日本の伝統工芸。

若手にとっては、名前を知ってもらうきっかけにもなる。
「いろんなことが混ざり合って、文化が混沌としながら成長していくことが、東京らしさでもあると思うんです」
クリエイティブ業界の人たちが、お互いの領域をもっと自由に行き来するようになれば、東京はもっとワクワクする街になる。
頷きながら、一緒に話を聞いているのが実行委員長の谷川さん。

昨年のDESIGNARTが終わり、突き動かされるように実行委員長に名乗り出た。
「デザインとアート。まさにこれだ、と思ったんです。僕はアートの感覚をデザインに置き換えて考えてみたいと思っていて」
アートをデザインに置き換える?
「アートって、感動することもあれば、何かを深く考えさせられることもある。ものを見て、それに“やられてしまう”、みたいな感じってデザインでも実現できるんじゃないかと思ったんです」
たしかに、プロダクトやインテリアのようなデザインでも、機能と美しさが調和していたり、それによって空間が印象的に演出されているのを見ると、感動することがある。
一方、アートはやっぱりコンセプトを理解した上で楽しむもの、というイメージも強い。
アートとデザインを同じ感覚で楽しむことはできるのだろうか。
「現代アートは特に、難しそうに思われがちだけど、きれいだなとか、変な形だなとか、直感で楽しめる部分もあっていいんです」

見ている人がアーティストから直接話を聞けることもあるし、見ている人のリアクションからアーティストが刺激を受けることもある。
「ものづくりをしている人だけがクリエイターなのではなくて、街で見ている人たちもお互いに影響を与え合えると思うんです」
DESIGNARTでは、買うという行為を通じて、一般の人もアーティストを評価することができる。
買うことは、好きなアーティストに一票を投じることでもある。
ここで昨年、あるショップで《アマランス チェア》という作品を買った人の話に。

皮革をアマランスで鮮やかに染め、肥満体をイメージさせるふっくらとしたフォルムに仕上げた椅子。
食に対する様々な問題提起を含んだ、メッセージ性の強い作品だ。
それを個人が買うということ。
美しい花の絵を家に置きたいという感覚とはちょっと違う。
購入した50代男性は、「今、買っておかないと後悔する」という強い気持ちだったそうだ。
アーティストの将来性も見込んだ上での買い物だったのかもしれない。
誰もがアートを楽しめるだけでなく、アーティストへ評価を伝えられる。
ブティックのお客さんが、キュレーターやプロデューサーのような役割になることもある。
DESIGNARTでは当たり前のように、普段とは違う立場で人が出会い、新しい接点が生まれている。

昨年のことを青木さんはこんなふうに振り返る。
「僕たちは仕事柄、クリエイティブ業界のいろんな情報が入って来るし、発起人や関係者も含めたらいろんな業界の人がいるので、就職先を探しているっていう子には『それならここがいいんじゃない?』みたいなアドバイスもしましたね」
業界の知り合いは、青木さんにとって大切な仕事相手。
そこに若い人を紹介できるのも、一緒に何かを成し遂げた信頼関係があるからこそ。
ボランティアの仕事はパーティの運営補助や印刷物の手配など、いわば縁の下の力持ち。
「100件以上のホテルやカフェに電話して、ブックレットの配布協力をお願いしたり。ボランティアの方々の力がなかったら間に合わなかったと思います」
「去年参加してくれたのは、学生さんから30代前半くらいのメンバーで、みんな何かチャンスを掴みたいとか、新しい境地を見てみたいっていう意欲があった。覚悟みたいなものも感じられましたね」
覚悟。
「覚悟がないと、どうしても要領よくやろうっていうずるさが見えてしまう。覚悟がある人は情熱が伝わるから、未熟な部分があっても誰かが手を差し伸べてくれることが多いんです。それはプロになってからも同じですね」
DESIGNARTの活動には、青木さん自身の覚悟も示されている。
それは、今までのインディペンデント型デザインイベントとしては珍しく、DESIGNARTのために法人を立ち上げて活動していること。
一過性のイベントではなく30年続く社会的な活動として育てたいという思いからだ。

準備も佳境に差し掛かった、8月。再び事務局を訪ねると、6月からボランティアとして活動を始めた方に会うことができました。

ちょうど春に前職を退職し、就職活動の期間を利用して活動に参加している。
「社会人になってからデザインの勉強をして、以前は業界の仕事を目指していたこともあったんですが、経験がネックになってなかなか実務に就くのは難しくて。そんなときに、この活動を知って、面白そうだなと思ってはじめたんです」
今は、出展者の情報をリストアップしたり、申請書などの手続きをしたり。前職の事務経験を生かして、イベントに関わっている。
今はまだデータだけで見ているアーティストや作品のこと。これから本番に向けて、それらが形になっていくのが楽しみだと話してくれた。
「ここにいると、本当にいろんな情報が入ってくるんです。データを見ているだけでも、こんなアーティストがいるんだ、って発見があります。スタッフの方からも、いろんなイベントのことを教えてもらったり」
「以前から美術館には絵を見に行ったりしていたんですが、最近は参加型のイベントに行くようになったり、新しい楽しみを見つけられた気がします」
現在、DESIGNARTの活動と並行して、就職活動も続けているという川口さん。
以前は、デザインの仕事は難しいと諦めていたものの、ボランティアを通じて少しずつ視野が広がってきた。
「必ずしもデザイナーにならなくても、こうして事務やショップの運営とか、自分の経験を生かせることで、業界に関わることもできるんだなって、前向きに捉えることができるようになりました」
人との出会いだけでなく、自分の中にも新しい可能性を発見できる。
そんなきっかけになるかもしれません。
(2018/4/12 取材、2018/8/29 更新 高橋佑香子)