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時間をかけて向き合うほど
風合い豊かになる布のように
人と暮らしを育てる

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

自分が思っていたのと、違う仕事を任されたとき。

戸惑いながらも前向きに人に相談したり、いろいろ調べて試行錯誤してみたり。

そういう時間をあとから振り返ると、いい経験だったと思えることも多い。

むしろ、少し遠回りをしたほうが、長い目で見ると成長できるのかもしれません。

今回の取材を通して、そんなことを感じました。

有限会社 井上企画・幡(ばん)は、麻や蚊帳生地を使って、テーブルウェアや服飾雑貨をつくっている会社です。奈良近郊にある4つの直営店と、オンラインショップを運営しているほか、卸として全国に製品を届けています。

今回は、営業・企画の担当者と、店舗スタッフを募集します。

どちらも、最初は本社の出荷業務から。いずれは、会社のさまざまな業務に関わっていくことになるそうです。

経験に応じてひとつずつ。ものづくりの仕事の流れを覚えることができると思います。

近鉄奈良駅から、歩いて15分ほど。

観光客で賑わう博物館や公園の前を過ぎて、幡・INOUE東大寺店へ。

お店のカフェで代表の林田さんに話を聞きました。

丁寧な物腰を感じつつ、話してみるととても気さくな方。

「私たちは、製品そのものというより、豊かな衣食住をトータルで提案していきたいんです」

幡では、奈良にある4つの直営店それぞれにカフェが併設されている。

地元の契約農家から仕入れた野菜や古代米を使った食事、“藍”や“山吹”など名前の響きまで美しい色のテーブルウェア。衣服の手触りの良さや、小さな刺繍にちょっと心和む瞬間。

機能的にただ消費されるものではなく、忙しい生活のなかにちょっとした豊かさを感じられる。

季節感のある装いも、そんな喜びのひとつ。

「暑い夏は、みんな蚊帳生地の服を喜んでくださるんです」

糸と糸の間に隙間ができるように織られた“蚊帳”は、奈良で昔から生産されていた生地。

“空気は通すが、蚊は通さない”と言われるように、とても通気性がいい。

「織りあがったときは糊が効いて、すごくパリッとしているんです。それが何度か洗っているうちに、だんだん柔らかくなっていく。もともと、この生地でふきんをつくっていて、身につけたら気持ちいいだろうなと思って、洋服をつくってみたんです」

林田さんが見せてくれたのは、蚊帳の洋服をつくりはじめた8年前のファーストサンプル。

何度も洗われて、見ただけでも柔らかい質感が伝わってくる。

実際に触ってみると、思った以上に柔らかい。生地の中に空気の層があるみたい。

ふんわりと肌を包み込むような蚊帳の服。

もともとは服のための生地ではないので、最初はいろんな試行錯誤があったそう。

糸の隙間が大きい織地なので、普通の洋服のように曲線的にカットをすると伸びてしまう。それに、布端を処理するためのロックミシンが使えず、縫製にも時間がかかる。

「従来の蚊帳生地では洋服にできなくて、糸の細さや生地の密度を一つひとつ工場と相談してつくりました」

本当に蚊帳で洋服ができるのか、そして、それが売れるのか。最初は社内でも半信半疑だった。

それが今では、蚊帳の製品だけで1冊のカタログができるほど、製品の種類も増えている。

その着こなしも人によって様々。たとえば、普段着として考案した商品を、お客さんはもっと自由なコーディネートで楽しんでくれる。

蚊帳の服の世界はどんどん広がっている。

林田さんはお店に出て、それを見るのが楽しみなのだそう。

「蚊帳はすごく柔らかい素材なんですが、ネットに入れれば洗濯機で洗えます。そのほうが、均一に糊が落ちて風合いもよくなるんです」

「忙しい毎日のなかで、自分の時間を持つことも豊かな暮らしには必要なことだから、手間をかけずに付き合えるのも蚊帳の魅力だと思います」

丁寧な暮らしに憧れはあっても、忙しい日々のなかでそれを実現することは難しく、プレッシャーに感じてしまう人もいる。

子育てをしながら、仕事を続けてきた林田さんの“暮らし”に対する考えはすごくバランスが良く、人にも優しい。

日本の伝統や風土にあった美意識と、現代の生活にフィットするような衣食住を提案する、井上企画・幡。

もともとはカメラマンであった林田さんのお父さんと、奈良の麻問屋に生まれたお母さんが、日本の美しいものを生活のなかで提案しようと31年前にはじめた会社だった。

林田さん自身は大学でインテリアデザインを専攻。別の会社を経験したのち、営業を手伝うかたちで入社した。

「子どものころから、『自分でつくったものをお客さんに直接届けられる、お店の仕事っていいな』という思いで両親を見ていました。一方で、もっと広く届けるために、展示会とかに出てみたらって提案したんです」

実際に東京の展示会に出展してみると、バイヤーさんと交流が生まれたり、商談でもらったコメントを次の企画に反映できたり、商品づくりにも新しい循環が生まれるようになった。

「展示会では製品を紹介するだけじゃなくて、OEMの仕事を受けることもあります。これから営業として働く人も、企画や生産のノウハウを知った上で、その場で提案ができたほうがいいですね」

井上企画・幡では、営業でも販売でも、社員として入社するとまず本社で出荷の仕事からはじめるのだそう。製品を一つひとつ手に取りながら、取引先のことや仕事の流れを覚えていく。

「小さい会社だからこそ、会社全体を知ることができる。それを前向きにとらえてくれるような人だったら、うちの会社はすごく楽しめるんじゃないかなと思います」

企画や営業、それだけでも結構大きな役割。加えて会社全体の仕事を覚えるって少し大変そう。

「若いころって、年長のお客さんと会うだけでも緊張して、うまく話せなかったりしますよね。だから、いきなり全部の仕事をやって、っていうんじゃなくて、最初は出荷を通してお客さんのことを知る。次は配達で少しご挨拶に行ったり。そうやって少しずつ仕事を覚えて、3年くらいで、独り立ちできるようになってくれたらいいなと思います」

「会社って、ひとつの家族の中に入るようなものなので、社員を大切に育てたいなと思っています」

実際に働いている人にも話を聞くために、東大寺店から車で10分ほどのところにある本社に連れてきてもらった。

少し高台の場所で、緑も多く気持ちがいい。近鉄奈良駅からのバスは本数が少ないので、社員の多くは自転車や車で通勤しているのだとか。

本社で話を聞いたのは、1年前の日本仕事百貨の記事でも紹介した松原さん。そのころは入社2年目。はじめての奈良での生活や、店舗での研修の話をしてくれていた。

この1年間で、出荷業務やオンラインの仕事、いろんなことを経験しながら、ひとつずつ会社の仕事を覚えてきた。最近はずっとやりたかった企画の仕事にも関わるようになったのだとか。

「今季から自分のデザインしたバッグがカタログに載るようになったんです」

「元からあったシリーズの展開で、色違いをデザインしたんです。シリーズの雰囲気は残しつつ、新色の赤に合わせて可愛らしく見えるように工夫しました」

製品に使われているのは、中国で手織りされた生地。今年の6月、松原さんは林田さんと一緒に中国へ出張して、麻の生地を織っている職人さんたちに会いに行った。

「上海から飛行機や内陸鉄道を使って3時間くらいかかる農村で、農作業の合間に機織りをしている人たちなんです。本業が忙しいと機織りに手が回らないとか、そんな話も聞きました」

麻の繊維に一本ずつよりをかけて糸をつくるところから、すべて手作業でつくられたもの。

「そうやって、時間をかけてつくっているところを見ると、無駄にはできないなっていう気持ちが強くなりました」

ものづくりが好きでこの会社に入ったという松原さん。企画に携わるようになってからも、これまで続けてきた出荷や、オンラインの仕事も継続したいと話す。

「1年経験してみると、だんだん流れがわかってきます。それに企画をやってみてはじめて、今まで経験してきた出荷や店舗の仕事が全部つながっていたんだとわかったんです。だから、いきなり企画だけをやるよりいいんじゃないかな」

出荷で商品棚を見ていると、季節ごとに人気のある商品がわかる。店舗に立てば、商品を愛用してくれるお客さんのコーディネートから、あらためて魅力を知ることもある。

企画以外の仕事でもアンテナを張って吸収しようとする姿勢が、ものづくりの役に立っているんだと思う。

松原さんと同期入社した鬼頭さんも、同じように企画志望で入社した。

「雑貨のデザインがしたくて入ったので、1年目で店舗に研修に行くことになったときは、正直少し戸惑いました」

「特にカフェは未経験で、教えてくださる方も大変だったと思います。でもみんな優しくて、一緒に新メニューを試食したり、楽しい思い出もたくさんあります」

手際よく盛り付けるための段取りや仕事の効率、お客さんに接するときのホスピタリティ。企画やデザインの仕事とは違っても、社会人としてお店で学ぶことは多かったそう。

「店舗で先輩によく言われたのは、『人と接するときは緊張感を持って』ということ。言葉遣いとか、所作とか、先輩を見て真似しながら覚えていきました」

鬼頭さんは、半年間の店舗での研修を終えて本社に戻った。それからは、商品計画にも関わりながら、カタログやDMなどの印刷物の制作を担当している。

「印刷物のデザインをするのもはじめてで、最初は不安だったんですが、実際にやってみたら楽しくて。自分はこういう作業が好きなんだって、気づくこともできました」

「最初からひとつの仕事だけやりたいっていう人よりも、任されたことをまずやってみようっていう気持ちがある人の方が、うちの会社には向いているかもしれないですね」

鬼頭さんは今でも月に2回は店舗で接客の仕事をしている。

「お店にいるときに、お客さんが自分のつくったDMを手にとってくれたり、ときどき褒めてくださることもあって、やりがいを感じるようになりました。うちの会社のことを知らない人にも、分かりやすいものをつくれるように、工夫していきたいなと思っています」

少し遠回りに感じられても、実際に働いてみてわかることがある。

自分の長所や得意分野を、時間をかけて育てていける。そんな仕事だと思いました。

(2018/7/18 取材 高橋佑香子)

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