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生徒の将来、島の未来に
必要な教育って?
答えのないまなび

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

明確な答えがあるわけでも、すぐに成果が表れるわけでもない。

それでも向き合わずにはいられないこと。

そこに、その人にとっての大事な何かがあるのかもしれません。

沖縄の離島・久米島で、子どもたちや島の未来を見据え、まちの教育に取り組む人たちがいます。

地域をフィールドにした教育を通じて、子どもたちのまちに対する愛着を育み、継続的な地域づくりを行う。

教育から地域活性化を目指す「高校魅力化プロジェクト」は今、全国で広がっています。

プロジェクトの柱となるのは、子どもたちが将来について考える機会をつくる公営塾の運営、地域の外からの生徒を受け入れる寮の設置、そして高校の授業の充実。

沖縄・久米島高校では、2013年から高校魅力化プロジェクトを進めてきました。

2015年に高校生を対象にした町営塾を立ち上げ、翌年からは中学校の学習支援もはじめています。

とはいえ、プロジェクトはまだ発展途上のよう。

悩みながらも対話を重ねて、より良い学びのあり方を模索する人たちがいました。

今回は、町営塾の講師スタッフと、中学学習支援スタッフを募集します。

 
沖縄・那覇空港で飛行機を乗り継ぎ、約30分。

久米島空港に到着。

この日はよく晴れて、水平線がくっきりと見えるほど。鮮やかな景色に思わず見とれてしまう。

さっそく町営塾「久米島学習センター」を訪ねると、すでに勉強に向かう塾生さんの姿が。

塾のロビーで話を伺ったのは、新井さん。

2017年からプロジェクトに参画し、今年4月から塾長を務めている。

以前は、東京都庁に5年間勤めていたそう。

「ふと周りを見てみると、大学を出て就職し定年までずっと同じ職場で働く、という道をたどる人が多くて。ほかの道もあるんじゃないかと考えるようになりました」

いろいろな仕事を探していくうち目に留まったのは、地域おこし協力隊。

なかでも、教育を通じて地域の活性化を目指す高校魅力化プロジェクトに興味を持った。

「地域の産業を盛り上げて経済活動に結びつけていく取り組みが多いなかで、人づくりという、すごく時間のかかることに取り組む仕事があるんだと思って。挑戦してみたいと、応募したんです」

町営塾ではどんな仕事をしていくのか。

学校の授業の復習から、テストや検定試験の勉強、受験対策まで。それぞれ目的を持ってやってくる塾生たちに、文系・理系さまざまな科目の学習指導をするのが日々の仕事。

「学力を理由に、自ら進路の選択肢をせばめてほしくない。基礎学力をしっかり身につけていくことを主軸においています」

実は今は理系に特化したスタッフが一人のため、手が足りていない状態。生徒たちに応えていくためにも、理系科目に強い人が来てくれるとうれしいとのこと。

「限られた人数のなかでも、私たちにできる最大限のサポートをしようと、スタッフで意見を出し合いながら取り組んでいます」

「今年からはじめる夏期講座も、昨年まで夏休み中は自習だけだったところを、1学期の復習がしっかりできるようにということで開設することにしました」

常に、子どもたちにとって何が必要かを考えて、柔軟に行動していくことを大事にしているという。

それに、粘り強さも大切な要素だと、新井さんは話す。

「たとえば推薦入試を受ける生徒は、志望理由書を書くことになります。ただ、中には文章を書くのがすごく苦手な生徒もいて、ある生徒は2ヶ月くらい苦戦していました」

その生徒さんは、そもそもどう文章を書いていいのかわからない様子で、なかなかモチベーションが上がらずにいたそう。

「実は私も、もともと作文が苦手だったんです。だから気持ちがよくわかって」

「コツさえつかめばやる気も出るんじゃないか思いつつ、どう教えたらいいのか、手探り状態でした。その子をよく観察したり、ときには発破もかけつつ、こまめに話しかけながら一緒になって考えていきました」

最初は自分の興味のあることについて箇条書きするところからはじめて、一緒に試行錯誤しながら、なんとか800字の文章を書くことはできた。

添削をして、さらに生徒に推敲してもらおうとすると、「どこをどう直せばいいのか?」と答えを求めるような質問が。

「そこで私がそれらしい答えを教えてその通りに書けば、一見、文章ができあがったように見えるかもしれない」

「でも、その子自身が考えた文章にはなりません。学力を上げていくための根本には、自分の頭で考えることが必要だと思うんです」

提出期限も迫っていたけれど、新井さんは、生徒に自分自身の言葉で文章を書いてもらえるようにアドバイスすることに徹した。

「最初に自分の意見を書く。そのあとは意見の根拠となる具体例を。最後にもう一度自分の考えをまとめる。3つのおおまかな器だけを用意するから、器の中身は自分なりに満たしていってねと話して」

すると翌日、生徒が目を輝かせて新井さんのもとにやってきたという。

「『先生!はじめて自分で考えて書けた!』『もっと教えて!』って。その表情がすごく印象的で」

「生徒の目つきや勉強に向かう姿勢に表れる、人間的な成長って、心と心を通わせないとわからないものだと思うんです。ここではそれが直に感じられる。うまくいったりいかなかったり、模索しながら考え続けていく大変さもあるけれど、得られるものは大きいです」

 
新井さんの話を隣でうなずきながら聞いているのは、町営塾スタッフの平山さん。

町営塾の立ち上げ2年目からプロジェクトに加わり、今年度で3年の任期を終える。

「確固たる答えのないなかで、本当に子どもたちのためになる塾をつくれているかどうか。自信をなくすこともありますが、ここには、答えのないことに取り組むのが好きな変わり者たちが集まっていて。同じ方向を向く人たちに支えられています」

模索していくことも含めて、好きなんですね。

「そうですね。裏を返せば挑戦しやすいということ。思い浮かんだアイデアをすぐに形にしてみることができます」

具体的には、どういうことでしょう。

「私はまちの広報誌に載せる学習センター通信という記事の作成を担当していて。最初は私たちスタッフで書いていたのですが、今は有志を募って生徒にも広報記事を書いてもらっているんです」

地域の方に塾生たちの頑張っている様子を知ってほしいし、塾生たちにとっても、島の魅力に気づくきっかけにしてほしい。そんな想いからはじめたんだそう。

たとえば、Uターンしてきた農家さんをはじめ、まちで活躍されている方を訪ねてインタビューしたり、町営塾で日々起こることを綴ったり。文章の作成からレイアウトに至るまで、塾生と話し合いながら一つの記事をつくりあげていく。

「参加した生徒で、勉強に伸び悩んでつらそうだった子が、インタビューを終えて話してくれたんです。『島の中にこういう仕事もあったんだな。将来久米島に戻ってきても、自分にもできることがあるのかな』って」

「この先社会に出て、壁にぶつかることもきっとある。そんなとき自分で思考して解決に導いていく、意欲のようなものを育てたいです。だからこそ、私たちスタッフも主体的であることが大事だと思います」

 
久米島西中学校で学習支援員を務める福岡さんも、自分ごととしていろんな工夫を重ねている方。

西中学校を担当しつつ、支援員全体の取りまとめもしている。

「中学校の学習支援員の仕事は、授業中に先生のサポートをしたり、放課後の補習を手伝ったり。週に一度、自学自習の場である『しまのまなびや』の運営もしています」

「学びの主役は生徒、演出するのは先生。僕たちは黒子として、生徒たちが自ら学ぶ力をどうやって育めるかを考える。学校の先生と意見交換したり、生徒たちの要望も聞きながら活動を進めています」

2017年の4月に着任した福岡さん。

学習支援員として働きはじめた当初、生徒たちのスポーツや遊びに全力投球で臨む姿に惹かれつつ、勉強への関心は低いことが気になったそう。

どうしたら学ぶ楽しさを伝えられるか。

学校でも家でもない第三の居場所としての『しまのまなびや』だからこそ、できることがきっとあるはず。

英単語かるたをつくってみたり、ガチャガチャを回して出てきた問題を解いてもらったり、いろんな仕掛けをつくってきた。

ここで、一枚の紙を見せてくれる。

「Q&A形式で、生徒と僕とで1週間越しの交換ノートみたいなことをしています。僕が生徒に質問を書いて、生徒から答えを返してもらいつつ、今度は僕への質問を書いてもらう。それを繰り返していくという感じです」

「はじめた理由の一つは、生徒たちに“問いを持つ”という経験をもっとたくさんしてほしいと思ったから。なんでだろう?という問いから出発して、ものごとを掘り下げて考えていく。学ぶことの最初の一歩はそこにあると思うんです」

大事にしているのは、自ら学ぶ力を育てること。

一つひとつ手探りしながら行動していくうち、生徒からの反応にも変化が見られるように。

「『先生、今日はまなびやないの?』って言ってくれるようになった生徒もいて。すごくうれしかったですね」

さらに今、新しい試みもはじめている。たとえば、地域を教材にした問題解決型の学習や、いろんな職業の方へのインタビューを通して生徒たちの視野を広げる学習など。

「僕らの仕事って、何をすればゴールなのか答えはありません。それでも、現状を見ながらあれこれ工夫できる人が来てくれると、楽しんで働けると思います」

 
今年の2月からは、町営塾のスタッフや中学学習支援員、高校魅力化コーディネーター、町役場の担当者たちで月に一度の教育会議を開催している。

持続可能な教育のあり方を考えていくため、それぞれの課題や想いを本音で共有しながら、方向性をすり合わせる場になっているそう。

町役場の喜友村(きゆうむら)さんからは、高校魅力化プロジェクトに携わるスタッフに対する信頼を感じる。

「学習支援員さんも町営塾の先生も、目の前の進学対策だけでなく、長い目で見てその先のことまで議論してくれて。その熱量から、久米島の子どもたちのことを本当に考えてくれているのを感じています」

町役場としても、町営塾や中学校の学習支援について、地域にもっと定着させていきたいと考えている。行政と高校と高校魅力化スタッフが三位一体となって、より良い学びの場をつくっていくことを目指しているとのこと。

 
日々目の前の生徒と向き合いながら、同時に、数十年先のまちの未来も考えていく。

難しく感じる場面はきっとたくさんあると思う。

取材した皆さんは、それぞれが感じているもどかしさを、正直に話してくれました。

答えのない学びは、この先も続いていくのもかもしれません。

(2018/6/27 取材 後藤響子)

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