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微生物から満月まで
世界の美しさを
込めるジュエリー

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

ジュエリーと聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろう。

華やかでかわいらしい。身につけると、少し気分が上向きになるようなもの。

Ryui』のジュエリーは、それだけにとどまらない存在感を放っているように感じます。

リングやネックレス、イヤリングにブローチ。

そこに込められているのは、なんてことのない日常にひそむ美しさや面白さ、繊細な心の動き。

「花や街灯りといったものから、石や昆虫、微生物まで。私たちが美しいと思う世界を切り取って、ジュエリーに込めたいと思っています」

ブランドを主宰する日向龍(ひなた・りゅう)さんと平結(たいら・ゆい)さんご夫婦は、そう話します。

今回は、Ryuiの世界観を企画・広報で発信していくスタッフと、ジュエリー制作スタッフ、そしてショップに立つ販売スタッフを募集します。


国分寺駅から歩くこと5分ほど。小さな商店街のそばに、Ryuiのアトリエ兼オフィスを見つけた。

扉を開いた先で迎えてくれたのは、日向龍さんと平結さん。Ryuiを立ち上げたお二人だ。

どちらかの話を受けて、どちらかが話し出す。なめらかに紡がれる会話が心地いい。

お二人とも、もともと美術大学で学んでいたそう。

日向さんは漆器製作をしながら美術予備校で講師を、平さんはグラフィックデザインを学んだあと、パッケージデザインの仕事をしていた。

最初にジュエリーをつくりはじめたのは、日向さん。

「周りの友人が彫金制作をしているのを見て、面白いなと思って。基本となる道具と技術があれば自宅でも制作できたので、リングをつくって彼女にプレゼントしたんです」

リングを受け取った平さん。もの以上に、つくることに興味を持ったという。

「もともとファッションが好きだったこともあって。私も身につけるものをつくってみたいなと思ったんです」

そうして仕事のかたわら、一緒にジュエリーをつくりはじめた二人。

はじめは趣味の一つだったものの、縁あってとあるデザイナーの目に留まり、世に発表することに。

お互い仕事をしながら3年ほど制作を続けて、2008年にRyuiを立ち上げる。

Ryuiのジュエリーは、どんなふうに生まれるのだろう。

この質問に答えてくれたのは、平さん。

「言葉にするのは、なかなか難しいんですけれど… 私たちが美しいと思うもの、面白いと感じるものを切り取って、ジュエリーに込めています」

たとえば、と紹介してくれたのが「kumagusu」というシリーズのネックレス。

「実は、これは粘菌をモチーフにしたネックレスなんです」

粘菌、ですか。

「ええ。きっかけは、南方熊楠の記念館に夫と一緒に行ったことで。そこで見たものが、本当に面白かったんです」

日向さんも言葉を続ける。

「とくに研究の中心だった粘菌が印象的でした。粘菌って、動物と植物の中間的な存在なんだそう。その事実からして、どういうことだ?って気になって仕方がなくて」

「裸眼で見ると、なんだかよく分からないんです。けれど顕微鏡で覗いてみたら、じわじわと動いている。成長すると胞子を出して、また増える。そのすべてが、もう本当に面白くて。このジュエリーには、そんな世界を込めました」

誰もがきれいだと感じるものがある一方で、ともすると先入観でものの見方が限定されているものもある。

そういう日常に潜む何気ないものにこそ、二人は面白さを感じるのだそう。

「たとえば僕らは、石や昆虫を一つひとつじっくり見ることが好きなんです。なんでだろうって考えると、『セミのお腹って、よくできているな』『どうしてこんな色をしてるんだろう』という新鮮な驚きがあるからだと思っていて」

「世界には面白くて、きれいなものがたくさんあると思うんです。だから『ほら、これを見てみて』って、こっそり教えるような気持ちでジュエリーのデザインを考えることが多いですね」

そうして生まれたデザイン案は、さらに意見を出し合い、お互いの感覚を織り交ぜながら磨いていく。

二人とも面白いと感じるものは同じでも、ジュエリーへの落とし込み方はまったく異なるそう。

「なんとなくの形になっていかないように。二人の視点でいろんな角度から確認しながら、手応えが掴めるまで形を追いかけるようにしています」

デザインが完成すると、次は商品としての制作。

二人がつくった原型をもとに、制作スタッフが一点ずつ丁寧に仕上げる。

そのために何より大切にしているのが「目」だと、平さんは言う。

「たとえば一口に“マットな仕上げ”と言っても、すっと流れるようなものなのか、手触りのあるものなのか。色やツヤ、質感と、細かなところで存在感も変わってきます」

「そうした感覚的なものに敏感になって、厳しくものを見られることが“目のよさ”だと思っていて。世界観を持った商品を届けたいからこそ、自分たちの目の届く範囲でつくることを大切にしています」

小さなアトリエであるRyui。制作スタッフは、オーダー管理から製作、仕上げ、検品まですべての工程に携わり、二人に最終チェックをしてもらう。

「仕上がりには厳しいほうかもしれません。まだ理想とする形になっていないと感じたときには、スタッフに修正を求めることもあります」

「ただ、なるべく具体的な道具と方法で指示するようにしていて。感覚的なことも、時間を共にするなかで共有されていくと思います」

こうして完成した商品は、ショップや卸先へと届けられる。

西荻窪にあるショップでは、アトリエとやりとりしながら、来店された方一人ひとりに向き合っていく。

ときには、かつて購入した商品の修理を相談されることもあるのだそう。

「どれだけ状態が悪くても、できるだけ直したい」と、日向さん。

「ジュエリーって生活必需品ではないし、決して安いものでもない。それでも買っていただけるのは、身につけるとうれしくなったり、前向きになれたりするからだと思うんです」

「僕らはその喜びを感じてもらうために仕事をしているので、それが用をなさないなら、もう必死にでも直すしかないなって。その方がどんな想いで身につけるのかを想像しながら、大切につくって、届けたいと思っています」

経年変化が少なく、ほぼ永遠に美しい形で残るジュエリー。

ずっと受け継がれていくものをつくっているという喜びや、責任感がある。

だからこそ、ただ「きれいなもの」で終わってしまってはいけないと、二人は考えている。

「僕らがジュエリーのモチーフにしているのは、ふだんの生活の中に潜む面白さ、美しさで。同じように、いつも通りの日常であっても、考え方や物の見方が変わって、毎日に少しでも喜びが増えたら純粋にいいよな、と思っているんです」

「僕らのジュエリーを通して、一人ひとりの世界の幅がじわじわ広がって。文化の底上げに、ちょっとでも貢献できたらいいなって思っています」

Ryuiのジュエリーがどんなものにインスピレーションを受けて生まれたのか。そして二人がどんなふうに世界を見ているのか。

これからは、ジュエリーの表面的な美しさだけではなく、そうした深いところまで伝えていきたい。

そのため、今回新たにブランド発信スタッフを募集することを決めたのだそう。

「正直これまでは制作ばかりに目がいって、どんな想いでつくっているか伝えることは二の次だったんです。でもやっぱりそこを伝えていかないと、本当の意味での僕らのファンは増えないと思うようになりました」

Ryuiにとっても初めての挑戦。どう発信すれば、ブランドの考えや世界観を伝えられるのか、一緒に考えながら取り組んでいきたい。

たとえば、SNSなどでの広報はもちろん、ショップ内外でのイベントを企画することも大切な仕事になってくると思う。

これまでもRyuiが面白いと思う植物を自ら製作した陶鉢に入れて販売するなど、いろいろなアイデアは生まれていたものの、実現には至っていなかった。

こうした企画にも本腰を入れたいと、平さん。

「見た目だけで買ってもらえればいいのなら、もしかしたら必要のないことかもしれません。でも私たちの考えていることすべてを以って、Ryuiというブランドとして認識してほしい。そう強く思っています」


「二人は、ある意味すごくマニアックなんです。だからこそ、Ryuiのジュエリーには他にはない存在感を感じるのかなと思っています」

そう話すのは、アトリエスタッフの吉田さん。

主な仕事は、webデザインと、Instagram・FacebookといったSNSでの広報。

ジュエリーに込められた想いやコンセプトを、言葉や写真で伝えている。

そのうえで大切にしているのは、二人へのヒアリング。

商品が生まれた背景や、美しいと思うもの。二人の感覚を掴み、伝えたいことを決めていく。

「二人は、最初から明確な言葉を持っているわけではなくて。『こういう感じ』、『こんな気持ちに近いんだよね』ってふわっとした言葉も多いです」

その芯や雰囲気はどのようなものか、探りながら話を聞き、第三者も共感できるような表現に落とし込む。

「明るくて華やかという世界観ではなく、厳しさを含んでいたり、静かで澄んだ空間にきらりと光るようなイメージで言葉や写真を選んでいて。なにか心の内に響くような表現にしたいと思っています」

そうした姿勢は、Ryuiの制作物にもあらわれている。

たとえば、今年のマリッジリングカタログはモノクロ仕上げ。

「ブライダルアイテムとして珍しいかもしれませんが、リングと共に、粛々と時を積み重ねていくイメージでつくりました」

ブランド発信スタッフには、こうした制作物のディレクションも任せていきたい。

とはいえ、はじめから完璧にこなすことは求めていない。まずは日向さんや平さんのサポートをしながら、徐々に仕事を覚えていけるといいと思う。

「Ryuiは、全員で8人と少ない人数です。ときには肩書きに関係なく、みんなで作業を手分けすることもあって。地道な仕事もあるけど、二人の考えに共感できたら面白い場だと思いますよ」

実は吉田さんは、ものづくりの道に進むため、今年12月にRyuiを離れる予定だそう。

Ryuiで過ごした時間は、どうでしたか。

「ものを見る視点が増えたなって思います。たとえば以前、moonというリングについて二人に話を聞いたんです」

月による潮の満ち引きや、満月がもたらす生きもの達への影響。

その尊さや無意識のつながりを込めたと教えてもらった。

「その話を聞いてから、いつもぼんやり見ていた月の見方が変わったなって。ただ満月だからきれい、という言葉以上の感覚を知れたというか」

「別の角度から見た世界が、思ってもみなかった新たな視点を与えてくれる。そのことがすごく面白くて。感覚の幅を広げられた、貴重な時間だったと思います」


最後に、日向さんと平さんの言葉を紹介します。

「Ryuiというブランドは、決して私たちだけのものではなくて。みんなで一つの世界観をつくりあげていきたいと思っています」

「もしRyuiの世界観に共感して、ブランドを一緒につくっていこうと思ってくださる方がいらっしゃったら、とてもうれしいですね」

(2018/10/26 取材 遠藤真利奈)
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