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つながる観光、続く土地
大切なのは
自分自身がつながること

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

よく記憶に残っていて、何度も通ってしまう場所はありますか?

近所の食堂とか、旅行に行くたびに寄ってしまうお店とか。

そんなお店は常連さんにも初めて訪れる人にも愛され、流行り廃りなくずっと続いていくように思います。

今回はひとつの地域を、人が集い、続く場所にするために奔走している大人たちに出会いました。

舞台は長野県松川町。ふたつのアルプスが見渡せる大きな谷に、畑や田んぼ、果樹園が広がる豊かなまちです。

100年後にも遺したい地域ブランドを体感できる滞在交流型観光を促進しながら、地域経済の振興を図り、持続可能な地域づくりを目指す。

そんなビジョンを掲げて、2018年の4月から一般社団法人南信州まつかわ観光まちづくりセンターが設立されました。

ここで、観光まちづくりコーディネーターとして宿泊施設の企画運営や広報・マーケティング業務などを担う、地域おこし協力隊を募集します。

大切なのはきっと、自分が地域を好きになって、地域に入り込んでいくこと。自然も人も大好きだという人に、ぜひ読んでほしいです。

 

松川町までは、新宿バスタから高速バスで3時間45分。

中央道を進み、諏訪湖を少し過ぎたあたりから山が開けて、伊那谷の風景が見えてくる。

実は、松川町は私の地元。

雄大な中央アルプスと南アルプスが東西にそびえ立つこの土地では、空と雲と山と大地が、日々ここにしかない風景をつくりだしている。太陽や風の動きで毎回違う表情を見せる山々には、帰省のたびに心動かされてしまう。 

そんな土地ではじまった『観光まちづくり』は、どんなものだろう。

活動の拠点となる「農業観光交流センターみらい」に行くと、地域おこし協力隊の柳原さんが迎えてくれた。

私にとっては、こんな人が地元にいるなら帰るのもいいかもと、会うたびに思わせてくれる人。

南信州まつかわ観光まちづくりセンターの立ち上げに奔走してきた一人でもある柳原さんに、ここまでの経緯を聞いてみる。

きっかけとなったのは、とある講義。

「講師は高砂樹史(たかさごたつし)さんでした。長崎県の小値賀(おぢか)町をはじめ、観光を通してさまざまな地域の課題を解決に導いてきた方です」

「高砂さんは最初の講義で『持続可能な地域づくり』について説明してくれて。そこで、はじめてリアリティが湧いてきたというか」

リアリティが湧いた、というと?

「『持続可能』や『サステイナブル』って言葉はよく聞いてたけど、バズワードみたいな気がして、いまいちピンときていなかった。でも高砂さんは、観光によって地域にお金を落とす仕組みをつくれば若い人が帰ってくる地域の実現はできると話していて」

高砂さんがいた小値賀は、過疎高齢化が深刻だった。そこで、小さな島ならではの生活文化を滞在交流プログラム化してPRすると、小さな島に2万人以上の観光客が訪れるように。

滞在交流プログラムで地域の良さを体感した人が移住したり、観光客がお金を落とすことで経済がまわり、仕事が生まれてUターン者も増える。お金や人が動くことで、過疎の島が活気付いていった。

この仕組みを活用したら、松川町も持続可能な地域にできるんじゃないかと、柳原さんは考えた。

「僕は、はじめて松川を訪れたとき、地域の暮らしを知って感動したんです。炭焼きをしたり、家庭で味噌をつくったり。都会では知ることのできない暮らしがここにはありました。そういう体験ができたから、移住しようと思ったんです」

松川町には、地形を生かした果樹栽培の文化や、自然と共に生きる知恵などが自然に根付いている。地域の人たちも世話好きであたたかいから、滞在交流プログラムをつくる要素はたくさんありそう。

「これから目指す観光でも、地域の人とどれだけ交流できるかが大事だと思っていて。東京にいたころ、下北沢っていう街がすごく好きでした。いろんなお店の人たちと顔なじみになって、まるでホームタウンのようで」

「そんなふうに、松川も誰かにとって特別な土地になったら、その後も通いたくなるし、いつかは住みたくなるかもしれない。ずっと続いていく土地になれると思うんです」

そのために、今は滞在交流プログラムづくりや宿泊施設の運営を中心に事業を進めているところだという。

 

具体的にはどんな仕事なのだろう。

同じく地域おこし協力隊として観光まちづくりセンターで働く小林さんにも話を聞いてみる。

もともと自然学校でガイドや宿泊施設の運営に携わっていた方で、今は滞在交流プログラムのアイデアを探そうと、町主体で外遊びの体験を提供する『あそびの楽校(がっこう)』を手伝っている。

「『あそびの楽校』では、地域の子どもたちと田植え、焚き火、山登りなどをする『自然体験プログラム』が年間を通して行われていて。おもしろい素材がたくさんあります」

「春には、田植えや泥遊びみたいなことを田んぼの中でやりました。素足で泥に入るって、なかなか経験できないこと。楽しかった!っていう言葉をダイレクトに聞けたのは、すごくうれしかったです」

外から来る人はもちろん、町の中の人たちにももっと自然の中で遊ぶ楽しさを知ってほしいと話す小林さん。

「僕たちはもちろんなんですけど、ゆくゆくは地域に暮らすみんながガイドのようになって、松川ならではの自然の魅力を発信していけるようになったらいいなと思います」

続けて、もう一つの起点となる宿泊事業について話を聞かせてもらう。

「2018年の4月から、県が指定管理していた『松川青年の家』を町が引き継いだんです」

「町にはこれからターゲットにしたい若い世代向けの宿泊施設が少ないので、『松川青年の家』をリニューアルして運営していきたいと考えています」

青年の家といえば、私が小学生のころ林間合宿で泊まった記憶がある。すぐ後ろには森が控え、体育館や会議室などを持つ施設だ。

大きな施設なだけあって、リニューアルの実現にはまだまだ時間がかかりそう。

同時進行で『ツリードーム』という新たなかたちの宿泊施設の導入も進めてきた。

森の中で木に吊るすテントのようなもので、木と同じ目線の高さで滞在ができる新しいかたちの宿泊施設だ。

「松川の自然を体感してもらうにはとても魅力的な空間になる」と、小林さんが主導となってマーケティングに予算取り、町議会の理解を得るための視察会の開催、設置場所のフィールド整備や枝打ちなどなど、いろんな準備をしてきた。

そして、2018年秋にツリードームは無事完成。

期間限定営業も盛況に終わり、今度は初夏からの稼働に向けて準備やオペレーションの改善を重ねていくところだという。

話を聞いているだけでも、やるべきことはたくさんあって大変そう。辛くなることはないのだろうか。

「自分がやりたいと言ってはじめたことですから。やらされている感じはまったくないし、楽しいですよ」

「自分たちにできないことは、町のみなさんに声をかけて、協力いただいています」

たとえば今は、ツリードームならではの食事を提供するためのメニューづくりを地域の生産者さんや飲食店のみなさんにお願いしているんだとか。

「地域の人に関わっていただくことはすごく大事だと思っていて。僕は、地域の会合や河川清掃に参加するのも楽しいんです」

「雑談しながら『観光まちづくりセンターどうなっとるん?』『今度は宿泊事業をはじめました』みたいな話もできるし。草の根レベルで、自分たちの活動を理解してもらうことにもつながると思っています」

 

南信州まつかわ観光まちづくりセンター事務局長の片桐さんも、地域の人たちとの関わりあいが大切だと考えている一人。

長年、松川町役場に勤めていた方で、町の観光振興に本腰を入れて取り組もうと、なんと役場を退職してセンターの事務局長となった。

柳原さんも小林さんも、みんなが頼る相談役だ。

「この町は観光資源が西側に偏っていて、まだ観光が町全体のものになっていません。だから、まちの人たちには観光はごく一部の人たちのものだという感覚があって。観光を手段とした地域づくりなんてよくわからないし、自分には関係ないと言われることもある」

片桐さんが教えてくれたように、松川町の西側には日当たりと水はけの良い河岸段丘の土地を生かした多くの果樹園があって、さくらんぼ、ブルーベリー、桃、梨、ぶどう、りんごなど豊富な果物がとれる。シーズンになると、松川の果物をめがけて中京圏からたくさんの観光バスがやってくる。

ただ、その大半が果樹園に行くだけ。しかもみなさん日帰りなので、これまでの観光では地域の人と触れ合える機会がほとんどないのが現状だ。

「こういう状況だからこそ、住民を巻き込んだ対話機会を継続的に設けていくことが必要だし、地域の方々に参画してもらう滞在交流プログラムづくりも、すごい大事」

「100年後も見据えて、粘り強く続けていこうと思っています」

 

100年先を見据えながら、目の前にいる地域の人たちと丁寧に対話をして、一つ一つ進めていくことは、きっと根気がいると思う。

それでも片桐さんをはじめ、柳原さん、小林さんは、熱を帯びた声で松川町の未来を語ってくれた。

その言葉が単なる理想だけではないと感じるのは、きっと彼らが着実に地域の人とのつながりを築いているから。

取材の最後に『仕事のなかで楽しいこと』を聞いたとき、柳原さんがこう答えてくれたのが印象的だった。

「ツリードームの事業で、パン屋さんに朝食のメニュー提供の相談をしたんです。そこで、今まで買い物をしていただけのパン屋さんと、お互いのバックグラウンドから、今やりたいことまで話ができるようになって。予想以上に深くつながることができたんです」

「この仕事は、地域の本当にいろんな人たちとつながれる、すごく幸せな仕事だと思います」

地域の人たちと関わることは、自分が働きやすくもなるし、自分の居場所づくりにもつながっていくと思う。

少しでも興味を持ったら、ぜひ松川町を訪ねてみてください。

私の大好きな地元が、誰かの特別な土地になったら、とてもうれしいです。

(2018/7/6 取材 黒澤奏恵)

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