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目の前に広がる緑に、頬をなでて吹き抜ける風。遠くを見渡せば、雄大な山々が連なっている。
北海道・美瑛町(びえいちょう)。
さまざまな野菜畑が生み出す色とりどりの丘に、おいしい食材。ドラマ『北の国から』のような素朴でのどかな風景が広がる、観光や移住先としても人気の町です。
今回は、この町で農家さんのお手伝いをする人を募集します。
春から秋にかけて農作業を手伝う短期ヘルパー、雪の季節も過ごせる通年ヘルパーのどちらかを選べます。
農業に触れてみたい、新しい環境に身を置きたい、北海道で過ごしてみたい。
この町は、どんな人でも受け入れてくれる風土があると思います。
北海道のほぼ中央に位置する美瑛町。旭川空港からは車で15分とアクセスもいい。
農家さんが育てる色とりどりの野菜や小麦畑が織りなす「パッチワークの丘」に、青色の水をたたえた秘境の池。うんと冷えた冬の夜は星空が広がって、朝になればダイヤモンドダストが舞う。
人の営みと自然が心地よく合わさった美瑛は、多くの人が思い描く“北海道”のイメージをそのまま閉じ込めたような町だと思う。
取材に訪れたのは、小雪がちらつく1月末。家も畑もすっかり雪に覆われて、あたり一面銀世界になっている。
町に到着してまずお会いしたのは、JAびえいの江花(えばな)さん。
今回のヘルパー事業を担当している方で、ご実家も農業を営んでいるのだとか。
「美瑛は北海道のなかでも幅広い種類の作物をつくっていて。米に麦、豆や野菜。1万1600ヘクタールもの広い農地を活かした大規模農業や、野菜を取りいれた複合農業が特徴です」
波打つような丘陵地形が広がる美瑛町。そのため開拓がなかなか進まず、開拓当時の主流であった米づくりも難航したそう。
そこで畑作に転じたところ、北海道で実る作物のほとんどが収穫できることがわかった。
「美瑛は寒暖差が大きくて、畑作によく向いているんです。夏は30℃近くまで上がって、日が沈むと10℃くらいまで冷え込む。気温の差は、そのまま糖度の高さになります」
たとえばジャガイモは昔から評判が高く、その品質を買われて、カルビーのポテトチップスの原料になっている。一昨年の秋には、美瑛産の新じゃがのみでできた『ザ・ポテト』という新商品も生まれた。
なかには日本では珍しい西洋野菜を有機農法で育てる農家さんもいて、東京や札幌のレストランに卸すなど実力も折り紙つきなのだとか。
「僕がとくに好きなのは、アスパラにトマト、スイートコーン。生産者の畑を巡回していると『ほら、持っていきな』って言われるのでありがたくいただいています(笑)」
「僕みたいに毎日食べている人間が、お世辞抜きにうまい!と言える。そんな作物をつくれるのは、美瑛ならではの気候と農家さんの努力がうまく噛み合っているからでしょうね」
そんな美瑛のおいしい作物を町内外へ広く届けようと、新たな取り組みもはじまっている。
その一つが、10年前に立ち上がったアンテナショップ『美瑛選果』。
旬の生鮮品や加工品の販売スペースはもちろん、美瑛産の小麦粉で焼き上げたパン工房や、町内で採れた野菜をふんだんに使ったレストラン「ASPERGES(アスペルジュ)」など、産地ならではの食体験が用意されている。
美瑛の小麦に惚れ込んだ東京のブーランジェリー『VIRON』の西川さんと一緒にパンを開発したり、アスペルジュがミシュランで一つ星を獲得したり。
年間165万人が訪れる美瑛の、大きな魅力になっている。
「今はトマトやアスパラを中心にどんどん耕地面積を拡大していこうとしているところで。もちろん農家さんの高齢化や人手不足もあるんですが、息子さんが帰ってきたり、ここ10年ほどは新規就農者が毎年来てくれたりしています」
「新しい野菜をつくってみよう、この野菜はこういうふうに売ってみようとアイデアも出てきている。そんな人たちがいるだけで、地域の未来は大きく変わると思うんです」
美瑛は今、作物の生産量・品質ともにさらに上を目指しているところ。
そこでJAびえいは、農作物の運送やキャスティングなど長く農家さんを支えてきた関連会社「美瑛通運」と一緒に、農作業ヘルパーを全国から募集しています。
美瑛にヘルパーがやってくるようになって、今年で7年目。春先の定植から夏秋の収穫まで二人三脚で手伝うヘルパーは、農家さんにとって大切な戦力となっているようです。
「ヘルパーさんはなくてはならない存在ですよ」と話すのは、トマト農家の白間(しろま)さん。
鹿児島県の離島で生まれ育ち、大学進学を機に関東へ。働くなかで、自然に触れられる仕事をしたいと考えるようになり、農業に関心を持ったそう。
「なかでも北の農業が気になって。まずは一度行ってみようと、ネットで『北海道』『観光』って調べたら出てきたのが美瑛でした」
「はじめて行った11月頃は雪で真っ白。こんなところで農業できるのかなって思ったけど、次の年の初夏に来たらあたり一面緑色で、いろんな作物が植わっていて。このギャップ、いいなあって思ったんですよね」
そうして4年前に就農。大玉トマトをハウス栽培で育てていて、今年は新たに2棟増やす予定なのだそう。
「トマトはほとんど機械を入れずに育てる人ありきの作物です。もっと手をかけてやりたいと思っても、忙しくて思ったようにいかないこともあって。少しでもいいトマトが採れるようにヘルパーさんに来てもらっています」
今回募集するヘルパーはトマト農家さんをメインに、米やアスパラ、馬鈴薯を育てる農家さんのもとで働くことになる。
トマトは種から苗を育てて、大きくなったらハウスに植えていく。このとき苗の茎やツルを天井から垂らした紐で上へと引っ張ることで、日光を効率よく当てることができる。
そうして苗が育つと、余分な芽を摘んで必要なところに栄養を行き渡らせる。
トマトの実が色づいたら、いよいよ収穫。雑にハサミを入れてしまえば、尖った切り口でほかのトマトを傷つけてしまう。一つずつ丁寧に、慎重にハサミを動かしていく。
これらの作業をヘルパーと一緒に行っているそう。
「1つのハウスに1100株ほどがずらっと並んでいて、ひと株30〜40個ほど実をつけます。トマトは成長が早いので、朝から夕方までひたすら作業を続けるんです」
「北海道とはいえ、真夏のハウスは40℃近くまで気温が上がります。できるだけ中腰の姿勢が続かないようにしたり、道具の力を借りたりはするけど、体力や根気強さはやっぱり必要かな」
ヘルパーは、朝8時前にハウスに到着してから夕方5時まで働く。
一人で黙々と行う作業も多いぶん、休憩は一緒にとっているそう。
「去年来てくれたヘルパーさんは、休憩時間によく『これって何ですか?』ってトマトや農業についていろいろ質問してくれて。僕もすごくいい刺激になって、ほかの農家さんにも聞いたり自分で調べたりしていました」
「ちょっとしたコミュニケーションがあるかどうかで気分も変わってきます。誰かと一緒に働くって、やっぱりいいですね」
ヘルパーは、同じ農家さんに長くて半年ほどお世話になる。きっと自然に仲も深まっていくだろうし、作物の成長も日々感じられるはず。
そんなヘルパーの存在は、きっと白間さんたち農家さんにとっても心強いのだと思う。
「せっかく美瑛に来るんですから。最後までトマトの成長を見ていってほしいし、生活も楽しんでくれたらうれしいですね」
全国から集まるヘルパーの皆さん。それまでの経歴や美瑛にやってきた理由もさまざまだそう。
都会での生活を一度リセットしようとやってきた人や、憧れの北海道で農業もアウトドアも楽しもうという人。セカンドライフとして美瑛での生活を選ぶ人もいる。
「私は沖縄からです。家族や友だちには『本当に大丈夫なの?』って言われちゃいました」
ふわりと笑って教えてくれたのは、ヘルパーの當山(とうやま)さん。
「以前は介護のお仕事をしていました。人の役に立てるやりがいはあったけど、時間は不規則だし、職場と家の往復で終わってしまう日も多くて。だんだん息苦しくなってしまいました」
「もっと自然の近くで、シンプルな生き方がしたいなってぼんやりと思うようになって。朝早く起きて、土を触って…とにかく人間らしい生き方がしたかったんだと思います」
そんなとき、たまたま見ていた日本仕事百貨でヘルパーの仕事を知ったそう。
「こんなお仕事もあるんだ!って。四季のはっきりとした北海道にずっと憧れていたし、いつか本で見た美瑛のきれいな景色も思い出しました」
「このお仕事なら私もなんとか頑張れそうだったし、何よりこの町に行ってみたくて。もう、直感でしたね」
5月にやってきた當山さんの最初の仕事は、アスパラ農家さんのお手伝い。
「傾斜の大きな丘に植わっているアスパラを、中腰になって収穫していくんです。私は先輩たちについていくのに必死で、これは思ったより大変だぞ、頑張らなきゃって」
ところが、無理がたたって膝を壊してしまった。
「もうこの先どうなっちゃうんだろうって…。でも農家さんもすごく心配してくれて、JAの方も『ほかの農家さんもいるから大丈夫』ってトマト農家さんを紹介してくれて。本当にありがたかったです」
トマト農家さんでは、定植から収穫まですべての工程を体験することに。
ハウスのなかは黙っていても汗が噴き出すほどで、その暑さは想像以上だったそう。
「でも1ヶ月くらいで体も慣れてきました。保冷剤を首に巻いてしのいだり、こまめに水分や塩分をとったり。それに休憩でハウスの外に出たら、カラッとした風が吹き抜けて、遠くには森や山が見えるんです。すごく癒されたなあ」
「なにより農家さんからいただく野菜が本当においしくて!そのおかげか夏バテもしなかったんですよ。地道な仕事も多いけど、そのすべてが新鮮でした」
収穫を終えた今の時期は、玉ねぎの加工場で働いている。ラインで流れてくる玉ねぎの皮や傷んだ部分をナイフでカットするのが仕事。
玉ねぎは次々に流れてきて、余計なことを考える暇もないほど。
「楽しみなのがお昼休みで、一緒に働く皆さんに手料理を分けてもらいながら、おすすめの旅行先や食べ物を教えてもらうんです。娘のように可愛がってもらえているのかな」
ヘルパー同士で集まることも多い。休みの日に誰かの部屋で話したり、流氷を見に行く計画を立てたりしているのだとか。
「なんだか青春って感じで。大人になってもう一度この感覚を味わえるなんて本当に幸せです」
もうすぐ美瑛に来て9ヶ月。まだしばらくはここで生活をしていきたいそう。
「人生このままじゃ嫌だなあって気持ちが、ここに来て変わった気がしていて。同じように何か変化を起こしたい人には美瑛はすごく合っていると思います」
「あとは単純作業が苦痛ではない人がいいですね。最後は好奇心とやる気さえあればなんとかなります。なんくるないさあ、です」
土に触れて汗をかく。疲れたら風に癒されて、また目の前の野菜に向き合う。そんな日常は健やかだし、何より皆さんの晴れやかな表情が印象的でした。
太陽と畑の緑がまぶしい夏も、雪と氷がきらめく冬も。
きっとこの町は、いろんな表情を見せてくれると思います。
(2019/1/25 取材 遠藤真利奈)