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「僕たちは、ニッチで尖ったおもしろいものというより、スタンダードなものを少しでも良くしていきたい。みんなが暮らし心地の良い、使いやすいものをつくっていきたいんです」そう話してくれたのは、ハプティック株式会社の小倉さん。
ハプティックは、賃貸リノベーションのプランニングから施工、仲介までを一貫して行っている会社です。
無垢のフローリングにシンプルな塗装。「どこにもないふつう」を目指した空間は、きっとどんな人にとっても居心地が良いものだと思います。
今回募集するのは、リノベーションの工事を担当する大工と、工事全体の管理をする施工プランナー。大工と聞くと、職人だけの厳しい世界といったイメージがあるかもしれませんが、経験の有無は問わないとのこと。
大工として入ってから施工管理になったり、その逆もあったり。社内での異動もできる会社なので、最初の入り口として大工や施工プランナーの経験ができるイメージです。
子どものころ、なんとなく大工に憧れていた人。DIYに興味がある人。どんなきっかけであれ、使う人のことを想うものづくりに興味がある人は、ぜひ読んでみてください。
東京・渋谷。明治通り沿いに歩き、一本中の道に入ると、大きな神社が現れる。落ち着いた雰囲気の通りを歩いていると、ここが渋谷だということを忘れてしまいそうになる。
ハプティックのオフィスがあるのは、神社のすぐ先にあるビルの5階。
「この辺りは渋谷のなかでも落ち着いた静かな場所で。環境にも惹かれてこの場所を選んだんですよ」
そう話してくれたのは、ハプティックの代表取締役である小倉さん。2009年に会社を立ち上げ、今年で10年目を迎える。
ハプティックが掲げているのは、『どこにもないふつう』をつくり続け、届けること。
無垢の素材を使って賃貸物件をリノベーションするのも、賃貸という多くの人が経験する住まいの品質を上げたいからだという。
「昔、自分が住んでいた賃貸の部屋をどうしても変えたくて、購入してリノベーションしたんです。お金もあまりかけずに、これだけ心地良い空間にできるんだと実感しました」
「別の人に貸すときも2万円くらい家賃が上がって。オーナーとしても良かったし、借りていた自分にも良かったし、施工する人も利益を出しやすい。その関係性に気づいたことが、今につながっていますね」
自社の大工が施工し、借り手を見つけるところまで担うシステムは、これまでのリノベーション業界ではあまりなかったこと。
日本のスタンダードを変えたいという思いから、早くから全国に支社も置いている。規模が大きくなったこともあり、お互いの顔が見える関係性を大切にしているそう。
たとえば、社内チャット。「手がけた物件が雑誌で紹介されていました!」「コーヒー入りましたよー」など、業務だけでなく日常のコミュニケーションまで、気軽になんでも共有できる仕組みと雰囲気をつくっている。
また社内の部活動もさかんに行われており、キャンプ部などは東京だけでなく全国各地にある支社のメンバーも加わって活動しているそう。
大工として経験を積んで施工管理になったり、営業にいったり。職種の移動を通してお互いの仕事を知ることで、全体の効率が良くなることも。
「職種で仕事を選ぶより、価値観やベクトルが合うと感じてくれた人が来てくれたらうれしいなと。未経験でも大丈夫だし、未経験だからこその強みもあると思います」
「大切なのは、お客さま目線を持つことです。たとえば大工だったら、『工事側の都合でこうするしかないんです』ではなく、『使う人のことを考えたらこうするのがいいよね』というのが本来あるべき考え方だと思っているので」
そんなお客さま目線を大切にして部屋をつくる部分を手がけているのが、村上さん。
日本仕事百貨を通してハプティックを知り、5年前に大工として入社した。現在は施工プランナーとして現場管理の仕事をしている。
「もともとは社会科の教員になりたかったんです。でも教育実習に行ったとき、ある子どもがずっと泣いていたのに、なんで泣いているのか理解してあげられなかった自分がいました」
「そのとき、『まだ自分は教員になれないな』と思ってしまって。一度社会に出て視野を広げることが必要だと思って、就活をはじめたんです」
いろんな分野の企業を見るなか、ハプティックにも応募することに。営業希望だったものの、新卒で営業の募集はしていなかった。
面接官として話した小倉さんに、「体力ありそうだから大工やってみる?」と言われたのが、大工として働く最初のきっかけだったという。
新卒で未経験の大工。やってみてどうでしたか?
「慣れない資材を階段で上げることもあるので、体力的にしんどい部分はありましたね」
「ただうちの工事って仕様がだいたい決まっているので、毎回方法が違うということはなくて。そういった面では、初心者でもとっつきやすいのかなと思います」
最初は道具の名前や使い方を覚えたり、簡単な作業を手に染み込ませたり。次第にキッチンなど部屋の形を左右する部分に関われるようになると、どんどん楽しくなっていくと話す村上さん。
大工と聞くと、職人肌が強くて、厳しいようなイメージがある。
「たぶん想像しているような恐い人っていうのはいないですよ(笑)。ただ、みんな職人としてのプライドを持って仕事をしています。自分の現場をより良く仕上げたい気持ちはすごく強いので、中途半端な仕事には厳しいですね」
村上さんは、現在大工ではなく施工プランナーとして、現場管理の仕事をしている。施工プランナーはそれぞれ担当の現場を持ち、大工に作業の指示を出したり、現場で発生する問題への対応を判断したりする。
印象に残っていることを聞いてみた。
「トイレットペーパーのホルダーって、高さとかトイレからの奥行きで、つける基準の位置が決まってるんですよ。だけど、設置したい場所にユニットバスのドアがきてしまったことがあって」
「少し便器側に寄せてつけようという話になるんですが、どんなときも使う人の目線で考えることを大切にしています」
使う人の目線。
「単に寄せるだけだと使いづらいので、高さも上げようと。大工さんに『ちょっと便器に座ってもらっていいですか』って言って(笑)。『5センチか10センチくらい上げたほうがいいと思うんですがどうでしょう』って相談して変えました」
「誰もそんなところ気づかないと思うんですけど(笑)。お客さん目線での施工だったら社内からも文句は言われないし、言わせないと思ってやっているので。一番大切なのは使い勝手。だから基準から変化してしまうことだってありますよ」
お客さん目線をなにより大切にする。この考え方は、大工時代からずっと学んできたこと。当たり前のものにも疑問を持って、使う人の気持ちになってみることが、ここでは必要とされている。
一番うれしかったことってなんでしょう?
「やっぱり大工や現場管理の喜びって、自分がつくり上げたものを住む人たちに喜んでもらえることなんですよね。たとえば、施工後どんな暮らしをしているのかをまとめた本があるんですけど」
「これを職人に見せると、めちゃくちゃ喜んでくれるんですよ(笑)。照れて興味なさそうにしながら『ああ、そうなんだ』とか言って」
本には、村上さんが大工時代に施工した部屋も載っている。
「最後にカーテンレールつけたなとか。職人って、こういう思い入れを勝手に持っているんですよね。うちで大工をやる良さってこういうことだと思うんです」
つくって終わりではなく、使う人の反応まで見ることができるのは、部屋を届けるところまで関わるハプティックだからこそできること。それはつくる人にとって、とても大きなやりがいになる。
ここで、村上さんと一緒に実際の現場へ。
バスに乗り、たどり着いたのは工事中の一軒家。基本はアパートやマンションの工事が多いけど、一軒家の工事をすることもあるという。
床や壁が剥がされ、すべてがあらわになっている家のなか。作業の手を止めて話をしてくれたのが、大工部の渡邉さん。入社して2年になる。
「最初は絵の額縁を直す仕事をしていて。仕事が少なかったのもあって、リペア屋っていう、リフォームとかで床や壁についた傷を直す仕事をしていたんです」
「そのとき、知り合いの大工の人に『大工どう?』って勧められて。未経験でも働かせてもらえるこの会社でチャレンジしようと思って応募しました」
大工の仕事はどうでしたか?
「良い意味でギャップがありましたね。大工さんのイメージって、『おらー!』って怒られるとか、荷物を持って走らされるとか、そういうイメージだったんですよ(笑)」
「入ってみると、上下関係の垣根なく『こういうふうにやるんだよ』って教えてくれたり、『こうやろうと思うんだけど、どう思う?』って逆に聞いてくれたり。自分も一緒につくっているという意識で学ぶことができました」
大工部では、だいたい8ヶ月くらいで現場を担当できるように親方のもとで日々学んでいく。
現場を担当するようになると、他の業者さんとのやり取りや必要な材料の発注など、工事以外の作業も多くなる。
「工事も自分がやらないといけないし、それ以外のこともあるし…。最初はタスク処理にすごく苦労しました」
「でも見習いのときから一緒につくっている感覚で学ぶことができたので、『親方だったらどうするかな』と、経験したことや教えてもらったことを素直に振り返ることができたと思います」
村上さんも渡邉さんも、未経験で大工の世界に飛び込んだ。どういう人が向いているのだろう。
「大工っていう固定観念にとらわれない人がいいですね。いろんな部署がある会社のなかに大工部があって、営業に興味があったけど、大工も結構気になるなとか。それくらいの感覚の人だと意外としっくりくるかもしれないですね」
すると、それを聞いていた村上さん。
「就職活動のときに、どういう大人になりたいかなと考えたことがあって。そのとき思ったのが、『犬小屋をぱっとつくれるパパになりたい』ということだったんです。パパかっこいいって言われたくて(笑)」
「ものづくりや部屋づくりへの興味があれば、経験の有無は入ってからカバーできると思います。住む人や使う人の目線でものづくりをする楽しさを、ぜひ味わってほしいですね」
使う人の目線をしっかり持って、世の中により良いものを提供していく。
この想いに少しでも共感できるなら、きっかけはなんでもいいのかもしれないと思いました。
(2019/2/12取材 稲本琢仙)