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自信を持って届けたい
お母さんが教えてくれた
日本の衣食住

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

きれいな敬語を使う人。いつもアイロンのきいたシャツを着ている人。事務的なメールにも、さりげなく相手への思いやりを添えられる人。

お手本にしたくなる人との出会いのおかげで、私もなんとか社会人になれたのかもしれない。

そんなふうに、かつての上司を思い出すことがあります。

奈良にある、有限会社井上企画・幡(ばん)で新しく働きはじめた人たちが話してくれたのも、「こうなりたい」と思える職場の先輩のことでした。

幡は、布を使った生活雑貨や衣服などの企画販売と合わせて、ショップやカフェを通じて、日本らしい丁寧な暮らしを提案している会社。今回は、本社で製品の企画営業に携わる人と、ショップでカフェや販売の仕事をする人を募集します。

業務が多岐にわたるので、覚えることはたくさんあるけれど、「身につく」という言葉の通り、自分の仕事に愛着を持って製品に関わることができると思います。


訪ねたのは、JR奈良駅からバスで15分ほどのところにある「Lier(リエ) 幡」。奈良近郊にある4つの直営店のひとつです。

春の陽気に新緑。街の中心部からそんなに離れなくても、環境の良さを実感出来るのも奈良のいいところ。

お店の入り口の扉を開けると、のびのびと生けられた花が目にとまる。きれいに整えられた玄関で迎えてもらうと、気持ちも少し上向きになる。

幡は、代表の林田千華さんのご両親が30年ほど前に立ち上げた会社。林田さんには、以前東大寺の近くのお店で話を聞かせてもらったことがある。

今回もお店で迎えてくれたものの「私は前の記事で十分話をさせてもらったので、今回はスタッフに聞いてあげてください」と林田さん。

ということで、立ち上げから16年来この直営店の運営に携わってきた、営業の繁田(しげた)さんに話を聞く。

「はじめは百貨店にしか店舗がなくて。入社して1ヶ月くらい経ったころ、当時の代表から『1年後に新しい直営店をオープンするから、あなた担当ね』って言われたんです。右も左もわからないまま、お店の立ち上げに関わることになりました」

幡の直営店は、すべてにカフェスペースが併設されている。日本らしい丁寧な暮らしを、体験できる場にしたいという思いからだった。

きちんと掃き清められたフロアや、スタッフの方の柔らかい物腰や言葉遣い。

ここで提供される「丁寧さ」は、人を緊張させる格式の高さではなく、現代のライフスタイルのなかで、無理なく実現できる豊かさのことだと思う。

奈良近郊のつくり手と協働して企画・販売している自社製品も、コストを抑えて誰もが手にしやすい価格に。

主力製品のひとつは、「蚊帳」でつくられた洋服や雑貨。もともと布巾などに使われてきた蚊帳生地は、使い込むほど綿特有の柔らかさを増していく。

通気性がよく、涼やかな肌触りが春から夏にかけてとくに人気なのだそう。

「蚊帳をはじめたころはモノトーンの服が多かったんですけど、最近は鮮やかな色が増えましたね。海外のお客さんの影響かもしれません」

直営店で販売するだけでなく、繁田さんは営業担当として、全国の小売店への卸も行っている。近年は海外の展示会に出展するようになった。

「目の前の商品を、どうすればより多くの人に届けられるか。つくり手の視点で製品に関われるのもメーカーの楽しさですね。コミュニケーションを重ねていけば、だんだんお客さんのこともわかってきますし、やっぱり人が好きだということは大事だと思います」

そう話す繁田さんも、最初の5〜6年は慣れない仕事に戸惑うことも多く、楽しいと思えるまでに時間がかかったという。

「仕事って楽しいとか楽しくないとかだけじゃない。がむしゃらにやらなきゃいけない時期は絶対にあるし、しんどい状況が一生続くわけじゃないですよね。みんなにもそれはわかってほしいなと思います」

新しく入る人にいきなり知識や技術は求めない。営業だからといって、おしゃべりが上手でなくてもいい。

それよりも、新しいことを謙虚に学ぶ姿勢や、知らないことを素直に認められること、なんでもやってみたいという意欲を大切にしたいという。

業務の一部分だけではなく、製品が生まれるところからお客さんに届くところまで。すべてに関わるからこそ、愛着を持って製品に向き合える。だから、入社するとまず、社内の仕事を一通り経験し、それぞれの適性や興味をはかっていく。

時間をかけてじっくりと向き合っていけるので、結婚や出産を経ても、長く仕事を続ける人が多いという。

「新卒だとまだ学生さんみたいに “おぼこい”子も多いんですけど、3年も経つとちゃんと成長していきますね。お客さんも年長の方ばかりなので、若い子は特に“本気で、謙虚に”が大切」

話を聞いていると、なんだか親心のようなものを感じる。上司や先輩というより、お姉さんのような距離感なのかなあ。


そんな環境で社会人としての一歩を踏み出したのが、昨年入社した伊東さん。今は京都から通いながら、本社や直営店の仕事を一つひとつ覚えているところだという。

「ものづくりに関われたらいいなと思っていたんですけど、デザインとか営業とか具体的な目標があったわけではないので、入社してからいろんな仕事を経験できるのはいいなと思っています」

「今はカフェの仕事も手伝っています。料理の盛り付けで、私が『これくらいでいいかな』と思うことも、先輩が直してくださると本当に完璧。私はちょっとガサツなところがあるので、背筋が伸びるような気持ちです」

ベテランの先輩たちと一緒に働く現場。少し緊張しませんか?

「たしかに年の離れた先輩も多いんですけど…。どっちかというと、お母さんがいっぱいいるっていう感じですね。立場の上下関係なく、いつも『ありがとう』『すみません』って口に出してくださるし。私もそういう気遣いを真似したいなって思います」

本社にいるときは、商品の出荷などの手伝いをする。

事務所と倉庫、生地をカットする作業台などが、すぐ行き来できる距離にあることが新鮮だったそう。

「職場がオフィスというより、家みたいな感じなのも私はすごく好きなんです。お互いに顔が見えるところでみんなが仕事をしていて」

入社するまで「ものづくり」の仕事で、自分がどんな役割を目指せばいいのか、具体的なイメージがわかなかった。

伊東さんは今、先輩の仕事を見ていて、やってみたいことがあるという。

「店頭のポップや、オンラインショップのデザインをしている先輩がいて、私もそういう“伝え方のデザイン”に興味がわいています。以前から、蚊帳や麻の風合いの良さが、若い人にはあんまり広まってないなあと思っていて。それを広く伝える手伝いをしてみたいです」

小さな会社だからこそ、お互いの仕事が見える。

一度にいろんなことを覚えなければいけない大変さはあるけれど、全体を俯瞰できるからこそ、本当に自分にあった目標が見つかることもある。

「どんなに忙しくても、お店では笑顔でいること。そして明るい声で話すこと。私は、まだできることが少ないんですけど、これだけは絶対にやろうと思っています」


次に話を聞いた販売担当の岡本さんは、もともとお客さんとしてこのお店に出会った。

初めてお店を訪れたのは10年ほど前。お母さんの誕生日プレゼントを探しにやってきた。

「好き嫌いのはっきりしている母が、ここの蚊帳のポーチは気に入って使ってくれて。それ以来、毎年通うようになったんです」

岡本さんは前職で、昼夜を問わず慌ただしく働いていたという。もう少し、日々の時間を丁寧に過ごしたいと、転職を考えるようになった。

「それで思い出したのがこのお店だったんです。久しぶりに足を運んでみたら、相変わらずというか…。接客も、しつらえも、来た人を楽しませようっていう気持ちがそこかしこに感じられて、やっぱりここで働きたいと思いました」

物腰の柔らかい雰囲気が、お店にとても馴染んでいる岡本さん。実はまだ働きはじめて半年ほどなのだそう。

スタッフとして入ってみてどうでした?

「ゆったりした時間を演出するために、スタッフはかなり体を動かしているんですね。だから体力は必要かもしれません。マニュアルはないので、自分の頭でしっかり考えていく必要もある」

「ぼくはまだできていない部分もあるんですけど、先輩がしっかり寄り添いながらアドバイスしてくださっています」

岡本さんは働きはじめるまで、幡のカフェの食事を口にしたことがなかったという。

実際に食べてみて驚いたのは、味だけでなく、器や盛り付けの美しさ、季節を感じる素材へのこだわりなど、食べる人に喜んでほしいという工夫がたくさん込められていたこと。

「お客さまも、テーブルに食事をお運びすると、『うわーっ!』ってうれしそうな顔をしてくださる。それを見て、やっぱり自分たちのやっていることは間違ってないんだなって思えるんですよね」

駅からも観光地からも、少し離れた場所にあるこのお店。

わざわざ足を運んでくれるからには、満足してもらえるように全力で応えたいと岡本さんは言う。

販売もカフェの仕事も、未経験からの挑戦。花を活けたり空間をしつらえたり、先輩の真似をしながら、自分らしいサービスの形を探っている。

「常連のお客さまも、来るたびに新しい発見や季節の変化を感じてもらえるようにしたいですね。いつか自分も自信を持ってサービスができるようになって、お客さまに『会いにきたよ』って言ってもらえるスタッフになりたいなと思います」

ここで働きはじめてから、生活にも変化があったそう。

「休日に家族と過ごす時間が増えました。先輩スタッフからも最初に言われたんです。『お客さまに丁寧な生活を提案するには、まず自分の生活をおざなりにしないこと』って」

「最近はお店で仕入れているお味噌やお茶を買って帰って、家族との食事に取り入れています。無駄なものがまったく入ってなくて、やっぱりここの料理が好きだなあって思います」

先輩の姿に自分の将来を重ねたり、仕事で関わるものを家族にも持ち帰りたくなったり。

仕事と自分の生活がごく自然につながっている。第2の家のような愛着を感じられる職場なのかもしれません。

(2019/4/8 取材 高橋佑香子)
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