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まじめでゆかいな
発明家と木こりのいる町

自然の恵みを活かして“もの”をつくる。

そんな仕事に携わるならば、産地とつくり手の距離は近いほうが面白い。

木を伐る林業家がいて、その素材を活かすための施設があり、さまざまな経歴のクリエイターが活動している。高知県中西部に位置する佐川町(さかわちょう)では、豊かなものづくりの土壌が育まれつつあります。

キーワードは「自伐型林業」と「さかわ発明ラボ」。

自伐型林業とは、山の所有者の許可を得て個人で伐採や搬出を行い、持続的に山林を育てていく林業のこと。環境への負荷を減らしながら“食べていける”ビジネスモデルとして注目されるこの林業に、佐川町は6年ほど前から取り組んできました。

また、伐り出した町産材を活かすための施設が「さかわ発明ラボ」です。歯科医院だった建物をリノベーションし、レーザーカッターや3Dプリンターなどの先端機器を揃えて、町の人の“つくりたい”という想いを一つひとつ形にしています。

今回は、この自伐型林業とさかわ発明ラボに携わる地域おこし協力隊を募集します。いずれも経験は問いません。

 

取材当日、高知県には夜中から大雨が降った。

高知空港に降り立つころにはぽつりとも降っていなかったものの、どうやら山間部を通る電車が運休しているみたい。連絡バスで高知駅まで行き、役場の方に迎えにきていただくことに。

高知市内から佐川町までは、車でだいたい50分ほど。県内でも都市部へのアクセスはいいほうだと思う。

創業400年を超える酒造「司牡丹」の蔵をはじめ、まちなかには歴史的な景観が残っている。また、「日本の植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎博士の出身地で、緑豊かな風景も特徴のひとつ。

自然と文化の息づく町、という感じがする。

町に到着して、まず向かったのはさかわ発明ラボ。

スタッフの浅野航さんが迎えてくれた。

京都の大学で空間やコミュニティのデザインを学んでいた浅野さん。ラボでの採用をきっかけに、地元・高知に帰ってくることに。

「3Dプリンターやレーザーカッターを扱ったことはなかったんですが、デジタルファブリケーションには興味があって。新卒でこっちにやってきて、今は協力隊として2年目を折り返したところですね」

ラボには、大きく3つの軸がある。

まずは「DIY」。町内外のものづくり初心者からクリエイターまで、さまざまな人が「ここで何かつくりたい」と思ったときに設備を活用できるよう、機材の講習会や貸し出しを行なっている。

ふたつめは「コンシェルジュ」。企業やNPO、個人レベルまで含めて、「つくりたいものがあるけれど、どうつくればいいのだろう」という人たちとともに、企画段階から関わってものづくりを進めていく。

そしてみっつめの軸が「教育」。浅野さんが主に携わっているのはこの領域だ。

「ロボットづくりを通じてプログラミングやデザインの基礎や論理的思考を身につける『ロボット動物園』っていう授業を何年かやってきて。これまで1校だけでやっていたものが、今年度から佐川町全体に広がろうとしています」

さらに来年度からは全国の小学校でプログラミング教育が義務化されることもあり、より本格的な授業の体制づくりを進めているそう。

また、毎週水曜と木曜の午後にラボを開放し、子どもたちにものづくりの楽しさを伝える「放課後発明クラブ」を実施。地域のお祭りにちなんだ作品をつくって展示するなど、町とラボとの接点も生み出している。

「ラボのスタッフになりたい、と言ってくれている子もいるんですよ。CADとかIllustratorとか、ばりばり使いこなしていて。将来のうちのエースです」

どういうきっかけでラボに来るようになったんですか?

「最初は発明クラブでしたね。そのうち自分から『こういうのがつくりたいんだよね』って、声をかけてくれるようになって。ぼくのことは、“いろいろ教えてくれる近所の兄ちゃん”みたいな感じに思っているのかな」

「その子、学校よりもラボに来るのが楽しいみたいなんです。最近は、林業の協力隊が企画した山歩きイベントにも参加していて。学校とは違った、歳や立場にとらわれないコミュニティが身近にあるのはすごくいいなと思うんですよね」

家でも、学校でもない場所。ときにこのラボは、ものづくりの枠にとどまらない居場所にもなっているのかもしれない。

 

「一緒につくろう、っていうスタンスを大事にしたいんですよね」

そう話すのは、日本仕事百貨の記事を通じて4月からラボスタッフとして働いている上川慎也さん。

「ぼくたちこういうことができます、っていうだけじゃなくて、キャッチボールを交わしながらものづくりを楽しむような場づくりをしていきたい。さかわ発明ラボのもともとのビジョンも、そこにあると思うんです」

上川さんの主担当は、コンシェルジュ業務。

佐川町出身の声優・小野大輔さんの帰郷イベントで、佐川のコケとヒノキを使った壁面緑化パネルを制作して会場装飾を担ったり、ロボコンのコースづくりを任されたり。依頼を受けて形にしていく案件もあれば、佐川産の食材と薪を使った燻製ワークショップや商品企画など、自主的に企画・開発を進める取り組みもある。

「佐川ならではの要素を取り入れることは、いつも意識しています。あとは、つくりたい人の気持ちに寄り添うこと」

気持ちに寄り添う。

「機材をはじめて使う方をサポートしたり、これがつくりたい!っていう人の壁打ち相手になったり。いろんな関わり方があると思うんです。なので今回入る人も、スキルや役割を絞りすぎないで、一緒にこういう取り組みを面白がってくれる人がフィットするのかな、と思っています」

つくりたいものが明確にある人、なんとなく何かをつくってみたい人、今はものづくりに興味関心のなかった人。

ラボにはいろんな人が訪れるから、まずは気持ちに寄り添うことが大切。そのうえで、一緒にものづくりの楽しさを共有していけるような人だといい。

 

ラボをあとにし、川をはさんですぐ向かいにある役場へ。

ここで林業の協力隊のおふたりに話を聞く。まずは今年の4月からやってきた伊藤啓太さん。

昨晩からすごい雨だったみたいですね。

「そうですね。ぼく、毎朝川の飛び石を渡って通勤してるんですけど、今日は水量がすごすぎて、さすがに渡れなかったです(笑)」

雨の日はどんな仕事をするんですか?

「事務作業をしたり、映像を観ながら基礎研修を受けたり。あとは、町内の広報誌に『キコリンジャー通信』っていうコラムを持ち回りで寄稿していて。今回はじめてぼくの番が回ってきたので、書かせてもらいました」

もともとは大学でデジタルファブリケーションを学んでいたという伊藤さん。

木材を扱うこともあったものの、ほとんどが合板。つくり手としてもっと木をよく知りたいと思ったのが、自伐型林業に興味を持つきっかけだった。

「材料の調達から自分でできる環境はないかと探して、佐川町の取り組みを知って。この環境で働きたいなと思いました」

まさにぴったりですね。でも、なぜラボではなく林業のほうへ?

「ラボの協力隊の方から、『ラボから林業に挑戦することは難しいけど、逆なら実現できるかもしれないね』とアドバイスをいただいたんです」

たしかに。すでにデジタルファブリケーションの経験がある伊藤さんなら、ものづくりと林業を橋渡しする役割を担えるかもしれない。

10月から11月にかけて町内で開かれる「わんさかわっしょい体験博」では、佐川町産の木材を使ったオリジナルのスツールづくりワークショップを企画。同じく協力隊の方とユニットを組み、今後も林業と何かをかけ合わせた活動を続けていきたいと考えているそう。

自伐型林業の経験は、どのように積んでいくのだろう。

「最初の数ヶ月は、免許を取るために研修に出ることも多いです。一通り免許を取ったら、先輩に同行しながら作業を覚えて。最近は自分たちで山に入っていき、重機を動かして、っていう段階に入ってきました」

初年度に1年間のサイクルを学び、そこから技術を磨いていく。

「知れば知るほど、難しいなと。以前は木を植えたら勝手に育つと思っていたんですが、枝打ちをしないと節だらけの使いづらい材になってしまう。自然相手は正解がないので、自分で考えて動いていくのが大変で面白いところですね」

 

そんな伊藤さんの話を隣で頷きながら聞いていたのが、協力隊2年目の大竹克宏さん。前職は岐阜県の林業事業体で働いていた方だ。

「現役の協力隊は10名かな。すでに卒業して、林業に従事しながら定住しているのは8名。佐川に残って自伐型林業を続ける方は年々増えていますね」

専業で取り組む人もいれば、兼業する人も。

夫婦で鮎を釣って京都の老舗料亭に卸している人、役場の林政アドバイザーや林業大学の講師を務める人、夏場は高知県内の家業を手伝っている人など。さまざまな仕事と林業を組み合わせ、生業としている人たちがいるそう。

「ぼくも当初は林業一本でいこうと思っていましたけど、たとえば狩猟や炭焼き、きのこの栽培といったような山仕事もしつつ、林業を主軸に生活できたらいいのかなと、今は考えています」

自伐型林業に可能性を感じ、ここに永住する!と決めて地元の愛知県からやってきたという大竹さん。

これから入る人は、どんな人が向いていると思いますか。

「やっぱり、まずは何より林業をやりたい人。佐川町では6年ほど自伐型林業に取り組んできて、受け入れ側の体制もだいぶ整ってきましたし、講習会なんかも、やる気があれば積極的に受けさせてくれるので」

そこに伊藤さんが続ける。

「林業の人も、ものづくりのことを理解していたほうがいいし、ラボの人も山のことを知っていてほしい。お互いをよく知って、一緒に面白いことをやっていこうと思える人に来てもらいたいですね」

 

取材後、町内にオープンしたばかりの古書店&バー「貉藻(むじなも)」へ。

昨年取材した協力隊の山千代さんと斉藤さんが地域の方と古民家を改装し、基本的には週2日だけ開けているお店なのだそう。

役場の方、地域のおじちゃん、協力隊のみなさん、たまたま仕事で佐川町を訪れていた方々など、カウンター席はいろんな人たちが入り混じり、遅くまで賑わい続けた。

ワクワクと企む人のもとに、人が集まり、連鎖して。年齢も、内も外も関係のない、心地いいコミュニティがつくられているように感じます。

佐川町の協力隊は週4日勤務のため、活動時間外でこうした自主企画にも取り組みやすいはず。そこから新しい仕事が生まれることもあるかもしれません。

11月13日(水)には、東京・清澄白河でしごとバー「森の未来を考えナイト」を開催します。佐川町での仕事や暮らしに興味が湧いたら、まずは気軽に話しに来てみてください。

(2019/10/3 取材 中川晃輔)

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