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好きなものを
届けるよろこび
モア・ベターな暮らし

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「オーガニックショップ」にどんな印象を持っていますか?

自分の身体にも、環境にも良いものを売っている。そんな良いイメージの一方で、価格帯や知識の少なさから、わたしの場合は少しハードルの高さも感じていました。

今回訪れたGAIA(ガイア)は、そんな心配がまったくいらなくなるほど、自然体で居心地の良いお店。

肩肘張らず、なんだかいいなと思ったものを気軽に手に取れる雰囲気がありました。

株式会社がいあプロジェクトは、御茶ノ水と代々木上原でオーガニックショップGAIAを運営しています。そのほかにも神奈川・伊勢原での倉庫業や、オンラインショップでの販売も行っています。

今回募集するのは、代々木上原の店舗スタッフ。食料品もしくは服飾・雑貨の販売担当としてお店に立ち、時には近隣への配達も行います。あわせて、物流・倉庫業に関わるスタッフも募集しています。

おいしいものをおいしい、自分が好きなものを好きと、正直にお客さんに伝えることができる仕事です。



代々木上原駅を降りて、線路沿いの商店街を5分ほど歩いていく。

訪れたのは夕暮れどき。あたりは帰宅途中の人や夕食の買い物をする人たちで賑わっている。おしゃれで洗練された街のイメージとは裏腹に、地域の人たちの庶民的な生活を感じられて、ほっと安心する。

GAIAは、そんな通りにある小さなお店。

ここが食料品を扱う1号店。向かいには衣料品や雑貨を扱う2号店がある。ふらっと入って軒先の野菜を眺める人や、買いものをする人たちが頻繁に出入りしていて、お店は賑わっていた。

最初に話を聞いたのは、代表の清水さん。はっきりとした口調で、次から次にいろいろな話を教えてくれる。

清水さんがGAIAで働きはじめたのは27年前。できたばかりのお店でさまざまな業務を担っていた。

代表を任されてからは新たな店舗を立ち上げたり、倉庫業やオンラインショップをはじめたりと、会社を大きく育ててきた。

代々木上原と御茶ノ水にある直営店は、オーガニック商品のセレクトショップとして「おいしくて、安全だ」と思えるものを国内外から仕入れ、販売している。

「自分たちが売りたいものを選んで売っている。それだけは、自信を持って言えることかもしれないね。右から左にものを流すんじゃなくて、自分たちがちゃんとセレクトしたものを売るんだと」

扱う商品は幅広い。1号店では調味料やスパイス、野菜にお米、お菓子など。2号店では下着や靴下から、セーター、化粧品、歯磨き粉やスポンジまで置いてある。

生活に必要なものは、すべてGAIAで揃うのではないかと思えるほど。

「ものを売るのが好きな子には、うちの店は面白いと思うよ。ただ、勘違いする人には来てほしくないかな。自分の価値観をここでぶつけたいって人だと困る」

きっぱりと言い切る清水さん。

たとえば、エコロジーやオーガニックに対する考え方。お客さんによって気にかける部分は違うし、誰もが強い関心を持ってお店を訪れるわけではないから、自分の価値観や理論の押し付けになってはいけない。

「俺は、自分たちのことを『モア・ベターショップ』って言うんだよね。オーガニックだから絶対的に良いなんて考え方はやめてくれと。うちは、より良いものを売っているお店ってくらいの評価でしかないんだと」

「お店で売るものだって、切り口さえ定まっていれば、結構自由に考えていい。ものによっては添加物が入っていてもいいし、ぬいぐるみを売ったことだってあるんだから」

ぬいぐるみ…? どうしてですか?

「だって、可愛いから。それだけ。3,800円の抱き枕みたいなやつが100個売れて、すごい評価されたのよ。オーガニックでもない、普通のぬいぐるみ。『なんで売ってるの?』って聞かれたら、『社長が可愛いと思ったから入れたんですよ』って答えるの」

なんだか突拍子もない話に聞こえるけれど、それだけ極端でも明確な理由があるなら売ってもいいという、柔軟な考えの証なんだと思う。

余白のあるお店だから、お客さんは心地よく買い物ができるのかもしれない。

ここで働く人には、どんなことを大切にしてほしいですか。

「お客さんに対して『いらっしゃいませ』『これおいしいですよ』って気持ち良く言えるかどうか。そこを真剣に考えてほしいよね」

「今日この仕事やったら終わり、みたいな仕事とプライベートがはっきりしすぎている人は、うちでないほうがいい。サービス残業しろって意味じゃなくて、そういう目で生きているかってことね。休みの日に見つけた商品でも、GAIAで売ってみたいなって思えるとか。そういう感性で生きているやつがいいね」

実は、来年の秋で代表を次世代に引き継ぐ予定の清水さん。その後は高知県との二拠点生活をするつもりだという。

今までと関わり方は変わってくるんでしょうか。

「それは、全然変わんないと思う。この会社のオーナーは俺だから、良くなってほしいと常に考えているし。今もお店にはたまにしか来ないしさ。逆に、せっかく東京にいるからみんなでご飯でも食べようかとか、そういう機会が新しくできたら面白いと思ってるんだ」



これから入る人が一緒に働くことになる人にも話を聞いてみる。

まずは、代々木上原店の店長・村瀬さん。主に1号店での販売と、配達の仕事を担っている。

実は村瀬さん、子どものころから30歳を過ぎるまで、野菜は食わず嫌いだったという。

前職時代に体調を崩してしまったことが、食事を見直すきっかけになった。

「そのころ妻が農家さんから、オーガニックの野菜を買うようになって。家でつくってくれた鍋に入っていた春菊がすごく甘くて、びっくりしたんですよね。それをきっかけに野菜を食べるようになって、食に関心を持っていきました」

GAIAはもともと奥さんのアルバイト先だった。飲み会に交ぜてもらうこともあり、会社の雰囲気は入社前からよく知っていたという。

働きはじめて10年以上、店長になって8年が経った。

「GAIAで働いていてありがたいのは、嘘をつく必要がないこと。ちょっと気になるけど売らなきゃ、ってことがない。おいしいものをおいしいって正直に伝えられるから、売るのが楽しいし、自分もお客さんも気持ちがいいんだと思います」

村瀬さんは、自宅での食事はほとんどGAIAで買った食材を使っているという。

イタリア産のオリーブオイルを醤油と合わせて、鍋のタレに使うのが最近のお気に入りなんだと、教えてくれた。

「おいしいと感じるから、自然と自宅ではオーガニックを選んで食べています。ただベジタリアンでもないし、外食も普通にします。オーガニックじゃなきゃダメだっていう考えも偏りだと思うんです」

お店で働くスタッフたちも、オーガニックにこだわりのある人というよりも、おいしいものを食べるのが好きだという人のほうが多いそう。

素直においしいと思えるものだけを扱うから、商品も自然と好きになれる。

これから入る人に、販売に加えて任せたいと思っているのが配達の仕事。坂道が多い土地だから、依頼も多いという。

今は村瀬さんともう一名のスタッフで担当しているけれど、担当できる人をもう少し増やしていきたいと考えている。

「配達範囲は、渋谷、世田谷、目黒あたりが中心。個人宅もあれば、料理教室やレストランもあります。お家に伺うわけだから、信頼してもらえる態度や雰囲気が何より大切なんです」

「それにずっと通っていると、『次はこの食材を頼まれるだろうな』とかルーティーンがわかってくる。もしそれを次の注文で忘れていたら、一声かけてみるとか。そういう関係づくりの仕事ですよね」

メインはお店での販売で、1日の勤務時間のなかに、数時間配達の仕事が入ってくるイメージ。運転にさえ抵抗がなければ、荷物は女性でも問題なく持てる重さだそう。

とはいえ、GAIAの仕事には地道な作業も多い。

配達では、日々効率の良いルートを考えたり、箱詰めをしたり。あとはとにかく商品数が多いので、お店のシフトに入る2〜3人で品出しをするだけで一苦労なんだそう。

「毎日段ボールで大量の納品があって、それに一つひとつ値付けするんです。『今日は15分で終わらせる!』とか、自分のなかで何か楽しみをつくれることが大事だと思うんですよね」

「接客って、気持ちがすごく顔に出ますから。お客さんが『ここで買いたい』と思うお店は、やっぱりスタッフが楽しそうに働いているところだと思うんです」



食品が並ぶ1号店を出て、向かいの2号店へ。これから入る人で、もしも洋服や雑貨に興味があるなら、週に2回ほどこちらのお店で働くこともできるという。

ここで話を聞いたのは、及川(およかわ)さん。2号店で、仕入れから販売までの責任者を務めている。

もともとGAIAのお客さんだった及川さんは、3年前に入社。前職も衣服や雑貨の販売で、そのオーガニック版をやっているようなイメージだそう。

「これから自分がお客さまに届けるものは、長く残っていくものがいいな、と思うようになって。店と人が好きだから、つくるよりも対面で伝える側としてやりたかったんです」

GAIAで扱う商品は、質がいいぶん、決して安いものではない。

比較的生活水準の高い代々木上原だからこそ、しっかりと説明をすれば購入に結びつくことも多く、利益を出せている。

「どれも意味があっての値段なんです。パッと着てすぐ捨てられちゃうようなお洋服じゃなくて、長く着られるものをずっと大事にしてもらうこともエコなのかなって」

たとえば今の季節、お店の目立つ場所に置いてあるのは、5年履いても破れないという丈夫なウールの靴下や、普通なら捨てられてしまう短い繊維を集めてつくられたオーガニックコットンのストール。

どれも一つひとつ大切に、及川さんが想っているもの。

「やっぱりわたしは、売ることが面白くて。『あのお客さんに似合いそうだなあ』って選んだ商品を、実際にその方におすすめして買ってもらえたら、やったー!って思いますよね」

通りがかりに挨拶してくれる人や、週に何度も訪れてくれる人も多い。仕入れのときには常連さんの顔を思い浮かべるし、売るときも「あなたに似合うと思う」と素直に伝えるという。

「洋服も人も好きなんです。だから、人とものが出会って、お互いが輝くのが私にとっての喜びなんです」

「高いお金を払ってもらうわけだから、絶対に後悔しない、いい買い物をしてもらいたい。だからコーディネートとか、お手入れ方法とか、説明がめちゃくちゃ長いんです。将来的にも無駄にならない、本当にプラスになるものだけを買ってほしいから」

及川さんの話を聞いていると、本当にこの仕事が好きなんだと伝わってくる。

オーガニックだから、エコだから、という理屈ではなくて、自分が好きなものを正直に売ることができるお店が、GAIAなんだと思います。

今度はわたしも買い物に、ぜひ訪れたいお店です。そのときに、また一人楽しそうに働く人が増えていたら嬉しいなと思いました。

(2019/11/5取材、2020/11/13更新 増田早紀)

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