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まちおこし、じゃない
食と泊と暮らしで
この町をもっと面白く

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熊本県甲佐町(こうさまち)。

山や川に囲まれた土地でありながら、海にも近い。

まちを流れる一級河川の緑川は水質が良く、毎年鮎の友釣りをする人で賑わうそう。

ここで今、町に眠っていた古民家を活用して、新しい宿をつくるプロジェクトが進んでいます。

来夏のオープンを目指し、地元甲佐町でイベントの企画やスポーツクラブの運営をしてきた一般社団法人パレットと、これまで多くの地域で古民家再生を手がけてきた株式会社NOTEが共同で進めているこのプロジェクト。

今回は、その中心となる宿のマネージャーとレストランのシェフを募集します。


羽田空港から飛行機に乗り、熊本空港へ。

空港から甲佐町までは車で30分ほどの距離で、熊本市からも同じくらいの時間で行けるそう。都市部へのアクセスはいいみたいだ。



町には400年以上前に加藤清正がつくらせたという農業用水路がはりめぐらされている。水の音をすぐ横で聞きながら歩くのは、とても気持ちいい。

まずは宿となる予定の古民家を案内してもらうことに。案内してくれたのは、パレットの代表を務める大滝祐輔さん。



大滝さんは、甲佐町でサッシ屋さんを営みながら、パレットでまちづくりの活動をしている。

ここなんですよ、と案内されたのは、川沿いに建つ一軒の古民家。



「この家は昔、質屋をやっとったんです。そのあとおばあちゃんがタバコ屋をされていたんですけど、昨年から空き家になっていて」

1階のベランダは川側に突き出ていて、川床のような風情がある。2階には全面に窓があり、目の前の川を一望することができる。

中に入ると、ここに住んでいたおばあさんの荷物がまだ残っていて、まるで引っ越し前の家のよう。今は荷物の片付けを始めているところで、年内に着工し、来年の夏には宿としてオープンする予定だという。

フロントとラウンジを備えた母屋に2部屋。中庭を通った先の離れに1部屋を用意する。

柱や梁、窓など、利用できるものはもとの素材を使うことで、建物が持つ雰囲気を生かした宿にしていきたいという。



たとえば、2階に使われている障子。障子紙は張り替える必要があるけれど、いろいろな風景が描かれたガラスは趣があって、そのまま使えそうだ。

「“暮らすように泊まる”っていうコンセプトの場所をつくりたいと思っていて。宿泊される方がまるでこの町に暮らしているような、そんな体験ができる場所にしたいと思っています」

改修が終わり古民家としてオープンしたら、今回募集する運営マネージャーが中心となって運営していく。

日々の予約や清掃などの業務はもちろん、甲佐町の自然を生かしたアクティビティの企画運営にも関わってほしいそう。

緑川でのSUP(サップ)やサイクリング、農業体験など。1年ほど前から、すでにパレットで取り組んでいるものもある。今は試験的に実施しているので、今後さらにブラッシュアップしたり、別のアクティビティを考えたり、関わる人それぞれの発想を生かしてほしい。



いろんな構想について、楽しそうに説明してくれる大滝さん。そもそも、別に本業のある大滝さんたちが宿を始めようと思ったのはどうしてだろう。

「僕らは、もっと多くの人にこの町を好きになってもらいたくて。宿はそのための手段の一つでしかないと思っているんです」

町を盛り上げたい、という気持ちがあるんですか?

「うーん、それよりは、自分たちが面白いと思ったことをとことんやりたい、っていう気持ちが一番根っこにあって」

「自分のなかで火がついたのが、商店街で蚤(のみ)の市を開催したとき。1日に2万人くらいの人が来てくれて。それを見て、うちのばあちゃんが『昔あった初市はこうだったねえ』って言いよったんですよ」



自分たちが動いて人の賑わいを生み出すことで、地域のみんなが喜んでくれた。その楽しさがずっと心に残っているという。

「ふだん人通りの少ない道も、その日はたくさんの人であふれて。それが面白いっていうのがあったけん、この宿をきっかけに少しずつでも町に人が来てくれて、賑わえばいいなって思っています」


建物を案内してもらった後は、大滝さんと一緒に働いているパレットのみなさんに会いにいくことに。

訪れたのは、メンバーのひとりが開いているセレクトショップ『NEW OLD』。

最初に話してくれたのは、米原賢一さん。大滝さんとは小・中学校の同級生で、今回のプロジェクトが始まる前から一緒にまちづくりに取り組んできた。



「2年前に甲佐町に戻ってくるまで、東京で働いていました。実家がガス屋なんですが、親父がたまたま健康診断でよくない結果が出たってことで、そろそろかなあって戻ってきたんです。親父は今でもめっちゃ元気なんですけどね(笑)」

「東京にいたころから、大滝は『一緒にやりたいことがあるから地元帰って来いよ』ってよく言ってくれていて。なにをやりたいかは聞かされていなかったんですけどね(笑)」

当時から大滝さんは甲佐町で家業のサッシ屋を営みながら、町が立ち上げた地域スポーツクラブの運営に関わっていたそう。町内の施設を利用して、小さな子どもからお年寄りまで、日常的にスポーツにふれあえるような取り組みを進めていた。



2年前に甲佐町に帰ってきた米原さんも、大滝さんに誘われて運営に携わるように。その後スポーツクラブだけでなく、子ども向けの放課後教室など幅広い活動をしていくために、2018年に一般社団法人パレットを設立した。

その名前には、色と色を組み合わせて新しい色をつくるパレットのように、ヒトとヒトの掛け合わせによって新しいコトやモノをつくりたいという想いが込められている。

そんなパレットの新たな事業として始まったのが、今回の古民家ホテルのプロジェクト。きっかけは、メンバーの一人が株式会社NOTEの取り組みに興味を持ったことだった。

兵庫・丹波篠山市に拠点を置くNOTEは、古民家などの地元資源を活かした地域再生を数多く手がけている会社。

再生・保存だけでもコストがかかってしまう古民家を単に改修するだけでなく、宿やレストランなど持続可能なビジネスの場として活用する仕組みごとつくってきた。

たとえば、丹波篠山市の「篠山城下町ホテルNIPPONIA」。



経年で色が不均一に変化した土壁や天井板、傷のある柱。NOTEは建物の歴史をそのまま感じさせるような客室を生み出すことで、なつかしくて新しい価値を提供している。

さらに周辺施設や飲食店と連携して、城下町ならではのまち歩きアクティビティも開発。地域の暮らしや文化を体験することもできる。



今回改修する古民家も、NIPPONIAブランドのホテルとして開業することになる。

「僕自身、旅行先で地元の人と話したり、そこから情報を得て町に出かけたりするのが好きなんです。近所のおじちゃんと絡むこともできるような、暮らすように泊まる場所にしていきたいですね」

並行して、地元の食材を活かしたレストランの計画も進めている。こちらは、宿とは別の古民家を改修して活用する予定だそう。

「夜は7000円ほどの本格的なコース料理を提供したい」と米原さん。つまり、料理をつくるシェフも、このプロジェクトには欠かせない存在になる。

野菜やジビエ、掛け干し米、緑川で捕れる川魚など、食材が豊富な甲佐町。熊本県全体に目を向けても、柑橘類やメロンといった果物や馬肉など、多種多様な食材に恵まれている。



マネージャーとシェフ、どちらも裏方のようなイメージがあるけれど、ここではむしろお客さんや地域の人と直接コミュニケーションを交わすことが必要になる。

運営だけ、料理だけというよりは、多くの人とバランスよく付き合っていける人が向いているかもしれない。

「イノシシが捕まったから見に来る?とか、たけのこの時期なんで一緒に掘りに行きませんか?とか。お節介まではいかなくても、お客さんにはひとことふたことかけて、なんかしてほしい人にはお節介する。そんな距離感が理想なんじゃないかな」


パレットのメンバーは、大滝さんと米原さんのほかに3人。5人とも40歳前後の若いメンバーで、地域のガス屋さんや病院の事務部長、公務員など、それぞれが本業を持ちながら、地域のバックアップも受けて活動している。

その5人に加わって活動しているのが、今年の7月から地域おこし協力隊としてやってきた岡本久子さん。



もともとは熊本市でデザイン関係の仕事をしていたそう。専門学校時代の先生に甲佐町のことを紹介してもらったのが、地域おこし協力隊に応募するきっかけだった。

「一番惹かれたのは、やっぱりみんなの人柄なんですよ。雰囲気がやわらかくて、入りやすそうだなあって」

「これがパリパリピリピリしている人たちだったら、ちょっと無理ですわ…ってなっちゃったと思うんです(笑)。なおかつ、一人ひとり想いを持っているのが伝わってきて、一緒にやりたいなって」

岡本さんは現在、甲佐町を紹介するウェブマガジン「magazin BO」の運営や、チラシのデザインなどを担当。



パレットのメンバーは本業と並行して活動しているため、専業の岡本さんは貴重な存在。今回募集する人と一緒に動く機会も多いと思う。

「町の人たちに話を聞いていると、みんな同じ方向を向いているなって感じるんです」

同じ方向?

「町をより良くしたいとか、甲佐を盛り上げていきたいっていう気持ちを、みんなどこかで持っていて」

「宿のプロジェクトが進んで目に見えるかたちになっていけば、気持ちはあるけど何をしたらいいかわからないっていう人たちも、ガッとまとまると思うんです」

パレットのメンバーと岡本さん、そして地域の人たち。それぞれの思いは、今回のプロジェクトをきっかけにまとまりつつある。

行政レベルでも、もともと町にあったキャンプ場の改修計画や、古民家を利用した交流施設の計画など、新しい取り組みが始まっている。将来的にはパレットとして、宿にとどまらず、まちに点在する魅力を広い視点でつなげていくことも考えているそう。

どんな人だったら、ここで気持ちよくやっていけるだろう。すると「しっかりした人…」と岡本さんが小声でつぶやく。

すかさず米原さん。

「おいおい、今のメンバーがしっかりしてないみたいな言い方(笑)。でもそうかもなぁ。みんな『それおもろいな、やろやろ』みたいなタイプやけんね」

つづけて大滝さんも。

「小学校の登校班で一番後ろについてくれていたような人がええね。俺ら目的はみんな一緒やけど、バラバラ行きよるから。みんなにGPSを持たせてくれるみたいな(笑)」



真剣に話しながらも、常に笑いが絶えない6人。

面白そうなことやってるな、なんかこの人たちといると楽しそうだな。シンプルにそう感じた人であれば、ここでの時間はいいものになる気がします。

(2019/9/23 取材 稲本琢仙)
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