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いろんな生き方働き方を伝える。
この言葉をWeb上で表現しているのが日本仕事百貨だとすれば、リアルな場で表現しているのが、東京・清澄白河にあるぼくたちの拠点「リトルトーキョー」です。
1階の「ごはんや今日」には地元の常連さんや年に数回の出張のたびに訪ねてくれるお客さんもいるし、鹿をさばくワークショップや演劇の公演、車座になって語り合うイベントなど、日々いろんな人が出入りする場所になっています。
なかでも「しごとバー」は、多様な仕事や活動をしている人が毎晩のように集まるイベントです。
事前予約不要のワンドリンク制で、誰でも気軽に参加可能。お客さんとして来ていた人が後日ゲストになることもあるし、ここでの経験がきっかけで移住や転職、起業を志す人も。
今回はこのしごとバーの企画運営などに携わる「場の編集者」を募集します。
経験や資格はまったく問いません。代表のナカムラケンタいわく、「次世代の黒柳徹子さんやタモリさんを目指してほしい」とのこと。
コツコツと積み重ねていくことが、場にも、そして本人にとっても、着実に糧になっていく仕事だと思います。
平日の夕方、普段しごとバーの会場として使っているリトルトーキョーの2階へ。
この空間は、日によって表情がガラッと変わる。10人ほどでテーブルを囲み、お酒を飲みながらじっくりと語り合う日もあれば、部屋に入りきれないほどの人たちで賑わう日もある。テーマもさまざまで、同じような日は一日だってない。
まだお客さんのいないがらんとした部屋で話を聞いたのは、代表のケンタさん。
まずは「しごとバー」というイベントをはじめた経緯について、あらためて聞きたいです。
「今って、インターネットで情報は得られるし、買い物もできるし、友だちをつくることもできる。けど、ネットと事実は乖離することがあって」
それは、誇張されたり、変に解釈されたり。
「そう。ネガティブなことなら炎上するし、たとえば“一緒に仕事しましょう!”みたいに盛り上がっても、結局形にならないことのほうが多いんだよね」
「ただ、顔を合わせて話すだけで和解できたり、トントンと仕事が生まれたり。出会って何かがはじまる、ってことは多いんですよ。きっと情報とは違うものもやり取りしているのだろうね。だから会うことは大切だなと思っていて」
日本仕事百貨でも、求人記事を書くために必ず職場を訪ねている。すると会って話すからこそわかることがたくさんある。
そこでWebメディアと並行してはじめたのが、いろんな人に直接訪ねてもらえる場所「リトルトーキョー」であり、訪れた人が気軽に交流できるイベント「しごとバー」だった。
人が人を呼び、お客さんとして来ていた人がのちのゲストになり…。そのうち移住や転職、起業する人も出てきた。
数えてみたら、しごとバーは現在の清澄白河にリトルトーキョーが移転してから500回以上開催しているそうで、虎ノ門時代から通算すれば、かなりの数になるんじゃないだろうか。
雑草の専門家やテレビ番組のディレクター、お坊さんや婚活アドバイザーなど、ゲストの職業や活動は多種多様。今回募集する人は、そんな人たちと関わりながら日々のしごとバーを企画運営していくことになる。
「専門家の目線から深く掘り下げていくのも面白いこと。一方でぼくは、あらゆる領域を横断して見える世界っていうのも面白いと思っていて」
「この場所のイベント担当は、常にその最前線にいられる役割だから。ここでの経験は必ず糧になるし、いろんなチャンスも巡ってくるはず」
目標は、リトルトーキョー休業日の月火を除いた週5日、毎日しごとバーなどのイベントが開催されている状態をつくること。いつでもふらっと訪ねれば、何かやっている。そんな場所にしたい。
ゲストのブッキングだけでなく、イベントページの作成やしごとバー当日の進行など、やることは多岐にわたる。これだけでもなかなかの仕事量になりそうだ。
少しずつリズムがつくれてきたら、今度はアーカイブ化を進めていきたい。2時間のしごとバーのうち、冒頭の30分は現在もYouTubeでライブ配信しているので、これを編集して記録に残していく。
「イメージとしては、次世代のタモリさんとか黒柳徹子さんみたいな存在になれる可能性のある仕事だよね。司会進行していくだけじゃなくて、自分で企画して会話して、編集して届けるところまでできるのは、とても現代的なんじゃないかな」
扱うテーマも、担う役割の幅も広い。さまざまなことに対する柔軟性や好奇心が大事な仕事かもしれない。
加えて、もうひとつ大事な役割がある。それは、イベントの窓口担当として、さまざまな問い合わせに対応していくこと。
リトルトーキョーでは、しごとバーのように自社で企画運営しているものだけでなく、料理教室やワークショップなど、いろんな企画が日々開催されている。単にスペースを貸し出す場合もあれば、共同で企画から関わるようなものも。
過去にリトルトーキョーを訪れたことがない人からの問い合わせもあるので、場所のルールを説明したり、企画の相談に乗ったり、イベント当日は会場の鍵の開け閉めを行ったり。細やかな気配りや対応が欠かせない仕事でもある。
「基本的にはルーティーンが多くて、コツコツ積み重ねていく仕事。とはいえ退屈なものではなくて、刺激もある。合う人には合うと思うんだよね」
その人物像の部分を、もう少し詳しく聞きたいです。どんな人に合う仕事だと思います?
「素直な人。なんでもまずは食べてみよう、みたいなタイプかな。いろんな人の価値観や考え方をまず一旦受け入れて、自分のものにしてからどうするか?って考えられる人だといい。素直さは大事だね」
「経験はまったくなくてもいいと思っていて。とくにイベントの進行なんかは、場数を踏めば踏むほどうまくなっていくもの。プレゼンやトークが最初からうまい人なんていないから」
今回募集する人は、現イベント担当の今井さんから役割を引き継ぐことになる。
その進行は今や堂々たるもので頼もしい。けれど、イベント専任のスタッフとして入社したのは今井さんが初。自分なりにいろいろと試行錯誤しながら今のスタイルをつくってきたんだろうなと思う。
最近は少し開催頻度を減らしているけれど、一時期は毎晩のようにしごとバーをやっていたときもあったよね。
「そうですね。1、2年目はとにかくがむしゃらにやっていました」
今井さんがどんなことを考えながらしごとバーに向き合ってきたのか、あらためて知りたいです。
「まず、会ったことのないゲストさんの場合は、当日の打ち合わせで話し方の癖を見るんです。この人は結構ひとりでしゃべりたそうだなとか、口下手そうな職人さんだったら緊張させないようにしてあげたほうがいいな、とか」
お客さんの反応も日によってさまざまで、わかりやすく盛り上がる日もあれば、じっと聞く雰囲気になる日もある。一方的なトークショーというより、双方向にいろんなやりとりが生まれる場にしたいので、お客さんに話しかけたり、一人ひとり自己紹介をしたり。
「そのときも、偽名でもいいとか、仕事のことはぼやかしてもいいとか、話しやすい雰囲気をつくる。隣に座った人は特等席だから、はやめに話しかけて仲良くなっておく。全然知らない人が隣に座っているよりも、ああ、優しい人だ…!とか、お互いにわかっていたほうがいいですよね」
なるほど。自然なように見える流れのなかで、実はいろんなことを考えながら進めているんだね。
「めっちゃかっこよく言うと、その場その場のセッションみたいな感じで。決め切らないで、柔軟にやっています」
ほかにも、しごとバーの告知ページは、ゲストさんに作成してもらった文章をもとに、今井さんが相談に乗りながらつくっている。タイトルのリズムや語感、はじめて読む人はどう感じるか、その人の雰囲気が伝わるかなど。編集者としての視点も持ちながら、一緒につくっていく感覚かもしれない。
「最初はわたし、編集者として入社するつもりだったんですよ」
え…(笑)。はじめはイベント担当のつもりじゃなかったんだ。
「自分でも記憶が曖昧で(笑)。ただ、学生時代に友だちから『話を聞くのうまいよね』って言われたことがあって。それを真に受けたのかも」
美大でテキスタイルを専攻していた今井さん。授業で布の工場見学に行ったり、有志で活動していたフリーペーパーの企画で作家さんを取材したり。いろんな人の話を聞くのは、小さいころから好きだったそう。
「些細なことでも、なんでなんで?って気になるんですよ。まんべんなく俯瞰できないから、受験勉強とかテスト勉強は苦手でした。山をはっても、テストには絶対出ない、みたいな(笑)」
しごとバーにはいろんな方がゲストとして来てくれるよね。テーマによって興味を持てない、みたいなことはないの?
「まずないですね。なんだろう、どんな人にも愛せるポイントが必ずあるというか」
愛せるポイント。
「わたし、生い立ちの話を聞くのが好きなんです。みんな子どもだったっていうのは共通しているし、どんなに偉い人でも、生い立ちをたどると『同じ人なんだな〜』とか。そう思えたときにグッとくるんです」
たしかに今井さんは、誰の懐にもズバっと切り込んでいくところがある。肩書きや実績でその人を見ない感じ、というか。
それは、これから入る人にとっても大切なことかもしれないね。
「フラットさと素人目線は大事ですよね。『正直、それで食べていけるんですか?』とか。あとは、知ったかぶりをしないのも大事かなあ」
「報道カメラマンの方がゲストのときは、実際に機材を触らせてもらって、知らなかったことをいろいろと教えてもらって。それ以来番組のエンドロールを見るようになったし、テント屋さんのしごとバーをやったら街中のテントが気になる。ちょっとずつ世界の見え方が変わるんですよ」
話を聞くほど、この仕事は今井さんの天職なんじゃないかという気がしてくる。
ただ、今後はしごとバーの企画運営を別の人に委ねて、新しいことに挑戦していきたいそうだ。
「この4年間で、かなりいろんな人に出会ったなあと感じていて。本当に面白い人ばかりなんですけど、イベントは数時間だし、全員100%では愛せないわけです。わたしにとってはそれがちょっと、もどかしくて」
イベントは一見華やかに見えるけど、地味な仕事も多いし、毎日の繰り返しのなかでオンオフの切り替えも難しい。「すっごく楽しい仕事だけど、本当に大変ですよ(笑)」と今井さん。
「日本中の面白い人たちと知り合えたので、たとえばまだ知り合っていない人同士をつなげるとか、一緒に何かやるとか。広く浅い関係だけじゃなくて、もう少し深い関わりもつくっていきたいなと思っています」
2代目としてこれから入る人も、ここで経験を積んで新しいことをはじめたっていいし、何十年と続くイベントの名物司会者にもなれるかもしれない。
いずれにしても、まずはコツコツと積み重ねて、この場所やコンテンツを育てていくことから。面白い仕事だと思いますよ。
(2019/11/28 取材 中川晃輔)