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富士山麓をフィールドに
自然と人をつなぎ
遊ぶように働く

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

さまざまな動植物が暮らす富士山麓の原生林。

「足元にある、エビフライみたいなものってなんだと思う?」 

目線を下げると、コケのじゅうたんのうえに“エビフライ”が転がっている。ためしに拾って匂いをかいでみると、何かの木の実みたい。

「これはね、リスが食べ終えたマツボックリなんだよ」

ホールアース自然学校のみなさんは、自然の楽しみ方を広げるように、森のなかを案内してくれます。

自然学校とは、一年を通して自然体験活動を提供する施設や組織のこと。国内にいくつかあるなかでも、ホールアースは長い歴史を持っています。
 
自然と触れ合うことの楽しさを伝えるインタープリテーションを活動の中心におきながら、トレッキングやキャンプなどのプログラムを企画・運営したり、企業研修や里山保全に取り組んだり。さらに最近ではジビエを専門に扱う施設を運営するなど、自然を舞台にさまざまな活動を繰り広げています。
 
今回募集するのは、ここで働く実習生です。
 
季節は、2020年の春から秋にかけて。およそ8ヶ月間、インタープリテーションを中心に、自然体験プログラムの運営などの現場経験を積みます。
 
実習生と組織、お互いに希望すれば、修了後も正社員として働くこともできるそうです。



東京駅から新幹線こだまに乗って、ちょうど1時間。新富士駅の改札を出ると、早速ホールアースの皆さんが迎えてくれた。
 
「ここから小一時間くらいで、僕たちの拠点に着きます。じゃ、行きましょう!」
 
そう言って車のハンドルを握ったのは、夫津木(ふつき)学さん。助手席の小野亜希子さんも振り向いて、「おいしいパンがあるので、よければ食べませんか?」と話しかけてくれる。
 

車は街並みを背にどんどん進んでいく。
 
気づけばあたりはすっかり里山の風景。田んぼや畑が広がるのどかな自然のなかに、ホールアースの富士山本校はある。
 
広大な敷地には、ログハウスの事務所、ヤギや鶏が暮らす小屋、キャンプサイトにスタッフ手づくりの池などが点在していて、すぐ裏手には川も流れている。
 

この日はあいにく雲に隠れていたけれど、晴れた日には展望デッキから富士山が一望できるそう。

広い敷地をひと通り巡ったあと、二人がこんな提案をしてくれた。
 
「今日は風も穏やかだし、火をおこしてデッキで話すのもいいかもしれない。ちょうど紅葉もきれいだから、気持ちいいと思いますよ」
 
薪を割って、マッチで火をおこす。しばらく待つと、パチパチと薪の爆ぜる音が聞こえてくる。
 

思い立ってすぐに焚き火を囲めるなんていいなあ、と思いながら準備を手伝っていると、後ろから声がかかった。
 
「おっ、焚き火を囲んで話す? 雰囲気があっていいねぇ」
 
仕事の合間を縫ってきてくれたのは、山崎宏さん。12年前に入社して、今はホールアースの理事を務めている。
 

暖かいお茶で一息ついてから、あらためてホールアースについて教えてもらう。
 
「はじまりは、創設者が37年前にひらいた動物農場です。命ってなんだろうとか、自分より弱い生き物がいるんだとか。自然からいろんな学びを得てほしいとはじめた場所が原点ですね」
 
小さな動物農場は、大自然を舞台に少しずつ活動の幅を広げていく。

修学旅行生など学校団体向けのガイドツアーや、キャンプやトレッキングといった自然体験プログラム。さらに今では、無農薬農業や、野生鳥獣解体処理施設の運営、自然資源を活かした地域づくりのコンサルティングなどにも取り組んでいる。

“自然にまつわる何でも屋さん”という感じですね。

「そうだね。うちは、とにかくいろんなスタッフが『自分はこんなことをやりたいんです!』って生き生きと提案してくる。その提案をいいね!って歓迎する組織だなと感じています」

ホールアースでは、自然ガイドやキャンプといった基本業務も、どんな中身にするかは担当するスタッフ自身が考えている。安全管理など最低限のルールを守った上で、そのときそのときの参加者の様子や雰囲気を感じ取りながら、場をつくっていく。

それぞれのプログラムや事業には、スタッフの興味や関心、そしてカラーが色濃く反映されているそう。

「専門的な仕事に思われることが多いんだけど、別に何か特別な資格が必要なわけじゃなくて。むしろ元DJ、お菓子屋さん、不動産開発に水族館の職員とか、全然違う道を通ってきたスタッフだらけです」

「全員が自然マニアの組織よりも、いろんな人がいたほうが面白いし、楽しい。そんなふうに、一つの色に染め上げずに、バラバラであることを認めようって風土がある気がしますね」



「ガッツも元消防士だもんね」と山崎さん。“ガッツ”こと夫津木さんが応える。

「そうそう。僕も最初は“とにかく自然のなかで働きたい!”って情熱をゴーッと燃やしてきたんだよね」

愛知県で生まれ育ち、そのまま地元で進学、就職した夫津木さん。およそ10年間、消防士として働いていた。

「体力には自信があったし、公務員は安定しているから趣味も大切にできるなって。デザインや音楽を嗜んで、その反動で体を動かしたくなってマウンテンバイクに乗って。そこからはもうどっぷりアウトドアです」

「その延長線上で、だんだん自然や環境にも関心が向くようになって。単純に“アウトドア、ヒャッホー”じゃなくて、自然を意識した暮らしや仕事をしたいなと思ったんだよね」

そんなとき偶然手にした雑誌で目にしたのが、ホールアースのスタッフのインタビュー記事。「自然をガイドすることが仕事になるなんて、すごく面白い」。試しにこの富士山本校を訪れたとき、目の前に広がる大自然を見て、すぐに応募を決めたそう。

ホールアースでは、ほとんどのスタッフが“実習生”としてキャリアをはじめる。

短い研修期間を終えると、春は小・中学生など学校団体の自然ガイド、夏は子ども向けキャンプ、秋は施設整備と、怒涛の現場体験を積み重ねていく。

「数十年の間、先輩たちが積み重ねてきたガイドやキャンプのノウハウを惜しみなく教えてくれるんですよね。そこから試行錯誤して、フィードバックをもらって、また悩んで。そうやって最初の何ヶ月かで一気に基礎をつくるんです」

「まったく経験がないから、32歳だったのに中学生を前に緊張しちゃうの。今なら『おい、おせーぞ!』なんて言えるけど、最初は『それではみなさん、聞いてください!』って(笑)。でも、すごく面白かった」

早く一人前になりたい。がむしゃらに現場にのめり込んだ夫津木さんは、同期よりも2ヶ月ほど早く実習期間を終えたそう。

「実習期間はある意味、最低限のクオリティを担保するための期間で。そこから先は自分の努力で、それぞれの個性とか、色を出していくことが求められるんだよね」

自分の色を出す。夫津木さんの色は、一体どんなものなんだろう?

そう尋ねると、新しいプロジェクトの話をしてくれた。

「富士山麓をフィールドに、“自然×リラックス”をテーマにしたcofuji(コフジ)ってツアーを考えて。僕の好きなものとかやりたい表現をとことん詰め込んで、形にしたんです」

朝集まって、富士山麓のトレイルを1時間半ほど走る。立ち止まり、深呼吸をして、五感で自然を感じる。だんだんと心が緩んでいったら、ランチの時間。トレイルフードをシェアしながらゆっくり会話を楽しみ、午後からまた、立ち止まりながらゆっくり走って汗を流す。

「きれいな新緑に感動したり、生き物の鳴き声にハッとしたり。自分の感性が動いたことをそのまま伝えて、一緒に分かち合う時間がすごく好きで。自分が楽しくて、相手も楽しい場を一緒につくれるツアーが、僕はハッピーだと思うんです」

休みの日にも走りに行く馴染みのフィールドに、お気に入りの食器や、こだわって選んだトレイルフードを携えて飛び出す。仕事と遊びと趣味が溶け合うところに、cofujiはある。

ホールアースで働きはじめて10年目。

今は、“遊ぶように働く”という言葉がしっくりきているそう。

「僕は、“仕事だからしょうがなくこなします”って感じになっちゃったら、この仕事を辞めようと思っていて。せっかくここに来たんだから、やっぱり情熱を持って、思いっきり楽しまないといけないなって思うんです」



夫津木さんが隣を向いて、「おのちゃんは、ついこの間まで実習生だったよね。どうだった?」と話題を振る。

「そうですね…」と考えはじめた小野さんは、今年の春、ホールアースにやってきた。

「私はもともとシャツ職人として働いていて、朝から晩までずーっとミシンを踏んでいました。ものづくりが大好きで、やりがいはあったんですけど、あるとき作業台の上に山のように積み上がったシャツを見て『こんなにモノが溢れている時代に、自分がつくり続ける意味ってなんだろう』って思えてきて」

「一回枠を全部取りはらって、いろんな仕事を探してみようって思ったんです」

そこで偶然見つけたのが、富士登山の添乗員の仕事。はじめての挑戦だったものの、「自分にはこういう仕事もできるのかもしれない」と、世界が広がっていく感覚があった。

だから日本仕事百貨の記事をきっかけにホールアースを知ったときも、「ここに可能性があるかも」と感じて応募を決めたそう。

「実習生になったとき、なるべく飾らずにいようって思ったんです。変に背伸びをして自分をよく見せても後からキツくなっちゃうだろうし、ここの人たちはきっとそのままの自分を受け止めてくれるだろうなと感じて」

実習期間中は、先輩たちからフィードバックをもらう機会も多い。

たとえば“富士山麓のガイド”と一口に言っても、スタッフによってそのスタイルはさまざまだ。

「はじめのころ、ガッツさんに同行してもらったとき、『おのちゃん、今のガイド、人間味があまりなかったよ』って言われて…」

おお、なかなかズバッと…。

「結構ショックだったんです(笑)。でもそのあとガッツさんは『ツアーに参加してる人は、自然にも感動するんだけど、ガイドしているおのちゃんの感情とか、おのちゃんらしさに惹かれて前のめりになっていくんだよ』と言っていて」

「そのときはまだ知識も自信もなかったので、樹海がどうできたのか、どういう動物がいるのかって伝えることに必死になっていたんです。あれから、自分らしいガイドってなんだろう?って考えるようになりました。まだ答えは出ていないんですけどね」

ミシンと向き合って服をつくる日々から、自然の中に身を置いて自分と向き合う8ヶ月。

実習期間を終えた今、どんなことを感じていますか?

「そうですね…。飾らずいられているのが心地いいです。人と顔を合わせて働くのが楽しいし、あと、よく笑うようになった気がします」

「ここにいる人は、みんな興味もベクトルも、本当にバラバラなんです(笑)。でもそれぞれ心の中に熱意があって。私も、イベントなのかものづくりなのかまだわからないけれど、そういう消えない火を、いつか形にしたいと思っています」

メラメラと激しかったり、静かに燃えていたり。それぞれに熱を抱きながら働くみなさんの話は、聞いていて気持ちがいい。

8ヶ月を終えたとき、自分のなかにどんな炎が灯っているだろう。そうワクワクしたなら、ぜひその気持ちを抱えたまま富士山麓のフィールドに飛び込んでください。

(2019/12/06 取材 遠藤真利奈)

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