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62のストーリーを伝える
東京のアンテナショップ

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47は日本の都道府県。23は東京都にある区の数。

では、62というのは何の数字でしょう。

あまり意識したことがなかったけれど、これは東京都にある区市町村、すべてを合わせた数。

情緒や歴史を感じる下町、ビジネスや文化の中心地、多くの人たちを受け入れてきたベッドタウン、豊かな自然が残る奥多摩や諸島部。さまざまな特色を持った地域が集まって、「東京」はできています。

この春、東京都庁の一角に62区市町村のいいものを集めた「東京のアンテナショップ」が生まれます。今回はそのお店で働く店長とスタッフを募集します。

お店を手がけるのは、株式会社さとゆめ。道の駅やアンテナショップのプロデュースや、ヘルスツーリズムの企画運営など、地域の魅力を開発するプロジェクトを手がけてきた会社。

さとゆめの強みはコンサルとして企画提案をするだけでなく、自分たちも伴走者として地域に入り込んでプロジェクトに関わってきたこと。

今回のショップも、ものを売るだけにとどまらず、東京でものづくりをしている人たちを応援するハブのような場所になることを目指しています。


向かったのは地下鉄の市ヶ谷駅を出てすぐのところにあるビル。年季の入ったエレベーターで9階まで上がると、ワンフロア全体が株式会社さとゆめのオフィスになっている。

代表の嶋田さんは直前までほかのミーティングをしていたようで、少し忙しそうだけど、明るく迎えてくれた。

「さとゆめは今年で7年目。これまでもいろんなプロジェクトに携わってきたんですが、アンテナショップっていうのは、さとゆめが立ち上げ当初から取り組んできたルーツみたいな事業なんです」

会社を立ち上げた初年度、嶋田さんたちはわずか3坪のコンテナで、永田町の一角に「さとゆめラボショップ」という直営のアンテナショップをつくった。

自分たちがプロジェクトで開発したもののほか、出張先で見つけたいいものを直接販売していた。

「地域の商品を売って伝えるっていうことは、雇用を生み出して産業を守ることにもつながる大切なことなんですが、いきなり百貨店などで扱ってもらうのは難しい。だったら自分たちでやろうと思って」

2年ほど続けたラボショップ。そこから世に出た商品もたくさんあったという。

その後、いろんな自治体から依頼を受けてアンテナショップや道の駅の仕事をするようになった嶋田さん。一方では、いつかまた自分たちでお店をやりたいという思いもあった。

「仲間内では以前から話していたんです。『東京オリンピックのときに、選手村に東京のお土産物屋さんをつくりたい』って。今回のお店は、その目標にかなり近い。さとゆめにとってすごく大きなプロジェクトだと思います」

高層階には展望台などがあり、東京の観光スポットとしても人気の高い東京都庁。

お店は今回もまた3坪とコンパクトな空間。そこに、東京62区市町村からいいものを集めてくる。旅行者にとっては、東京の魅力をギュッと凝縮して体験できる場になるかもしれない。

それにしても、東京に東京のアンテナショップというのはなんだか不思議な感覚ですね。

「僕らの仕事は、『あまり知られていないけど、いいもの』を世に出すお手伝いをして、その人たちの暮らしや産業を守ること。そういう意味では東京も例外ではなくて、まだまだ知られていないよさがたくさんあるんです」

「渓流でワサビを育てているようなディープな山村もあれば、ツバキの実から油を搾って生活をしている島もある。いかにも最先端の街も、昔ながらの下町も。東京だけでも、日本のいろんな気候や文化を凝縮して体験できる多様性があるような気がします」

嶋田さんたちは、これまでも東京の隠れた魅力を紹介する取り組みを続けてきた。

東京ビッグサイトで開かれるツーリズムエキスポでは、5年前から東京62自治体の魅力を伝えるブースを出展。

その取り組みが評価されて、東京都からお店の運営を受託することになった。

具体的には、どんな商品が並ぶことになるんだろう。

「たとえば日常でよく使うノートやペン。実は東京でつくられているものが多いんです。僕たちは見慣れているけど、海外の方から見ると驚くほどクオリティが高い。そういう、日常のいいものを、捉え直して紹介するライフスタイルショップにしたいと思っていて」

自分たちでは気づかない魅力を、外の人の視点で眺めてみる。そこには、地域づくりとの共通点も感じる。


商品のセレクトはこれから内容を詰めていくところ。

社内のアイデアをまとめたり、都の担当者とのやりとりを進めたり、プロジェクトリーダーとして動いているのが、2年前に日本仕事百貨の記事を通して入社した手嶋さん。

「都庁には、観光情報センターっていう62区市町村の観光に関する情報の発信拠点があって。お店はその一角にできるんです。私たちのお店も、商品を通して、東京のいろんなまちに行ってみたいと思ってもらえるようなきっかけづくりをしていきたくて」

お店のオープンに向けて、今は62それぞれの自治体の商品を何にするか、話し合いを進めている。

古くからのものづくりのまちで育まれた工芸品、島や森などの自然の恵みを活かしたもの。

一見特産品を見つけにくそうな住宅街のエリアからは、その土地が気に入って移住した作家がつくったクラフト。ほかにも、だるまや招き猫、妖怪伝説など、人の暮らしに紐づいた文化をヒントに、いろんな「もの」を集めていく。

「あとはお味噌のような食文化とか、江戸切子のようにつくる過程を体験できるものも紹介したい。なぜその地域でその商品が生まれたのか、生産者さんはどんな思いでつくっているのか、そういうことも表現できるお店になったらいいなと思っています」

それにしても、東京って本当にいろんな顔があるんだな。

東京に住んでいる人にとっても、ちょっとした旅行気分が味わえそう。その楽しみ方は、ほかの地域のアンテナショップとも共通していますね。

「東京都庁の方とやりとりをさせていただくなかで、地方も東京も変わらないんだなって思います。みんな『この地域のために』っていう思いで仕事に取り組んでいるというか」

以前から、地域に根ざした仕事がしたいと考えてきた手嶋さん。宮城県の農業生産法人で営業の仕事をしていた時期もある。そのときに感じていた課題が、今の仕事のモチベーションになっているのだそう。

「商品力には自信があったんですが、輸送方法や販路の開拓のノウハウがなくて悩んでいたんです。コンサル会社さんからアイデアをもらうこともあったんですが、自分たちだけでは実現できなくてまた悩む。提案だけでなくその先も一緒に伴走してくれる人がいたらなと思っていたんです」

「日本仕事百貨でさとゆめの記事を見たとき、地域に入り込んで、泥臭いところまで関われるのがいいなと思ったんです。そのときのイメージは働きはじめてからも変わっていません」

入社後は、三軒茶屋にある山形県河北町のアンテナショップの企画などに携わってきた手嶋さん。

店舗運営の経験がない地元の人たちと一緒に、情報発信や空間づくりについて考えてきた。

社内に蓄積されているノウハウは、今回新しくお店づくりに関わる人にとってもヒントになるはず。

「現場のスタッフだけじゃなくて、私たちも一緒にバックアップしながらお店づくりを進めていきたい。一人じゃなくてみんなで取り組む体制があるよっていうことは、新しく入る人にも伝えたいなと思っています」


新しく入る人にとってきっと心強い存在になるのが、瀬尾さん。ご自身でも会社を経営していて小売の経験も豊富な瀬尾さんは、マネージャーとしてプロジェクトに関わっていく。

この日は、青森県六ケ所村への出張から戻ったその足で事務所に立ち寄ってくれた。

「今、別のプロジェクトで六ケ所村の商業施設運営サポートをしているんです。もともと嶋田さんが手がけた案件を引き継ぐ形で担当しているんですが、僕も嶋田さんも『地域で頑張っている人を応援したい』っていう根っこの部分が共通しているので、気持ちよく仕事ができていますよ」

瀬尾さんはこれまで、新橋にある鳥取と岡山のアンテナショップの運営にも携わった経験がある。

アンテナショップで大切なことは、そこが「気づきの場」であることだという。お客さんが地域の魅力に出会うだけでなく、生産者さんも新しい発見が得られるように、橋渡しをしていく。

ときには、ショップの視点がつくり手の事業そのものに影響を与えることも。

「新橋でアンテナショップを運営していたころ、鳥取の関係者さんから『新しい品種を開発しようと思っている』っていう相談を受けたことがあるんです。当時はマンゴーとか甘いフルーツがブームだったから、梨も甘いほうがいいんじゃないかっていう発想があったみたいで」

「でも、僕は別の提案をしました。新品種の開発となると10年がかりだし、梨のよさって甘いだけじゃないと思うから」

そこで瀬尾さんは生産者さんと一緒に、新たな投資コストかけることなく今ある梨の付加価値を高めていくための方法を考えた。

そのヒントになったのは産地でずっと守られてきた保存の方法。雪深い地域の倉に入れて保存するため、湿度が高く温度変化が小さい環境を維持できる。

だから、収穫の時期だけでなく春先まで美味しく食べられるという。

「試しに、時季外れの冬場から春先にかけて店頭で販売したところ、好評だったんですよ。だから生産者さんと一緒に数年かけて、保存した梨を生かす体制を整えて。冬場は生鮮品の少ない時期でもあるので、お店の売れ筋に育ちました」

今あるものに、どんな価値を見出せるか。産地のなかにいると気づきにくい魅力を、外の視点から伝えていく。これもまた、ショップスタッフならではの大切な役割のひとつかもしれない。

「できれば、一緒に働く人とも産地には足を運びたい。つくり手の思いを聞いて、それをお店でお客さんに伝えてもらう。そういう双方向のコミュニケーションができたらいいなと思います」

「お店は、ものを売るだけじゃなくてひとつのメディアでもあるから、売上の数字を追いかけるよりもスタッフがコミュニケーターであることを大切にしたくて。この場所を東京のいろんな地域とつながるハブみたいにしていきたいんです」

たとえば、実際につくり手の方を呼んでお店でワークショップを開いたり、産地に足を運んでみたいというお客さんに、アクセスなどの情報を提供したり。

スタッフは、地域を発信する広報のような役割になりそうですね。

「広報というより、応援隊かな。いいところを伝えるだけじゃなくて、改善点も見つけて一緒に考えていく。小売の経験よりも、心地よい場をつくるっていうマインドのほうが大事です。夢を持っている人と一緒にやっていきたいですね」

今回も、お店の面積はたった3坪。

小さい空間ではあるけれど、そのまわりには東京62のまちでものづくりに携わる人や、これからその魅力に出会う世界中の人たちがいて、いろんなつながりが生まれる可能性を秘めている。

都市のローカルを集めたような、東京のアンテナショップ。働くなかでも、いろんな楽しみ方ができそうです。

(2019/12/19 取材 高橋佑香子)
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