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「床の間があって、きちんとものが整理されている。そんな空間を気持ちいいって感じる心が日本人のDNAにはあると思っていて。暮らしに合った片づけやすい家具をつくることで、その手助けができると思うんです」
大谷産業株式会社は、生活収納家具専門のメーカー。
和歌山県に工場を持ち、商品の企画から製造、販売までワンストップで行なっています。
募集するのは、銀座にある直営店「GALLERY収納」で働く収納プランナーです。お客さんの暮らしをヒアリングして、ぴったりな収納家具をプランニングしていきます。
経験は問いません。正社員がメインではありますが、アルバイトやパートなど、働き方も相談しながら決めていきたいそう。
いろんな家や、いろんな暮らし。一つひとつ、丁寧に寄り添い続ける人たちに話を聞いてきました。
GALLERY収納があるのは、東銀座駅を出てすぐの場所。交差点を挟んだ斜向かいには、歌舞伎座が見える。
なかに入ると、収納場所がたっぷりあるデスクや天井まで伸びる収納棚など、便利そうな家具がずらりと並んでいる。

奥に進み、ふだんはお客さんとの打ち合わせスペースとして使われている場所で話を聞くことに。
最初に話を聞いたのが、代表の大谷さん。

「ここで働く人は、“話していて楽しいかどうか”っていうのが大事やと思うね。話の抑揚だったり、お客さまとの話題の進め方を考えて工夫したり。そういう人柄が家具にも現れてくるから」
大谷産業の家具は、お客さん一人ひとりの要望に細やかに応えるセミオーダー家具。丁寧なヒアリングからディテールを詰め、暮らしに寄り添う高品質な家具をつくり続けてきた。
たとえば、収納ボックスを組み合わせるタイプの『Fシリーズ』は30年以上続く人気商品。引き出しや扉など、10万種類以上のアイテムから好きな組み合わせを選び、サイズも10cm刻みでオーダーできるそう。
ほかにも、床から天井まで壁一面に設置するオープンタイプの棚『Vシリーズ』など、ものを美しく、しっかりと収納できる家具が大谷産業の強みだ。

素材やデザインなど、家具にはいろいろな要素がある。そのなかでも“収納”にこだわっているのには、創業時の想いがあるからだそう。
「今の住宅事情って、本当に残念なことが多くて。たとえばマンションでも、ものは多いけど収納が少なかったり、家具があっても使いづらかったりして、片づけられないっていうことがある。ものが散らかった家って気持ちよくないでしょう?」
「だからこそ、家具のおかげで少しでも片づけやすくなって、気持ちのいい空間で暮らすことができたらすごくいいと思っていて。GALLERY収納って名前やけど、昔は片づけ屋って名前でやりたいって言ってたくらい、片づけにこだわってるからね」
いろんなものが簡単に手に入る今の時代。多くのものを所有するより、整った空間に暮らせることのほうに、豊かさを感じる人は増えているのかもしれない。
「絵を壁にかけてる家ってあるけど、花を生けてる家って少なくなっていてね。昔だったら、小さい家でも一輪挿しを置いてたりする。サザエさんの家にある電話機の横には一輪挿しが飾ってあるでしょう? あれは家が片づいてるから」
たしかに、部屋が片づいて心にも余裕があるからこそ、花を生けようと思うのかもしれないですね。
「暮らしを丁寧にしたり、気持ちよく過ごせるようにしたり。その助けになるような家具をつくっていきたいっていう想いを持って取り組んでいるから。それに共感してくれる人に来てほしいね」
続いて話を聞いた村松さんは、まさにその想いに共感して働いている方。入社して17年目になるそう。

「パーツの組み合わせによって、お客さまが自分仕様の家具にできるのがいいなって思ったんです。フルオーダーだと、引越し先の部屋ではサイズが合わない、ということもあるじゃないですか」
「大谷産業の家具だったら、暮らしに合わせて足したり引いたりと調整できる。生活のかたちに応じて、片づけやすいように家具を変えていけるのが魅力的だなと思いました」
たとえば、と話してくれたのが、ある家族の話。
「お子さんが小学生のときにデスクを購入していただいて。中学、高校と成長していくのに合わせて、本棚をつけたり引き出しをカスタマイズしたりして、使い続けてもらっていたんです」
「最近は大学への進学をきっかけに、一人暮らしするお部屋にもデスクを連れて行ってくださって。棚をはずして新しいお部屋に合わせる調整をさせてもらったんです。家具を通してお客さまの人生の節目に関わらせてもらえることは、うれしいしやりがいにもなりますね」
暮らし方が変われば、家具の使い方や収納する中身も変わってくる。それぞれの変化に寄り添っているからこそ、長く使い続けてもらえる家具になるのだろうな。

「ありがたいことに、お客さまの4割はリピーターなんです。『以前に村松さんに担当してもらったんですけど、まだいらっしゃいますか?』って連絡してくださる方もいて。長いお付き合いをさせていただいているお客さまも多いんですよ」
もちろん暮らしに合わせた提案をするためには、商品の種類や組み合わせ方などの知識も必要になってくる。ただ、インテリアの知識は入ってからでも身につけられるので、家具業界の経験はなくても大丈夫とのこと。
「大事なのは人柄の部分だと思うんです。お客さまと目を合わせて話ができるとか、ちょっとした気遣いができるとか」
「今はぴったりの家具でも、将来生活が変わったら使いづらくなる場合もあるんです。だから正解はひとつではないんですよ。しっかりと目の前のお客さまに向き合って、よろこんでもらえるように精一杯やる。それが一番大事ですね」
よろこんでもらえる家具を提案するには、どうすればいいのだろう。
日々お客さんと向き合いながら、自分の提案の幅を広げているのが、入社3年目の渋谷さん。

「もともと衣食住に関わる仕事をしたいと思っていて。最初はパン屋、そのあとに不動産屋で働いていました。不動産屋では物件仲介をしていたんですが、働くうちに空間をどう飾るかっていうことに興味が出てきて、ここに転職したんです」
大谷産業には、GALLERY収納を通じて個人のお客さんに販売する部門のほかに、デベロッパーや設計事務所などに向けた法人販売の部門があるそう。
現在は6名のプランナーが各部門3名ずつに分かれており、人手が足りないときには互いに行き来しあってカバーしている。今回募集する人の所属は、希望や適性をみながら決めていくとのこと。
「プランを考えるのも大事なんですが、それ以前のヒアリングでちゃんと聞けるかっていうのが重要で。たとえばテレビボードだったら、『何インチのテレビですか?』から始まって、『DVDデッキお持ちですか?』『うちは内蔵型なんですよ』みたいなやりとりをしていくんです」
「プライベートなことも含めて、ガツガツと掘り下げて聞いちゃっていますね。なにを収納するのか、そこまで深く考えていなかったっていうお客さまもいらっしゃるので、より良い家具にするためにもしっかり聞く姿勢は大事だと思います」

聞くときはどんなことに気をつけているんでしょう。
「そうですね…。無理に話してもらうことはできないので、リラックスしてもらうのが一番かな。ちょっと雑談してみるとか、リアクションを大きめにしてみるとか」
「こちらから聞かなくても、ふだんの生活リズムやご家族のことをどんどん話してくださる方もいらっしゃるんですよ。その人の暮らしのことを掘り下げて会話するっていう意味では、ここでの接客は濃いなあって感じます」
一方で、ショールームでの接客とはギャップがある仕事もあったそう。
「法人部門だと、たとえばマンションの20部屋を一気に採寸しにいくっていう作業があったりするんです。完成前のマンションに行くことが多いので、エレベーターがなくて階段で何十階も登らないといけなかったりして」

「空調がないこともあるので、真夏とか真冬はかなりしんどいんですよ(笑)。きれいなショールームのイメージとはちょっと違う、泥くさくて体力のいる仕事もあるので、それは覚悟して来てもらったほうがいいかもしれませんね」
最後に話を聞いたのは、渋谷さんと同時期に入社した粕谷さん。現在は法人部門に所属している。

粕谷さんの前職はシステムエンジニア。より一人ひとりのお客さんとじっくりコミュニケーションを交わすことができそうだと感じて、大谷産業に入社した。
「法人向けに販売する場合は、エンドユーザーとわたしたちの間にインテリアコーディネーターが入るんです。なので、基本はインテリアコーディネーターとやりとりしながら家具をつくっていきます」
「要望に合わせた家具のプランをつくっていくのは変わらないので、部門関係なく困ったときはお互いにフォローしながら取り組んでいますね」
依頼を受けたら、まずはお客さんの要望をヒアリングし、部屋の図面を見ながら専用のソフトで家具のプランを作成。

一度プランを出したら完成、ということはほとんどなく、何度か修正のやりとりを繰り返しながら、お客さんの要望に合わせて仕上げていく。
「たとえばテレビボードが部屋のコンセントを塞いでしまう場合、家具の背面をくりぬいて、別の場所から電源を使えるようにする必要があるんです。だから図面の段階でコンセントの位置を見逃していると、商品が組みあがったあとに現場で『しまった…!』ってなることもあって」
「3年目になって、インテリアコーディネーターさんやお客さんから『粕谷さんになら任せられる』と言ってもらえることも出てきて。それはすごくうれしいですね」
図面の見方は先輩に教えてもらったり、現場と図面を見比べたりするなかで覚えていったそう。一つひとつ自分の頭で考え、しっかりと確認しながら進める丁寧さが必要になる。
「ひとつのプランを完成させても、すぐに新しい案件が来たり、出していたものが修正されて戻ってきたり。やることが多くて大変ではありますが、お客さんも社内のスタッフも顔が見える環境なので、楽しいしやりがいがありますよ」

取材を終えた次の日、ふと思い立って会社のデスクまわりを片づけてみる。見た目もきれいに、気持ちもすっきりした気がする。
足し算だけじゃない豊かさって、たしかにあるのだと思います。
目の前の一人ひとりに寄り添うなかで、その豊かさをかたちにしていく。やりがいのある仕事だと感じました。
(2020/12/24 取材 稲本琢仙)