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観察、分析、伴走
イノベーションを民主化する

多様性がある。有機的につながりが生まれていく。

組織やコミュニティにおいて、そうした状態は理想的だと言われます。

ただ、実現するのは口で言うほど簡単ではありません。価値観は知らず知らずのうちに偏っていくこともあるし、コラボレーションの必要性がわかっていても、専門外の人とどう関わっていけばいいかわからないという声もある。

東京・目黒で起業家コミュニティを形成してきたImpact HUB Tokyoの取り組みには、実践的なヒントがたくさん含まれているように思います。

社会や構成メンバーの変化をよく観察しながら、ときにじっと待ったり、積極的に機会を提供したり。泥臭く伴走していく役割を、ここではコミュニティ・ビルダーと呼んでいます。

今回は目黒の拠点に加えて、静岡・浜松に新しくオープンする拠点「FUSE」のコミュニティ・ビルダーを募集します。

コミュニティを管理するマネージャーではなく、一緒に築いていくビルダーとして。想いをもった起業家と真摯に向き合うなかで、自分自身もコンフォートゾーンを抜け出し、成長していきたいという人の挑戦を待っています。

 

向かったのは、目黒駅から歩いて10分ほどの距離にあるImpact HUB Tokyo(以下、IHT)。

印刷工場の跡地を使った広々とした建物で、真っ白な壁には“Questioning+Action=Impact”と綴ってある。

問いを立て、行動し、インパクトを生み出す。それは、ここに集まる起業家たちの姿勢であると同時に、コミュニティ・ビルダーのあり方を表す言葉でもある。

なかに入ってまず話を聞いたのは、この場所を立ち上げた代表の槌屋さん。二拠点居住先の長野からオンラインでつないでもらった。

後ろからお子さんの声も聞こえる。

「すみません、親子そろって風邪をひいてしまって。よろしくお願いします」

2005年にロンドンではじめて開設されたImpact HUB。

社会に新しい価値を生み出そうと、多様なメンバーが集まってコラボレーションを加速させていく。そんなコミュニティを日本でも築いていきたいと、槌屋さんは2013年にIHTを立ち上げた。

「事業を急拡大するとか、いくら資金調達して、とか。そういう流れにはまったく乗りたいと思っていなくて」

「むしろ、起業に必要なリソースを掴めない人たちに対して、どうしたらイノベーションの担い手になるためのきっかけをつくれるか、とか。彼らの潜在能力を120%引き出すためには、どんなエコシステムが必要だろうとか。そんなことをミッションと捉えていますね」

たとえば、在日外国人や地方に暮らす人など。以前より起業しやすくなったとはいえ、取り巻く環境や条件にはまだまだハンデがある。

シリコンバレーや東京でなくても、カリスマでなくても。強い課題感や想いをもっているなら、その解決方法のひとつとして「起業」を選べる人がもっと増えたらいい。

それを槌屋さんは“イノベーションの民主化”と表現する。

今回オープンする浜松の新拠点「FUSE」も、IHTのノウハウを地方都市で活かしていく“民主化”の一環に位置づけられると思う。

地域の企業とともに歩んできた「浜松いわた信用金庫」主導のもと、IHTはコミュニティ運営を担うことになっている。

舞台となる浜松って、どんなところなんでしょうか?

「とてもポテンシャルの高い街だと思います。自動車や楽器などの製造業が主な産業で、全国的に見てもめずらしいほどエンジニアが集積しています。遠州織物に代表されるようなすばらしいコットンの産地でもあって、クラフトやアパレル、デザインなど、海外と直接つながれるような小規模事業者もたくさんある」

市長が旗振り役となってはじまった「浜松バレー構想」など、創業支援の取り組みも進められている。

ただ、一つひとつのコミュニティが独立した状態で、横のつながりがなかなか生まれていないのが現状なのだそう。

IHTではこれまで、異なる分野のメンバー同士がチームを組み、対話を通じてお互いのビジネスモデルを磨き合う起業家育成プログラム「Team360」や、起業の失敗談をカジュアルに語り合うイベント「FuckUp Nights Tokyo」などを開催してきた。

いろんな視点が重なるなかで新たな気づきやコラボレーションが生まれることもあるし、起業家としての苦労や失敗は、分野を問わず共有しやすい。

「従来の起業は“ひとりでがんばるもの”というイメージが強かった。でもこれからは、人とつながりながら組織をつくったり、大きくしたり、ときにダウンサイズしたり。そういうしなやかさが必要だと思うんです」

「コミュニティ・ビルダーの役割は、起業のプロセスを通じて人が成長していくお手伝い。事業の深いところまで一緒に考え抜くということに関して、粘着質に向き合い続けることが大切です」

ただ場を提供するのではなく、ときには対話の壁打ち相手になったり、必要に応じてほかのメンバーとつないだり。事業プランやコミュニティそのものを、まさに一緒にビルドしていくような仕事だという。

実は、「FUSE」に先駆けること2年、長野・塩尻で開設された「スナバ」という拠点の運営にもIHTは携わっている。

ある日、スナバのコミュニティ・ビルダーから、槌屋さんのもとへ相談があった。

「明確なKPIもないし、売上で測れるほど単純な話でもない。何を喜びとしていいかわからないです、って」

巨額の融資を取りつけた、新しいビジネスプランが当たって大儲けした…。

そんなことはそうそうないし、あったとしてもIHTが目指すところとはかけ離れていく。

槌屋さんは、いったいどんな返事を?

「起業家の伴走って、砂漠に水をまくようなところがあるんです」

砂漠に水をまく。

「変化は目に見えにくいけど、ボディブローのように起業家の人生に影響を与えているのはたしかだから、それを信じるしかない。ただ、何か教えているとか、メンタリングしているとか、おこがましいことを考える必要もないよって」

そうやって地道に向き合い続けていくと、ふとしたときに報われる瞬間がある。

それはメンバーの表情が明るくなっていくことかもしれないし、「あの案件、うまくいったんです」というふうに、事業が少しでも前進することかもしれない。

「そしたら彼女は『ああ、そうか。話すしかないんですね』って言って。メンタリティが変わってから、すごく楽しくなったみたいです」

「メンバーさんと話さないで数字ばっかり見てたり、資金調達がどうのこうのってほうに頭がいっちゃうと、いつまでも報酬がないのがコミュニティ・ビルダーという仕事なんです。人に向き合い続けるし、嘘をつけば跳ね返ってくる。そういう意味ではシビアですよね」

 

浜松のコミュニティ・ビルダーとして一緒に働くことになる河口さんにも話を聞いた。

座っているとわかりづらいけれど、190cmの長身。みんなからは「ジャンボ」というニックネームで呼ばれている。

バブル崩壊後の就職氷河期と、大学卒業のタイミングが重なってしまった河口さん。

ワーキングホリデーで1年、旅行会社で2年カナダに滞在し、帰国後は地元・浜松でアパレルの販売を5年経験。その後は家業だった車の部品工場に入って働いていたそう。

ところが、2008年に起きたリーマンショックのあおりを受けて、お父さんの会社は倒産してしまう。

「今スタートアップがブームのようになっていますけど、個人的に安易な起業には反対で。ピッチやって、ベンチャーキャピタルにお金つけてもらって、『〇千万円融資してもらいました!』みたいなノリは好きじゃないんです」

「親父もよくなかったのは、コミュニティ・ビルダーみたいに伴走してくれる人がいなかったんですね。家と会社を往復していて、経営相談や壁打ちのできる仲間がいなかった」

横のつながりがないというのは、浜松全体の抱える課題でもあった。大手メーカーからの下請け、孫請け…という構造が、製造業を中心に成り立ってしまっているからだ。

「コミュニティはいろいろあるんですよ。ぼくも自分で『TEDx Hamamatsu』を立ち上げて、運営してみて気づいたんですけど、お互いにいがみ合うでもなく、かといって尊重し合うわけでもなく、ポツポツと独立しているのがもったいないなと思って。ミックスしたら、もうちょっと面白いことができるんじゃないかなって思うんですよね」

そこへ今回の新しい拠点の話が舞い込んできて、「ぜひ関わりたい!」と思ったそう。

昨年の12月から研修をはじめた河口さん。浜松の施設責任者を担うべく、最近は現地と目黒を行ったり来たりしながら、経験を積み重ねている。

実際に携わってみて、コミュニティ・ビルダーってどんな仕事だと感じますか。

「ひとつ思うのは、みなさんよく観察しているということです」

それは、起業家の方々を?

「そうですね。一人ひとり、今どういう事業フェーズにあって、何につまずいていて、どんなアドバイスをするべきか。じっと待つこともあれば、今度このイベントに誘ってみようとか、この人とこの人をつないでみよう、と話すこともあります」

週に一度は「メンバー情報シェア会議」という場をひらき、さまざまな情報をスタッフ間で共有。

人と人の相性もあるので、「あの人には誰々さんが話しかけたほうがいいよね」というように、細かなやりとりを交わしながら関わっていく。

「47歳にして転職という形で入ってきて、日々学ぶことがたくさんあります。コミュニティ・ビルダーは、メンバーの方と一緒に成長していく仕事だなと感じますね」

 

最後に話を聞いたのは、2年前の日本仕事百貨の記事を読んで入社したコミュニティ・ビルダーの上野さん。

「イギリスの大学院を卒業したタイミングで、友だちが記事のリンクを送ってくれて。ホームページも読んだんですよ。提供しているサービスの内容に加えて、チームカルチャーや起業家コミュニティへの向き合い方もしっかりと文章で掲載されていて。自分たちの働き方や与えているインパクトを常に吟味しながら言語化していることが伝わってきて、直感的にいいな、働いてみたいなと思いました」

「実務経験2年以上」という条件は満たしていなかったものの、まず業務委託契約で働きはじめてみることに。

ジェンダーとメディアが研究対象だったこともあって、当初からSNS全般を担当。今ではマーケティングも任されるなど、多方面で活躍している。

「受付業務にもシフト制で入りますし、トイレ掃除もします。そういう基本的な仕事に加えて、デザイン担当だったらポスターをつくるとか、ここのレイアウトを考えるとか。わたしだったらマーケティングが主な担当です」

役割がとても幅広いですよね。それに境目がないというか。

「そうですね。一日たりとも同じ日はないと思います。共通することを挙げるなら、『起業家のためになっているか?』『インパクトを生み出すにはどう動いたらいいか?』『チームのなかでコミュニケーションがとれているか?』という3つは常に考えていますね」

一人ひとりの起業家と真摯に向き合い伴走することで、インパクトが生まれる。

そう心から信じているみなさんの言葉やスタンスには、一本の軸が通っていて気持ちいい。

東京は、次のフェーズへ。浜松では、新しく。

コミュニティを一緒に築いていく人を求めています。

(2020/3/5 取材 中川晃輔)

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