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全国各地で活躍している地域おこし協力隊。それぞれの地域をよりよくしたいと、多くの人が活動しています。一人ひとりの思いをかたちにしていくためには、地域の協力も必要だし、協力隊それぞれの力を発揮できる環境も大切。
今回紹介するのは、そんな環境づくりに力を入れているまちです。

昨年度の採用活動から携わり、4月からは町にやってきた協力隊のサポート業務を本格的にはじめたところ。今回、そんなfumotoのサポートを受けながら洋野町で活動する地域おこし協力隊を募集します。
(取材はオンラインで行いました。現地の写真は提供いただいたものを使用しています)
岩手県の最北東部に位置する洋野町。電車だと青森県の八戸から1時間ほどで到着する。
昨年の9月に取材で訪れたときは、まちの名産品であるウニのシーズンが終わり、気候もだいぶ涼しくなりはじめたころだった。
冷涼な気候と青い海。印象に残る風景を思い出しながら、fumoto代表の大原さんと画面をつなぐ。

もともとは、洋野町の地域おこし協力隊として観光推進に携わっていた大原さん。
海も山もあり、ウニや野菜、何を食べてもおいしい。資源は豊富なのに、まだまだ伝えきれていないのが洋野町の課題だった。
大原さん自身、協力隊の期間中にはさまざまなことに挑戦したものの、思うようにいかないことも多かったという。

だったら、協力隊同士をつなぎ、チャレンジしやすい環境をつくることで、チームとしての力を最大限に引き出せないか。それを続けていくことが、いずれまちの資源を活かすことにつながるんじゃないか。
そんな思いからfumotoを立ち上げたそう。
今年度は5人の地域おこし協力隊が洋野町にやってきた。
「協力隊の人とも、上下関係なく気軽に話せるような関係なんです。活動の年間計画を一緒に考えたり、暮らしの困りごとの相談にものったりしていて。ぼくが協力隊だったときに求めていたことを、みんなに提供できたらいいなと思ってます」
協力隊のサポートが専門の組織って、なかなかない。最初は不安げに関わりはじめた役場の人も、大原さんの活動を目にするうちに、いろいろな業務を任せてくれるようになった。
最近は、地域の人からの信頼も増してきているように感じるという。
「協力隊として過ごした3年とfumotoを立ち上げてからの1年で、ぼくのやろうとしていることがだんだん理解してもらえてきて。このあいだも、地元の工務店の人から『協力隊で狩猟とかジビエの経験がある人っていないかな?』って相談を受けたんですよ」
「ほかにも『貸家が空いたよ』とか『なにか協力できることある?』って、まちの人から声をかけてくれて。地域とつながっている感覚がすごくうれしいし、そのつながりを協力隊の人にも還元していけたらと思っています」
大原さんが地道な活動を積み重ねてきたからこそ、地域での信頼を得ているのだろうな。

海を活かした観光コンテンツをつくるサーフツーリズムと、町内にある遊休農地を活用した農業。自分の興味関心や経験を活かして、町の課題解決を目指す企画提案型の3分野での募集だ。
「とくに力を入れていきたいのが、サーフツーリズムなんです。洋野町は東北では珍しいサーフスポットなんですが、海関連のアクティビティや施設がまだまだ少なくて」
経験者であれば自分でサーフィンスクールを企画してもいいし、サーファー向けのゲストハウスをつくるのもいいかもしれない。
サーフィンだけでなく、ウニなどの海産物が豊富な環境を活かして、洋野町ならではの体験価値を生み出してほしいと話す大原さん。

「洋野町にはまだまだ活かしきれていない魅力や資源がたくさんあります。自分の興味やチャレンジしてみたいことが、地域の魅力を磨くことに重なるといいですよね」
つづいて大原さんに紹介してもらったのが、協力隊の高田さん。遊休農地を活用した農業の企画を提案し、4月から実際にスタートしている。
過去に農業を勉強していたそうで、今回募集する農業の協力隊にとっては頼もしい先輩になる。

高田さんが働いていた福祉施設では、障がいを持った人が農作業を通じて社会参加する農福連携に取り組んでいたそう。
「福祉の仕事もやりがいがあったんですが、農業を自分でやってみたいと考えたときに、はじめるなら身体が動く今のうちだなって。それで定年前に仕事を辞めて、移住することを決めました」
いくつか移住先を検討するなかで参加したのが、岩手県の移住ツアー。訪れた地域のなかでも、洋野町の環境に惹かれたという。
「空気がおいしくて、海がきれい。それにすごく涼しくて。おなじ三陸沿岸でも、少し南の地域だと山が急斜面なんです。洋野町はなだらかな斜面が多くて、農業をするにはとてもいい場所だなと思いました」
「あとは人かな。岩手の人ってすごくあたたかいというか、やさしい人が多いんですよ。洋野町の人もあたたかく迎え入れてくれる雰囲気があったので、ここで暮らしたいって思ったんです」
遊休農地を活用するプランを提案して、着任後は農地を探すところからスタート。
大原さんにも協力してもらいながら、町の農業委員会に問い合わせたり、農協に足を運んで話を聞いたり。地域の人の協力も得て、10アールほどの土地を貸してもらうことができた。

「洋野町って、夏でも30度を超える日は数える程度なんです。なので、さつまいもや里芋といった高温多湿を好む作物は、あまりよく育たなくて。涼しい気候を好むブロッコリーなどの高原野菜がよく育ちますね」
「洋野町では大根の種まきが8月にできるんですよ。普通は真夏に種まきしたら枯れてしまうので、驚きました。まだ1年目ですが、気候にあった作物はちゃんと市場に出せるくらいの品質に育っているので、いい具合に進んでいる気がします」
今年の1年でどんな作物が適しているのかを見定め、来年以降本格的に収穫量も増やしていきたいそう。
たとえば気候の差を活かして、関東で冬野菜が出回っていない時期に大根を出荷することもできるかもしれない。趣味としてではなく、農家として生計を立てる仕組みを考えていきたい。

「農業って、その土地に来てすぐ収穫があるものじゃないんですよね。協力隊の3年間というのは、現地で学びながら、任期後の独り立ちに向けて準備させてもらえる期間だと思っていて」
「まちの人からは、『農業で暮らしていくのはきびしいよ』ってよく言われるんです(笑)。でもここでしかできない農業を一生懸命やれば、道はひらけると感じています。ぼくの経験も伝えながら、一緒に洋野町を元気にしていけたらいいですね」
新しく入る人も、まずは農地を探すところからはじまる。
fumotoのサポートもあるし、すでに経験を積んでいる高田さんもいる。未経験の人でも、農業に挑戦したい意欲があれば歓迎だそう。
最後にもうひとり、協力隊の原さんを紹介してもらった。4月からローカルデザイン担当として活動し、地域内のデザインに関する困りごとを引き受けている。

「ちょうど転職を考えているときに、たまたま記事を読んで。大原さんと一度話してみたいなと思って、東京で開催されたイベントに行ってみたんです」
「話していて、とても居心地がいいというか、安心感があるというか…。たとえば、具体的な行動を“する”ことと、ひとりの存在として今ここに“在る”ことがあるじゃないですか。それまで“する”ことだけ求められてきた感覚だったけど、大原さんは在り方を見てくれているなって感じたんですよね」
在り方、ですか。
「その人のできることだけを見るんじゃなくて、その人がどうありたいか、どう暮らしたいかっていうことを大事にしてくれる。そんなふうに感じたので、洋野町だったら居心地よく、安心して暮らせるような気がしたんです」

「個人的には、インドアで過ごすことが多いので、自然遊びを教えてくれる人が来てくれたらうれしいですね(笑)。自然を楽しむ術を知っていると、それは洋野町での活動にも生きてくると思うので」
「大原さんだけじゃなく、いまfumotoで活動している協力隊の人は、みんな器が大きくていい人ばかりなんです。ひとりだったら心細いけど、こうやって気軽に話せて、相談に乗ってくれたりサポートしてくれたりする環境があるというのは、すごくありがたいなと思います」

すると、原さんの話をとなりで聞いていた大原さんが、最後にこんなことを話してくれた。
「地域のためになにをするかも大切だけど、原さんのように自分がどうありたいか、どう暮らしたいかをちゃんと考えていることも必要だと思っていて。それが最終的に地域のためになれば、お互いが幸せになれるじゃないですか」
「そういう気持ちで協力隊を受け入れることが、洋野町にfumotoがある意味だと思うんです」
この場所で、自分だったらどうありたいだろう。そんなふうに思ったのなら、最初の一歩はもう踏み出しているのだと思います。
(2020/8/3 オンライン取材 稲本琢仙)