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「ワインやコーヒーって、産地や品種ごとに味の違いを知ったり、相性の良い料理と合わせたり、いろいろな切り口から楽しめますよね。私たちは、そういう嗜好品としてのチョコレートを届けたいんです」そう話すのは、Minimalブランドマネージャーの田淵さん。
Minimalは、2014年に立ち上がったクラフトチョコレートメーカー。 世界中のカカオ農園に足を運び、カカオ豆から板チョコレートができるまで、すべての工程を自社工房でまかなっています。
原材料は、カカオ豆と砂糖だけ。シンプルだからこそ、素材の違いを楽しめる。単なる「おやつ」ではないし、「高級品」でもない、新しいチョコレートの楽しみ方を届けています。

現在、都内に4つのお店をもつMinimal。その1号店は、2014年に富ヶ谷でオープンした。
千代田線代々木公園駅・小田急代々木八幡駅から徒歩6分。オープン前の時間に、まずは創業メンバーの田淵さんに話を聞かせてもらう。

創業当時からこだわっているのは、新しいチョコレート体験を届けたいというコンセプト。
“体験”って、どういうことだろう。
「普段チョコレートを食べるときって、甘さや苦さの違いしか感じたことがないかもしれません。でもカカオ豆の味って、本当は産地や品種によって全然違うんですよ」
「素材に合わせて焼き方や濃度を調整して、豆の味をうまく引き出せば、カカオ豆と砂糖だけでさまざまな風味の違いを表現できるんです」
実際に、お店に並ぶいくつかのチョコレートを試食させてもらった。

ナッツのような風味や、果実のような酸味、ドライミントのような清涼感…
思わず「本当に砂糖しか入れてないの?」と言いたくなるほど、チョコレートごとに味の違いがしっかりと際立っている。
板チョコレートの形も、見慣れたものとはちょっと違う。1枚の中でいろいろな大きさのピースに分けられるようにデザインされているんですね。

厚さが少し薄めなのも、チョコレートの香りや味わいを感じやすくするため。製法から形まで、いろいろな試行錯誤を続けてきた。
いいチョコレートをつくることは、消費者のためだけでなく、原料をつくるカカオ農家の人たちの豊かさにもつながる。
「現地でカカオを生産してくれている農家の方は、カカオ豆の品質の良し悪しや味わいについて、知らないまま働いていることが多いんです。それにもともとは出荷量で取引額が決まる世界だから、手間暇かけていいものをつくっても、収入が上がるわけではなくて」
ひたすら量産するのではなく、ビジョンを共有し、一緒に試行錯誤できる関係を目指して、何度も産地に足を運んだ。

直接農家に足を運び、品質改善に一緒に取り組むからこそ、カカオ豆それぞれの特性を把握した独自の製造方法を開発できる。
「常にチャレンジを続けながら、生産者や消費者のために、新しいチョコレート体験を届けていきたいですね」
最近はチョコレートを使ったスイーツの販売をはじめたこともあって、ECサイトでの売り上げが例年の5倍ほどに伸びているのだそう。
今年は特に、新型コロナウイルスの流行で、多くの人が外出もままならない生活を強いられた。不安なときに、ちょっと特別なおいしいものを食べたくなる気持ちはよく分かる。
「日常環境の変化で疲れたときこそ、心を豊かにしてくれるスイーツを届けたい。ここまでみんなで協力して、なんとか対応してきたんですが、生産も出荷も追いつかなくなってきて。そこで今回、新しいスタッフを募集することにしたんです」

繁忙期となる冬には、出荷量が今以上に増える。忙しくなったときこそ、ほかのチームともうまく連携をとりながらより良い形を模索していく。
ECサイトを通して受注や出荷管理、WEBコンテンツの更新などを進めるPRチームとは、特に協力が必要かもしれない。
新しく発足したこのPRチームでは、多くのお客さんにMinimalを知ってもらうために何ができるのか、考えているところ。
SNSでのUGC生成促進、アンバサダーマーケティング、またメディアに対する企画提案などを中心に、他にもリアルの場でできることもたくさんある。
「以前から取り組んでいる、ほかのクラフトフードのメーカーさんとのコラボ企画や、ワークショップなどのイベントも、新しいお客さんにアプローチする機会として捉えなおしたいと思っています」
PRの仕事の経験はもちろん、イベントの企画や場の運営をしてきた人なら、きっと経験を活かせる場面は多い。なによりも、まずはブランドやそこで働く人たちに興味を持って、このチョコレートを届けたいという気持ちが大切だと思う。
Minimalのチョコレートはどんな人たちがつくっているんだろう。製造チームの奥野さんに話を聞いてみる。

Minimalのチョコレートづくりの工程は、複雑な味わいとは対照的に、とてもシンプルなんだそう。
「農家から届いた豆を、焼いて、砕いて、砂糖で味を整えて、成形する。これだけなんです。ただ、そのひとつひとつが本当に繊細で」
豆を砕く作業も、1,000分の1ミリ大きさが変わるだけで、食感や香り、溶け出すカカオバターの分量も変わる。

「どんな味や香りを出したいのか。それぞれの豆の個性に合わせて、レシピがつくられています。ただ、カカオ豆の状態って、収穫時期や製造日の天候などによって毎回異なっていて」
「今回届いたのは酸味が強いな、水分が多そうだなっていうのを、豆の段階で気づいてあげる。それに合わせて、今日は焼く時間を10分増やそうとか、温度を1度上げようっていう調整を毎日しています」

入社して3年が経つ奥野さん。最初に苦労したのは、チョコレートの味の違いを認識することだったという。
「Minimalでは、つくったチョコレートに対して毎日評価をしています。評価項目は、甘さ、苦さ、渋味、酸味など、全部で11個あって」
味わいを数値化することで、チョコレートづくりの目線をスタッフ間で揃えることができる。
「ひとくち食べて、各項目で何点の味なのか。味わいを数値化するのははじめての経験だったので、感性を磨くのが大変でした。毎日の積み重ねのなかで、少しずつ身についていくのかなと思います」
労力と手間を惜しまずにつくるMinimalのスペシャルティチョコレートは、世界からも高く評価されている。

「今日のベストを尽くしつつ、明日はもっといいものをつくれるように、日々鍛錬しています。これからも、お客さんの心に遺るようなチョコレートを、チームみんなで目指していきたいですね」
Minimalでは、カカオ豆からスペシャルティチョコレートをつくる技術だけでなく、そのスペシャルティチョコレートを使ったスイーツをつくる技術も学ぶことができる。
スイーツづくりについて教えてくれたのは、本場フランスで、フランス国家最優秀職人章のM.O.F.パティシエのもと腕を磨いてきた清水さん。

現在Minimalでは、独自のスペシャルティチョコレートを使った生ガトーショコラやチョコレートレアチーズケーキ、チョコレートサンドクッキーなど数種類のスイーツを展開している。

それだけ製造技術が求められるし、新しいスイーツの開発技術も、常に磨いていける環境なんだと思う。
7月から12月にかけては、オンライン限定で毎月新作スイーツを販売していく予定で、多様なスイーツをつくる機会がある。試作品はチームみんなで試食し、意見を交換するんだそう。
「製造チームでは、みんなが商品開発に携わっています。それぞれ担当しているスイーツがあって、日々の業務と並行しながら新作づくりを進めています」

Minimalでは年に一度、100人を超えるお客さんを招待して周年イベントを開催している。スタッフ全員が参加して、お客さんと直接交流のできる場。清水さんは司会を務めたこともあるのだとか。
「お客さんと話せる機会は今までなかったので、とてもいい経験になりました。毎年来てくれる方もいれば、はじめましての方から『この商品はお酒と合わせたらすごく美味しかった』っていう声も聞けて」
「ワークショップやアンケートを通じて届くお客さんの意見は、新商品の改良にもつながっているんです。カカオ農家やお客さん、製造や販売スタッフ、みんなでMinimalをつくっているなと感じています」
さまざまな個性の豆から、繊細な感覚でおいしさを引き出すチョコレートの世界。
つくる人、届ける人、いろんな人の工夫や考え、お互いを尊重し合う気持ちでできている。
今まで知らなかったチョコレートの奥深さに触れることができる仕事だと思います。
(2020/08/11 取材 鈴木花菜)
※撮影時にはマスクを外していただいております。