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楽しみを見つけるのが
上手な人たちが
学び舎を始めると

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「いつも3時ごろに、ゆきさんが『おやつだよー!』って、窓を開けて教えてくれる。みんなそれを楽しみにしているから、窓が開くガラガラって音がしただけで『おやつ?』って振り向くんです。スタッフだけじゃなくて犬も一緒に」

「そうそう面白いんです。それで私が、まだだよ〜、って言うの(笑)」

そんな話を聞かせてくれたのは、長野・南木曽(なぎそ)の古民家を改装したゲストハウスで働く人たち。

自然豊かなこの場所、冬は寒いし、都市部のような利便性はありません。今年は社会的な外出制限もあって、いつものように多くのお客さんを迎えられず、寂しい思いもしたといいます。

だけど、ここで働く人たちは、何気ない日常のなかに楽しみを見つけるのがとてもうまい。古い道具や植物など、それまでも身近にあったものを生かしながら、里山暮らしの魅力を伝えてきました。

そんなみなさんが、2021年から新たにスタートさせるのが、中高生のための学習支援事業。

今回はこのプロジェクトの運営スタッフを募集します。日々の学習支援や里山の体験プログラムなどを通じて、子どもたちの居場所をつくるような仕事です。

いきなり教育分野に専念するのではなく、まずは古民家での暮らしや畑仕事、染物や木工、DIYなど、ゲストハウスの営みを知るところからはじめてほしいとのこと。

焦る必要はありません。スタッフ自身が、ここでの暮らしにじっくり向き合い、楽しみを見つける。その体験を伝えることが、子どもたちにとっての大きな発見につながるはずです。

あわせて、ゲストハウスの運営を中心に担うスタッフも募集しています。

(今回はオンラインで取材をしました。写真はご提供いただいたものを使用しています)


「ホステル結い庵(ゆいあん)」を訪ねたのは1年半ほど前。

名古屋から特急で1時間。南木曽駅前から車で10分ほど山間の道を走った先に、一軒の大きな古民家が現れる。

6年前に南木曽へ移住してきた熊谷洋さんが、暮らしながら改装した宿で、囲炉裏や梁など木造家屋の風合いが気持ちいい空間。昨年、株式会社フォークロアとして法人化して、これまで合計3軒のゲストハウスを運営してきた。

最近はどんな様子だろうかと思ってWebサイトをのぞいたら、新しくオンラインストアができていた。

藍染のエプロンなどのオリジナル商品もあれば、古い金槌の頭のところをペン立てに見立てたものも販売されている。古民家の改修で見つけた掘り出し物なのかな。

発見した人の楽しさが伝わってくるようで、1年前にお会いした熊谷さんたちの雰囲気を思い出してきた。

「今年は本当にいろんなことがあって、たった一年とは思えない。コロナウイルスの関係で、ゲストハウスの営業を休んだ時期もあったんですが、それをきっかけに進みはじめたことも多いんです」

ショップもはじまっていましたね。藍染などのアイテムは手づくりなんですか?

「もともと、宿で使うシーツなどのリネン類をコーヒーで染めたことがあって。そのあと、身近な植物や玉ねぎの皮でも草木染めができるって聞いて、いろいろ試していくうちに、やっぱり染物をするなら藍染をやりたいね、ということになり。スタッフが正藍染の工房へ修行に… この話は長くなるので、後にしましょうか(笑)」

じゃあ後ほど、ぜひ。

今回は、新しく立ち上げる教育事業の話でしたね。中高生向けの学習支援を考えているとか。

「はい。子どものためのサードプレイスをつくるっていうのは、僕が以前からやりたいことのひとつだったんです」

「僕らが学生のころはよくファミレスに集まって過ごしていたけど、この地域だとそうもいかないですよね。塾や習いごとも少なくて、都会と比べて格差がある。学校でも家でもない、ほっと一息つけるような場所をつくりたかったんです」

長年温めてきた計画は、いろんなきっかけが重なって、いよいよ動き出すことに。

最初のきっかけとなったのは、地域の中学校から「生徒たちに南木曽の魅力を伝えてほしい」と講演依頼を受けたこと。

先生の話によると、地元の中学に通う生徒の大半は、将来南木曽を出ようと考えているらしい。実際に熊谷さんが移住してからの数年間にも、まちの人口は減り続けている。

「大人たちがその状況を憂いているなかで、子どもに『いい町だから好きになれ』っていう話をしても信じてもらえないですよね。だから講演をするだけじゃなくて、身近にあって捨てられてしまう玉ねぎの皮を集めて、染物をやってみようっていうワークショップをやったんです」

「雑草みたいに、つまらないと思っていたものでも、見方を変えれば美しさを見出すことができる。新しくはじめる『学び舎事業』は、そういうふうに“見方を変える”体験を日常的に増やしていくためのものでもあります」

普段、熊谷さんたちがやっている仕事も、“見方を変える”ことの連続なのかもしれませんね。

古民家を自分たちでDIYしたり、畑を耕したり、染物や木工をしたり。

「ものづくりって答えがないものなので、テストの点数や学校の評価とは違う。子どもたちが自分の得意なことを見つけるいい機会としても、体験ワークショップは入れていきたいですね」

この事業は当面、熊谷さんと新しく入る人がメインで、そこに宿のメンバーが補助的に関わりながら進めていくことになる。

具体的な方向性はまだこれから。1年くらいの期間をかけてじっくり考えていく。

「子どもと向き合う仕事なので、地道に丁寧にやりたい。できることから少しずつ、たとえば週に一回小さな英会話のクラスを開いてみるとか、五教科教えますとか、そういうところから関わりを持つのもいいと思います」

「まずは、新しく入る人にどんなことをやりたいか聞いてみたい。南木曽にあるものと、その人が意欲を持って取り組めることを組み合わせて形にしていきたいんです」


これまでも、一緒に働くメンバーの「やりたいこと」を手がかりに事業を広げてきた熊谷さん。

9月に南木曽駅前にオープンした3軒目のゲストハウス『MOUNTAinn Nagiso (マウンテン南木曽)』は、スタッフの川村さんの「やりたいこと」だった。

前回取材したときは、解体作業中だったあの場所。ついにオープンしたんですね。

「そうですね。ここはカフェバーがついたゲストハウスなので、地元の人との交流も増えました。ベロベロに酔っ払ったおじさんが二次会に来てくれたりして」

お客さんと接するのが好きで、この仕事をはじめた川村さん。自分が中心になってつくりあげた場にお客さんを迎えられることがうれしいという。

本当に、解体作業からご自分でやっていましたよね。

「壁の装飾には、解体で出てきた屋根のへぎ板を使っていて。再利用するために一枚一枚洗う作業がすごく大変だったんですよ。私たちの仕事は、とにかく地味な作業が多いので、そういう部分も楽しめることがすごく大切だと思います」

地味な作業、というと?

「ひたすら畑の溝を掘り進めたり、かまどで火を炊いて『目が痛い〜!』ってなったり。ほんっとに、いろんなことをするんですよ。DASH村みたいな感じ。自然が相手なので思うようにいかないことも多いですが、スタッフがお互いを思いやり合うことで何とかなっている部分が大きいです」

自分が担当する作業だけでなく、次の人がやりやすいように片付けや準備、伝え方を工夫する。里山での暮らしや仕事は、一人ではできないことが多いから、一緒に働く相手のことを想像しながら動くことが大切。

学習支援事業の担当として入る人も、まずはゲストハウスの仕事を通じて、暮らしや地域の感触をつかんでいく。掃除をしたり、畑仕事をしたり、一緒に食事をつくって食べたり。

頭で考えるよりも、まずはその輪の中に入って雰囲気を体験してもらいたいので、今回は採用の前に2泊3日ほど、南木曽に滞在する期間を設けるという。

イメージしていたより大変と思うかもしれないし、思ってもみなかった可能性に出会えるかもしれない。

「会社もまだ成長途中で、体制が整っていない部分も多い。そういう意味でも大変なところはあると思います。でも、今一緒に働いているメンバーは、本当に細やかなことに気づいてくれる人たちばかり。私がちゃんとその声を拾って、洋さんに届ける役割を果たしていきたいですね」

「仕事をしていると、地域の人の期待やお叱り、いろんな声が聞こえてきます。それはたぶん、これから学び舎事業の担当になる人もそう。洋さんはあんまり前に出てしゃべるタイプじゃないから、地域の人と積極的にコミュニケーションをとっていける人だといいかもしれません」

もともとやりたかったことだけでなく、求められる役割があることで、仕事への向き合い方も変わっていく。川村さんは今、ゲストハウスの運営に加えて、みんなが働きやすい環境づくりも進めたいという。

みんなのために何かできることはないか。そんな発想で動いていく先に、人の居場所は生まれるのかもしれない。


最後に紹介するのは、今年の3月に入社した野澤さん。今は結い庵やマウンテンなど、ゲストハウスの運営に携わっている。

もともとは東京で化粧品の貿易事務の仕事をしていたものの、もっと深く人と接する仕事がしたいと、今年の3月に移住。

これからというときに、宿は休業せざるをえなくなった。当時はどんな気持ちでしたか?

「やっぱりお客さんがいないと寂しいんですが、周りのメンバーは、じゃあ染色をやってみようとか、宿のグレードアップをしてみようとか、すごく軽やかに行動しているのが印象的で。じゃあ、私も何かしてみようっていう気持ちになれました」

そこで野沢さんが手を挙げたのは、広報の仕事。

工房をつくるためのクラウドファンディングに合わせて、SNSやWebサイトを通じて、日々の暮らしやスタッフの想いなどを文章にまとめて発信した。

「もともと文章を書く仕事に憧れがあったので、楽しかったです。今度はまたクラウドファンディングのお礼として、里山の暮らしにまつわるエッセイを書くことになって。南木曽の歴史や自然、口伝えに残っている町の文化みたいなものもコンテンツにして届けたいなと思っています」


できないことに落ち込むのではなく、できることを探す。

ちょっとプラスに発想を切り替えていけば、そこから思いがけず芽が伸びることもある。

里山の暮らしは、そんな柔軟さのなかにあります。子どもに教えるというよりは、一緒に学んでいくような気持ちで、新しい学び舎の形を考えてみてください。

(2020/12/14 オンライン取材 高橋佑香子)
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