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【西粟倉11の挑戦:その6】
自然と調和するかたち
古民家のアトリエから

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

私は、アトリエと呼ばれる空間が好きだ。

美大で学んでいたとき、キャンパス内にはいろんなアトリエがあった。作業をしている人もいれば、調べ物をしている人、仮眠を取っている人、おしゃべりをしている人もいた。

そして、部屋ごとにいろんな匂いがした。つくりかけの作品やラフスケッチが転がっていたり、洗い場には食器や鍋が置いてあったり、近所の猫が迷い込んでくることもあった。

BGMやタバコ、道具の片付けをめぐって揉めることもあったけど、いろんな人のアイデアが、それぞれ形になっていく作業場は、独特の空気感で居心地が良かった。

岡山・西粟倉村の古民家を拠点とした「IRON & WooD 工房Kodama」は、やがてそんな場所になるかもしれません。今はイスラエル出身のリファさんの個人工房だけど、ゆくゆくはいろんなクリエイターが一緒にものづくりする場所にしたいという思いもある。

今回は、地域おこし協力隊として、工房でつくられる作品の情報発信や販路拡大、ここを拠点としたコミュニティづくりを担う人を募集します。

ときには一緒にものづくりをしたり、ほかのクリエイターとのつながりをつくったり。協力隊の3年間を準備期間にして、新しい役割を見つけるイメージです。


村の高台に位置する大茅(おおがや)という地区。この一角にある古民家で暮らすのが、リファさんと亜希子さん夫妻と3人の子どもたち、そして1匹の猫という家族。

リファさんは鉄と木を組み合わせた家具やプロダクトをつくるクリエイターで、家の入り口に近いところが作業場になっている。

敷地のなかには小さなショップもある。2階には使っていない部屋もあって、新しく入る人はここを改修して当面の住まいとして使うこともできる。

五右衛門風呂や、ふすまの裏から見つかった明治時代の古新聞、かつての住人が残した暮らしの道具。家のなかを一緒に歩いていると、リファさんの目を通して、日本の暮らしや自然の魅力を再発見するような気持ちになる。

普段は、日本語と英語、ヘブライ語が飛び交うこの家。亜希子さんの通訳を交えながら話を聞いていく。

「リファの故郷はイスラエルの工業地帯で、お父さんは鉄でものをつくる職人さん、ほかにも大工さんや、車や船をつくる人とか、とにかくいろんなクリエイターが身近にいる環境でした」

鉄の加工はお父さんに教わり、木工は独学で覚えたというリファさん。

インドに旅行したとき、ヨガをしていた亜希子さんと出会い結婚。6年間イスラエルで暮らしたあと日本に移住した。

「最初は大変でしたね。リファは日本語がわからないし、私は工具や専門用語がわからない。道具や材料を入手するのも簡単ではなかったです」

新しい土地、新しい暮らし、いろんなことに刺激を受けながら、日本でのものづくりをスタートしたリファさん。

木が持つカーブを生かしてテーブルの天板をつくったり、木目を組み合わせて模様にしたり。

家具やプロダクトの構造を支える鉄の造形も、ときにすらりと、あるときはくるくると螺旋を描いて、ユニークなかたちをつくっている。

自然と調和するかたちでもあり、それがあることで、空間の雰囲気が変わるような存在感もある。

アートではなくプロダクトとして、もっといろんな人に使ってもらう機会を増やしていきたいというのが、今の課題。

「リファは、ひとつ完成するとすぐ次の制作に向かってしまうから、できたものをお客さんにつなぐ部分を手伝ってくれる人がいたらいいなと思うんです。たとえば、写真を撮ってSNSにアップしたり、リファのものづくりのストーリーを伝えたり」

安価な量産品ではないからこそ、きちんと価値を感じてくれる人に届くように。

カスタムオーダーもできるので、家庭用だけでなく、店舗やホテルに什器やテーブルなどを提案してみたいという。

子育て中であったり、言葉の壁があったりして、なかなか人の集まる場に出て営業をするのが難しいというリファさんたち。村のなかにいるほかのクリエイターとも、もっと接点を増やしたい。

新しく入る人は、まずそのタッチポイントづくりを担えるとよさそう。広報やマーケティングに近い役割だと思う。

とはいえ、協力隊の3年間が終わったあとも一緒に仕事を続けていくためには、それだけ工房の収益を増やす必要がありますよね。

「今はリファが一人でやっていますが、ゆくゆくは道具や工房をシェアして、一緒に作業する仲間を増やしたいと思っています。リファが生まれ育ったコミュニティのように、鉄や木という素材にこだわらず、いろんな分野のクリエイターが集まる場所にしていきたくて」

広報を担うスタッフ自身も、つくり手として工房を使ったり、ワークショップを企画したりするパターンもありかもしれないですね。

クリエイターとの接点が増えれば、それは仕事の幅を広げるきっかけにもなるでしょうし。

「わたしたち自身、たとえばお金がなくなったらどうしようとか、不安に感じることはあるんですけど、今こうして自然と触れ合える暮らしとか、お金では満たされない幸せもたくさんあって。失敗や間違いを恐れずに、一緒に一歩を踏み出す仲間が加わってくれたらいいなと思います」

取材を終えたあと、リファさんたちと一緒に家の裏山を散歩してみた。子どもたちと一緒にかくれんぼをしたり、ターザンのようにロープで遊んだり。

ここは家族の家でもあり、新しく入る人の職場でもある。だけどやっぱりアトリエや工房という呼び方がしっくりくる。

暮らしながら、話しながら、地域でクリエイターとして生きる道を、一緒に探っていけたらいいなと思いました。

(2021/2/4 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。



※特集ページでは、西粟倉村という地域のこと、村内のほかの企業についても紹介しています。合わせてご覧ください。
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