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地域をより良くしたい。
そんな思いを支える制度や補助金は、たくさん存在します。でも実際のところ、あまり知られていなかったり、それに依存して自立できないケースを生んでしまったりと、課題も多くあります。
今回紹介するのは、その仕組みをうまく活用して行政と事業者をつなぎ、地域を元気にしようとしている人たちです。
地域にある技術や商品を現代のニーズと掛け合わせ、新しい価値を生み出す株式会社ライヴス。
東京にあるセレクトショップRinの運営をはじめ、新商品やブランドの開発、国内外への販路開拓にも取り組んでいます。
今回募集するのは、中小企業やものづくりの職人、農家さんなど、地域の事業者と一緒になって企画提案からプロジェクトマネジメントまで行うディレクターとそのアシスタント。
地域を元気にしたいという思いを、ビジネスとして形にできる仕事です。
ライヴスのオフィスがあるのは、恵比寿駅から歩いて5分ほどの場所。明治通りに面したビルの5階にある。
会議室で待っていると、代表の清家(せいけ)さんが迎えてくれた。
「もともとは広告制作会社などで働いていました。愛媛の宇和島が地元なんですが、帰省するたびに活気がだんだんとなくなっていくのが、すごくもったいないなと感じて。地域を元気にするサポートがしたいと思って、ライヴスを立ち上げたんです」
今年で創業18年目を迎えるライヴス。
事業の柱となっているのは、工芸品や食品などの地域資源を活かした商品開発や販路開拓。「海外へPRしたい」「若者向けの商品をつくりたい」など、地域の事業者が抱える課題をもとに企画提案し、プロジェクト全体のマネジメントも行う。
特徴的なのは、事業の委託元が国や自治体であること。行政の支援事業に民間の立場で参加するため、行政のしがらみにとらわれることなく、本質的に必要なサポートに徹することができる。
「販路開拓ひとつとっても、国内だけでなく海外もあるし、場合によっては売りたい層に合わせた商品開発も同時に行います。仕事の幅は広いんですが、すべての根本にあるのは地域の人たちと一緒に仕事をするっていうことなんです」
ライヴスとして初めて携わった仕事は、沖縄県の販路開拓事業。当時、沖縄県の物産品は県内での消費量が多く、県外への販路開拓に課題を抱えていた。
県からの依頼を受けた清家さんは、生産者と一緒に沖縄のアロエとシークワーサーのジュースをつくり、全国ネットのテレビショッピングで販売することに。
「ものをつくって売ることって、本当にいろんな人が関わるんですよ。地域の農家さんや加工会社、物流会社…いろんな人と協力してようやく商品を届けることができるんだって、初めて実感しました」
「そのときは販売数の見立てが甘かったのもあって、在庫を抱えすぎたんですよね。ドラッグストアに営業に走ったりもしたんですが、泣く泣く商品を廃棄することになってしまって。たくさん売りたいっていう気持ちだけじゃダメなんだと、失敗も含めて一連の流れを経験できたのはすごく財産になりました」
その後もトライアンドエラーを重ねながら、全国各地の地域活性の仕事に携わってきたライヴス。さまざまな地域や事業者とのつながりが深くなった今では、地域で見つけたいいものを東京で販売するセレクトショップRinの運営や、自社ブランドの商品開発も行っている。
「地域を元気にしたいっていう思いは、ある意味当たり前のことだと思うんです。大事なのは、そのためにどれだけコツコツと努力できるかっていうこと。この仕事って答えがないんですよ」
答えがない。
「販路はネットか店舗か、ターゲットはどこに置くか、そのために商品の形やデザインも改善できるんじゃないか、というふうに、ものをつくって売る過程にはいろんな要素がある」
「最善の結果を出すためには、事業者や自治体と一緒に、目指すべきゴールをとことん考えることが大切で。関わる人たちとのコミュニケーションや、ちょっとした気遣いをコツコツと積み重ねることも欠かせません。その姿勢があれば、たくさんのことを学べる環境だと思いますよ」
続いて話を聞いた鈴木さんは、まさにコツコツと努力を重ねてきた方。ライブスで働いて7年目になる。
3月から産休に入るとのことで、現在は引き継ぎの真っ最中。新しく入る人と会えるのは、産休明けになる予定だ。
ディレクターの仕事は、自治体の公募に対して企画を考えるところからスタートする。
企画の内容は、工芸品や食品といった、地域の事業者が持つ商品の販路開拓や商品開発。ほかにも、物産展や商談会といったイベントや、海外での展示会の企画運営をすることもある。
デザイン会社など、必要に応じて社外のプロフェッショナルを巻き込みながら進めていく。
印象に残っている案件として、6年ほど前に関わったプロジェクトについて話してくれた。
クライアントは愛媛県。「さくらひめ」という新種の花をモチーフに、女性向けの新ブランドを立ち上げたいという依頼からはじまった。
「愛媛って柑橘のイメージが強いんですが、伊予の水引や砥部焼といった伝統工芸品もたくさんあるんです。食品以外のものをがんばってつくっている事業者さんとともに、全体のコンセプトづくりや商品開発をサポートしました」
デザイン会社と協力して考案したのは、さくらひめをモチーフにした絵柄。工芸品をつくる事業者に声をかけ、そのデザインをベースにした商品開発を進めていった。
「水引や砥部焼、今治タオルとか、いろんな種類のものづくりをしている事業者さんとやりとりをしました。16社くらいにお願いして、それぞれの会社の担当者にデザインとコンセプトを伝えて…。正直、なかなか大変でした」
「事業者にとって、新しいものをつくるのはリスクなんです。販促イベントを企画したり、首都圏への販路を準備したり、売るところまでの道筋をこちらでつくっておけると、スムーズに進みやすいのかなと思います」
商品をつくり、販路も用意して一件落着…と思いきや、ここで終わらせないのがライヴス。地域が持続的に盛り上がる仕組みづくりにも取り組んでいく。
「このプロジェクトを通じて、生き生きと働く女性をもっと応援していきたいということで、絵柄をさまざまな場面で使ってもらうことにしたんです」
デザインは無償で提供。業種問わず自由に使ってもらい、活用事例は県も一緒になってPRするという仕組みをつくった。
事業者は働く女性を応援する姿勢を表明できるし、軸となるデザインがあるため参加しやすい。旅館が浴衣やアメニティのデザインに取り入れるなど、さらに活動を広めることにつながった。
「商品をつくってお店で販売して終わりだと、ちょっともったいない。さくらひめはとくに、事業者や県の担当者と同じ方向を見て仕事ができたので、すごくよかったなと思います」
ディレクターは、2、3個の案件を同時並行で進めることが多いそう。一つひとつの案件にさまざまな立場の人が関わるため、丁寧なコミュニケーションを重ねることが大切だ。
鈴木さんはいろんな人とやりとりする上で、どんなことを心がけているんでしょう。
「たとえば行政の人だったら、後手に回らないっていうのは大事かもしれないです。常に先に先に行動して相手を不安にさせないのが、スムーズに物事を進めるコツみたいなものかもしれません」
「一方で事業者さんの場合は、千差万別なんですが…愛嬌とかかな(笑)? お互い本音で話せるような関係を目指すといいような気がします。『しょうがねえなあ、鈴木さんがそこまで言うならやるよ』みたいに、かわいがってもらえるかどうか。そのためにも、ちゃんと一人ひとりに向き合うことが必要ですね」
最後に話を聞いたのは、沖縄支社でディレクターとして働いている幸喜さん。オンラインで加わってもらった。
現在沖縄で働いているのは、幸喜さんひとりだけ。
今回の募集地には沖縄支社も含まれている。沖縄在住の人はもちろん、沖縄に興味があって、UターンやIターンを考えている人であれば、一つのチャンスかもしれない。
大学院まで沖縄の伝統工芸である織物の研究をしていた幸喜さん。その後地方公務員として、無形文化財や商工の担当を20年ほど勤めた。
「行政の立場だと、支援できる範囲が限られてしまうのがもどかしくて。たとえば事業者と一緒に商品開発をしても、個々に合わせた販路をつくることまではしづらい。ライヴスだったら行政での経験も活かして、より具体的なサポートができるんじゃないかと思って入社しました」
沖縄支社では、観光分野の企業のサポートや、伝統工芸品の販路開拓を目的とした商談会の事業などを受託しているそう。
今はその多くが、市場調査や生産者への聞き取りなど、事業の種をまいている段階。今後新しく入る人も交えて進めていきたいとのこと。
「最近だと、沖縄黒糖の在庫問題や泡盛の新しい販路開拓が課題です。アルコール全体の国内消費量が年々減るなか、海外へのPRが必要だと言われています」
「ライヴスはロンドンや上海などにも拠点があるので、海外での市場調査や販路開拓をこれから進めていく予定です。生産者の声をしっかり聞きながら、より良い方法を探っていきたいですね」
たとえば今はコロナ禍もあり、家でお酒を飲む人も増えている。泡盛のおいしい飲み方や、ラフテーなど沖縄黒糖や泡盛を使う料理のレシピを発信すれば、興味を持つ人は増えるかもしれない。
新しく入る人も、先輩スタッフにつきながら仕事の流れを学びつつ、自分だったらどうするだろうという視点で考えるのが大切だと思う。
「沖縄支社の話で言うと、やっぱり沖縄の歴史文化に興味を持ってくれる人がいいんじゃないかなと。沖縄はすごくいいところですよ。好きだから私もずっと住んでいるので、移住してチャレンジしてみたいっていう人がいれば、ぜひお待ちしています」
「18年間の蓄積があるので、ノウハウやアイデアのヒントはそこから得られると思います」と、代表の清家さん。将来的には、3〜4年東京で学んだのちに、自分の故郷や住みたい地域に拠点を移し、その地域の課題を解決する案件を中心に事業を進めていく、という働き方もできるようにしたいとのこと。
行政のように幅広く、民間として柔軟に。中間的な立ち位置にあるライヴスだからこそできる支援は、たくさんあるような気がしました。
思いだけでなく、ビジネスを通じて地域を元気にしたい。そう感じたことがある人にとっては、やりがいのある仕事だと思います。
(2021/2/17 取材 稲本琢仙)
※撮影時はマスクを外していただきました。