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僕らの仕事は、話すこと
完成前夜の新しい街で
つながりを描くために

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

まだそこに存在しないもののイメージを、みんなで共有するにはどうしたらいいだろう。

たとえば建築や空間の計画なら、設計図がその手がかりになります。ただ、図面の読み方を知らない人には内容が伝わりにくい。

“共通言語”を持たない、立場の異なる人たちが同じテーブルで議論をしていくためには、その間を通訳者のようにつなぐ役割が必要なのかもしれません。

いま、大規模な再開発が進む広島市。

新しい駅ビルやサッカースタジアムの建設など、個々の開発計画が着々と進む一方、全体のイメージを街に関わる人みんなで共有する機会が少なかったそうです。

そこで、先立って進むハード面の計画を追いかけるように、人と人とのつながり方をデザインしなおそうという取り組みがはじまっています。

その担い手になっているのが、地域価値共創センター(COC)というチーム。今回は、そのプロジェクトマネジャーを募集します。

既存のエリアマネジメント団体が一緒に活動できるように議論の場を設けたり、市民参加型の社会実験イベントを開催したり。

まちづくりには、さまざまな分野のテーマが交わってくるので、どういうスキルや経験が生かせるか、ひと言では説明しにくい。そのぶん、どんな業種の経験も活かすチャンスがあるとも言えます。

広島の新しいまちづくりのこと、興味がわいたら読んでみてください。


新幹線で降り立った広島駅。

駅ビルはリニューアルの最中で、その全容はまだよくわからない。

市街地をゆっくりと走る路面電車に乗り換えて向かうのは、市の中心部から少し南下したところにある東千田公園。COCはこの7月から、公園内にあるコワーキングスペースを新しい拠点として活動していく。

カフェのようにいくつものテーブルが並ぶ室内に、みなさんの姿を見つけた。

彼らの活動母体は、荒谷建設コンサルタント(アラタニ)という総合建設コンサルタントの会社。

公共工事などを長く担うなかで、あらためて地域のまちづくりへの関わり方を見直そうと、2017年に計画系、企画系、営業系などの部門を横断して、検討プロジェクトがスタート。

1年間の議論の末、2018年に社内組織として地域価値共創センター(COC)が発足した。

ハード面のまちづくりに実績のある企業が、ソフト面のまちづくりをするためにつくったチームという感じ。

「私、最初それが全然ピンとこなくて (笑)」

と、正直な感想を話してくれたのが、この春新しく加わったスタッフの増野さん。

「地域価値共創センターという小回りの利く組織で、新しい取り組みにどんどんチャレンジできる一方で、歴史ある母体企業の所属となるので、なんだか安心があります」

仕事をはじめて約1ヶ月。

はじめは先輩たちが参加するミーティングについていき、受付や検温などの作業を手伝った。

「私はただそこにいるだけだったんですけど、ミーティングで出てくる単語を耳に入れていくうちに、なんとなく誰がどういう立場でどこに向かっているのか、流れが見えてきた気もします」

増野さんが参加したのは、「広島都心会議」という新しい会議体のキックオフミーティング。

県知事や市長をはじめ、地域のインフラを担う大企業の代表者が、今後のエリアマネジメントについて話し合うための顔合わせの場だったそう。COCは今後、その事務局運営の一端を担っていく。

「正直いろいろ壮大すぎて、自分が役に立つだろうかって思いました。もともと、まちづくりっていう仕事がどういうものなのか、具体的な実感のないまま入社したところもあって」

それでもやってみようと思えたのは、どうしてだったんですか?

「私は仕事を決めるとき、内容よりも一緒に働く人との相性を大切にしたくて。COCの場合は、面接で話しているうちに、自分がチームのなかに入るイメージが具体的になってきて、決心するには十分でした。実務は、頑張りゃなんとかなるかなって」

増野さんはもともと広島で生まれ育ち、大学進学を機に上京。卒業後は神奈川にあるショッピングセンターを運営する仕事に携わっていた。

COCで働きはじめて、前職とまちづくりの仕事との共通点も見えてきたという。

「ショッピングセンターには、テナントやオーナーなどいろんなレイヤーの人が関わっていて。私たちは、イベントの運営やチラシづくりなどを通じて、そこをつなぐ仕事をしていたんです。規模は違うけど、人をつなぐきっかけをつくるっていう意味では、まちづくりも同じなんだと思うようになりました」

「でも、うちの親は私が何の仕事をしているか、いまだにちゃんとわかってないと思う(笑)」というコメントに、ほかのメンバーも「うちも、うちも」と頷く。

たしかに、人をつなぐ仕事って目に見えないから、第三者に説明するのは難しいですよね。

進んでいくまちづくりのことを、もっとみんなが体感できるようにと、昨年からスタートしたのが、「カミハチキテル」という公共空間活用社会実験。

道路や広場など、普段は通り過ぎるだけの街のスポットを使って、イベントをしたりケータリングを出店したり。人と人との新しい関わりを生み出そうと取り組んできた。


現在メインで担当している今田さんにも話を聞かせてもらう。

「これまでに2回開催してきて。そこで見えてきた可能性を、今後のカミハチエリアのビジョンづくりにどう生かすか、今は関係者や学術機関の先生たちと膝詰めで議論しているところです」

「広島の街にはまだまだ活かせる場があると思うんです。民間の敷地の軒先とか、商業施設の屋上とか。実際に場所を提供したいって声をかけてくださる方もいて」

これまでCOCでは、事務局として各所の調整や広報など、幅広く運営を担ってきた。

最近はイベントの期間外でも、地域の人たちから相談を受けることが増えてきたという。

「『空き店舗のこと、ちょっと一緒に考えてくれんか』とか、『コロナ禍で、ほかの地域はどうしているのかな』とか。聞かれるたびに、いろいろ調べて提案資料をつくったりしています。僕もあまり詳しくない事柄については、人づてに聞いてみたり、専門書をあたって調べてみたりすることも多いですよ」

たしかに、まちづくりって建築や不動産だけでなく、商業や行政などさまざまな分野が横断的に交わってくるから、やりながら引き出しを増やす必要がありそうですね。

「今はポートランドにあるランドスケープデザインの会社と一緒にプロジェクトを進めているので、英語が話せるか、建築やデザインの領域に強いメンバーがいるといいなあと思うこともあります」

「ただ、僕らはあくまでもマネジャーなので、クリエイターが必要なわけではなくて。その業界の言語を理解して、外の人につないでいく通訳者みたいな立場なんですよね」


「そうそう。まちづくりは基本、多言語コミュニケーションみたいなものだから」

そう話すのは、統括マネジャーの山中さん。

「僕らの仕事のほとんどは人と話すことなんですけど、今コロナで大きな会議が開きにくいっていう課題があって。あとは今までまちづくりと表裏一体だった、にぎわいそのものがタブー視されていて。活動を根本から考える場面も多くなっていますね」

3月に行った社会実験では、ちょうど市内の感染者数が増加するタイミングと重なってしまい、関係者のなかでも中止の声が上がったという。

「集まることが難しくても、コミュニケーションの方法は考え続けていかなきゃいけない。むしろコロナ禍だからこそ、屋外空間の可能性を探る必要性が増してくるんじゃないの?っていう、もともとの社会実験のコンセプトを見直すきっかけにもなりました」

不安や疑問を感じる人とは、個別に対話を重ね、安全に実施できる方法を考えた。

ときには組織の担当者としてではなく、個人として話すなかで分かり合えることもある。

「この仕事は、人と人の間に入って調整する役割も大きいんですけど、今後は自分たちが主体的に『やりたいこと』を実現するチャンネルも、合わせて持ちたいなあと思っていて。これから自社で不動産を運用して、常設の場づくりに取り組む計画があるんです」

店舗にするか、コミュニティスペースのようなものになるか。その企画内容も、これから入る人と一緒に考えていく。

「たとえば今田くんは、もともとカフェをやっていたんですけど、COCのメンバーもそれぞれ個性があって。ときには自分たちがプレイヤーとしてまちづくりに関わる場面を持つことで、マネジメント業務を学んでいく上でも新しい発見があるような気がします」


「だよね?」と、山中さんからのパスを受けたのは、今日のメンバーでは最年少の尾形さん。「なんで私に聞くんですか〜(笑)?」と明るく切り返す。

新卒で入社して3年目の尾形さん。みんなから「COCのなかで一番情報を持っている」というお墨付き。ときには社外の人も、プロジェクトの予定を確認するために尾形さんに電話してくるらしい。

みんなの秘書さん、みたいですね。

「いろんなプロジェクトをちょっとずつお手伝いして、溢れていく部分を拾っていくうちに、いつのまにか『なんでも窓口』みたいな感じになっちゃって」

日程調整から補助金の申請まで。入社して間もない時期から、社内外の人とコミュニケーションをとり続けてきた。

新卒だったこともあり、「社外の人も親身になって教えてくれて、仕事を覚えられた」と振り返る。

「1年目のときはまだわからないことも多くて、電話口で怒られたこともありました。困って山中さんに相談したら、『もう一回自分で電話して』って(笑)」

先輩がフォローすることは簡単だけど、それではいつまでたっても担当者として信頼してもらえない。

なんでも自分で解決の糸口を探ってきたからこそ、今の“尾形さん”というポジションがあるんですね。

「私はもともとプレイヤーとしてまちづくりに関わりたかったんですが、今は、この裏方の役割が向いているのかなっていう気もして。しばらくは、このマネジメント業務を極めてみたいです」

僕らの仕事は、話すこと。

取材のなかにも出てきた言葉が、まさにCOCの役割を言い表していると思います。

何かを説明したり、交渉したり、調整したり。立場や意見が違う人とも、まず自分から話してみようというアクションの一つひとつが、みんなでつくる新しい街の姿をクリアにしていくのだと思います。

(2021/5/25 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。
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