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「たとえば飲食店で働いていて、お客さんとのつながりをもっと大事にしたいのに、売上を上げることに忙しくて歯がゆい思いをしている人とか。そんな人がいたら、ぜひ僕らの仲間になってほしい。この仕事は、コミュニティづくりに本気で取り組むことが、収益や場所の維持につながっていくものだから」まちづくり会社ドラマチックの代表、今村ひろゆきさんはそう話します。
ドラマチックは、シェアアトリエやコミュニティスペースなど、場のプロデュースや運営を通じたまちづくりに取り組んできた会社。
今年の夏には、東京・府中に“LIGHT UP LOBBY(ライトアップロビー)”という複合施設をオープンします。

今回募集するのは、この施設の運営を担当するまちづくりディレクター。施設マネージャーのような立場で、接客やイベントの企画、広報、売上管理など、この場所に関すること全般を取り仕切る仕事です。
あわせて、柔軟な働き方で運営に関わるパートタイム・アルバイトスタッフ、カフェでスイーツを提供するパティシエの経験者も募集します。
取材に訪れたのは、東京・入谷。
府中駅前の施設は現在工事中のため、ドラマチックが2014年から運営するコワーキング&シェアアトリエ“reboot(リブート)”で話を聞くことに。
中に入ると、代表の今村さんがちょうどオンライン会議を終えるところ。少し早かったですかね、と言うと「とんでもないです」と返してくれた。
その後も「電源使いますか?」と声をかけてくれたり、「座布団薄いほうでいいよ」とスタッフさんに席を譲ったり、優しくて気さくな方だ。

一方、まちには小さいからこそ個性的なお店や面白い活動をしている人がたくさんいる。そんな人たちとともにソフト面からまちを盛り上げていきたいと、2010年にドラマチックを立ち上げた。
入谷や品川にあるシェアアトリエのほか、千葉県習志野市の公共施設や高知県宿毛(すくも)市にあるカフェを併設した邸宅の指定管理など、さまざまな場づくりを通じて、地域で活動する人たちを応援してきた。

「府中駅前にある老朽化したコミュニティ施設の跡地を市から借り受けて、民間企業が8階建てのホテルを建てるんです。僕たちはその2階部分に、まちの人に向けた複合施設をつくり運営していく予定です」
施設の名前は、“LIGHT UP LOBBY(ライトアップロビー)”。
駅前のシンボルである500mのケヤキ並木をのぞむ、気持ちのいい雰囲気の場所だそう。

地域の人たちは、お客さんとして利用するだけでなく、メンバーになれば自由に場所を使ってビジネスやイベントを立ち上げることができる。
「目指しているのは、まちの人みんなが主人公になれる場所なんです」
みんなが主人公、ですか?
「そう。働いている人も学生もママさんも、みんな普段やらなきゃいけないことがたくさんあって、忙しいじゃないですか。そのなかでも、『こんな暮らしを送りたい』『こんな楽しみを持ちたい』っていう理想は、大なり小なり誰にでもあると思っていて。それを実現する舞台にしてほしいんです」
副業や起業をしたい。料理教室を開きたい。趣味でつくってきたものを本格的に販売したい。そんな小さな「やりたい」を実現できる場にしていきたい。
「ここでチャレンジしたり、誰かを応援したり、友だちになったり。いろんなことを通じて、一日が終わって寝るときに『なんか今日もいい日だったなあ』って、心にぽっと明かりが灯る人を増やしたい」
「そんな思いと、『まちの皆さんの才能に光をあてる』という意味を込めて“ライトアップ”と名付けました」

だからこそ、施設にあるさまざまな機能が意味を持ってくる。
「たとえば、ふらっとカフェに訪れたらご近所さんが本を出品していたり、同じ保育園のママさんがギャラリーで展示をしていたり。身近な人ががんばっていると、自分にもできるんじゃないかって思えるんですよ」
参加する側から生み出す側になることに、不安を感じる人もきっといると思う。でも、気軽に立ち寄れる場所にきっかけがあることで、やってみようと思う人は増えていくはず。
「僕らの仕事は、想いのある人たちが一歩踏み出せるように、背中をぽんと押してあげること。ここで灯った明かりが施設の外にもどんどん広がって、まちがもっと元気になって、住む人や訪れる人が増えていったらいいなと思うんです」
「まちを元気にする」という言葉は大きなものだけれど、実感をもとに話してくれる今村さんの言葉はすとんと腑に落ちる。
ここでいいきっかけや出会いが生まれるように。オープンしてからもより良い方法を常に考えて、場所をアップデートしていくことになりそう。
今回入る人が深く関わるのが、今村さんとともに府中の施設開発を担当している町支(ちょうし)さん。明るくパワフルで、話を聞いているだけでこちらも元気になってくる。

「とにかく仕事の幅が広いので、多すぎる!っていつも思うんですけどね。いろんな方と出会えるので、きっとおもしろいと思います」
今村さんは、アドバイスはするものの細かい指示は出さないので、大きな方向性が決まればやり方は個々のスタッフに委ねられる。はじめての仕事に直面しても、どうやったらできるだろう?と前向きに考えられる人のほうがいいとのこと。

「ドラマチックの現メンバーはビジネス面でのノウハウが少し弱いので、営業や収支計画を立てて実践した経験のある、ビジネスに強い方に入っていただけたらとてもありがたいです。とはいえ『お金稼ぐぞー!』っていうマインドだけだと、この施設らしくなくなっちゃうので、バランスを取りながらやってほしいですね」
収益以上に、まちの人に愛される場をつくる、ということを大切にしてほしいという。コミュニティが盛り上がって、場所を活用したい人が増えれば、イベントやメンバー数などに比例して収益も自然とついてくる。
現在、ドラマチックのスタッフは、基本的にリモートワークで働いている。今回入る人も、施設のシフトに入る日は出勤するものの、それ以外の日は自宅や、台東区の本社などでの仕事になる。
この日、町支さんと半年ぶりに顔を合わせたと喜んでいたのが、黒澤さん。ドラマチックが千葉県習志野市で運営に関わる“フューチャーセンターならしの”で、パートスタッフとして働いている。
新しく生まれる場所をどんなふうに育てていくのか。黒澤さんの話はきっと参考になると思う。

公共施設のリニューアル時に新しくできたフューチャーセンターは、まだオープンして1年半ほど。
新しい場所を活用してもらうために、どんなことを仕掛けていったんですか?
「オープンしてすぐに『市民ファシリテーターをはじめる講座』という全4回の講座を開催しました。地域活動など、やりたいことはあるけど、やり方がわからないという人に向けて、コンセプト立てから企画のつくり方、集客や広報まで、実現に落とし込む方法をレクチャーして。その参加者の方に、フューチャーセンターを使って実現してみませんか?と声をかけていきました」

きっかけは、前述の講座に参加していた3人の子を持つママさんが、「子ども向けに哲学的な対話ができる場をつくりたい」と想いを語ってくれたこと。
はじめは近所の子どもたちに向けて個人で活動していたものの、もっと広く地域に向けて開催しようと、全6回のイベントをフューチャーセンターと共同で実現させた。
「どうして学校に行くの?」「自由ってなに?」など、毎回ひとつのテーマに対して、小学生10人がじっくりと対話。
黒澤さんは、企画から当日の運営、集客や広報、イベントの開催報告まで、すべてに関わった。

共催したママさんは、この経験を生かして自らの手で新たにイベントの企画・運営をし、活動に共感する仲間づくりもはじめようとしているそう。
こんなふうに活動する人たちをどんどん地域に増やしていくのが、ドラマチックの目指す理想のまちづくりでもある。

そんななかでドラマチックと出会い、フューチャーセンターのスタッフに応募した。
「楽しい学びや遊びの場が暮らしのそばにあったらいいな、という思いで手を挙げました。それをつくる大変さは日々痛感しているんですが、『誰かが一歩踏み出すきっかけに関われるって、すごくいい仕事してる!』って、ふとしたときに感じるんですよ。その瞬間がうれしいです」
表舞台のイベントだけを見れば、華やかな印象がつよいドラマチックの仕事。
でも、この仕事のベースにあるのは、どうすればまちの人が輝けるのか、真剣に考えてかたちにする地道な積み重ねだと感じました。
飾らない等身大の言葉に感じた説得力は、そんな積み重ねが背景にあってこそ。この人たちが灯した明かりなら、きっとまちを照らし続けていくことができると思いました。
(2021/5/12取材 増田早紀)
※撮影時はマスクを外していただきました。