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得意を交換し弱みを助け合う
おこめをつくる不動産屋が
下北沢ではじめたこと

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

朝の通勤路で花屋のおばちゃんと挨拶を交わしたり、夜は焼き鳥屋で常連客と一緒に飲んだり。

ゆるやかに見知った顔のある街は、心地いい。

今回紹介するomusubi不動産は、顔の見える関係性を大事にしながら、いろんな方法で街と人をつないできた会社です。

たとえば、みんなでおこめをつくったり、入居者一人ひとりの得意を活かしてマルシェや芸術祭を開いたり。

ただ不動産を貸したり売ったりするのではなく、住む人と一緒に街をつくっていく会社、という感じ。だからこそ、相談に訪れるお客さんは何がしたくて、どんな暮らしを望んでいるのか、まずはじっくり話を聞くことを大切にしています。

内覧の際には街のお店や人を紹介することもあるし、ときには要望の先まで想像して、条件から外れた物件を提案することも。人によってはおせっかいと感じるぐらい、人と向き合う不動産屋さんです。

今回は、松戸本店と昨年オープンした下北沢店で、それぞれ営業担当を募集します。

不動産から考える街づくり。きっとおもしろいと思います。


下北沢駅西口を出て、鎌倉通りの住宅街を進む。5分ほど歩くと、上り坂の中ほどにBONUS TRACKのダルマのロゴマークが見えてきた。

BONUS TRACKは、職住遊が一体となった複合施設。飲食店や本屋さん、シェアキッチンやコワーキングスペースなどさまざまなお店が並んでいて、小さな商店街のようでもある。

中央の広場には、カップルや犬と一緒に散歩中の人、家族連れやPCを広げて黙々と作業する人など、思い思いに過ごす人たちの姿がある。天気がよくて気持ちいい。

omusubi不動産は、その一角に支店を構えている。まずは代表の殿塚さんに話を聞いた。

殿塚さんが2014年に立ち上げたomusubi不動産。地元の千葉・松戸を拠点に、DIY可能な物件や古くて懐かしい物件など、個性的な物件を打ち出してきた。

入居者との関わり方も少し変わっていて、一緒に田植えや収穫をしたり、DIYのワークショップを開いたり、芸術祭の企画運営に巻き込んだり。“お客さん”というよりは、街をおもしろくしていく“仲間”のような関係性を築いてきた。

下北沢に進出したのは昨年の春のこと。きっかけはなんだったんだろう?

「BONUS TRACKを企画している散歩社の小野さんがもともと知り合いで、相談を受けていたんです。『小田急電鉄から商業施設の開発の相談を受けていて、不動産のことを相談できる人がいると助かるんだけど、できる?』って」

下北沢駅から世田谷代田駅にかけての線路が地下化されたことに伴い、その跡地で何かできないか?ということだった。

下北沢といえば、演劇やお笑い、音楽などさまざまな分野でチャレンジする人たちの舞台となってきた街。ところが、土地の人気が高まるにつれて賃料も上昇。いわゆる“ジェントリフィケーション”によって、文化的価値をつくってきた人たちが街から追い出されてしまう問題が起こりつつあったという。

「そういう経緯もあって、この施設は新しく何かにチャレンジする人のための場所でありたいと思っていて。コワーキングスペースやシェアキッチンの運営など、いろんな形でチャレンジのきっかけを提供しようと決めたんです」

「同時に、これはぼくらにとっても挑戦で。松戸を飛び出してチャレンジしたい人を東京につなぐ拠点になるかもしれないし、逆に東京で苦戦している人は松戸においでって言えれば、のびのびした環境で才能が花開く人もいるんじゃないか。そういう化学変化を期待して下北沢にやってきたという背景もあります」

新しく挑戦する人を応援する。

そのためには、具体的にどんなことができるのだろう?


BONUS TRACK店で賃貸営業を担当している溝井さんに聞いてみた。

「ここの下には、1日単位で貸し出しているキッチンがあって。つくったものはテスト販売もできるんです」

BONUS TRACKでのイベントに合わせて出店するなど、お店を持ちたい人にとっては、はじめの一歩を踏み出しやすい環境。

ただ、実際にお店を持つとなると、どうしても高い賃料がネックになってくる。

「保証金など初期費用だけで300万円程度かかる場合もあります。下のシェアキッチンから3段跳びぐらいしないと、店舗を持てないジレンマがある」

「そこで今計画しているのが、曜日ごとに店主が入れ替わるシェアカフェです。実力もついて展望が開けたら、自分の店舗を持つまでの流れもつくれるんじゃないかって」

omusubi不動産は、もともと松戸で「One Table」というシェアカフェを立ち上げて運営してきた。フレンチやイタリアン、コーヒースタンドやサンドイッチ屋さんなど、日替わりの店主がいて、ここをきっかけに地域で開業した人もいるという。

今回のシェアカフェにも、One Tableのスキームを転用して運営していく予定とのこと。

「同じやり方をしても、街が変われば全然違う反応になると思っています。そこも含めて楽しみですね」

昨年の11月に入社した溝井さん。前職は別の不動産会社で賃貸営業をはじめ、さまざまな業務を担っていた。

「前職を辞めるときに不動産業界から離れるか悩んだんです。でも、少し立ち止まって考えてみると、不動産の仕事がやっぱり好きだなって気づいて」

どんなところが好きなんですか?

「お客さんに深く関わって手助けできるところ。あとは物件を通して、お客さんのやりたいことや希望が、形になっていくところを一緒に見れることですね」

たとえばと言って、溝井さんが印象に残っているお客さんについて話してくれた。

「うちのHPに掲載していた一軒家の物件に、シェアハウスやコワーキングのようなコミュニティスペースをやりたいってお問い合わせをいただいて」

「内見でお会いしたときは、5人組だったかな。よくよく話を聞いていくと、『ほんとは秘密基地をつくりたいんです』って話だったんですよ」

秘密基地?

「そう。最初は、いきなり秘密基地なんて言ってもわかってもらえないだろうって感覚があったみたいです。でも本音は秘密基地だって言うから、おやおや?と思って。だったらうちに一番ピッタリな物件がありますよって」

溝井さんが提案したのは江東区の一棟物件。当初の条件は世田谷区内だったものの、秘密基地にはぴったりの雰囲気をお客さんが気に入り、成約に至ったそうだ。

「omusubi不動産のお客さまって、ちょっと先のハッピーな未来を描いてくる方が多いなと思っていて。それは私たち自身がイベントを企画したりアトリエを開いたり、アートやカルチャーの切り口で土壌をつくってきた、っていう部分が大きいと思うんです」

「誰にも言えなかったけど秘密基地をつくりたい、みたいな。そういう方の手助けや後押しができるのはうれしいですよね」

今回募集するのは、営業スタッフ。下北沢店では賃貸担当、松戸店では売買担当を求めている。

物件の仕入れや内覧、入退去の手続きや書類の作成といった一般的な不動産業務に加えて、DIYのサポートやリノベーションの提案なども役割のひとつ。集合住宅なら、入居を検討している人たちに向けてイベントを企画したり、ワークショップ形式で一緒に壁を塗ったりすることもある。

お客さんの“本当にやりたいこと”を形にしていこうと思えば、それだけ相談に乗る時間も長くなるし、オーナーさんとの交渉や調整も必要になってくる。

目先の売り上げだけを考えるなら、「秘密基地」の方々の本当の要望は汲めなかったかもしれないし、1年後にお店を持ちたい人は「ほかを当たってください」と言われても仕方がない。その大変さを乗り越えて役に立ちたい、と思える人でないとむずかしい仕事だと思う。


「日本一融通の利く不動産屋さんでありたいんです」

そう話すのは、松戸店で売買営業を担当している市川さん。

「アーティストの方なら音出ししたいとか、これぐらいのスペースがほしいとか。いろんな条件があるなかで、全部をかなえることはできなくても、これだったらどうですか?っていう答えを一緒に見つけていく。そこが楽しいし、常にお客さんのほうを見ている会社でありたいなと思っています」

物件の入居者だけでなく、オーナーの立場からも考えることが大切。

たとえば溝井さんの話にもあった保証金は、家賃の滞納などに備えたリスクヘッジであって、あとから返金されるもの。その数百万円を初期費用として準備できないことで、センスのいいお店が出せないのはもったいない。

それならば保証金をなくし、そのぶんのお金を内装デザインにかけて気持ちのいい空間をつくってもらえば、退去後も居抜きで貸しやすくなる。いい店が増えると街の価値も上がる。そんなふうに筋道を立てて人と人をつないでいくことで、不動産業は街をよりよくしていけるポテンシャルがあるという。

「ぼくは、暮らしを楽しみたいっていう気持ちが強くて。ぼく自身も松戸に住んでいるので、うちの物件の入居者さんと立ち話をしたり、イベントに来た人同士が仲良くなって、街も気に入って近所に住んでくれたり。omusubiを通じて緩やかに輪が広まっていくといいなと思って活動しています」

“街”って、一言で表すと大きいけれど、細かく見れば一人ひとりの暮らしが重なってできるもの、とも言える。顔の見える関係性を増やしていくことは、地道だけれど、少しずつ街の表情を変えていく。


「最近よく考えていることがあって」と、代表の殿塚さん。

「住民同士の顔が見えて、何かやりたいと思ったら力を合わせて形にできる。“自給自足できる街”を目指して、ぼくらはずっとやってきました。それを最近はより噛み砕いて、『得意なことを交換して、弱みを助け合おう』って言っていて」

得意なことを交換して、弱みを助け合う。

「仕事って、得意なことをやったほうが成果を出しやすいし、本人もやりがいを持てると思うんですよ。だからうちは、入社してから役割の変わるスタッフが多いです。実際に働いてみないと、何が向いてるかなんてわからないじゃないですか」

賃貸担当の溝井さんは当初、物件の仕入れを行っていたそうだ。売買を担当している市川さんも、最初はインターンとして自社物件のDIYなどに取り組み、賃貸営業の経験を積んで今のポジションに辿り着いたという。

「それって街全体で見てもそうで。誰でもまずはチャレンジできて、一人ひとりが自分の得意分野で街での役割を実感できたら、そこは居心地のいい街になっていくと思うんです。そんなふうに、パズルのピースがカチッとはまった状態をつくっていくのがうちの仕事なのかなと」

もし秘密基地をつくりたいと相談されたとき、「楽しそう!もっと聞きたい」と思うのか、「大人になって秘密基地?」と思うのか。

どんな相談を受けるにしても、はじまりにあるのは相手への興味だと思います。

そんなふうにまず受け止めてくれる不動産屋さんが一軒でもあったら、街の姿は少しずつ変わっていくのかもしれません。

(2021/4/27 取材 杉本丞)
※撮影時はマスクを外していただきました。
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